超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
サクラナミキに生息するモンスター達が逃げ惑う。それに混じって支援班、シュラも腰部スラスターで機体を滑らせるように踏み慣らされた道を走っていた。一瞬遅れて続々と着弾する火球の巻き添えを食らって馬鳥やスライヌ、ヤンキーキャットにアイツやコイツも倒れていく。
「っ、マジェコンヌ! アンタいったいなんでこんなことをしているのよ!」
「ふん、貴様らには関係のない話だ! 私の捜し物の邪魔をするな!」
杖を振るい、魔法を次々と放っていくマジェコンヌに横槍を入れてアイエフのカタールが空を切った。殺気を感じ取り、その場から下がると目の前を大柄な剣が掠めていく。
クロギアの振るうゲハバーンめがけてシュラがスラグ弾を撃つと、手元から弾かれていった。
「……」
《わーぉ、やべ》
手をかざすと、魔法が飛んでくる。それをモンスターを盾にしつつ持ち前の機動力で撹乱しながらリロードを挟む。攻撃のチャンスを窺っていると、手元から飛んでいった剣を拾い上げる。
「教会から要注意人物として記録されている魔神まで引き連れて、いったい何が目的!?」
「貴様と話す舌など持つ気もない!」
マジェコンヌが放つ魔法の隙間を縫って、アイエフは左手に意識を集中させた。
「風の後ろを歩むもの──
白銀の回転式拳銃が顕現し、両手でグリップを握りしめて引き金を引く。一発、二発と雷管を叩かれて撃ち出された魔弾は自らの意思を持つかのように不規則な弾道を描きながらマジェコンヌへ迫った。
「ちっ、鬱陶しい魔弾なんぞ使いおって! 払え!」
「わかりました」
不愉快そうにしているマジェコンヌの命令にクロギアがゲハバーンでイタカの魔弾を薙ぎ払う。
シュラも追撃の手が止んだことでアイエフと合流した。
「アンタ以外の支援班っていないわけ?」
《いやぁ、この兵装取り扱うの中々難しいんで。俺とセインぐらいです》
「肝心の変態代表がいないんじゃ実質アンタだけってことね」
《お恥ずかしいことに。レオルド達がすぐに来てくれるはずなんで何とか時間を稼ぎましょう》
「は~、なんでアンタと二人で頑張らなきゃいけないのかしら」
イタカを返還しながら、アイエフは新たに右手の赤い紋章に意識を集中させて深紅の自動式拳銃を手にする。
「灼熱のフォウマルハウト、焼き尽くせ──クトゥガ!」
クロギアが灼熱の魔弾を防ぐと、爆炎の中から押し出されるように後退った。
「……、贋作だからといって威力は侮れないみたいです」
「だろうな。さて、どうするか……あまり長引かせてもこちらの不利になるだけだ」
「探しものはどうするんですか?」
「知るかそんなもの。命あっての物種だ、とはいえ土産話のひとつもなしにコソコソ嗅ぎ回られるだけというのはいけ好かん! それに試したいこともある」
マジェコンヌが虚空へ手を伸ばすと、空間が歪む。それに驚き、アイエフが直感的に阻止しようとクトゥガを撃つ。しかし今度はゲハバーンで防がれてしまった。
徐々に広がっていく黒い渦に、寒気を感じながらアイエフがクロギアの剣をカタールで捌きながら足を払い、横を抜けようとする。だが、マジェコンヌが片手間に放つ簡単な魔法で吹き飛ばされてシュラが受け止めた。
《大丈夫ですか》
「ええ、ありがと」
《あの空間に異常な数値が計測されてますね》
「なんかヤバイってことだけはよくわかるわ、止めるわよ!」
《爆弾使っちゃダメですか!》
「ダメって言ってんでしょうが! 一応重要文化財に指定されてるサクラナミキで環境破壊も甚だしい爆弾使おうとしないの、禁止ったら禁止!」
