超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「ごぉぉぉ主人様ぁぁぁぁんッ!!!」
「ちぇぇぇりおぉぉぉっ!!!」
「ああああぁぁぁぁ────!!!」
ラステイション教会に到着して五秒後、飛びつくカルネを迎撃した。手錠をはめられたまま器用にも空中三段蹴りからの着地と同時に後ろ回し蹴り。激しく縦回転から床に倒れ込むメイドの頭を踏みにじる姿に教会職員の皆様方がドン引きしていた。
一連の動きを離れて見ていた神宮寺ケイ、傍らに控えるポンコツメイド一号、スピカは静かに歩み寄ってくる。
「しまった、つい貞操の危機を感じて」
「こんにちは。お元気そうで何よりです」
「お久しぶりです、エヌラス様」
「どうも、ケイさん。スピカも調子良さそうだな。コイツの頭は調子悪そうだが」
「いつものことです」
「ぐへへへへ、ご主人様の身体能力ばりすごかぁ……」
ゴガァンッ!!
紫電と共に頭を踏みつけてエヌラスはカルネの頭から足を離した。何事も無かったかのように起き上がり、全身の埃を払い落とすとケイの隣に並ぶ。ちくしょう不死身かお前は。
「ノワールは?」
「今は不在だね。さて、それじゃあ僕も忙しい身だから手短に用件を済ませよう。スピカ、彼の拘束を外してあげて」
「かしこまりました。失礼致します」
すっかり飼い慣らされたというか、順応したというか。二人の関係は良好な模様。カルネはどうなのだろうか。
「それじゃあエヌラスさん。積もる話はこちらで」
「ああ、わかった」
「それと。僕の事は別に呼び捨ててもらってかまいませんよ」
「そういうことなら……」
ケイに案内されたのは、応接室。ラステイションらしい調度品が並ぶシックなデザイン。
差し出された書類に目を通していく。右手の調子が悪いので左手で捲っていると、カルネがコーヒーを差し出した。いつの間にか用意していたようだ。
書類の内容は、女神の転換期を迎えてから動き出した反女神派の武装組織や地下組織、犯罪組織の名簿。以前より目をつけられていたようだが、動きが無かった事から見逃されていた。その協力者と思わしき工場などにも監視の目を光らせていたらしい。
「今ご覧になっているのが、教会で把握している限りで確認されている組織名簿。対策班も現在行動中です」
「なるほど」
「プラネテューヌの方では守護女神近衛機兵団が活躍中とか?」
「まぁ、俺も詳しくは知らないが。そうらしい」
「ところでその怪我は」
「ちょっとした事故で。お気になさらず」
淡々とした口ぶりでエヌラスは名簿と組織の特徴に真剣な眼差しを向けていた。
(ご主人様、完全に仕事モードですね)
(果たしていくつの組織が生き残れますかね)
ヒソヒソとスピカとカルネが話し込んでいる間にもケイとエヌラスの話は進んでいく。
「ノワールとユニはその制圧にもう動き出してます。激しい抵抗があるようで苦戦したようですが問題はないみたいです」
「……」
書類をジッと見つめて、エヌラスの手が止まっていた。
「それで、俺の仕事は?」
「僕はビジネスで忙しいので、二人の手伝いを。教会から直接アプローチをかけることで牽制も兼ねて、国益重視です」
「スピカとカルネも?」
「頼れるボディーガードですので、申し訳ありませんが」
「ああ、いや。かまわないんだ。元気そうだしな」
プラネテューヌと違い、ラステイションでは物騒な話題に事欠かさないらしい。ゲイムギョウ界のシェア一位をキープしているだけに、水面下で動く組織は多い。その点、ネプテューヌは悪評とか流れても全く気にしそうにないが。張り合いが無い、ということだろう。
それだけにノワールの仕事は多忙だ。国民からのモンスター退治の依頼や不平不満などの解消もある。女神と言えど一人で片付けられる量ではない。ユニも手を貸しているがそれでもまだ追いつかない状況が続いている。全部が全部解消するものではないだろうが、それでも問題は少ない方がいいだろう。
