超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「──マジェコンヌが捕えられたようだな」
《……》
オルタ。シロトラ。そして、クロギアに取り囲まれている小さな人工生命体、クロワールはリラックスした様子で浮いていた。
零次元に飛んできた際の衝撃と、マジェコンヌとの交戦でドサクサに紛れてねぷノートから脱出したところを保護(?)されて今は匿ってもらっている。
寂れたアリーナ会場は、元は巨大な娯楽施設として賑わっていたのだろう。だが、今となっては閑古鳥の巣窟。モンスター達の温床となっている。外からマガツビの咆哮が響くと、アリーナ会場が揺れた。天井からは土埃と共に錆びてむき出しの鉄骨が軋んだ音を立てる。
「まー、大体の事情とか話は察した。つまりお前ら全員、その邪神の眷属ぅなわけだな? それで次元世界一つ丸々ぶっ壊そうって計画か。面白そうだな!」
「我々に加担するならば、それも良い。元より降って湧いた協力者だ」
「その態度は気に食わないけども、いいぜ。クロワール様の力を貸してやる」
にしし、と笑いながらクロワールはクロギアと目を合わせた。
「それにしても、お前も変な奴だな? 守護女神だってのに魔人の臭いがする」
「わたしのことなんて放っておいてください」
「ま、いいか。オレは面白かったらなんでもいいし。ネプテューヌの奴にこき使われるのなんて懲り懲りだ。こんな事なら九龍アマルガムの教会で面白おかしく過ごしてた方がまだよかったぜ」
犯罪国家の名前に反応を示したオルタが微笑を浮かべる。アダルトゲイムギョウ界の存在もヌルズより耳にしていた。
《そんなことはどうでもいい。マジェコンヌはどうする》
「助けに行くのか?」
《仮にもこちらの仲間だからな。我々の──いや、あの方の計画に必要ならば、仕方あるまい》
シロトラはマジェコンヌを救助するのに不本意そうにしている。だが、地面に突き立てていたブルース・ザッパーを引き抜いて背を向けた。
「貴方が行くんですか」
《お前達に任せていては仕損じる》
「ほう。聞き捨てならない言葉だな」
《貴様の体力と魔力は温存しておけ、騎士の魔人。あのバケモノの力を借りねば本領を発揮できんのだから》
首だけで振り向いたシロトラの前に、今度はクロワールが笑みを浮かべたままジロジロと頭から爪先まで鑑定するような目つきで見つめる。それを鬱陶しそうにしながらも払おうとはしなかったが、やがてふわりと離れた。
「なんだ、てっきり機械仕掛けの魔人かと思ったがそうでもないのか。へへ、でも一番興味深いのはお前だな」
《…………俺が、なにか?》
「ただの魔人。女神なのに魔人。そんでもって今度は、邪神の眷属としてのモンスター。これだけでも女神を倒すのは十分すぎる戦力だ。だってのに、お前はまるで
次の瞬間、オルタがクロワールとシロトラの間に割って入る。背面のブースターを吹かして、その場で旋回したシロトラの白刃が目にも留まらぬ速度でクロワールを捉えていたが、オルタの聖剣によって阻まれた。防いだ衝撃波でクロワールが吹き飛び、クロギアが受け止めるとゲハバーンを手にして切っ先を突きつける。
《俺は──》
「ちぃっ……!」
歯噛みするオルタと丁々発止。激しく火花を散らすが、至近距離で切り替えた射撃モードで甲冑を撃ち、衝撃に体勢を崩すと前蹴りで地面に転がした。シロトラのバイザーが捉えているのはクロワールだけだ。機械だというのに、敵意と殺意をむき出しにした激情で景色が歪む。
《俺は、女神を守る為に造られた教会騎士の一機だ! 二度と口にするな、二度とだ》
「お、おう……悪かったっての。そんなキレんなよ、おっかねぇな」
《──マジェコンヌを救助してくる。今度余計なことを言ったら、その生命は無いと思え》
シロトラがアリーナ会場から走り去る。オルタの騎士甲冑は傷一つ無いが、苦しそうに胸を抑えながら立ち上がっていた。
「さながら、私達の監視役といったところか……アレを倒すのは、我々が総掛かりでも手間取る」
「だろうな」
「……なにか、知ってるんですか。クロワール」
「お前が手にしてるソレ。ゲハバーンだろ? ソレと一緒だ。守護女神は奇跡で成り立っているようなもんだ。シェアクリスタルだって、元は形の無い信仰心を結晶化させたものだしな。アンチクリスタルなんて危険な物もある。ネガティブエナジーにアンチエナジーだの何だのと、女神の敵なんてごまんとあるし対抗手段だって千差万別だ」
