※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.22 足を引っ張るスタンドプレー

 エヌラスと並んで剣を構える戦乙女。うずめとネプテューヌもマジェコンヌを相手にしているが引くに引けない状況となっている。背中を見せれば容赦ない追撃が待っているだろう。

 オルタもまた、マガツビを背後に控えている。

 

「お姉ちゃん──」

「……ねぷっち、行け。ここは俺に任せろ」

「うずめ。だけど」

「エヌラスもだ」

「それが出来たら苦労してねぇよ。お前残して行けるか」

 聖剣を担ぎ上げて、切っ先を背後に向けたオルタがかがみ込む。地面から足を離した直後、自らの身体を弾丸のように撃ち出してエヌラスへと迫る。しかし、それを阻んだのは戦乙女の細剣だった。稲妻を纏い、一閃する。剣の腹で防ぎ、続く刃を難なく凌いだオルタが肩口からの体当たりで戦乙女の身体を押し出した。

 剣を防いだのは、エヌラスの倭刀。逆に蹴り返されてたたらを踏んだ。

 

(……どうしろってんだ)

 情に流されそうになる自分の感情をカットする。可能な限り非情に務め、最優先事項を設定していく。後は実行に移すだけだ。

 エヌラスが左手を差し出すと、戦乙女が何か言いたげにしていた。それもすぐに口をつぐんで手を取ると、稲光と共に姿がかき消える。

 目を眩ませてネプテューヌとネプギアの二人を研究施設の中へ。転送装置に押し込むと、そのまま起動させた。それでも次元移動には少々時間を要するのか、起動アナウンスが流れる。

 そこへ、うずめがマジェコンヌに吹き飛ばされて転がってきた。

 

「うずめさん!」

「げほ、大丈夫だ! 心配いらねぇ!」

 口を拭いながら立ち上がり、振り下ろされる剣をメガホンで防ぐと蹴り出されてエヌラスが抱きとめる。

 

「エヌラスも、早く行けよ。ここは俺がなんとかするから」

「悪いなうずめ。あの転送装置二人用なんだ、とっとと片付けるぞ」

「ば、バカ言うな!? もう帰れねぇかもしれねぇんだぞ!?」

「問題ない」

 機械的に返答するエヌラスにうずめは言い返そうとしたが、その言葉の裏に絶対の信頼を寄せられていることを汲み取った。

 

「チッ、逃がすか!」

「イア・クトゥグア!」

 爆炎に呑まれながら、マジェコンヌが反撃を試みる。その魔法の余波を食らい、転送装置が揺れた。炎の中から飛び出したオルタの剣をエヌラスが防ぎ、それを横からうずめが殴り飛ばしてやり返す。さすがにマガツビは研究施設の中にまで入り込んではこなかった。

 起動シークエンスのアナウンスが流れ、ネプテューヌとネプギアが設定された次元座標へ転送されるかに思われたその矢先にうずめがマジェコンヌの魔法を食らい、二人の目の前で倒れる。それを見て、遮二無二、ネプギアが飛び出してビームブレイドでトドメを刺そうとするマジェコンヌに斬りかかった。

 

「ネプギア──!?」

 ネプテューヌが手を伸ばすが、無常にも転送装置は無事に起動。それから一瞬遅れてエヌラスを剣圧で崩したオルタが手をかざし、黒い魔力を放つがそこには既にネプテューヌの姿は無かった。

 

「バカ! 何考えてんだ、ぎあっち!? 俺のことなんて」

「ごめんなさい! だけど、あのままじゃ……」

「っ……!」

 何の感慨もなく、オルタは取り逃がしたことを再認識する。これ以上ここで戦闘しても無意味だろう。だが、マジェコンヌが引くかと言われて素直に引き下がるような性格ではない。手負いの女神が相手ならば任せてもいいだろう。

 問題は、目の前の魔人だ。

 

