超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
──電脳国家インタースカイ国王、琴霧ソラは眼鏡を直してから機関銃を手放してシェアリングフィールドから飛び降りる。
エヌラスの負傷を横目で見てからハンドガンを手にしてカオスシスターに突きつけた。
「……あなたがどうやってこの次元に来たのかは、敢えて尋ねません」
「それは助かるよ。僕もいちいち説明するの面倒だからね」
「俺がよろしくねぇんだから解説頼む。三秒で」
「アップデートされたいーすんさんのおかげ。二秒だ」
「お前だけか?」
「多分、今の君にとって一番会いたくない人もご一緒だよ」
嫌な予感がする。身震いをしたエヌラスが背後からの気配に思わずバルザイの偃月刀を振るうと指で受け止められた。
黄金の獣──金色の闇、地上最強の魔導師。犯罪国家九龍アマルガム国王、大魔導師がそこには立っていた。いつものように微笑を浮かべているが、何故かその顔を見ていると寒気が止まない。
「師──」
「よぉクソ弟子。なんだ、そのザマは? ははは」
「は、ははは……」
「ははははははは」
「あはははははは」
引きつった笑みのエヌラスが間髪入れず床に頭を叩きつけられた。割れるような痛みに襲われて悶えている頭を踏みつけながら大魔導師が一歩、前へ出る。
「俺の弟子が、世話になったらしいな?」
(うーわー、頭に来てるのはわかるが弟子に八つ当たりかよ……)
カオスシスターから視線を外して、残留魔力の相手を目で追っていた。その相手を捕捉すると同時に左手で黄金の弓をつがえる。引き絞られる十字架の矢を切り払おうとする動きをソラが銃弾で阻んだ。
放たれた黄金の一矢は空を駆けて目標へ向け、一直線に飛翔する。しかし、その動きを見ていた大魔導師の目が細められた。
「……ほう? 切り払うか、私の矢を。面白い。ハゲメガネ、ここは任せるぞ」
「師弟揃って口の悪さは死んでも治らないのか。時間がないんだから早めに頼むよ」
口角をつり上げて大魔導師が踏み込み、エヌラスの頭をついでに踏みつけながら、アリーナ会場より飛び出していく。
ゼロクリスタルを持ったオルタを追跡しようとする姿を足止めしようとするが、それもソラがいては叶わない。
「さて、向こうの決着がつく前に僕としては早めの退散が望ましいわけだけど。シェアリングフィールドが消えたら帰れないからね。聞いてるかい、エヌラス」
「きいてる……」
血まみれの頭を床から引き抜いてかぶりを振る。どうして助けに来てくれた相手に半殺しにされなければならないのか。エヌラスは疑問を抱くが大魔導師相手に常識を当てはめてはならない。
「クソメガネ。悪いが右腕が動かねぇ」
「……左目は見えてるかい?」
「テメェの憎たらしい面が見えねぇのは残念だ」
「あ、そ。エヌラス。帰ったら奢れよ」
「安いもんだ」
逆手でバルザイの偃月刀を構えてエヌラスが駆け出す。それに続いてソラもハンドガンを持ってカオスシスターに向かって走り出した。
複合武器の出力を上げて、長槍を振るう。禍々しい紫色の軌跡をかいくぐってエヌラスが偃月刀をすり抜けざまに払う。距離感が掴めずに掠めるだけに留まり、踏みとどまろうとして動かない右腕のせいでバランスを崩して転がる。だが、結果としてそれが射撃を避ける結果となった。
「三分だ。それ以上は僕も付き合いきれないからな!」
カオスシスターの持つ複合武器を解析しながらソラは最低限の攻撃を加える。大振りの大剣を避けて、ベルトホルダーに下げた端末を操作すると電磁シールドを形成してフルオート射撃のエネルギー弾を防御。手が緩んだ隙を見て急所を外して反撃に出る。
