※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.44 ホワイト・オア・ホワイト

 

 

 雪の降る青空でホワイトハートの投げ放つ戦斧同士が衝突し、キャッチすると距離を詰めて全身で振り下ろす。ルウィーの上空で激しくぶつかり合う白の守護女神同士の戦闘に、ホワイトシスターの二人は手を出すことができなかった。

 モンスターならいざ知らず、自分の姉と戦うことなどできない。

 

「ど、どうしよう……」

「エヌラスお兄ちゃんが来るまで、わたし達でお姉ちゃんを援護しないと」

「でも、お姉ちゃんの敵もお姉ちゃんだし」

「偽物にきまってるわ! えーいっ!」

 得意とする魔法で黒いホワイトハートに向けて氷塊を放つホワイトシスター・ラム。だが、迫りくる氷の塊に向けて裏拳を叩きつけて粉々に打ち砕いた。ホワイトハートが誇る一撃の重さと防御力が強化されているのか、二人を鼻で笑うと目の前の相手へと専念する。

 

「っ、ロム、ラム! 下がってろ!」

「よそ見してる場合かよ!」

「くそっ!」

 振り下ろされる黒と青の戦斧を防いだホワイトハートが苦悶の表情を見せ、そのまま力押しで防御を崩された。空中で踏み止まるが投てきされた戦斧によってさらに追い詰められる。吹き飛んだ姉をホワイトシスターの二人が受け止める。

 

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

「ああ……くそ。なんつぅ馬鹿力だよ」

「ブランお姉ちゃんそっくり」

「なんか言ったか、ラム」

 なんでもないとでも言いたげに顔を横に振った。しかし、ホワイトハートの顔色はあまり良くない。自分と瓜二つの容姿を持つ偽物だが、その戦闘能力は侮れなかった。守護女神と同等──認めたくないが、実力はあちらがわずかに上回る。

 

「テンツェリントロンベ!」

 ホワイトハートが二人を庇い、振り回される戦斧を防いだ。三人まとめて吹き飛ばされるが、何とか地上に衝突する前に体勢を整える。雪の降り積もった白い大地に足跡を残しながら踏み留まったが、膝をついた。

 

「ブランお姉ちゃん、怪我してる……! 待ってて、今治しちゃうから……」

「ありがとな、ロム……」

「……チッ。おい、まさかこの程度とは言わねぇだろうな」

「当ったり前だ!」

 再び戦斧を担ぎ上げたホワイトハートがこちらを見下ろす黒いホワイトハートを睨み上げる。地面から飛び立ち、衝突する二人の姿を眺めながらホワイトシスターが到着を今かと待っているとそれに応えるようにバイクのエンジン音が聞こえてきた。顔色がパッと明るくなるが、それもすぐに戸惑いの表情に変わる。

 

「……あー……話には聞いていたが、どうなってんだこれ?」

「エヌラスおにいちゃん……」

「俺の怪我のことは気にすんな。で?」

 上空では見慣れたホワイトハートと、黒いインナー姿のホワイトハートが激しくぶつかり合って重い衝撃音を鳴らしていた。その振動が腹まで響いてくるようだ。昼飯を食べてくればよかった、などと少し呑気な事を考えながらもエヌラスは左手に赤いハルバードを携える。ハンティングホラーに格納している呪術兵装の一つだ。

 

「あの、黒い方が偽物ってことでいいんだよな」

「うん」

「やっつけちゃって、エヌラスおにいちゃん」

「なんとかする。ヤバそうだったら助けてくれよ」

「──えっ」

 ハンティングホラーの機首を持ち上げて青空を爆走する。

 普段なら言わないような言葉に、ホワイトシスターの二人が困惑していた。

 

 ホワイトハートと衝突する黒い戦斧を横から打ち上げて、エヌラスは変身させたハンティングホラーの「化身(アヴァタール)黙示録の獣(トリプルシックス)」に足を乗せて空中で停滞する。二人の顔を見れば見るほど、どっちが本物か分からない。だが、この次元でルウィーの守護女神を務めているのは、純白のプロセッサユニットを纏うブランの方だ。思考を切り替えて赤いハルバード、ヘルサイズキラーを黒いプロセッサユニットの女神に突きつける。

 