エヌラスはコーヒーを一口含み、カップを置いた。
「さて、仕事の話はこれくらいで。ここからはちょっとした僕の個人的なお話を」
「ん?」
「こんな時期だからね、エヌラスさんには頑張ってもらわないと」
「しかし、いいのか。部外者だろ、俺」
「部外者だなんてとんでもない。割と評判だよ。特に、極東支部の方々からは」
「極東支部……ああ、あの国境付近の」
ラステイション防衛軍極東支部──ゴッドイーターやリント達の所属する部署だ。地域特有の特異なモンスター討伐を専門に引き受けている神機使い。ただし、その特性からか物資の補給などがままならない状況が続いている。現在は個人で配送を引き受けている業者があるだけだ。
「そういえば……近くで女の子が倒れてたらしく、医療ラボに運び込まれたと」
「へぇ。大丈夫だったのか、それ」
「幸いにして一命は取り留めているらしいです」
「そうか。まぁ別に関係ないんだけど」
「ええ、関係ありませんけど」
はっはっはと笑い合う二人。何か思いついたのか、ケイは手を叩いた。
「そうだ。それなら一つお願いが。極東支部に向けて配送予定だった物資が溜まってるんです。しかしながら、それを引き受けてくれる業者が残念な事に見つからなくて」
「それで、俺に護衛を?」
「話が早くて助かります。まぁそういうことなので、こちらから業者には説明しておきます。段取りが決まったら追々話しますので、連絡先を」
「ん、ああ。俺のはこれだ」
左手でポケットからD-Phoneを取り出して番号を見せる。ケイはそれを受け取って自分の携帯に手早く登録すると返した。
「話は以上。今日のところはゆっくりしてください」
「二人が帰ってきたらそれどころじゃなくなると思うけどな」
──ノワールとユニが教会に戻ってくる頃には日が暮れていた。それを迎えたエヌラスの姿を見て笑顔を浮かべ、気が緩みそうになるのも一瞬。気を取り直して咳払いを挟んだブラックハートの眉がつり上がる。
「アナタね、連絡が繋がらないと思ったらフラっと来てどうしたのよ」
「教祖様に呼び出されたんだよ、悪かったな。俺も色々あったんだ」
「大体、なにその包帯。珍しいこともあるのね」
「似合うか?」
「冗談言わないで。さっさと治しなさいよ」
「そうする。ユニもお疲れ様」
「は、はい……」
ブラックシスターも珍しい顔をしていたが、すぐに女神化を解除した。それに続いてブラックハートも解除すると、すぐに腕を組んで呆れたため息をつく。
「私、まだ仕事残ってるから。ユニはもう休みなさい。今日はありがと」
「でも」
「あとはエヌラスの相手でもしてあげて。変なことしないでよ?」
「しねぇよ。積もる話はあるが、後回しだ。俺も頼まれごとあるしな」
さっさと行ってしまうノワールの背中を見送って、ユニはエヌラスの顔を盗み見る。
「……本当に大丈夫なんですか、その怪我」
「実は、あんまり大丈夫じゃねぇんだけどな。ほら、今は忙しい時期だろ。余計な心配かけたくないってのもある」
「他にもなにかあるんですか?」
「……なんつうか、カッコ悪いだろ。力不足でこんな怪我」
それだけの事があったのだろう。
しかし、何となくだが話してくれないのだろうとユニは思った。この人はそういう人だ。
「アタシも女神のお仕事終わったばかりですし、少し休みませんか?」
「賛成。俺も教祖様からの連絡待ちだしな」
「? 頼まれ事って、ケイさんから?」
「ああ。ま、それも後で話す」
休憩室でユニと一緒に休んでいると、D-Phoneが着信音を鳴らす。相手はケイからだ。
業者と配送の日程を取り付けたので指定された日時に集合するようにとのこと。個人配送の業者も同伴するらしい。トラック八台分の大規模運送の護衛を、たった二人でやるには不安な点があるものの極東支部からも何名か向かわせてくれるようだ。
通話を切り、ポケットにしまう。
「……」