足下の不自然な寒気に、ソラはその場から飛び下がると氷柱が突き出してきた。前髪を掠め、間一髪のところで回避したが、回り込むようにカオスシスターが大太刀に可変させたゲハバーン複合武器を構えている。
バルザイの偃月刀が投擲されて、弾き返すとエヌラスがイタクァで更に追撃した。銃身をスライドさせた状態から放つ射撃で全て相殺させるとソラに向けて手をかざし、防御魔術で弾丸を防いでみせる。その場で大きく回転しながら薙ぎ払う衝撃波で二人の動きを封じると、上空へ逃れた。
「くっそ! 解析が追いつかないぞ、なんだアレ! エヌラス説明!」
「ゲハバーンだとよ、以上だ!」
「雑だな君は本当に!」
シェアリングフィールドを直接破壊するつもりなのか、大上段に構える複合武器にソラはハンドガンを転送する。エヌラスが螺旋砲塔で狙い撃とうとするが、右腕が使えない以上は狙撃などたかが知れていた。
腰に下げた端末を操作して、ソラはその場に膝をつく。
「何も出来ないんだから無理せず僕に任せとけ」
「じゃあなんとかしろよ」
「やってやろうじゃん。僕が何の対策もしてないと思ったら大間違いだ」
神次元に行ってから、インタースカイのバックアップがない自分の非力さを改めて痛感した。だからこそ、限定的に武器データの保存端末装置を開発して持ってきている。追加容量の確保に手間取ったが、プラネテューヌに置いてきたパソコンを仮のハードウェアにすることで暫定的に解消した。
ソラが手元に召喚したのは対物ライフル。上空へ向けて構え、呼吸を止める。カオスシスターの複合武器めがけて引き金を引く。床がめり込む程の衝撃に歯を食い縛って耐えていたが、銃身が耐えきれなかったのかすぐに転送された。
放たれた弾丸は着弾と同時に炸裂して手元を大きく狂わせる。射撃用の補正バイザーにもエラーが表示されて、カオスシスターは解除した。散布される極小の電磁パルスに苦い顔をする。
「ッ……」
「個人携行火器じゃ最高火力、インタースカイ自慢の電磁投射対物ライフルだ」
「お前それ、色々と引っかからないのかよ?」
「法が機能していない次元だからどんな銃火器ぶっ放しても文句言われないと思って持ってきたんだよ、文句言うなこのバカ」
複合武器の機能を大きく制限される結果となり、カオスシスターはゲハバーンとの接続を解除した。恨めしくソラを睨みつける。
「みんなでわたしを否定するんですね……」
「邪神の味方は僕の敵だ。このバカの敵も僕の敵だ」
エヌラスの頭を叩きながらソラは宙に浮かぶカオスシスターを睨み返していた。
「残り一分しかない。悪いけれど早々に退散させてもらう──
ゼロクリスタルを手にしていたオルタは、黄金の矢を切り払ってから視線を感じ取っていた。悪寒が走り、それはマガツビも目聡く悟ったのかその場から大きく横に飛び退く。
一瞬遅れて、音速の壁を超えた飛び蹴りが地面を穿つ。震動で廃ビルが倒壊していくと、土煙を手で払って大魔導師が歩み出た。
「貴様……」
「体感速度における、絶対的な速さとは。“決して追いつけない”ということだ。つまりは一歩先を行くだけで、それを維持するだけで決して人には追いつけない。最速である必要など無いということだ。理解したか?」
マガツビが警戒心を露わに唸り声を上げて威嚇している。オルタもそれは直感していた。
今、目の前に立っているのは黄金の絶望に他ならない。光も闇も等しく飲み込む獣だ。その視線は輝きを取り戻したゼロクリスタルから、オルタの持つ聖剣に向けられる。
「ほう……? 珍しい物を持っているな。呪術兵装とは比較にならん神性の加護付き……いや、その贋作か?」
「そうだとして、貴様に何の関係がある」
「大いにあるとも。この私が目指す先とは、詰まるところはその境地なのだから」
指を一通り動かして慣らし、大魔導師は不意に構えた。