「テメェが偽物ってことでいいんだろうな?」

「……なに言ってやがる。わたしもルウィーの守護女神で、本物だ」

「だったらどうしてルウィーに攻めてきてんだよ」

「お前には関係ねぇ話だろうが、すっこんでろ!」

「そうもいかねぇんだわ。助けてやってくれなんて言われたらよ」

 ハルバードを担ぎながら、トリプルシックスを走らせた。一撃が重いホワイトハートと接近戦をするのは危険が伴うが、エヌラスはすれ違いざまに一閃してすぐさま離脱する。反転させて、再び急襲した。

 

「ちょこまか、してんじゃねぇ!!」

 エヌラス目掛けて戦斧を振るうが、トリプルシックスから跳んで横薙ぎを避ける。その攻撃の隙を狙うようにホワイトハートが体当たりで姿勢を崩し、大振りの戦斧を叩きつけた。柄で受け止めた黒いホワイトハートに、更にエヌラスがアクセル・インパクトの踵落としで地面に打ち落とす。

 

「っと。ナイス」

「……おい、本当に大丈夫なのかよ?」

「ま、色々制限してるが戦闘に問題はねぇ」

 地上に降りて立ち上がる偽物を見下ろすと、全身に澱んだ稲妻が走った。傷一つ無く立ち上がる姿にエヌラスが隣に浮かぶホワイトハートに視線を向ける。手応えはあった。その性質も守護女神であることは感じ取れる。

 

「ありゃ何者だ?」

「……わからねぇ。わたしがモンスター退治をしていたら突然襲いかかってきやがったんだ」

「目的は」

「どっちがルウィーの守護女神に相応しいか、だとよ。わたしに決まってんだろ、偽物のくせに」

「……」

 偽物と決めつけているホワイトハートに、エヌラスは気に掛かることがあるのか接近しようとするのを手で制した。

 

「ひとつ応えてくれるか、黒い方」

「あ? なんだよ、この犯罪者が」

「──お前のルウィーは、どんなところだ」

「そんなことを聞いてどうするつもりだ」

「ちょっと気になることがあってな。テメェが偽物なら容赦なく消し飛ばすが。“本物”だったら面倒くせぇだけだ」

 本物なら、という言葉に隣のホワイトハートから非難の視線が向けられるが、エヌラスにはなにか考えがあるようだ。言葉を飲み込むことにする。

 

「わたしのルウィーか……ああ、いいところだ。世界一いい国だって自負がある。歴史ある、由緒正しく女神が守るべき国だってな。ゲイムギョウ界で一番だ」

「そんなの──」

「ブラン」

「っ……」

「で? どんな場所なんだ」

 

「ああ。こんな、クソ寒い試される白い大地なんかじゃねぇ。もっと暖かくて、紅葉が綺麗で文化的な国だよ」

 

「──オーケー。それだけ聞ければ、十分だ」

 エヌラスが自嘲気味に笑った。まるで面倒事を投げ出したい一心の、追い詰められたときに出てくるような乾いた笑いに、ホワイトハートが眉を寄せる。

 

「おい、今ので分かるのかよ」

「心当たりがある。多分お前も知ってるだろ。ありゃ、“本物”のホワイトハートだ。面倒な事になったな」

「……どうすりゃいいんだ」

「ぶちのめす。話はそれからだ」

 変神しようとするが、エヌラスが身体の違和感に中断した。

 

「ぶちのめす、だ? はは、やってみやがれ! 怪我人一人増えたところで、わたしに勝てると思ったら大間違いだ!」

 飛び立つ黒いホワイトハートが、胸元の紋章を淡く輝かせながら戦斧を振るった。衝撃だけでも身体の芯に響いてくる。直撃すればタダでは済まないだろう。

 ヘルサイズキラーで打ち合いながら、鍔迫り合いに持ち込んだエヌラスが口角を怒りでつり上げる相手の顔を見つめる。

 

「俺を知っているような口ぶりだな?」

「──知らねぇはずがねぇだろうがっ!!」

 激昂と同時にハルバードを払い除け、バルザイの偃月刀で戦斧を防いだ。左腕が痺れるような痛みを訴える。

 

「テメェがいなけりゃ。テメェのせいであんなことになったんだ!」

「心当たりが多すぎてな、忘れたよ」

「ッ──!! こぉの野郎ぉぉぉっ!!!」

 防御魔法で弾き、振り上げた戦斧をアトラック・ナチャで絡みとると、無防備になったところへすかさずホワイトハートが打ちつけた。横殴りに吹き飛んだそこへ、ホワイトシスターのアイスコフィンが降り注ぐ。

