超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
プラネテューヌへと到着したグリーンハートは、滞在先のルウィーからクエストでプラネテューヌ方面へ足を伸ばしていた鉄拳ちゃんを引き連れながら事情を話した。
女神である自分が触れられないこと。一般人には無害であること。その破壊を自分に代わって頼みたいこと。それらの事情を概ね知っていた鉄拳ちゃんはすぐに承諾してくれた。自分が力になれるのなら、ということで意気込む。
「このまま教会まで行きますよ」
「は、はい。でもいいんですか? その、勝手に」
「今は緊急事態ですので」
そう言っている間に、グリーンハートは教会に到着して鉄拳ちゃんを下ろした。その足ですぐに内部へ突入し、イストワールとの面会を取り付ける。急ぎだったが、すんなりと案内された。
すぐに小さな教祖様がひぃこらと言いながら小箱を持ってやってくる。
「お、お待ちしておりました~(;・∀・)」
「イストワール、お久しぶりですわ。用件は」
「はい、わかっています。この結晶の破壊ですね(;´∀`)」
「ですので。鉄拳ちゃん、お願いいたします」
「は、はい!」
小さいイストワールが小箱を開き、その中で保管されていた澱んだ空気をまとう結晶に向けて鉄拳ちゃんが息を整えて拳を握った。
「て、て~いっ!」
なんとも気の抜ける掛け声と共に打ちつけられた拳が結晶を粉々に砕く。勢い余って小箱と台座ごと破壊してしまったことに慌てて頭を下げていた。
「あ、あわわ。ごめんなさいごめんなさい!」
「いえいえ、お気になさらずΣ(´∀`;)」
「なにはともあれ、これで一件落着ですね。ご協力感謝します、鉄拳ちゃん」
「女神様の助けになれたのならわたしも嬉しいです」
「それにしても、イストワール。なぜ急にこのような事が起きたか解りますか?」
「それについてですが……(-_-;)」
イストワールが神妙な面持ちで頷く。
「リギホウテンの一件から、わたしも独自のネットワークで様々な観点から調べていたんです。その中に気になる事があって……それを皆さんに教えようにも、気がついたら既に手遅れてでして……面目ないです(´;ω;`)」
「気にしておりませんわ。それよりもなにかわかったことが?」
「はい。今回の件によく似たケースが確認されました。かいつまんで説明しますと、邪神が関係している事がわかりました(・∀・)」
「邪神が……?」
「女神の力の源である、シェアエナジーを汚染することで自分たちの味方につけようとした事件が過去にもあったみたいです。それらは他の次元で起きた事件だったみたいですが、プルルートさん達の身に起きた事と一致します(-_-;)」
「わたくし達が、邪神になると?」
「いえ、そこまでの脅威はないみたいです。それでも下手をすれば国家崩壊に繋がるので決して無視できない状況でしたけど(;´∀`)」
小さな自分の身体ではプルルート達を止めることも助けを求めることもできなかった、と悔しがっている。だが、カオス化したプルルートは精力的にプラネテューヌ周辺のモンスター退治をしていたらしい。普段は天然ほんわかしているというのに、カオス化したことで女神らしくなるとはなんと言ったらいいか。しかし、ほぼ常時女神化している状態だったためにプラネテューヌ国民は気が気でなかったようだが(ごく一部除く)。
「これでプルルートも元通りになるはずです。わたくしは急ぎ、エヌラス達に合流してきますわ」
「……エヌラスさんが、来ているんですか?(?_?)」
「ええ。それがなにか?」
「そうなるとちょっと、心配ですね(・・;)」
「彼の身体も万全とは言えませんが……」
「いえ、それもあるんですけれど、プルルートさんが……(;´Д`)」
「?」
エヌラスが来ていることと、プルルートが何か関係があるのだろうか? グリーンハートが首を傾げた。
「それがなにか?」
「カオス化してからというもの、プルルートさんはエヌラスさんにものすごく会いたがってたみたいなので。もしも二人が出会っていたらどうなることか……(-_-;)」
「……イストワール。残念ですが、手遅れですわ」
しかも今現在進行形で殺し合っているところ。
アイリスハート・カオスの身体がぐらりと揺れる。体勢が崩れたところへホワイトハート・カオスが戦斧を打ち込み、吹き飛ばした。
自分たちを囚えていた電撃の檻も心なしか威力が弱まっている。起点となる天井へ向かってブラックハート・カオスが大剣を突き刺して力づくで突破した。逆流してきた電撃によって少しだけ全身が焦げているが、檻の破壊には成功している。
「っ……エヌラス! あなたここで仕留めきれなかったら一生恨むからね!」
「重傷人に大役押しつけやがって……!」
毒づきながらエヌラスがイタクァとクトゥグアを握り、最大出力の螺旋砲塔を展開した。だが、それを体勢を立て直したアイリスハート・カオスが笑みを浮かべながら魔術で応戦しようとしている。それに巻き添えを食らわないようにホワイトハート・カオスが退避した。
「クトゥグア! イタクァ! 神銃形態──
「カオス・サンダーブレードキック!」