左手で筒を掴むように空を握り、右手は添えるだけ。見えない槍を構える相手にオルタは怪訝な表情を向けながらマガツビから降りた。
「ならば私も、相応の礼儀を持ってお相手しよう」
「すまないがこちらは先を急ぐ。貴様の相手をしている暇などない」
「これを見ても同じことが言えるか──“形成”」
言葉を失う。その手に握られる得物を見て、嫌な汗がどっと噴き出してくる。
「──何だ、ソレは。貴様は“そんな物”を!?」
「無論、当然だとも。この私を誰だと思っている。俺の弟子が世話になったその礼だ、参れ。犯罪国家九龍アマルガム国王が、手ずから相手をしてやると言っているのだからな」
「貴様のソレは、神への冒涜に他ならないのではないのか」
「然り。だが私というのは、それだけが唯一の“暇潰し”なのだ」
左手で手招きをする大魔導師に向けて、オルタは両手で聖剣を構えた。
「マガツビ、加減はいらん! 残りの魔力を全て私に回せ──!」
「ほう? 生体貯蔵庫か。これはまた愉快な物を引き連れているものだ。なるほどなるほど……ふっ……ふっふっふ、はははは! そうかそうか、ハハハハハハハ!! アイツはそれほどに、恐ろしいのか! そんな物を用意しなければならないほどに女神が怖いか! ハハハハハハハハッ!」
「偽典宝具解放、真名開帳──!!」
哄笑する大魔導師を相手に、オルタとマガツビは残る力を振り絞って魔力を解放していく。
前髪をかき上げて、痛快な笑い声を上げていたが、しかし。一転して冷ややかな視線を二人に向ける。ゼロクリスタルの傷が癒やされていた、ということはその犠牲になった相手がいる。そしてその傷は、決して浅くないものだ。
不出来な弟子を持つと苦労させられる。今回ばかりは相手の力量を見誤ったこちらの誤算だ。その師として、尻拭いはせねばなるまい。
「四割ほどで相手しようと思ったが、気分がいい──“八割”ほどで相手してやる」
「消し飛ぶがいいッ! エクス、カリバァァァァッ!!!」
魔力の奔流。純然たる破壊の嵐。竜の息吹を前にして、大魔導師は静かに形成した得物の穂先を向けた。
聖句を載せて呟く。
「聖槍、抜錨──」
黄金の閃光が、黒い魔力の光を裂いてオルタとマガツビから逸れて遥か遠くの雲を切り裂いた。
それは移動していた海男達からも見えていたし、アリーナ会場の天辺で銃撃戦を繰り広げていたエヌラスにも、ソラにも、カオスシスターの目にもハッキリと見ることが出来た。
余力を振り絞った一撃を涼しい顔で圧倒されてオルタは端正な顔を歪める。しかし、大魔導師は不完全燃焼といった心地で形成した得物を消した。
「やはり、自分の国でなければ全力には程遠いか」
「──貴様、その体にどれだけの魂を溜め込んでいる!」
「貴様は今まで口にした食事を覚えているのか?」
色褪せるマガツビが咆哮と共に大魔導師へ向けて飛びかかり、爪を振るい、牙を剥く。しかし、薄汚れた黄金の布が前脚を捉えると地面に叩きつけられた。
「獣であれば、人より優れた嗅覚で力量は計れるはずだがな? そうですらないか」
左手で頭を掴むと、軽々と放り投げる。だが違和感に大魔導師が手のひらを見つめた。ほんの僅かにだが“食われた”魔力とシェアに感覚を確かめる。
色褪せた毛並みが輝きを取り戻すと、オルタを咥えて廃ビルを足場に駆け上がって飛び去っていった。
賢しい獣だ。侮ったのはこちらの方か。
大魔導師は弓を構えて引き絞る。一矢を報いて、背を向けた。
「さて、じきにあちらも決着だ。早々に帰るとするか」
シェアリングフィールド内に形造られたワームホール。アップデートされたイストワールによって作られたものだが、持続時間は限られている。その中から飛び出してきたパープルハートの手によってダークパープルの拳が打ち払われた。
