超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「…………」
「…………」
「…………」
リビングで待っているのは、三人。ノワール。プルルート。お風呂あがりのネプギア。テレビを点けてはいるが、肝心の内容が全くと言っていいほど頭に入ってこない。
――あン! アッ、エヌラス、ダメぇ! そこ、ダメぇ! 私、おかしくなっちゃうからぁ!
「…………」
「…………」
「…………」
ネプテューヌの喘ぎ声が聞こえる。声の高い方だから、まだ分かる。それでも時たま静かになる時があるが、今まさに部屋の中でネプテューヌがあんなことやこんなことをしているのだと思うと――思い返されるのは、自分達のしてきたこと。ノワールとプルルートが顔を赤らめていた。
ネプギアもそんな姉の声は聞いたことがないのか、顔を真赤にして硬直している。
“うわ、うわ、お姉ちゃんあんな声出すんだ……恥ずかしいよぅ……”
半ば公開処刑を受けているような心地でネプギアはソファーに腰掛けてテレビ画面を凝視していた。もちろん内容はまったく頭に入っていないが。
――あひ、ダメ、エヌラス。私、イク、イッちゃう――!
「――――ッ、あぁぁぁぁもう! 声デカイのよネプテューヌは!! だだ漏れよ、丸聞こえよ! 我慢してるのにちょっとは静かにできないのかしら!?」
「が、我慢してるんですかノワールさん!?」
「当たり前でしょ!? どんだけ私がストレス貯めこんでると思ってるのよ! なんでネプテューヌに向こうでもこっちでも振り回されないといけないのよ! ああ、もう思い出したら腹立ってきたわ! こうなったらもう邪魔してやるわよ!」
「わぁぁぁダメです、ダメですってば!」
「じゃあ何よ、ネプギアも混ざってくるの!? 姉妹丼で朝までごちそうさま――ってうるさいわよ!」
「ノリツッコミの逆ギレですか!? むしろそれ何ギレですかノワールさん!?」
「でもぉ、ねぷちゃん凄いねぇ~。喘ぎ声。いいなぁ、聞いてるこっちまでムラムラしちゃうよぉ~」
「アナタも相当溜め込んでるわね、プルルート……」
「だぁって~……」
何か不満そうに頬を膨らませてねぷぐるみの首を締める。
「女の子ばかりイジメても真新しさないしぃ、男の人いじめる機会あんまりないしぃ~? だからエヌラスイジメて愉しんでたのにぃ、ノワールちゃん来ちゃったし……」
「いや、でも仕事……」
「女神の仕事だってぇ、満足したら帰るつもりだったよぉ~?」
“本当かしら……”
いや、多分嘘だろう。もしかしたら本当かもしれないが。そのどちらであってもノワールは関係がなかった。本当のことを言うとプルルートが不在だったというのも後から知ったことだったし、咄嗟に口をついて出てきた言葉だ。本音を言えばエヌラスが放っておけなかったからである。知ってしまった以上見てみぬ振りなんて出来なかった。それが自分達の世界に影響を及ぼすと知れば尚更である。
「そういえばぁ、ノワールちゃんお風呂まだだったよねぇ~?」
「えっ? えぇそうね!?」
「そうだよねぇ~」
「……何か身の危険を感じてきたわ……あ、そうだ。私エヌラスにご飯作ってあげないとなー」
「え、まだ食べるんですかエヌラスさん?」
「さっき、血を吐いてたわ。それの不足分を取り戻すのに大量に食べないといけないって言ってたわよ」
「……血を吐いてた、ですか?」
ふと、上の階が静かになった。ようやく終わったらしい――それから少しして、エヌラスが戻ってくる。げっそりとした様子で、そりゃもうお疲れだろう。
「……ワリィ、風呂入るわ…………」
「じゃあ私も一緒するねぇ~、えへへぇ」
「お願いだから何もすんじゃねぇぞ……!」
打って変わって上機嫌なプルルートがエヌラスと浴室に消える。
「なんか、こう……モヤモヤしたものが胸に……」
「まぁ、アレはそういう体質らしいし……」
「でもちょっと意外でした。ノワールさん、そういうの結構固そうなイメージだったんですけど」
「それは……背に腹は変えられないじゃない。ホントは、その、あまり気乗りしなかったんだけど――思ったより気持ちよかったし……」
「え、今なんて言いました? 気持ちよかったって言いました?」
「ばっちり聞いてんじゃないわよ!」
「ひぃ、ごめんなさい! 包丁こっち向けないでください! お姉ちゃんの様子見てきますね」
犯された姉の姿を見るのは、非常に勇気が必要だったが――それでもネプギアは心配でいてもたってもいられなかった。
エヌラスの部屋を一応ノックしてから入ると、ベッドの上で大の字になって荒れた息を整えていたネプテューヌがいる。
「…………」
「ハァ、ハァ……あ、ネプギアー? 思ったより、すごかったなぁ……」
「お、お姉ちゃん。大丈夫だった?」
「うん? まぁねー。でもこれですぐ変身できるってわけでもないみたい。うわぁ、こんなに……エヌラスったら出しすぎだよ、もう……ティッシュティッシュ」
