※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.12 しっ、落ちているもの食べちゃいけません!

 

 

「やっぱりエヌラスさん、どこか変ですよ」

「そうか?」

「はい。いつもならあの程度、どうってことないじゃないですか」

「そうかぁ?」

「そうですよ!」

 

 廃ビルの探索を終えて、仮拠点に向けて戻る道中。ネプギアはエヌラスの事を訝しんでいた。

 

「注意力散漫というか、気が抜けているというか、しっかりしてください!」

「ネプギアに怒られた……」

「どんまい、エヌラス!」

「お前に言われるのは何か腹立つ」

「人が慰めてあげてるのにそういうこと言うと、もう慰めてあげないよ? いいの?」

「それはかなり困るな」

 結局、得られた物と言えばネプギアが最初に見つけた開発ログだけ。あれから全部の階層をくまなく探索したものの、上にいくにつれて床が抜けていたり壁にヒビが走っていたりと建物自体の劣化が酷かった。いつ自壊してもおかしくない危険性があったので途中で切り上げる事にしたのだ。

 

「うずめ、海男達から連絡は?」

「定期的に連絡してもらってるけど、今のところ収穫はないってよ。焦っても仕方ねぇしな」

「あれから魔人の襲撃もないしな。ダークメガミもそれきりなのは救いだな」

 世界は滅亡寸前だというのに平和なのも妙な話である。

 

「当面の問題は食糧くらいか」

「俺一人なら大丈夫なんだけど、増えたからなぁ」

「ごめんね、うずめ」

「なぁに、ねぷっち達のせいじゃねぇよ。気にすんなって」

「…………」

 エヌラスが顎に手を当て、考えていた。

 

「なら、モンスター食ってもいいか?」

「はい?」

「えっ、まさかひよこ虫達を!?」

「ダメだ! 大事な仲間なんだから!」

「でも、ひよこ虫って揚げて食べるとエビフライみたいな味がするらしいよ?」

「そうなのか!?」

「じゃあ生で食ってもイケるな。歩くエビってことだ」

「ダメですからね!?」

 エヌラスの提案は、ネプギアの猛烈な抗議によって却下される。うずめは好奇心がそそられるのか考え込んでいた。

 

「モンスターを食べるって発想は俺もなかったな……」

「俺はよく食ってた」

「腹壊さなかったのかよ?」

「生憎と俺は今まで一度も腹を壊したことがない」

「それ、本当に食って大丈夫か……」

「エヌラスさんの食べ方じゃなければ、多分」

 基本的には生。或いはこんがりと。

 

「そうは言われてもなぁ、食糧問題は大事だろ」

「確かにそうですけれど」

「うーん、でも食べられそうなモンスターって結構いるし」

「ベーダー系のモンスターってどんな味するか、ちょっと前から気になって仕方ないんだ」

「流石にアレを食べたいとは誰も思わないよ!?」

「ど、どう食べる気してるんだ?」

「生で。頭から。いや、角からいくべきか……」

 ゲイムギョウ界で滞在している間、モンスター図鑑を読んでいた。特徴や攻撃方法、入手できる素材、生息地等。だがそれのどこにも調理方法や味などは書いてなかった。それだけが気がかりだったのだが、そうなればもう、実食するしかない。

 

「なんか腹減ってきたな」

「逃げてー! モンスター達逃げてー!」

「……やっぱ、そういうの食べられた方がカッコいいか?」

「ワイルドだな。うずめも挑戦してみるか、モンスター食」

「何事も挑戦だ! 俺も食べる!」

「えぇぇ!? ほんとに食べるんですか、うずめさん!?」

「美味しかったらわたしもちょっと食べてみようかな」

「お姉ちゃんまで!?」

 そんなわけで──急遽、食料調達。

 

 

 

「…………」

 バリボリ。

 

「あの、エヌラスさん……美味しいですか、その……シカベーダー」

 とっ捕まえたシカベーダーをかじるエヌラスに、ネプギアが恐る恐る尋ねる。あまり良い顔はしていない。哀れにも捕まり、現在食べられているベーダーは角がなくなっていた。

 

「んー、薄味。なんというか、動物向けの味がする」

「そういうのもわかるんですか?」

「ドッグフードとか」

 聞かなきゃよかった。心底後悔する。

 

「ただこの風味はなんか、こう、草食動物に食わせる薄味せんべいみたいな。ただくっそ固いなコイツ。ふぎぎ」

「でも食べるんだ……」

「総評としてはどうなんだよ?」

「下の中。味は悪くないが食感がダメだな。食べるのも一苦労だ」

 そう言いながらもぐったりと身動きしなくなったシカベーダーを丸焼きにしてエヌラスは食べ続けていた。なにかひと味欲しい、とコメントを残して。

 うずめとネプテューヌも意を決して、シカベーダーの先っちょの部分をもらって食べる。

 

「かたい……」

「あんま、美味しくないな……」

「だろ?」

「食べるものじゃないって言いたいんだと思いますけど……」

「でも、小腹が空いた時にかじる程度ならいいかもしんねぇな」

「うずめさん?」

「案外食えるもんだな! これなら他にも食える奴探してみよーぜ!」

「よーし任せろ。手堅いところから挑戦だ」

 拠点の付近を歩く手軽なモンスターを弱らせてエヌラスが味見。それをうずめ達の提案で調理してみる。

 ベーダー系だけでなく、フェンリル、ナーガ、タートル系。それに留まらずリザードマンにまでエヌラスの食指が伸びていた。

 

「焼けば食える」

 とはエヌラスの持論。実際のところ、味にクセはあるものの食べられない範囲ではない。

 うずめが肉汁の滴るナーガの肉にかぶりつく。

 