「お姉ちゃん!?」
「はいはーい、なぁに、ネプギア!」
「あ、えっと、おっきい方じゃなくて!」
「何を言っているのネプギア。今のわたしは大きいわよ!?」
「話がややこしくなるからちょっと静かにしてお姉ちゃん!」
「ねぷっちだー! ほにゃー、これでみんな揃ったよー」
オレンジハートも再会を喜んでパープルハートの手を取る。パープルシスターと大人ネプテューヌとも笑顔で喜びあうのも束の間、ダークパープルが再び腕を振り払った。
『ええい、小娘が増えたところでなんだと言うのだ! 今の私はついにコイツと一体となった! もはや誰にも止められん! いよいよ持って死ぬがよい女神共!』
「少し見ない間に随分と大きくなったわね、マジェコンヌ」
「でも、シェアクリスタルでダークメガミを制御してるからずっと手強くなってるよ」
「そうみたいね。うずめ、ネプギア。大きいわたし。ここでダークメガミと決着をつけるわよ」
シェアリングフィールド内では女神達が有利なのか、普段以上に力を発揮するパープルハート達に翻弄されるダークパープル(マジェコンヌ入)が苦戦する。
両手をかざして巨大な波動を叩きつけると、パープルシスターが大人ネプテューヌを抱えてその場から急いで離れた。足場が崩されて分断されたそこへ、シロトラが突入してくる。
「こんな時に……!」
「出たなシロボットー! 今は忙しいんだから後にしてよ! 空気読んで、空気!」
「おっきいお姉ちゃんの方が読めてないような気がするんだけど」
「えあー!?」
壊れかけた足場から無事な足場へ飛び移ると、その場に膝をついて全身の不調を確かめていた。ぎこちない動きから徐々に稼働率の回復を確認してダークパープルを見上げる。
『ふん。貴様か! 素晴らしい力だぞ、このダークメガミとやらは! 最早女神など恐るるに足らん存在だ!』
《──それは良かったな》
『だがすばしっこい上に的が小さい。少し力を貸せ』
《数は》
『見て分からんか、四人だ! プラネテューヌの女神が増えたぞ!』
《了解した》
シロトラのバイザーが、パープルシスターと大人ネプテューヌの二人を捕捉した。ダークパープルを挟み、離れた足場にパープルハートともう一人の女神も確認する。
その姿が、やけに不愉快だった。ノイズが再び走る。不調を訴える身体を起こして、シロトラは目前のパープルシスターへ向けて駆け出した。だが、その進行を大人ネプテューヌが両手の大剣で阻む。火花を散らし、大きく後退しながらも足場に留まっていた。
「ネプギア、ここはわたしに任せて! 大丈夫、必ず追いつくから! 帰ったらプリン食べるんだわたし! こんなところでやられるもんかー!」
「フラグ建てすぎじゃないかな!? 流石に不安になってくるよ!」
「よくもわたしのかわいい妹を虐めてくれたなー、成敗! てやあああー!」
《チッ、この状況下でよくもまぁそれだけ巫山戯た事を──!》
機体ログに酷似した相手が映し出される──自らと刃を交えて尚普段の態度を崩さないB2AM最強の特務隊、セイン。半実体剣のビーム刀を扱う為だけに設計された隠密型強襲機体。
《──鬱陶しい記憶だ、消えろ!》
「まぁだまだー!」
ブルース・ザッパーを挟み込むように大剣で防ぐと、そのまま軌跡を逸らして頭部に向けてハイキック。こめかみをブーツで叩かれ、僅かに姿勢が揺らぐと大人ネプテューヌは回転して遠心力を乗せた大剣を重ねて打ち払う。シロトラが防ぐと、超重量級の一撃にたたらを踏んだ。顔を上げると既に銃を構えて狙いをつけている。
ブースターを吹かして足場から跳躍すると、弾丸が足下に着弾した。腰の装置を叩いてグレネードを投げつけると器用に撃ち返してダークパープルの周囲で起爆する。それが結果的にパープルハートとオレンジハートの窮地を救う結果となった。