それらが更に力を得て、魔王や魔人や、果ては邪神まで。だが、それらも守護女神と同じ奇跡のような存在だ。シロトラは違う。純粋に機械だ。自動人形であり役目を与えられたカラクリ仕掛けの人形。それが何故、魔人に匹敵する程の力を持っているのかオルタ達はずっと疑問だった。
「何が言いたい?」
「わっかんねぇかなぁ。お前達と女神の違いなんて、実はそう無いんだよ。何で成り立っているかってだけで。そのゲハバーンだって、ちょいと使い方を間違えれば次元世界一つ丸ごと守れるような代物だしな。どこで拾ったかなんて興味ねーけどよ。ただ、あのシロトラって奴だけはマジで気をつけた方がいいぜー?」
オルタとクロギアに悪戯っぽい笑みを向けて、クロワールは忠告する。
「アイツは、女神に対するアンチエナジーで稼働してる。信仰なんかで成り立つ女神なんか、ちょいと捻れば消えちまうような怪物だよ」
「しかし、それでは存在そのものが矛盾するのではないか?」
「実はそうでもない。さっきも言ったろ? その“境界線”が何を拠り所にしてるかってだけで。アイツからはアンチエナジーの波長を感じる。だけどその力がどっから湧いてきてるのか分からないのが変なんだよな。案外、とっくの昔に滅んだ世界からだったりしてな」
冗談じみたクロワールの言葉だが、クロギアには既視感があった。
「……さて、マジェコンヌを取り戻した後の話をするとしよう」
「そうですね……シロトラは数に入れない方が良さそうです」
「一番の障害は、やはりあの男か。しかしどうする。あいつも厄介だぞ」
話を切り出したオルタはエヌラスが一番の障害であると判断している。こちらが互角に戦えると言えども、邪神の劣化版。女神を抜きにした戦闘能力ならば遥かに脅威だ。
クロギアがゼロクリスタルを取り出す。傷を癒やしている邪神ヌルズからの預かり物だが、まだ戻ってくる様子はない。恐らく、計画に万全を期す為に何か策を弄しているのだろう。
「わたしに、良い考えがあります」
「ほう? 聞かせてもらおうか」
「はい──」
──うずめの本拠点で生活してから、数日。いまだにマジェコンヌは口を割る気配がなかった。
こうしてエヌラスと大人ネプテューヌによる尋問を繰り返してもうんともすんとも言わない。
「ええいチクショウ。テメェも強情だなナスババァ」
「ちょっとくらい協力してくれてもいいじゃんかマザコングー」
『貴様らは私の名前を忘れたわけではないだろうな?』
「……マジョコング?」
「えっとー……マジョリティ?」
『ええい、敢えて名乗ろう! マジェコンヌ、だ! いい加減覚えろ!』
「いや、知ってて言ってるんだけどな」
『貴様の性格の悪さは顔に違わないな!』
「ネプテューヌ、やっぱコイツ燃やそうぜ」
「ダメだってば!?」
沸点の低いエヌラスを引き止めようとするが、既に薪を集めてBONFIRE LIT。手をかざすだけで着火していた。突然の焚き火に何事かとうずめとネプギアも様子を見に来ている。
「なんだなんだ、いきなり焚き火なんか始めて。どうしたんだよ、エヌラス」
「うずめか。いやちょっと、マジェコンヌのことを焚べてやろうかと思ってな」
『貴様は人間性を女神に捧げすぎではないか!?』
「せっかくの情報源だっていうのに全く何の、それこそクソの役にも立たないような奴は生かしておく価値がないと思うんだがどう思う?」
『人権とかジュネーヴ条約とか知らんのか!』
「法律なんていかに破るかの為にあるんだろ、知ってる」
「エヌラスさん、いくら犯罪国家生まれでも法律くらいは……」
「悪いやつはぶっ殺せ。生きてていいのは死ぬ覚悟のあるやつだけだ」
「暴論にも程がありませんか!?」
九龍アマルガムで機能している法律など、地表都市教会公安局ぐらいのものだ。
せっかくなので焚き火を囲んで今後どうするかを話し合う。あーだこーだと作戦会議をしていると、海男がやってきた。
「おう、海男。どうした」
「みんな揃っているね。ちょうどよかった」
「どうかしたんですか、海男さん」
「ああ。偵察に出していたひよこ虫達から気になる話を聞いてね。うずめ、仮拠点として使っていた廃墟なんだが……どうやら、魔人達が付近を徘徊しているらしい」
(……そういや、オルタの奴には拠点を移したと話したが、こっちを襲撃する気はないのか?)
