※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.77 万年ビリケツドベ太郎の憂鬱5

 パープルハート、パープルシスター、アイエフ、コンパの四人がモンスターの群れを掃討しながらマジェコンヌへ迫る。だがいかんせん、数が多すぎるから思うように前へ進めない。そんな四人に向けて容赦なく魔法を放つマジェコンヌに苦戦を強いられていた。

 

「くっ……! やはりシェアが無いと思うように戦えないわね」

「……」

「あいちゃん、どうかしたです?」

「わたし、やっぱり知ってる気がするけど……思い出せないのよね」

 大きな注射器で近づいてくるモンスターを撃退し、その背後から迫ってくるモンスターをアイエフが一閃する。

 

「アイエフさん!」

「しまっ──」

「クロスコンビネーション!」

 パープルハートが剣撃で窮地を救うものの、仕留め損ねた相手の反撃を食らって顔をしかめていた。パープルシスターが代わりにミラージュダンスで切り込み、身を翻す。

 

「あいちゃん、大丈夫?」

「え、ええ……わたしよりアンタの方こそ大丈夫なの」

「これくらい平気よ、心配してくれてありがとう」

「ねぷねぷ、応急手当だけでもしておくです」

 まだまだ増援の止む気配のない空間の歪みに、さしものパープルハート達も嫌な汗が出てきた。それにマジェコンヌは愉快そうな笑みを浮かべている。

 

「ふはははは、これは中々面白いではないか! さぁやってしまえお前ら!」

 殺到するモンスターの群れに、改めて四人が武器を構え直すと鈍重なホバー音が接近すると共にガトリングの空転音が聞こえてきた。次いで、高出力スラスターのエンジン音。

 

《撃つぞー》

 空転を終えた大口径ガトリング砲から無慈悲に撃ち出される弾丸の嵐はモンスターの群れを薙ぎ払っていく。銃身のクールダウンの間、横をすり抜けて実弾突撃銃を的確に急所へ撃ち込んでいくシャニがスピアに持ち替えて白兵戦に移行する。

 

《おい貴様等、万年ビリケツドベ太郎と変態四天王の一角! 何を手間取っている! この程度の数に怯んでプラネテューヌ警備隊が務まるか!》

《あーぶなーいぞー》

 蜂の巣にされていくモンスターの群れを抜けて、シャニがマジェコンヌへ接近戦を仕掛けた。

 槍を払うように杖を振るい、一転して不愉快な顔をしている。

 

「ええい、ロボット共め! 忌々しい奴らだ、どうせ女神のことなど覚えていないくせに」

《女神がどうとか知らんが俺達はプラネテューヌ警備隊だ! 貴様のような犯罪者を放っておけるか! サクラナミキでこんな大量のモンスターを発生させるとか正気か!》

《ここはアイツに任せて後方支援に徹するぞー》

《貴様も働け鈍牛!! 火力と装甲だけが貴様の取り柄だろうが!》

《いくぞー》

《俺の退避を待つ気はないのか!?》

 高出力プラズマカノンに持ち替え、群がる敵に向けて撃つと爆風で大量のモンスターが吹き飛んでいく。相手の出鼻を挫き、統制を失ったそこへシャニが再び突撃して更に撹乱していた。

 戦闘用として開発された機体の戦闘機動にマジェコンヌの命令が届かず、右往左往するばかりのモンスター達。それを飛び越えてパープルハートとパープルシスターは宿敵との接近を果たしていた。

 

「一体なにを企んでいるの、マザコング!」

「貴様は私の名前を徹底して覚える気がないのか!?」

「いいから答えなさい!」

「フン、だがやはり……!」

「っ、きゃああ!」

「信仰なき女神など脆い物だな!」

 パープルハートが押し負け、パープルシスターが受け止める。

 

「ふふ、ははは、悪くない……悪くないな! あの男の言葉は眉唾ものだったが、これは素晴らしいではないか! まるで守護女神が相手にならないとは!」

《うーつーぞー》

「ちっ。だが忌まわしきはこのロボット共か……!」

 プラズマカノンを魔法で防御すると、反撃に転じた。しかし、背面のバリアユニットを起動させて一撃を耐え凌ぐと、黒煙を切り裂いてシャニがマジェコンヌを蹴り飛ばす。

 

「ぐはっ……!?」

《ふん! よくわからんがモンスターを続々と投入してくるあの黒い渦さえ破壊すればいいんだろう! おい変態四天王最速のシュラ! 貴様の出番だぞ!》

《誰が四天王最速の早漏だって!?》

《いったい俺がいつそんな言葉を口にしたと思っている、いいからさっさと破壊しろバカ!》

《リムペットボムはアイエフさんから使用許可降りてないので使えませーん》

《ぶっ殺すぞ!!!!》

 フレンドリーファイアも遠慮なしに叩き込んでくるシャニに、シュラがてんやわんやとなりながら何とか抜け出してきた。入れ替わるようにカオスシスターとスピアで火花を散らすシャニと、グレートソードを振るうレオルド、そしてミリオンアーサーによって押し止められて小さく苦悶の声をもらす。