《芸術は爆発なので文化財になりません?》
「ならないから! ほら戦闘に集中して!」
《うっす……もしもしチヒロ? 爆弾使用許可降りないんだけどどうしたらいい? 頑張れ? もっとこう、媚び媚びなあざとさで言ってくれたら頑張れるような気がする。語尾にニャンを付けてくれたらもう言うことないね、サイコー》
「セクハラ絶好調か! バカ言ってないで頑張りなさいよ」
《じゃあアイエフさんがお願いしますっ!!!》
「死んでも嫌よっ!!!」
全力で断られてシュラも心なしかテンションが下がっている。機械なのにモチベーションに左右されるとはどういうことか。とはいえ、マジェコンヌは止めなければならない。何が起きるかもわからない瀬戸際に蓼食う虫も選んでいられない──、アイエフが怒りと羞恥心で顔を赤くしながらシュラに向き直る。
「が──が、が……」
《が?》
「~~~~、がんばれにゃんっ♪」
こんなところ絶対に知り合いには見られたくない。凍った空気にアイエフは死にたくなった。ちょうど手頃な枝が生え揃っている頑丈なサクラの木があることだし吊ってもいいかもしれない。
《シュラ、待たせた!》
「あー、マザコング! 生きとったんかワレー!」
「アイエフさん、無事ですか!?」
「あいちゃん、助けに来たですよぉ!」
「む、クロギアもいるではないか。これはどういうことだ」
「どうやら剣で聞くしかないみたいね、アンタの出番よアーサー」
「ゔぇぇぁあああああああ!!!?? な、なななななんでコンパ達まで!?」
《えっ、いや、俺一人じゃ心細いんで……》
「今の聞いた!? 聞いてないでしょ!? 聞いてないって言って、お願いだから!」
《録音済みなんで映像記録付きで記憶完了!!! 俺のやる気がフルタイム絶頂期を迎えた、覚悟しろマジェコンヌと魔神さん! 今の俺は──速いぜ?》
《そう言ってお前この間全力疾走から転倒して大破してんだから迷惑かけるなっす》
シュラは聞こえない振り、アイエフはその場に崩れ落ちて絶叫していた。マジェコンヌとクロギアは何もしていないのに阿鼻叫喚の図にレオルド達が狼狽えている。
《あの、ほら、アイエフさんめっちゃかわいかったですし元気だしてください!》
「お願いだから放っておいてぇぇぇぇっ!!! 今の話題に触れないで、後生だから!」
「やっぱりあいちゃんはねこさんがとてもお似合いですぅ♪」
「うぅぅぅん……!!」
《凄いっすね。俺達ロボットなんで表情変わらないっすけど、絶妙に複雑な感情が入り混じった顔をしてます、アイエフさん。羨ましいっす》
「おい貴様らぁ!!! 私を無視して身内で盛り上がるな!!」
《あ、すいません……》
素直に謝るレオルドに免じてマジェコンヌが鼻を鳴らした。
「ふんっ。まぁいい、貴様らがそうやって遊んでいる間にこちらも実験の準備が整った。数の不利はコイツ等でどうにかするとしよう──来い!」
声に応じるように黒い渦から姿を現すモンスターの群れに、ネプテューヌ達はギョッとする。マジェコンヌが命令するように指をさすと、レオルド達めがけて襲いかかってきた。
「な、な、なんじゃこりゃーーー!?」
「モンスターの大群が!」
「アンタ達は下がって、わたし達に任せなさい!」
「何言ってるの、あいちゃん。わたし達も一緒に戦うよー!」
「なんであなたがわたしの名前を知っているのかはいいとして、遊びじゃないんだから離れて」
「…………」
「……? なによ」
「もしかしてあいちゃん、わたしのこと忘れちゃってる?」
「そうかも……」
「うあ~、ショックだなぁ。親友だと思ってたのに忘れちゃうなんて……でもそれでめげないしょげない諦めないがネプテューヌなんだなー、これが! 刮目せよー!」