場所の特定が出来ていないだけなのか、それとも何か考えがあってのことか。
「でもよ、あそこには何も無いだろ? なんでうろついてるんだ」
「……もしかすると、拠点を見つけてこちらを探そうとしているんじゃないだろうか」
「そんなこと──あ」
うずめが何か思い出したように硬直する。
「や、やっべぇ……作戦立てる時の地図とか置きっぱなしだった……!」
「でも使ってないんだろ? だったら」
「実は、その……向こうでの拠点を決める時に候補地点とか挙げた場所が全部書いてあるんだ。当然、こっから向こうまでの地図も兼ねてたからもしも見つかったら──」
「うずめはうっかりさんだな。とはいえ、今まで見つかっていなかっただけ幸運と言うべきだろうね」
「急いで回収してくるか。ハンティングホラーを飛ばせばそう時間は掛からないだろうな」
「だったら俺も行く。魔人がうろついてるんだろ?」
「拠点はわたしとお姉ちゃんに任せてください」
ネプギアと大人ネプテューヌに本拠点の防衛を任せて、エヌラスとうずめはハンティングホラーで仮拠点の廃ビルへ向けて急いだ。
その話を聞いていたねぷノートのマジェコンヌは考えに耽る。
(……どういうことだ? アイツ等が私を探しているというのか。確かに、ダークメガミを扱えるのは私だけだが、そんなことをせずとも魔人共が総掛かりでくればこんな奴ら一捻りだろうに。ふん、これだから統率の執れていない魔人共は)
「ちょっと聞いてるのマザコング。なにか知ってるんじゃないの?」
『知らん』
「あ、訂正しなかったってことはマザコングだと認めたなー?」
『ええい、貴様という奴は! こちらは水と塩しか口にしていないせいで力が出ないというのにいちいち癇に障る! でかくなっても中身は小娘か!』
エヌラスが言うには「死なない程度の食事を与え続ける」とのこと。食事時にはマジェコンヌの前でみんなで楽しく食べる。拷問じみたひもじい日々で衰弱していたせいで、怒るのも億劫になってきていた。
自分を助けに来る等と甘ったれた考えは捨てている。元よりそういう関係だ。
だからこそ──拠点に放りこまれたグレネードの衝撃に、誰よりも驚いた。青白い閃光は衝撃波を発生させてテントを吹き飛ばし、ひよこ虫とスライヌ達が巻き込まれている。
甲高いブースター音と共に森林から飛び出す白い機影に、ネプギアが咄嗟にビームブレイドを振るう。大型両刃剣を受け止めた衝撃に顔をしかめた。
「くぅ……!」
《…………マジェコンヌはどこだ》
「シロトラ……!」
《答えろ、パープルシスター》
「ネプギア! とりゃあああっ!」
両手に大剣を握って大人ネプテューヌもシロトラへと斬り掛かる。重量感のある風切り音が目の前を通過し、素早くその場から飛び下がった。
『私はここにいるぞ!』
「あ、ちょっと静かにしててよマザコング!」
《承知した。マザコングをこちらへ引き渡せば、命ばかりは奪わずにおく》
『おい貴様ぁ!』
「へっへーん、絶対にやだもんね! ねぷノートはわたしの命の次か同じくらい大事なものなんだから!」
《……ならば仕方あるまい》
「お姉ちゃん、気をつけて。シロトラは」
「先手必勝、とやー!」
「ああ、わたしの話まだ途中なのに!?」
ネプギアが止めようとするのも聞かず、大人ネプテューヌは駆け出している。仕方なく自分も続いて走り出した。
大剣を防ぎ、ブースターで機体を制御しながらビームブレイドを回転して弾く。背後から不意を突こうとする大人ネプテューヌの足下にグレネードを放り投げて横っ飛びに離脱する。起爆と同時に発生する衝撃波で吹き飛び、地面を転がる姿にネプギアの手が緩んだ。