「なんだよ、ユニ。人の顔をジロジロと」
「なんだか珍しい気がして。エヌラスさんが、そんな風にちゃんと怪我を治してるの。いつもならすぐ傷口を塞いでるし。ここ最近どうしてたんですか? お姉ちゃん、何回か連絡してたみたいですけれども」
「んー? 俺も色々忙しくてな」
「その、色々の部分が気になるんですけど」
「話すと長くなるし、どうせノワールに怒られる」
「お姉ちゃんはエヌラスさんのことを心配して……」
「それが説教になるのは一人だけで十分だっつうの」
今朝方怒られたばかりだ。
「ケイからラステイションの近況を聞いた。大変そうだな」
「そうですね。情報統制とかもありますし。ビジネスで忙しいみたいですけど、ケイさんは……」
「国の利益優先なのは分かるが」
「ハァド大戦から国益が落ち目になっているので、その回復のためですね。アタシとお姉ちゃんは女神だからいいですけど、ケイさんは人間ですし」
「優秀なメイドも付いているしな。二人も」
あの二人がいれば余程のことでも無い限り身の安全は保証される。それこそ国家転覆でも起きない限りは。
チョコレートケーキを切り分けていると、一段落したのかノワールが休憩室へ入ってきた。手にはコーヒーとチョコケーキが載せられたトレーを持っている。
「お疲れさん、ノワール」
「ええそうね。お疲れ様」
ガチャン、と。機嫌が悪そうにテーブルにつく。
「連絡繋がらなかったんだけど、どこで何してたのか教えてもらえるかしら。その怪我のことも」
「ちょいと別次元で魔人共の相手してた。んで、コイツは俺の不手際。以上だ」
「自業自得ね。無茶をするのはいつもの事だけど、今回はやり過ぎよ。反省しなさい」
「……高くついたもんだ」
自嘲的な笑いを浮かべて、エヌラスはフォークで分けたチョコレートケーキを口に運ぶ。右手ではなく左手で食べる姿にノワールが眉を寄せた。
「エヌラス、いつも右利きじゃなかった?」
「ん? ほら、右手がコレだし」
指の先まで包帯に覆われた右手を振ってみせると、またも呆れられる。
「はぁ……ほんっと、呆れるわね。左目のソレも。目立つわよ」
「眼帯にしないんですか?」
「宗教上の理由で眼帯を着けると俺は最悪死ぬ」
「そこまで!?」
何が楽しくて次元神セロンと同じファッションをしないといけないんだ。御免こうむる。
「過ぎたことにこだわっても仕方ないわ。それはともかく、ネプテューヌから聞いてるの?」
「なにが?」
「はぁ~……聞いてるはずないわよね……期待するだけ無駄なのはわかってるんだけど。今度ゲイムギョウ界のコロシアムでエキシビジョンマッチを開催することになったの」
「言っておくが俺は出場しないからな」
「あら、どうして?」
「観客の命の安全が保障できないからな」
「これ以上無い説得力でどうもありがとう……」
勝つとか負けるとかじゃない。危ない。死人が出てもいいのなら出場してもいいが、当然ながらノワールが断固拒否した。当然である。
こんな時期だからこそ開催するらしい。ゲイムギョウ界で誰が一番強いか、改めて国民に知らしめる意味合いを込めて。
「当然、応援してくれるわよね」
「当たり前だろ。ユニは出場するのか?」
「アタシもネプギアも、ロムラムも今回は出場しないです。お姉ちゃん達の応援で」
「そっか。出場するなら優勝狙いか?」
「当たり前でしょ。ネプテューヌ達には負けないわよ」
エヌラスが右手でコーヒーカップを持ち上げて、しかし力加減を間違えたのかカップを落としてしまった。視線をノワールに向けたままだったからか、中身がこぼれてから遅れて反応する。
「っと、やべ」
「……?」
慌ててテーブルを左手で掴んだ布巾で拭いて、エヌラスが肩を落とした。視線を右手に向けて拳を握り、すぐに開く。
ノワールがそれに、何か違和感を覚えた。
「エヌラス、貴方──」
「いつ開催なんだ、そのエキシビジョンマッチ」
「えっ? 開催は一週間後だけど」