「ここは女神化で一気に……! 変身です!」
ネプテューヌとネプギアが同時に女神化してモンスターの群れの前に立ちはだかる。だが、シェアを失っているからか本来の力が出ないのだろう、少しだけパープルハートとパープルシスターの顔色が浮かなかった。
「──どうやら、わたし達守護女神からシェアが奪われているのは事実みたいね」
「あ、あなたその姿……!?」
「下がってて、あいちゃん。ネプギア。雑魚を蹴散らしてマジェコンヌを捕らえるわよ!」
「はい!」
パープルシスターが頷くが、自分達に向けられているクロギアの視線に射抜かれる。その手に浮かべられる黒く澱んだシェアクリスタルを自分の身体に埋め込み、小さく吐息を漏らした。
「──変身」
カオスシスターは両手に剣を携えて、二人の道を阻む。ゲハバーンの威力は嫌というほど知らしめられている。女神殺しの魔剣と対峙するのはリスクが大きすぎた。
《シュラ、俺の方から近くの部隊に連絡をしておいた。俺達で魔神さんを相手するぞ!》
《ファーッハッハッハ、今の俺はモチベカンストリムペットマンだ! 任せろ、どんなやつでも十秒送りにしてやるぜ!》
《なんかこう、やっぱお前変態の一角というのを嫌という程思い知ってるっす》
「お前の仲間は変態しかいないのか、そこのロボット……」
マジェコンヌにすら同情される始末。しかし、レオルドにとっては序の口だ。
ミリオンアーサーがエクスカリバーを引き抜き、カオスシスターの前に出る。
「あの魔神は女神の手に余るのだろう? ならばわたしに任せよ!」
《俺とシュラも頑張るっす!》
《勝手に頭数に入れられた。ポイズン》
「なら、わたしとネプギアでマザコングをどうにかするわ。あいちゃんとコンパはモンスターをお願い」
パープルハートの太刀がマジェコンヌの魔法を弾いた。
「ははは! シェアを失った貴様ら女神がわたしの敵になるものか、軽くひねってくれる!」
「マジェコンヌ。あまり時間をかけると警備隊が到着するので手早くお願いします」
「私に命令するな! そういう貴様も遅れを取るなよ」
「……クロギアと言えど、同じ顔がマザコングと並んでいるのは変な気分ね」
カオスシスターがフレアを撒きながらミリオンアーサーとレオルド、シュラの三人めがけて突撃する。ゲハバーンを用いた剣撃、至近距離で身を翻してX.M.B.B.の射撃機構を展開させた。連射される光弾を弾き、エクスカリバーで捌いて距離を取ると、今度はレオルドとシュラが前に出る。
実弾アサルトライフルと散弾銃による十字砲火を軽々と避け、宙へ逃れたカオスシスターにミリオンアーサーが魔法で追撃した。
「頼むぞ、我が騎士達よ!」
ゲハバーンの刀身が淡く輝き、その中に込められた女神の力を引き出す。
氷と炎の二重属性で光を防いだカオスシスターが急降下して急襲するものの、それを阻んだのはスライディングで滑り込んだシュラのショットガンだった。
《ハッハァー! 拡張された俺達の機能は無限大だぜ、スライディングもこのとおりだ!》
アクセルターンをしながら排莢し、続けて二発目で完全に足を止めたカオスシスターにミリオンアーサーがエクスカリバーで肉薄する。レオルドも背面のグレートソードに持ち替えて接近すると回転斬りで大きく吹き飛ばした。
《っしゃあ! よくやった万年ビリケツドベ隊長!》
《微妙に格上げされても全然嬉しくねえっすけど!? っていうかモンスター! モンスターの群れがヤバイっす!》
《なんじゃあこりゃぁあああっ!?》
シュラが振り返った先には、黒い渦から続々と出現を続けるモンスターに足を止められながら苦戦しているアイエフ達。数の暴力とはこのことか。