超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「他の女神達はどうした?」
「拠点を移した」
「ほう。素直に答えるのか」
「どうせ俺目当てだろ」
「そうなるな」
元は宿泊施設だった廃ビルの一室で、オルタはベッドに腰を下ろした。頬杖をついて笑みを浮かべながら、エヌラスを見つめている。
いったい、この魔人は何が目的で動いているのかが全く分からない。
「どうした? そんなに気になるか、私の格好が」
「……どこで用意したんだよ、その服」
「リーンボックスに滞在している折に」
「ちゃっかりしてやがるな」
武装企業が邪神と取引しているのは既に知っている。そこにいたのだろう。
隣に腰を降ろしたエヌラスの顔を覗き込み、オルタの手が伸びる。死人のような冷たい手に寒気がした。ひやりとする体温に、しかし、なめらかな肌触り。よく出来たマネキンのようだ。
「正直なところ、私にとってはどうでもいい話だ。邪神の企みも、女神のことも。当然だろう、私には関係がないのだから」
「じゃあなんでアイツに協力してるんだ」
「さて、な。面白いからだ。世界の終わりなど、そう見れるものではない。それを見せてやると言われては仕方ないだろう?」
唇が重ねられる。何度も、何度も。
口内に入り込む熱い舌は人間とそう変わりないように思える。
顔を離すと、吐息をこぼして更に身体を寄せてくるオルタが逃さまいと頬に手を添えてきた。
「私は他の奴と違ってな。作られた魔人だ。あの女神……クロギア、だったか? あれは少々手が込んでいる。あれを殺すのは難儀だぞ」
「お前は何を知ってる」
「例えば──アレの持っている剣のこと」
ビームブレイドと、もう一本の剣。規格外の性能を誇る剣との二刀流は、確かに苦戦必至だ。
「知りたいか?」
「まぁな。あれには煮え湯を飲まされた」
「それなら何をすべきか分かっているだろう」
エヌラスはオルタの身体を軋むベッドに押し倒す。
「一回きりだ、それだけは忘れるなよ」
「もちろんだとも──貴様の興が乗ってそれ以上でも私はかまわないが」
貴重な情報源でもある、それが敵とはいえ協力的になってくれるのならば安いものだ。どちらにせよ、倒せない敵ではない。可能ならばこちらに引き込みたいところだが。
服を脱がせて、互いの肌を合わせる。
「んっ……ふふ、こそばゆいぞ」
「黙って天井のシミでも数えてろ」
「それでは風情もないな」
「こんな廃墟で風情もクソもあるか。いいから知ってることを教えてもらうぞ」
──オルタが言うには、女神殺しの剣。その力を吸収することでより強力な物となる、妖剣魔剣の一種だ。ゲハバーンが持つエネルギーはオルタの持つ聖剣よりも出力が大きいものとなる。それを扱うクロギア自身もまた、魔人よりも強固な存在だ。まるで写し鏡のように、神殺しの刃たりえる自分と女神殺しの剣を持つクロギアが用意されている。
頭数を揃えるにしても、女神だけでなく女神候補生も視野に入れている。
「ハ、ァ……! 私は、その護衛役、といったところだ……!」
身体が跳ねるたびにベッドが軋む。死人のような肌とは打って変わって、中は溶けるほど熱い。腰を緩やかに打ちつけながら、エヌラスはオルタから情報を聞き出していた。
「それで──さっきの、バケモノは?」
「ハァ、ハ……ッ。マガツビか……あれは、ただのペットだ。どこから拾ってきたのかわからない魔獣に過ぎない」
口腔から熱い吐息をもらし、呼吸を乱しながら身体を震わせる。敏感な部分を擦られて声を押し殺していた。
「ふ、ァ……んんっ……」
「そのバックアップを受けて、宝具まで解放しやがって。おかげで右腕がぶっ壊れるかと思った」
「それは、貴様自身の未熟、が、ぁ……はぁ! 招いたものだろう?」
腰を引き、天井に押しつけながら沈ませていく。細かなヒダが中で絡みつき、離さまいとする動きに全身の欲望が刺激される。
オルタも頬を紅潮させながらも余裕を見せる笑みを浮かべていた。全身が汗ばみ、火照りを抑えきれない様子だ。
控えめに主張する小振りな胸に指を這わせると、背中を反らして愛撫を受け入れる。
「私の身体が気に入ったのか?」
「余計なこと考えんな」
「それは、貴様も同じ事だろうに」
不意に手が伸びて、オルタがエヌラスの頭を胸に抱き寄せた。早鐘を打つ鼓動が聞こえないことに寒気立つ──心臓すらこの魔人には与えられなかった。
「何を驚く、貴様とて似たようなものだろう? 私は生きてすらいない、贋作の造物だ。ただあの邪神の縁によって形造られただけのこと。貴様の記憶にもあるはずだ」
「…………」
──血染めの荒野に一人、置き去りにした騎士の姿を思い出す。それを見透かしたかのように笑って唇を重ねてきた。
「望むなら、私はこの姿から変えてやってもいい。ただし、その性質は反転したものになるだろうがな」
「よしてくれ、気持ち悪い」
「酷い言い草だ」