 

「ネプギア、あいちゃん、コンパ! マジェコンヌをわたし達で引きつけるわよ!」

「はい!」

「ええ、あの黒い渦の破壊はあのバカ達に任せておきましょう」

「怪我の手当は任せるです!」

 さりげなく聞こえてたシャニが何やら《俺をカウントするな!》と抗議の声を上げているが、聞こえないふり。

 止む気配のないモンスターの増援に、さすがのシュラもロゼも残弾を気にかけ始めていた。だがそこへ、ツキカゲとジーンが駆けつける。状況を把握した二人が頷き、撹乱と遊撃を引き受けた。

 

《こっちで動きをバラけさせる、そっちに任したぞ》

《足止めは任せろ、嫌がらせは大の得意だ》

《サンキュー二人とも! ロゼは後方から》

《いーくぞー》

《ライン上げでよろしく! 突撃ぃぃぃーーーっ!!》

『ウォォォーーーーッ!!!』

 

 ゲハバーンでエクスカリバーを防ぎ、X.M.B.B.で接近してくるシャニの胴体を射撃で撃つ。レオルドの大振りな一撃を軽やかに避けてカオスシスターは体勢を崩した二人へミラージュダンスで弾き飛ばした。その隙に黒い渦の破壊に向かう四人へ向けてバーストモードを起動させる。

 

「エクスマルチブラスター、バーストモード起動。なぎ払います」

《四人とも、避けろ!》

 高エネルギー反応のアラートに、四人が何とか避けようとするがロゼだけは足の遅さが災いとなって直撃を受ける形となった。しかし、バリアユニットと頑強な装甲のおかげで一撃は耐え忍ぶことができたようだ。黒く焦げた装甲の関節部から火花と黒煙を吐き出しながらも味方の突破口を切り開いている。

 止まらない勢いに、カオスシスターがゲハバーンとX.M.B.B.を合体させた。長大な太刀へと変化させると、今度こそ四体の前に立ちはだかる。

 

「──クロス、コンビネーションッ!」

《ロゼ、下がれ!》

 背面の両刀グレイブを展開させて、カオスシスターの連撃からツキカゲが前に出てロゼを庇う。だが、一撃の重さに軽量級の機体が耐えきれずに地面を転がっていった。ジーンが隙を突いて狙撃によって追撃の手を止めるものの、自分に近づいてくるモンスターに狙撃銃を手放して二挺拳銃に持ち替えて応戦する。

 シュラがなんとか黒い渦へ接近しようとするが、それも厳しい状況だ。カオスシスターだけで戦況がひっくり返されようとしている。

 

《みんな──!》

 レオルドが立ち上がるが、機体のアラートによって両腕の関節部が悲鳴をあげていた。ミラージュダンスを防いだ際に、グレートソードで無理に受け止めた結果である。しかし、大事な味方の窮地に黙ってみていることなどできず、損傷を押してレオルドは突撃加速装置を起動させてシャニと共にカオスシスターを退ける。ミリオンアーサーは自身を魔法で回復させてから再び駆け出した。

 

《っ、この! 俺の大事な仲間達をやらせはしないっすよ!》

《だからといって貴様が前に出てどうする! 部隊長だろうが!》

 長大な太刀から、長槍へと可変させた女神武器を薙ぎ払う。あわや直撃を食らうところだったレオルドを庇ってシャニがスピアで防ぐものの、左腕部を破壊されてしまった。それに毒づきながらもグレネードランチャーでモンスターを撃破している。

 ──なんとか、しなければ。レオルドが戦術プログラムを張り巡らせる。

 自分達が束になっても敵わない魔神が一人、モンスターが無数に押し寄せてくる絶体絶命の状況を打開する方法。守護女神は信仰を失い、仲間と共にマジェコンヌと交戦中。援護は絶望的だ。他の仲間の到着までまだ時間がかかる。

 こんな時、あの人ならどうするだろうか。シロトラ教官なら──。

 サクラナミキに舞い散る花びらがやけにゆっくりと感じられた。モンスターの動きも、カオスシスターの一挙一動も緩やかに見える。時間の流れそのものが遅くなっていたが、レオルドの計器には異常が見られない。

 

 黒い渦の先。光すら飲み込むようなブラックホール。見えるはずがない次元の裂け目の先に、白い孤影が見えた。

 プラネテューヌ国境警備隊最高司令官、シロトラが佇んでいる──そんなはずがない。そんな光景を見ることなど叶わないはずなのに、レオルドの視界には確かに映っていた。

 