「貴様も存外、しぶといものだ」

「しぶといのがウリ文句でな」

「ふふ……」

「なに笑ってやがる」

「貴様の出方次第では、手を引いてやってもいい」

「正気かよ」

「ああ、至って正気だとも」

 マジェコンヌを盗み見る。ネプギアが今は相手をしているが、ジリ貧だろう。交渉の材料とするならば最適だ。

 エヌラスも状況を冷静に鑑みて、オルタの提案を聞くだけは聞いてみることにした。

 

「なに、簡単な話だ。脱出を手伝ってやる。その代わりに、魔力供給をするだけだ」

「…………断れば?」

「どうなると思う?」

 聖剣が魔力を込められて、鈍く輝く。そうなれば、この状況が一気に悪化するだろう。自分だけならばまだいいが、うずめ達がいる。エヌラスは舌打ちした。

 

「……一回だけだ、それでいいな」

「妥当だな。それでは、また後で会おう」

 オルタの剣撃が横からマジェコンヌを殴りつけて研究施設から一撃で叩き出す。突然の裏切りに反応出来ずに直撃を受けていた。壁を壊して道路へ放り出されたマジェコンヌをマガツビが鼻を鳴らして匂いを嗅いでいる。小さくうめき声を漏らしている辺り、まだ生きているようだ。

 魔人の裏切りに、うずめもネプギアも唖然とする。そのまま背中を向けて去っていくオルタが、最後に一度だけエヌラスに向き直った。

 

「約束を違えるなよ、魔人」

「テメェも魔人だろうが」

 微笑を浮かべながらオルタが去っていく。うずめに肩を貸して、エヌラスはネプギアと共に研究施設を後にする。

 

 

 

「貴様、何のつもりだ……!」

「女神を取り逃がした以上、ここでこれ以上戦闘をする意味がない」

「たかが小娘一人だ!」

「それに、な。まるで降って湧いたような次元移動の鍵はもう無くなった。そしてそれも私が壊した。修復するにせよ何にせよ、時間が必要になるだろう」

「ちっ……人を裏切っておいてよくもいけしゃあしゃあと──!」

「ほう。私とやる気か? マジェコンヌ」

「このままでは私の腹の虫が治まらん話だ!」

 唸り声を上げていたマガツビをオルタが手で制する。魔法を放とうとするマジェコンヌだが、機械の足音に手を止めた。

 壊れた世界の街並みには不釣り合いな潔癖な白の機体色。大型両刃剣を地面に突き刺して、シロトラが両者を睨んでいた。魔人でもなければ、マジェコンヌのような協力者でもない。

 

《仲間割れとは感心しないな。時間の無駄だ》

「引いていろ、機械人形」

《断る。貴様らは遊びすぎだ。急ぎ、戻るがいい》

「誰が貴様の命令に従うものか!」

《実力行使でも私は構わないが?》

「そこまで言うのなら、望み通りにしてやる!」

 シロトラめがけて属性魔法を連発する。魔術から逃げ続ける姿にマジェコンヌが口角をつり上げて笑い飛ばしていた。

 

「口先ばかりが達者な素人め! 逃げるばかりか!」

 機械というのは超常の原理で成される魔法に弱い。特に電気には。だからこそマジェコンヌも黒い電撃を放っているのだが──それが、当たらないことに疑問を持ち始めた。逃げ惑う白い機影が雷撃の着弾点を前に立ち止まる。間一髪のところで回避に成功したシロトラが静かにマジェコンヌと向き合う。

 

《……気は済んだか、マジェコンヌ》

「貴様……!」

《逃げ回る私の姿を見て、気は晴れたかと聞いている》

 機械らしい無感情な声色は人工知能のあって然るべき言動だ。しかし、プラネテューヌのAI開発技術というのは先進的であり革命的でもある。ゲイムギョウ界最高水準の人工知能開発、人間よりもよっぽど人間らしく振る舞える。だが、シロトラの人格AIはそれとは一線を画していた。その挙動も、言動もどちらかと言えばリーンボックスやラステイション寄りのものだ。

 人々との親しみよりも、任務遂行に傾向した戦闘用ロボット。その全身がブラックボックスに包まれている未知の技術力で形成されていた。

 歯噛みして眉をつり上げるマジェコンヌが杖を消すと、面白くなさそうに魔女帽子のツバを下げる。

 