マジェコンヌは、どこからかフラッと突然現れたらしい。それをたまたま見つけて、仲間に引き入れただけのこと。シェアクリスタルはダークメガミの完全制御の為に必要としている。
欲しい情報は大体手に入った。ゲイムギョウ界に帰れるかどうかはネプテューヌ次第だ。
「よっ、と……!」
「ん……ふふ、もう我慢出来ないのか? 先程から、私の中で震えているようだが」
オルタの言葉に耳を貸すことなく、エヌラスは足を持つと広げさせて腰を激しく打ちつける。秘部を露わにした体勢でオルタの呼吸と共に髪も乱れていた。これまで堪えていた快感の波が堰を切ったように押し寄せてくる。
思考が朦朧としながら激しくまぐわう相手の身体を掻き抱いて離さない。一際強く腰を打ちつけて、エヌラスが果てるとオルタも同様に全身を強張らせて達した。
深く繋がったまま、互いにしばらく身体を密着させる。
「はぁ……ふぅ……ん……こんなに……どうするつもりだ?」
「っ……、俺に、聞くな……」
「これでは、魔力供給が癖になるだろう……?」
引き抜こうとすると、足を組んでそれを阻止してきた。
「いっそ、私と契約でも結ぶか?」
「お前を引き込めれば今後の戦いは楽になるんだろうけどな」
「燃費が悪いのはお互い様だ。飽きないと思うが、お互い」
「……俺の立つ瀬がなくなるから勘弁してくれ」
「それは残念だ。私は貴様が気にいっている」
「そりゃどうも」
今度こそエヌラスが引き抜き、秘部から溢れる精液を拭き取る。それをもったいなさそうにオルタが不満そうに見つめていた。
一通りの後始末を終えてから淡々とした動きで袖を通す。立ち去ろうとするエヌラスの手を掴むと、頬にキスをしてきた。
「マジェコンヌの奴はしぶといぞ?」
「あの手の奴は、そうだろうよ。お前も程々にしろよ」
「私の心配をするなど、顔に似合わないお人好しだな」
「テメェにゃまだ利用価値があるって話だ。じゃあな」
「所詮、魔人など神の玩具だ。女神に踊らされるのがお似合いだよ、貴様は」
背中を向けて立ち上がるエヌラスの、生成した聖剣を突きつける。だが、オルタの額を回転式拳銃の銃口が睨んだ。身体を重ねていたとは思えない一触即発の空気に破顔する。
「ああ、変に情など移されても困るがそれなら心配はいらないようだ。安心した」
「こっちの台詞だ」
廃ビルを後にして、エヌラスは一人で壊れた街の中を歩きながら情報を整理していた。
女神殺しの剣──ゲハバーンの力は次元世界一つを丸々切り離してみせた程だ。それはつまり、守護女神の総数に匹敵する。のみならず、候補生までをも手にかけたと考えていいだろう。しかしそれでは順番が問題になる。
そうしなければならない状況……邪神ヌルズ・エクス・モルテスが襲撃してきた。クロギアが剣を手にしたのはそれからだろう。その上で全て破壊されたと仮定すれば──なるほど納得だ。あの情緒不安定ぶりは精神崩壊手前で踏み留まっている、ギリギリの状態。それがいつまで保つか分からない以上、下手に刺激するのは危険だ。ゲハバーンの力を振るうために改良されたプロセッサユニットに、女神武器まで手にしていたのではそれこそ手のつけようがない。
現状で一番の障害となるだろう。
深くため息をつくと、ハンティングホラーが無人で空から降りてきた。どうやらうずめ達を無事に本拠点まで送り届けたようだ。
「ごくろうさん。首尾は?」
《…………》
『ふんふん。問題なし、だそうです』
「…………」
相変わらず話してくれないハンティングホラーに代わって、勝手に通訳してくれる。それは大いに助かるのだが、自己主張はもう少し控えめに頼みたい。
「ならいいや。俺もそっちに向かうか、頼むぞハンティングホラー」
快くエンジン音を鳴らし、エヌラスもうずめ達のいる本拠点へ向けてバイクを走らせた。
「あ、エヌラスやっほー久しぶりー! まさかこんなところで会えるなんて思ってなかったよ!」
「こ ん な と こ ろ で、何してやがるぅぅぅ!!!!」
まさか──そう、まさか。
大人ネプテューヌと零次元で再会するとはエヌラスも夢にも思っていなかった。そして当然ながらそれに反応するのはネプギアである。
「エヌラスさん……? 詳しく。説明してください。わたしは今、冷静さを欠こうとしています」
「ネ、ネプギアがこれまで見たこと無い笑顔だがめっちゃ怖い……」
話を聞けば、洞窟を走り抜けている際にマジェコンヌの襲撃を受け、その窮地を助けてくれたらしい。ネプテューヌはどこまで行ってもネプテューヌ、あっという間に二人と馴染んでいた。色々と成長していても変わらないところはあるらしい。
「いや、こんなところって言ってるけど一応、俺の本拠点なんだけどな……」
「すまんごめんうずめ! ちょっと俺も気が動転してるから待ってくれ!」
「エヌラスさん! 情報の開示を求めます!」
「なになに、もしかして修羅場ってる!? これは昼ドラも真っ青な展開!」
「頼むからちょっと黙れネプテューヌゥゥゥッ!」