「お姉ちゃん!」
「ぷは! ビックリしたー!」
「あ、無事なんだ……」
「なんかちょっとビリビリするけど、大丈夫! 今度はこっちの番だよ、ネプギア!」
「はい!」
二人の攻勢に、シロトラは防御に徹する。装甲である程度の攻撃は凌げるが、それも過信できないものだ。
「とりゃとりゃとりゃー!」
両手の大剣を交互に振るい、フェイントで左手の大剣を上空に放り投げて銃を引き抜く。シロトラの眼前に突きつけて発砲するが、間一髪で避けられた。ネプギアのビームブレイドが脚部を狙うが、大人ネプテューヌを蹴り出した反動でその場から離脱すると同時にグレネードを転がす。衝撃波に堪えていると、今度は剣の開いた切っ先を突きつけてエネルギー弾を放ってきた。
「これくらい!」
ネプギアが切り払って距離を詰めようとするが、シロトラは腰のグレネード装填装置を切り替えて叩き、左手に黄色のラベルが巻かれたグレネードを掴んで投げつける。
エネルギーグレネードかと防御姿勢を取るネプギアだったが、閃光と爆音に視界と聴力を奪われて動きが止まった。真っ白に染まる網膜に、鼓膜が封じられて無防備な姿へシロトラが手刀で気絶させる。その場に崩折れる姿を抱きとめて静かに横にすると、大人ネプテューヌへ視線を向けた。
《気絶させただけだ。命に別状はない》
「マザコンを渡すわけにはいかないんだから! ダークメガミを制御するなんて危険なこと絶対にさせないんだからね!」
『この状況でも名前を間違えるか貴様!』
《……クロワールは我々が保護している、と言ってもか》
「え、ホントに!?」
《そちらが刃を収めるならば、こちらも穏便に事を運ぼう》
『ふん、どうだかな……』
「マザコング、どうしたの? せっかく助けに来てくれたんじゃないの、あのロボット」
『私は長いこと犯罪に手を染めてきた。だからか分かる、良い奴と悪い奴のニオイのようなものがな。シロトラ、貴様はゲロ以下の臭いがぷんぷんするぞ』
「うわ、ばっちぃ!」
《機体洗浄には業務用アルコール溶液を使用している。もしも異臭がするというのなら期限切れの可能性があるな。次からは取り替えておく》
『なぜそこは機械的に答えるのだ貴様は!?』
《この俺の異臭などどうでもいいからだ。マジェコンヌ、貴様自身が取引に応じるつもりがないというのなら──やはり実力行使しかないようだな》
「んもー、穏便にいきそうだったのにマザコングのバカー!」
シロトラが加速装置と共に大人ネプテューヌにブルース・ザッパーを叩きつける。両手の大剣で防いだが、テントを巻き込んで吹き飛んでいった。何とか受け身を取るが、今度はエネルギー弾が連射されて逃げ惑う。
「うわわわわっ!?」
走り回って射撃を避けていたが、壊れたテントに足を絡め取られて前のめりに転ぶ。急いで立ち上がろうとするが、放物線を描いて飛んでくる手榴弾を銃で弾き飛ばした。空中で炸裂するエネルギーグレネードの青白い光に背中を押されるようにして起き上がり、駆け出す。
『おいでかい小娘! 貴様逃げるばかりではないか! なんとか反撃しろ!』
「そんなこと言われても、あのロボットものすごく強いよ!?」
『グレネードと大剣しか使っていない事に気付け馬鹿者! それしか武器がないということだろうあの機械人形は!』
「だったらどうにかしてよーマジョえもん!」
『だぁれがマジョえもんだ!』
あっという間にシロトラに追いつかれて拠点から離れようとしていた大人ネプテューヌが吹き飛ばされ、元の場所に戻された。倒れて動かないネプギアに、ゆっくりと銃口を突きつけるシロトラの前に大人ネプテューヌが立ちはだかる。