枕元にあったティッシュで拭き取り、溢れる精液を拭う仕草にネプギアは生唾を飲み込んだ。今は裸身を晒す姉だが、何か考えがあってのことだろう。変身できれば、エヌラスの力になれる――というのは分かる。だがそのための行為があまりにハード過ぎた。少なくとも、ネプギアにとっては。
「……どうして?」
「どうかしたー、ネプギア」
「どうして、お姉ちゃん。エヌラスさんと……」
「え? だって私、エヌラスのこと普通に好きだよ?」
「――――いつ、から」
「うーん、そうだなー。いつからって聞かれると、私を庇ってくれた時かな。今でもちょっと覚えてるよ。私の両手が真っ赤になった時の感触。……凄く、嫌だった。死んじゃうって思った。でもそんなの関係なしに助けてくれた。ユウコでも、ネプギアでも、ノワールでも、ぷるるんでも同じことしたんじゃないかな? あんなんでもやっぱ腐っても国王で神格者なんだなー、って」
あんなんでも、と言うのは余計だが。
「そう思うとさ。私達ときっと何も変わらない人なんだよ。国を守りたくて、誰かを守りたくて、仕事もいっぱいあるし、辛いことも沢山あるだろうけど――それに此処はアダルトゲイムギョウ界だし。きっと私達のしてる戦いより、もっと過激で過酷な場所だから」
ティッシュを丸めてゴミ箱に投げると、綺麗に入ってガッツポーズを決める。全裸だが。
「やっぱヤることやっとかないと損じゃん? 私はこんなんだからいいけど、ネプギアはもっと自分の身体大事にしてね。ふぁ~あ、疲れちゃったなぁ……慣れないことして……むにゃ……」
「あれ、お姉ちゃんもしかしてエヌラスさんと一緒に寝るの?」
「この後滅茶苦茶セックスするわけじゃないからだーいじょうぶだよ~……」
「……それで思い出したけど、お姉ちゃんの声、下まで聞こえてたから」
「え、嘘ぉ!? うあー、私の恥ずかしいところ丸聞こえとかそっちのがショック~……」
枕を抱いてゴロゴロと悶絶するネプテューヌに、いや恥じらうべきところはもっと別にあるだろうに、ネプギアは寝転がる姉を見て少しだけ羨ましく思った。
「……なぁ、プルルート」
「なにかしら」
「……じゃねぇな、アイリス。なんで変身してまで人の背中流してんだ」
「小さいと色々不便なのよ?」
「分かるけどな――俺の背中に当たっている柔らかい二つの感触はなんだ?」
「あたしの胸よ?」
「普通に洗ってくれ……」
「い・や・よ」
「そうかよ……」
頼むから普通にしてくれと願いながら、それが流れ星が叶える確率で叶えてくれない願いなのを知っておきながらエヌラスはプルルート=アイリスハートに頼んだ。ダメだった。知ってた。
とはいえ、それ以上に何をするでもなく全身をすりあわせてくる。
「ねぷちゃんはどうだったかしら」
「小さいから、そりゃまぁなんか犯罪臭ヤバかった」
「興奮した?」
「滅茶苦茶――じゃねぇ、死ぬかと思った正直な話マジで死ぬかと思ったやばかった違う違う違うそうじゃねぇ」
「度し難い変態ね……女の子だったら誰でもいいの?」
「んなわけあるか。命懸けで守る価値のあるやつだけだ」
「…………」
「…………黙んな、怖いから」
エヌラスは知らないが、プルルート=アイリスハートがその後ろで耳まで真っ赤にしていた。
「なんでそんな簡単に守るとか言っちゃうわけ?」
「罪深くて強欲で身の程弁えねぇクズの極みだからだよ」
「自分でそういうこと言ってて悲しくならない?」
「開き直ってる」
“あ、本当にクズなのね。叩きなおしてやろうかしら”
「妹がいた。助けられなかった。恋人もいた。結局殺した。それでも、俺はバカだからやっぱ誰かいてくれないと戦えねぇんだよ。学習機能ないからな。だから、お前と出会ってなかったらアルシュベイトに殺されてたんだろうな俺。ネプテューヌ達と出会わなかったらバルド・ギアの野郎に負けてただろうし――悔しいけどな、事実だ。改めて考えりゃ、これじゃ俺が助けられてばっかだ。割に合わねぇだろ? だからせめて、この戦争終わるまではお前達のことしっかり守って笑顔でお別れしねぇと、なんつうかよ。後味ワリィだろ」
そこで向き直って、少しだけ笑う。
会えて良かったと心底思う――そんなセリフ言えたものではないが。
「ありがとな、プルルート」
「……ねぷちゃん達に、言えばいいじゃない」
「こっ恥ずかしくて言えるか」
「じゃあなによ。あたしに言うのは恥ずかしくないっていうわけ?」
「素っ裸でこれ以上恥ずかしいことねぇだろうが」
「あ――――」
「洗い終わったならさっさと流して上がるぞ。もう眠い……」
「そ、そんなにあたしとフラグ建ててなによ。ホントにペットにされたいの!?」
「フラグとか言うんじゃねぇよ人がせっかく素直にお礼言ってんのによ! あとまだ諦めてねぇのかよそれ!」
「諦めるわけないでしょ!?」
「全力で否定すんな!」