 

「おい、お前もルウィーを愛する女神ならこんなことしてもしょうがねぇだろうが! 女神同士が争ってどうすんだよ!」

「黙りやがれ! ルウィーを愛してるから争うんだろうがよ!!」

「なに……?」

「ああ、わからねぇか……! そんなやつと一緒にいるような守護女神には!」

 まるで積年の恨みが積もったような言葉がエヌラスの表情を曇らせる。自分の中で、仮定が確信に変わった。

 

「そいつは、守護女神を敵にした! ゲイムギョウ界に矛先を向けた。戸惑いながらも平穏だったはずのわたし達の世界を滅茶苦茶にしていった野郎だ! 生かしておけるかよ、許せるか!」

「たしかにエヌラスは、女神の敵かもしれねぇ。魔人だからな。それでも、こっちの次元じゃ命張ってわたし達を守って──」

「それも! ソイツが居なければ始まってなかった事だろうが!」

「っ……」

「ああそうだ──、全部。お前がいなければ……!」

 戦斧を握り直し、黒いホワイトハートが睨む。憎悪を滾らせながら、怒りを積もらせながら。

 

「ああ、そうだな。俺がいなけりゃ、お前たちの次元はああならなかったんだろうな……生きてるだけで他人に迷惑掛けるような魔人だよ俺は。そんなこと、テメェに言われなくても俺自身が一番よく知ってんだよ」

「だったら、くたばりやがれ」

「そりゃ、できねぇ相談だ」

 黒いホワイトハートの戦斧を今度は赤い直刀で受け止める。左手には白い細剣を握りしめて、エヌラスは距離を取った。

 

「それでも俺は、役目を果たすまで死ぬわけにゃいかねぇんだ。文句があるなら、死んでから聞いてやる」

 例えどれだけ己の存在を否定されようと。それがどれだけ世界を壊そうと。コレだけは他の誰にも譲れはしない。

 なぜならそれを諦めてしまえば、自分が存在する理由が消えてしまうから。

 

「ッ──うああああぁぁぁぁっ!!!」

 黒いホワイトハートが、堪え切れない感情を吐き出す。プレッシャーに押し潰されそうになりながらも、相手が全身を大きく振りかぶったモーションにホワイトハートは自分も同じように戦斧を構えた。

 

「ケイオス、ハードブレイカァァァッ!!」

 シェアエネルギーを乗せた戦斧同士が空中で衝突する。手元に戻ってくる戦斧を掴み取り、二人のホワイトハートが全力で振り下ろした。

 衝撃波と共に、踏みしめた大地がひび割れていく。拮抗する戦斧が弾かれるように離れ、踏み止まった二人が再び打ち鳴らす。今度はホワイトハートに軍配が上がり、至近距離でゲッターラヴィーネで氷を撃ち出しながら下がった。

 その隙間を掻い潜って、エヌラスが黒いホワイトハートに両刀を交差させて切り払う。稲妻と爆炎に飲まれ、そこへさらにアクセル・ストライクも加えて打ち込んだ。

 地面を転がり、立ち上がろうとする相手に息を整えてからホワイトハートが戦斧を担ぎ上げる。

 

「超弩級の女神の一撃、受けてみやがれぇっ!!」

「なぁめんなぁぁぁっ!!」

 初撃を打ち払い、本命の二発目を迎撃しようとする黒いホワイトハートだったが、その動きをイタクァに阻害されて直撃を食らった。そのまま森の中まで吹き飛んでいく。

 エヌラスは淡々とした手捌きでリボルバーから排莢して装填した。

 

 ──吹き飛んだ相手を追いかけてホワイトハート達と森の中を進む。折れた木々と転がった跡を辿っていくが、先はまだ長そうだ。

 

「どれだけ本気で殴ったんだよ……」

「……わりぃ。ついカッとなっちまって」

 エヌラスが倒れた大木を飛び越えて、やがて地面に倒れた人影を見つける。まだ輪郭がぼんやりとしているが、近づくに連れてその全貌がハッキリとしてきた。

 大きな白い帽子。巫女のような衣装。紅葉を思わせる服装は、見覚えがある。エヌラスだけでなく、ホワイトハートにも、ホワイトシスターにも。だからこそ衝撃を隠しきれなかった。

 亜麻色の髪。小柄な身体。

 ボロボロになって倒れた別次元のブランが、そこに居た。

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