「それはダメ! 絶対にダメ! 動けないネプギアにこれ以上手出しはさせないんだから!」
《こちらとしても卑怯な真似はしたくない。それが戦術的に有効だとしてもな》
「うぅ~、この卑怯者ー! わたしにどうしろっていうのさー!」
《武器を収めてこちらへ来い。面倒を掛けさせるな》
「……そうしたら、これ以上ネプギア達に酷いことしないって約束する?」
《承知した》
大人ネプテューヌが大剣を収めて、シロトラへ歩み寄り──思い出したように壊されたテントから自分の持ち物を回収した。それから再び目の前に立つ。
「はい。これで約束通り、ここで暴れちゃダメだからね!」
《二言はない》
大人ネプテューヌの身体を左手で担ぎ上げて、シロトラは火の海となった拠点を一度だけ見渡した。怪我をしたひよこ虫達、スライヌに、一匹だけ異彩を放つ魚類がいる。
視線が交差し、すぐにシロトラは背を向けて走り去った。だが、大人ネプテューヌは海男に向けてテントを指差していた。
白い機影が見えなくなってから、海男は大人ネプテューヌが最後に入ったテントの中を覗く。そこには蠢く黄色い粘体生物が残されていた。
『てけり・り?』
「ダンセイニか。人手がほしいと思っていたところなんだ、手を貸してくれないだろうか?」
『てけり・り!』
ぽよんぽよんとその場に跳ねて頷き、ダンセイニはネプギアや怪我を負ったひよこ虫達の救助を手伝う。
エヌラスとうずめが戻ってきたのはネプギアが目を覚ましてからだった。
「……そうか、でっかいねぷっちが」
「ああ。そちらは?」
「拠点は無事。魔人も居なかった。地図も回収してきた」
「ごめんなさい、うずめさん。エヌラスさん……わたしのせいです」
「ぎあっちのせいじゃねぇよ」
「俺のせいだな。ミイラ取りがミイラになるとはこりゃまた難題だ」
さて問題は──どこに連れ去られたか、だ。
その居場所となる手がかりになりそうな物と言えば……。
『てけり・り?』
先程からテントの片隅でぽよんぽよん揺れていたバランスボールのようなダンセイニぐらいだ。
「コイツしか手がかりが無いんじゃなぁ……」
「そうですね。お姉ちゃんの居場所まで分かるわけじゃないですし……」
『てけり・り』
ニュルニュルと触手を生やしたかと思えば、矢印の形でテントの外を指していた。それに怪訝な表情を浮かべる一同だが、海男だけはヒレを組んでいる。
「その方角は、でっかいねぷっちが連れ去られた方角だ」
「ダンセイニ。お姉ちゃんの居場所が分かるの?」
『てけり・り!』
「でかした、ダンセイニ! そうと決まれば早速でっかいねぷっちを助けに行こうぜ!」
「でも、きっとシロトラ達も……」
「そっちは全部まとめて俺がどうにかする。先に言っておくが、絶対に俺の邪魔をするなよ。巻き込みたくない」
エヌラスの言葉に、うずめとネプギアは深く頷いた。
「海男、拠点で保管してたシェアクリスタルはどれくらい残ってる」
「それが、怪我をしたひよこ虫達が保有していたクリスタルが無くなってるんだ。温存しておきたかったんだけどね」
「もしかして、シロトラはそれを狙って襲撃を?」
「クリスタルの力を無効化するという話が本当なら、可能性はあるね。どうするんだい、うずめ」
「それでも俺は行くぜ。でっかいねぷっちを助ける。デカブツも今度こそ倒す。両方やる。俺達ならできるさ。そうだろ、ぎあっち、エヌラス」
「はい! わたしも頑張ります!」
「……」
腕を組んで浮かない表情のエヌラスに、二人が首を傾げる。
「どうしたんだよ、エヌラス」
「いや、別に。因果応報って言葉考えたやつをどうしてやろうかと考えてるだけだ」