「忌々しい機械人形め……」

 そう吐き捨て、オルタ達に背を向けてどこかへと行ってしまった。

 

《余計な真似をしたか?》

「いや、なに。私であれば切って捨てていたところだ。せっかくの協力者だ、せいぜい利用させてもらおう。それにダークメガミはあの女しか制御出来ないからな」

《それで、シェアクリスタルの回収はどうした》

「少々難儀しているよ」

《ならば引き続き任務の続行を》

「分かっているさ。貴様に言われるまでもない。行くぞ、マガツビ」

 魔獣を引き連れてオルタもまた、シロトラへ背を向ける。

 

《分かっているな、魔人。魔獣。私は──》

「ああ、肝に銘じているよ。お前は、自らの信仰する女神に剣を向けない限り、私達に刃を向けることはないと」

 

 

 

 重傷を負ったうずめの傷をネプギアが回復させながら、エヌラスは拠点にある傷薬を海男と共に探すが、その在庫がもうほとんど無くなっていた。というのもネプテューヌ達も一緒に使っていたからだ。

 さすがに海男もヒレを組んで唸っている。

 

「参ったね。ねぷっちは無事に帰れただろうか」

「ああ、多分な。それよりどうする、海男」

「もう薬の在庫も残っていない。それにダークメガミの襲撃もあってこの周辺に陣取っていられるのも時間の問題だ。拠点を移そう」

「他にアテはあるのか?」

「もちろんさ。此処はうずめが仮拠点にしていたところだからね。本当の拠点は山を越えたところにある」

「少し遠いな……」

 しかし、背に腹は代えられない。このまま此処に居てもこの先の戦いは厳しくなる一方だ。

 

「よし、わかった。まずうずめとネプギアをそっちの拠点に移そう。海男も一緒に向かってくれ、万が一も考えられるからな」

「エヌラスは一人で大丈夫なのかい」

「俺の心配はいらねぇよ。気持ちだけで十分だ。そっちにハンティングホラーを預ける、これなら距離があっても問題ないからな」

 大型自動二輪の形をしているが、自我を持った無機物生命体。犬と一緒だ。躾さえなっていれば言うことを聞いてくれる。運転もハンドルさえ握っていれば問題ない。

 

 うずめの看病をしていたネプギアに今後の方針を伝えると、落ち込んだ様子で頷いた。どうやらこっぴどく叱られたらしい。それを慰めるように頭を撫でてから、エヌラスはハンティングホラーを自らの影から喚び出す。

 エンジンを吹かし、乗車を促していた。

 

「本当なら一休みしてから行くべきなんだろうが、あの調子じゃマジェコンヌのやつはすぐに追ってくるだろうからな。先行してくれ」

「わかりました」

「エヌラスはいいのか? 俺達にバイクを預けて」

「ああ。そっちが目的地に着いたらこっちに戻ってくるようにしてあるからな」

 こういう時は自動運転があると便利だと痛感する。無かったら今頃徒歩で移動することになっていた。

 

「エヌラスさんは一緒じゃないんですか?」

「ああ。俺は後から一人で行く。ちょっと気になることもあるしな」

「わかりました。それじゃ、うずめさん。しっかり掴まっててください」

 ネプギアがハンドルを握り、うずめがその後ろに乗って腰に手を回して互いに頷くと発車した。

 遠ざかるバイクのエンジン音を見守りながら、エヌラスは仮拠点の中を見渡す。それから、深いため息をついて自分の右手を見下ろした。

 偽典宝具を防いだ時に壊れかけた右腕を再生したが、それほど深刻な被害は出ていない。魔術縫合を済ませたばかりで少々ぎこちないが、動きさえすれば問題なかった。

 

(つくづく自分の平和ボケに嫌気がする……)

 もっと上手くやれただろうに。このポンコツめ。エヌラスが自己嫌悪していると、見下ろしていた廃墟の中に黒い人影がポツンと立っていた。

 色褪せた金の髪。黒い騎士甲冑を脱いだラフな格好でこちらを見上げている。

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