「一週間か……明日は極東支部の物資補給隊の護衛あるしな。それまではおとなしく仕事の手伝いでもするか」
「そうしてもらえると私も助かるわ。本来の目的はそれだったんだけど」
「あ、そういやあの二人に改装してもらった工房どうなったかまったく見てねぇ。今から行ってきてもいいか?」
「もう夕方よ。今度にしなさい」
「思い立ったが吉日、てなわけで行ってくる。すぐ帰ってくるから心配すんな」
「あ、ちょっと待ちなさいよ」
エヌラスが席を立ち、引き止めようとノワールが“右手”を掴む。しかし、その場から立ち去ろうとする足取りは止まらなかった。
無視して行こうとするエヌラスに苛立ち、手を引くとようやく足が止まる。何かに引っ掛けたような顔で振り返り、右手を見て、それからノワールが手を掴んでいる事に気づいたエヌラスがすぐに手を振りほどいた。
「寄り道しないでまっすぐ帰ってくるっつの。また後でな」
「…………」
圧倒的な違和感に、ノワールは何かを言いかける。しかしエヌラスは逃げるように休憩室から出ていってしまった。流石にユニも不審に思ったのか、座っていた席に視線を向ける。
僅かに血の付いたコーヒーカップの取っ手が割れていた。
エヌラスが夕焼けのラステイションを急いでいると、見覚えのある金髪ポニーテールとオレンジの髪色が並んで歩いていたので声を掛ける。二人同時に振り返ると笑顔で手を振っていた。
「久しぶりだな、デンゲキコ、ファミ通」
「お久しぶりですエヌラスさん! どこに行ってたんですか?」
「また今回は派手に怪我してますね」
「まぁちょっと色々あったんだ」
「今度そのことについて取材させてくださいね」
「機会があればな」
「あ、ファミ通さん! 抜け駆けとは! 私も! 私も取材させていただきます!」
「ちょっと、私が先なんですけどー。今日はこれからどちらに?」
「ああ。改装した工房の様子を見に。すぐ帰るけどな。二人は?」
「今はラステイションを中心に取材を回ってます。色々物騒な話題がありますけど、稼ぎ時でもあるので」
「ラステイション贔屓で有名なこのデンゲキコの目が黒いうちは好き勝手させません!」
そのスタンスは記者としてどうなんだデンゲキコ。そんな事を思いつつも、他の国を貶すような記事を書いているのは見たことがない。ただ他よりも優れた点を挙げているだけで、ちゃんと他の国も持ち上げている。
何か不審な点があれば教会に情報提供もしているだけに、今はゲイムギョウ界の記者としても嬉しい時期なのだろう。ことスクープに事欠かさないという意味で。
「そうだ。ついでにご一緒させてもらってもいいですか? なにせハァド大戦の立役者の一人でもありますし」
「はいはい、私も! 私もです!」
「だから私が先なんだけど……」
何か言いたげなファミ通をなだめつつ、エヌラスはスピカとカルネが改装した工房兼自宅へ二人を連れて行く。
──外観はほとんど手を加えていないのか、廃棄された工場同然のボロ屋だった。二人が何か言いたげにしていたがこれはエヌラスからの注文通りである。魔術士にとって工房とは秘密基地も同然だ。神秘の秘匿とか色々な事情はあるが、自宅に招くとはそういうことである。記事にしない事を条件に、エヌラスは工房の鍵を開けた。
内装を見てデンゲキコとファミ通は言葉を失う。
外装からは想像がつかないほどの生活空間だが、魔術工房であることが大前提なので二人が見たことのない機材などが多く置かれていた。アダルトゲイムギョウ界からユノスダス経由でわざわざ取り寄せた道具なども多数見受けられる。
元々事務所だったスペースは寝室に改造されていた。デンゲキコがはしゃいでベッドにダイブして唸っている。
「む、むむっ!! このフカフカな抱き心地! 全身を包み込むような安心感! それでいてシーツのなめらかな手触りに優しく沈み込んで頭にフィットする枕! 快眠間違いなし! おやすみなさい、すやぁ!」
「勝手に寝るな」
「ちょっとー、起きたらー?」