『──システム・アンロック』

《──────》

 次の瞬間。頭部ユニットから響く電子音声に、レオルドは自分の視界が拓けたような感覚に陥った。今まで見えなかった敵の動き、これまでできなかった戦闘機動、手に取るように戦術プログラムが導き出す勝利の法則にレオルドは動き出す。

 アサルトライフルでシュラを撃破しようとするカオスシスターを退け、機体の動力源を上乗せした強装弾がわずかに後退させた。

 

「ッ……この、威力は」

《レオルド、おい。待て!》

 シャニの引き止める声も届かず、レオルドは機体を左右に揺らしながらモンスターの攻撃を避けて黒い渦へ向かって肉薄する。カオスシスターとマジェコンヌが同時にレオルドを止めようとするが、ミリオンアーサーとパープルハートによって阻まれた。

 手榴弾を黒い渦の手前に放り、モンスターの足止めをするとシュラがレオルドの切り開いた道を駆け抜けて遠隔操作型の爆弾を放る。二人が後退すると、次元の裂け目の奥で爆発音と振動が伝わってきた。

 関節部が悲鳴をあげているにもかかわらず、レオルドは片手にアサルトライフルを構え、機体を旋回させるように左腕でグレートソードを振るう。突撃加速装置によって切り伏せて手放すと、今度はこれまでにない命中精度でモンスターを撃破していった。まるでこれまでとは見紛うばかりの戦闘機動に、シャニ達が言葉を失う。

 

「──退くぞ、魔神」

「わかりました」

「待ちなさい、マジェコンヌ! 今度は一体何を企んでいるの!?」

「今の私は機嫌が悪い! 話す気など毛頭ないわ!」

 再び出現させた黒い渦へと姿を消す二人に、パープルハート達は呆然としていた。

 

「……なんとかなったわね、()()()

「ええ。いったい、何を企んでいるというの……? あいちゃん、今なんて?」

「だから、ねぷ子って呼んだでしょ。はぁ~……なんでわたしがこんな目に遭うのかしら」

「元気出すですよ、あいちゃん」

 マジェコンヌとカオスシスターが撤退したことで、モンスターも動きが悪くなる。それをロゼ達が手早く処理していくと、ようやくサクラナミキに静けさが取り戻された。

 エネミー反応が無くなってから、ようやくレオルドが止まる。機体の損傷がますます広がっており、今にも倒れそうなほどアラートが鳴っていた。

 

《レオルド……?》

《おい、大丈夫か》

 動きを止めたと思えば、その場に崩れ落ちる。シュラが修復装置を起動させて機体損傷を直している間、左腕部を失ったシャニが女神化を解除したパープルハート達へ歩み寄った。

 

《……貴方達には話しておくべきか》

「いったい、どうしたんですか。レオルドさん、まるで人が変わったように戦ってましたけど」

「ええ。万年ビリケツドベ隊長と言われているときとはまるで別人だったわ。どういうこと?」

《コイツは、俺達の中では機体性能を極端に引き下げられています》

「どうして? 今の動きが常にできるなら、戦力大幅アップじゃない」

《理由は、レオルドの機体が持たないからです。過剰なまでのエネルギー効率。それによって引き出される戦術プログラム。その機能を引き出させないために設計されたのが、俺達です。資源採掘用に設計されたコイツには、俺達では耐えられない高負荷に長時間耐えることができます。しかしそれは機体寿命を大幅に縮める。俺達の動力源が環境汚染物質の側面を持っていることから厳重にロックされているはずでしたが──まさか、使うことになるとは》

 レオルドはこれまで戦績が伸び悩んでいた。だが、それは当然の結果だ。そうなるように設計されていたのだから。プラネテューヌ警備隊の最弱であり続けなければならない。今回はその性能に助けられたが、高負荷に耐え続けた機体は修理装置だけでは完治しないほど損傷を負っていた。

 

《なぜアイツにだけそんな機能がついているのかは知りません。レオルドも知らないでしょうし、教会に戻った際は今回の戦闘記録も抹消されるでしょう》

「そんな。どうしてですか!?」

《これは俺達自身の存在理由に関わることです。現行の政治体制を脅かす可能性がある機体。そんなものをゲイムギョウ界が許すはずがない》

(……あれ? 今の言葉……それならどうして、シロトラは)

《だからこそ、俺達はこうして下々の働きに甘んじている。これ以上を望まない。俺達は巡回してから教会へレオルドを送り届けます。アイエフさん達は先にプラネテューヌへお戻りください》

 シャニが頭を下げ、レオルドの様子を見に戻る。複雑な感情を抱きながら、ネプテューヌ達はプラネテューヌへ戻るのだった。

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