轟く雷鳴。複属性の魔砲と最大規模の魔術の衝突に、周囲の地形すら破壊されていく。焦土と化した街道に、ガラスのクレーターが二人の中間地点で爆ぜた。
魔力のバックファイアでエヌラスが苦悶の顔を浮かべ、玉のような汗を浮かべながらアイリスハート・カオスもまた急速に失われていくカオス化の力に笑っている。
急速に弾けて霧散した自分の魔力を蛇腹剣に収束させて、雷刃を振るう。バルザイの偃月刀を避雷針代わりにして、エヌラスは両手に細剣を形成して駆け出した。
鞭状に変形させて、稲妻の如き無数の乱打が迫る。その隙間を縫い、跳ねるように地面を蹴り、空を蹴って接近を果たした。足を高く振り上げて、アイリスハート・カオスが雷光と共に踵落としでエヌラスの身体を切り裂く──その一撃を耐えて、漆黒の右腕に魔力を集中させて全力で殴り返した。
「……容赦なく顔面いったぞアイツ」
「ああいうところはホント魔人らしいわね……」
殴り飛ばされたアイリスハート・カオスの女神化が解除されて、ブラックハート・カオス達が地面に倒れるプルルートのもとへ駆けつける。今はまだ気を失っているだけのようで胸を撫で下ろした。その様子に、エヌラスも胸を撫で下ろすが気を緩めるのはまだ早い。
ただでさえ右腕の維持をするだけでも魔力を消耗していたからか、全身の魔術回路がオーバーヒートしていた。銀鍵守護器官の暴走に近い。炉心はともかく、制御を誤れば自爆は必至だ。何とか冷却しようとエヌラスが魔力を分散させようとするが、行き場を失った魔力を発散させようにも身体が保たない。
膝を着き、異常な熱を発する全身から湯気が漂う。そこへ駆け寄ってきたのはユウコだった。イエローハート・カオスも力が失われたことで女神化が解除されてプルルートの下へ。
「エヌラス、ちょっとしっかり──熱っ……!」
「はっ、わーりぃ。ちょっと、こればっかりは……どうしようも……!」
「…………」
肩に置いた手が熱い。口腔から吐き出される吐息が異様な熱気をこめている。今頃エヌラスの身体の中では臓腑が悲鳴を上げていることだろう。ユウコはグッと息を呑み、両手で頬を捕まえた。
「……どうにか、すればいいの?」
「──ユウコ」
「ん、わかった。なんとかしてみる……でも、その……~~、あとで責任取れよこんちきしょ」
「お前、なにす──っ」
大きく口を開けて、エヌラスの首に噛みつく。ガリッと、固い歯が肌に突き刺さり、喉を鳴らしながら溢れる血を飲み込んでいく。深く傷つけられた肌を飲みきれなかった血が伝っていった。
「ぅ……あっつ……エヌラスの……こんな、甘くて……はぷっ、ちゅう……」
「あんま、飲むなよ……?」
「無理言わないでよ。じゅるっ、んぷっ……ん~」
身体の熱が冷めていくと同時に血液が大量に失われていくことで、徐々に銀鍵守護器官の出力を落としていく。過剰な熱量をユウコが引き受けるという形で、なんとかエヌラスも窮地を脱した。ここまできて自滅ともなれば、死んでも死にきれない。
ユウコが口を離すと、すぐに首筋の傷跡が治っていく。しかし、大量に溢れた血でスーツが真っ赤になっていた。
「……ユ──」
「~~~~!」
唐突に、エヌラスを突き飛ばす。口元を抑えて、肩で荒くなった息を整えながら。
何をするのか、と立ち上がろうとして目眩を覚える。どうやら予想以上に血を失ったらしく失神してしまった。
「あ、おい!? エヌラス、大丈夫か!」
「だい、じょうぶだと思うよ……その、ちょっと飲み過ぎた、だけだから……!」
「……そっちも大丈夫か? めちゃくちゃ顔赤いぞ」
「えっと、できれば、近づかないでほしいな……その、エヌラスはもっと、ダメだけど……」
「なんでだ? 身体の具合悪いのか? 吸血鬼なのに」
「……逆」
「逆?」
「身体がね、絶好調過ぎてね……あの、私もーそのーなんというか……げ、元気すぎて……!」
ホワイトハート・カオスが首を傾げていたが、とにかく今のユウコはそっとしておいてほしいようだ。
グリーンハートがプラネテューヌから戻ってきて、ユウコの肩を叩く。
「あっ」
「どうやらこちらも片付いたようで──」
「んっ!」
…………甘い声を押し殺しながら、身体を跳ねさせる姿にその場が静まり返った。それでようやくユウコの身になにが起きているかピーシェ以外の全員が察する。
「あにょ、ね……べるちゃん……? わた、わたしね……今ね……ものすっごく敏感だから……さわんにゃいで……?」
「…………大変申し訳ありません」
「昂ぶってて、がまんするの……すっっごい、たいへん、なんだからね……?」
そういえば先程からずっと落ち着かない様子だ。そわそわとしている。
「と、ともかく! 今はなんとかなったんだからまず身体を落ち着けましょ!」
「となると、プルルートも休ませませんと」
「そうなるとなし崩し的にプラネテューヌに寄る羽目になるな」
「それについてはご安心を。イストワールへあらかじめ伝えておきましたので、すぐにでも」
「そうと決まれば善は急げ。私がプルルートを運ぶわ」
「ならわたしがピーシェだ」
「そうなるとわたくしがエヌラスを? ユウコは」
「私は走るから大丈夫!」
──このあと、まさか女神より先にプラネタワーにたどり着いているとは誰も思わなかった。