「ふがー……むにゃ……」
「ファミ通、撮っとけ」
「はーい」
パシャッ。
デンゲキコを叩き起こして、リビングへ。元々廃棄された工場を破格の値段で買い取ったので両隣もついでに巻き込んだ。ちょっとした豪邸だが、客室などの間取りを考えるとそれでも物足りない。特に力を入れてもらった浴室は大魔導師譲りの小さな浴場。一人で入るにはあまりに広すぎるが個室のシャワールームも別途用意。電気ガス水道は自前でどうにでもまかなえるが、それでも必要になるのでこっそり引いてあったりする。九龍アマルガムでは基本的に
リビングを見て回り、調度品の仕入れも上質揃い。キッチンは特にあの二人が活用するからか手が込んでいた。勝手に地下でワイン蔵まで増設されていたが、これは恐らくスピカの趣味だ。どうせ何か仕込んでるだろうと思い、エヌラスが空のワイン樽を叩くと両開きの扉から古めかしい銃器が出てきた。無言で元に戻す。
おおむね注文通りに魔術工房を用意してくれたようなのでエヌラスは満足げにしていた。一通り回ってから、ファミ通が手を挙げる。
「エヌラスさん。ここで何か作るんですか?」
「ん? まぁ俺の作業と言えば……アクセサリーショップ、とか?」
あくまでも予定だが。
「他にはそうだな……武器防具の製造とか」
「ふむふむ……」
メモを取りながらファミ通が何度も頷く。
「個人経営のショップみたいな感じですか?」
「ショップというほどじゃない。趣味の範疇だ。正規品に手を加える程度だよ。オーダーメイドは何かと手が込むし、材料の調達もあるからな」
「なるほどなるほど……わかりました。ありがとうございます」
「どういたしまして。デンゲキコはどうした?」
「あれ?」
リビングを覗き込むと、ソファーで横になっていた。クッションを枕代わりにして眠る姿をファミ通は無言で写真に撮る。二人は顔を見合わせて頷いてからデンゲキコを叩き起こした。
ゆすっても起きないのでソファーから転がり落とす。
「ファッ!? わ、私とした事が思わずソファーの座り心地に夢心地でしたよ! おはようございます!」
「夕方だっつの。お前人んちでくつろぎ過ぎだろうが」
「いやぁすいません。なんだか居心地が良くてですね……日頃の疲れが溜まってるのかも」
「寝顔撮っといたから」
「なんですってー!? ちょっとどういうことですかファミ通さん、そんな趣味があったなんて聞いてませんよ!? 私ばかりズルいです、今度ファミ通さんにも寝起きドッキリを」
「仕掛けなくていいからねー」
騒ぐ二人と共に自宅を後にして、エヌラスは教会に戻ろうとするが思い出したようにデンゲキコに呼び止められた。
「そうだ、忘れるところでした。エヌラスさん、こちらの記事をどうぞ」
「ん? なんだよ……」
手渡されたのは、少し前に発行された一面記事。
それには、ルウィーの空を覆う機械の腕が撮られていた。いつの間に。
──ルウィー教会の危機を救った巨大な機械の腕。ゲイムギョウ界の中心で女神への愛を叫ぶ。
「いやぁ、その記事発行した時はすごい盛況でしたよ。ルウィーの秘密兵器かー、とか色々噂も飛び交いましたけど、聞けばエヌラスさんだったとか。教会近辺で目撃情報もありましたし」
「いや、もうこの際それはいいんだが……なんだ、この、愛を叫ぶって」
「あれ? 聞き込みをした時に「女神を愛してる」とか叫んでたと耳にしましたが」
叫んだような叫んでないような、無我夢中だったので記憶があやふやだったが、第三者から改めて言われると非常にこっ恥ずかしい。記事を丸めてデンゲキコの頭を叩き、返しておいた。
こっそりとファミ通が耳打ちする。
「この記事の事もありますので、エヌラスさんもこの時期は気をつけてくださいね。狙われててもおかしくありませんし」
「ご忠告どうもありがとよ、ファミ通。そっちもスクープ追うのは程々にな」
エヌラスは二人と別れてラステイション教会へと足早に戻ることにした。