『ええい、人の周りで貴様もちょこまかとうるさい奴だな! 使えん奴め!』
《黙れ。貴様も女神相手に手こずり過ぎだ、役立たずめ》
ダークパープルの肩に着地してシロトラは周囲の足場をスキャンする。その中に、自在に飛び回りながら強襲を仕掛けてくるパープルシスターの姿を捉えた。グレネードを投げつけると、素早く身を翻してそのまま突撃してくる。
肩から押し出されるようにシロトラの身体が宙に浮かぶと今度は死角からパープルハートが太刀を構えて高速で接近してきた。
「クロスコンビネーションッ!」
女神の剣技を受けて、ダメージチェック。損害は軽微。右肩、左上腕。腰部の損傷は戦闘行動に支障はない。宙を舞うパープルハートとパープルシスターが反転し、二人同時にシロトラめがけて再び高速で接近してくる。それを迎撃しようとするが、大人ネプテューヌの銃撃によって再度動きが制限された。
「これは、あなたに裏切られたレオルドの分よ──!」
「そしてこれは、貴方に破壊されたグラーフさんの分です!」
M.P.B.L.の連続射撃によって回避行動を阻まれていたシロトラを、パープルハートが一閃する。だが衝突の瞬間にブルース・ザッパーで迎え撃っていた。そこへ大きく息を吸い込んだオレンジハートがメガホンで衝撃を浴びせかける。
ダークパープルもまた、その衝撃波によって動きが鈍い。だが振り払った腕の風圧に巻き込まれたオレンジハートが足場に身体を打ちつけた。
「ほにゃあっ!?」
『まずは貴様からだ!』
両手の指を組み合わせるようにダークパープルが拳を振り上げる。シロトラもその姿を視界の端で捉えていたが、エラーが吐き出されて視認できなかった。
「
《──────》
パープルハートのその言葉を聞くまでは。
振り下ろされるハンマーブロウに、パープルハートが、パープルシスターが飛び込もうとするよりも先に、白い閃光が青い軌跡を残してオレンジハートの元へ飛んでいく。
ダークパープルの両拳が横からの強い衝撃に逸れただけでなく、手の甲から煙をあげて苦悶の声をあげていた。
尻もちをついていたオレンジハートに向けて、シロトラが刃を振り上げる。だが、その身体が動かなかった。自分を堰き止める何かによって。
《──俺は、貴様を──
「…………」
《私を、覚えていますか──!》
静かに首を横に振るオレンジハートの目に、怯えた感情が浮かんでいた。
ブルース・ザッパーを足場に突き立てて、シロトラは膝を着き、頭を下げる。
《……貴方に、刃を向けた無礼をお許しください。うずめ様》
「……あなたは、一体?」
《私は──いえ、今は──》
二人を覆う影にシロトラは立ち上がった。そして、今度こそダークパープルの両拳が振り下ろされる。
「うずめさん!!」
『何なのだ貴様は! いったいどちらの味方だ、誰の味方だと言うのだ!』
《──言ったはずだな、マジェコンヌ。私は、私の信仰に刃を向けない限り貴様たちの味方だと》
『な、にぃ……!?』
《よって貴様は、今この瞬間から私が抹消すべき存在だ》
拳の下。シロトラは健在だった。オレンジハートもその下から抜け出している。ダークパープルと一体化しているからこそマジェコンヌにはその脅威が手に取るように分かった。
『バカ、な……ダークメガミが私の制御を、クソ……貴様、何をした!?』
《忘れたか。お前に渡したシェアクリスタルを打ち消すことなど造作もない。動きが鈍っている今が好機、後はそちらに任せる》
「シロトラ。貴方いったい……」
《……プラネテューヌ教会騎士団最後の生き残りだ。それ以上語る言葉はない》
思わぬ仲間割れによってダークパープルの動きが大きく鈍る。パープルハート達は顔を見合わせて、再び剣を向けた。
その中に浮かぶオレンジハートの隣に“