「ど、どうですか? うずめさん」

「あむ、あむ……意外と旨いなぁ! なんか鳥っぽい味がするし!」

「……ゴクリ」

「ネプギアも食べてみるか? ちょっとくらい食べても腹は壊さないだろ」

「それじゃあ、一口だけ……」

「もぐもぐ。うわ、手がベタベタになっちゃった。エヌラス~」

「ほら、ハンカチ」

 ネプテューヌも乗り気になって食べていたからか、ネプギアもそれに後押しされてナーガの肉片に意を決して口をつける。ミディアムな焼き加減から溢れる肉汁、最初こそ違和感に顔をしかめたが、何度か噛み締めているうちに徐々にクセが抜けていった。

 

「……あ、おいしい……かも……?」

「いやぁエヌラスのおかげで即席のバーベキューが出来るなんて思ってなかったなー。おかわりは無いの?」

「もうねぇよ。ネプギアので最後だ」

「え~? そんなこと言わずにぃ」

「それならねぷっち、俺の分けてやるよ。ほら」

「ありがとー、うずめ! もぐもぐ」

「食ってみるもんだなぁ、モンスターも!」

 エヌラスは一通り食事を終えて、モンスターも調理法次第で食えることが判明したことに満足している。

 

 ──拠点に戻って身体を休めていると、海男から無線が入った。うずめはそれにすぐ応答し、報告に耳を傾ける。

 

「海男からだ。シェアクリスタルを発見したってよ。よかったな、ねぷっち、ぎあっち!」

「おー、ほんとに! よかったー」

「はい。良かったです。それで、場所はどこになるんですか?」

「ここからだとちょっと遠いな」

 なんでも、シェアクリスタルは自然が残っている場所で多く見つけることができるらしい。海男達の話によれば、以前ダークメガミの襲撃があった市街地を越えた先にある森林公園で発見したそうだ。魔人の襲撃が無いとも限らない、行くのは早いほうがいいだろう。

 

「俺が先行して海男達を護衛する。三人はそれから合流ってのはどうだ?」

「エヌラス一人で大丈夫かなぁ」

「お前、そりゃどういう意味だ。俺一人じゃ不安か? そう簡単にくたばりゃしねーよ。魔人を全員相手にするわけじゃねぇんだから」

「んもー、またそういうこと言うんだから!」

 ビシッ!と指を突きつけてネプテューヌが眉をつり上げていた。

 

「わたしが心配してるのはそんなことじゃなくってさー。もっとこう、根本的なことなの!」

「どういうことだよ?」

「え? えーっと、うーん……こう、なんだろう……とにかく、そういうことじゃなくてエヌラスを一人にしたくないんだってば!」

「それがどういう意味なのか俺にはわからないんだが」

「そんなのわたしが知りたいくらいだよー!」

「逆ギレかよ!?」

「それだったら、ねぷっちと二人で行ったらどうだ? 俺とぎあっちは後から行く」

 先行組と二手に別れてシェアクリスタルを確保する、といううずめの提案にエヌラスが頷こうとして、ネプテューヌが難しい顔をしている。

 

「どうしたんだ、ネプテューヌ」

「う、うーん……なんだろう、ちょっとお腹の調子が……」

「大丈夫かよ、ねぷっち……っていうか、なんか俺も……」

「実はわたしもさっきから少し……」

「ちょ、ちょっと待て。まさかお前ら揃いも揃って腹を壊したのか? 嘘だろ!? なんでだ。おかしいな、さっきの奴はちゃんと全部火を通したはずなんだけどな……」

 うずめが青い顔をしている。ネプテューヌもお腹を押さえていた。ネプギアはまだ腹痛も軽い症状なのか落ち着きがない程度だ。

 やはりモンスターなど食うべきではなかったのだろうか? エヌラスは自分の腹に手を当てるが特に異常なし。すこぶる快調である。

 

「食べ慣れてないから腹も壊すか。うーん、仕方ねぇ。俺が先行して海男達と合流するから、三人は腹の調子治ってからでいい。ゆっくり来てくれ」

「うぅ……なんでお前平気なんだよ、エヌラス……」

「そりゃお前、ネズミだろうが何だろうが生で食ってきたが、俺は生涯一度も腹を壊したことがない鋼鉄の胃袋だからな」

「そんなんだったらモンスター食っても平気だろうよっ! うぅ、腹が……」

 エヌラスに次いで、調子に乗って食べていたうずめがその場にかがみ込んだ。これではとてもではないが戦えそうにない。何か胃薬のようなものがあればいいが、生憎とそういった薬剤類は持ち合わせていなかった。

 何か無いかとポケットの中を探れば、出てくるのはスキットルボトル。中身は高純度のお酒。あるいは魔剤と称すべき液体。乙女の尊厳とか女神としてあるまじき行為をさせてしまえば恐らく楽にはなるだろう。具体的には嘔吐。しかし、流石にそんなことを三人にさせるわけにはいかない。

 

「とりあえず、飲み物取ってくるからそれ飲みながらゆっくりしててくれ。俺は先に行ってるからな」

「ああ……悪い」

「いや、元はと言えば俺のせいだしな。それでいいか、ネプテューヌ」

「プリン食べたい……」

「それでいいな。ネプギアも」

「わたしの意見スルーされた!」

 寝言は寝て言ってくれ。呆れながら、エヌラスは三人に冷えて飲み物を渡すとクーラーボックスを近くに置いてハンティングホラーを召喚する。それから拠点から飛び出していってしまった。

 

「うずめ、食べ物でエヌラスの言う「大丈夫」は信じちゃいけないよ……」

「次からは気をつける……」

「二人ともあんなに食べるから……」

 魔人の胃袋、恐るべし──。

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