※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.79 ラステイション編:神喰らいと獣狩り

 ラステイション軍と武装組織の混同部隊を撃退したエヌラスはドラッグシガーを一服して、身体のクールダウンと同時に銀鍵守護器官の安定化を図る。

 焼け野原と化した交戦区域、巻き込まれたモンスターだけでなく、地形すら変形させかねない威力の魔法を連発。教会を占拠した武装勢力の情報操作によって、既にエヌラスは破格の懸賞金が掛けられているお尋ね者だった。極東支部でゴッドイーター達と合流した頃には遅く、女神の記憶も失っていた神機使い達にすら追われる身となっている。

 

 ラステイション軍と武装勢力の混同部隊、装備の違いで見分けはつくが加減ができるわけではなかった。倒れている軍人はまだ息があるものの、しばらく目を覚まさないだろう。

 ケイ達の話では、ラステイション教会を追われて、軍部からも身を隠すために禁域の森へ向かっているようだ。

 ヤーナム・シティ。近い内に調査に向かおうとも思っていただけに、ちょうどいい。獣狩と呼ばれているあの狩人を思い出しながら、エヌラスはハンティングホラーを召喚する。

 増援でやってきた部隊も半壊させてやったが、連絡の途絶えた大部隊の死屍累々の惨状を見て戦意喪失したのか早々に撤退していった。

 そんな調子でほぼ丸一日、移動と戦闘を繰り返している。

 短くなったドラッグシガーを携帯灰皿へ捨てて、エヌラスはハンティングホラーで禁域の森へ向かった。

 首都近辺では顔を見ただけで通報され、近隣の街では買い物もままならない。装甲車に追われ、軍人に追われ、民間人からは悲鳴。九龍アマルガムで慣れているとはいえ、まさかラステイションで同じことをすることになるとは思わなかった。こうして人里を離れているにもかかわらず熱心なラステイション軍は捜索範囲を広げている。

 

 

 

 ──その連絡は、極東支部にも通達された。

 活動区域を広げるように、との連絡。それに支部長は承諾をするが、どこも人手不足だ。ただでさえ拠点の守りに人員を割いている状況で、とてもではないが加勢できそうにない。

 

「ったく、首都防衛隊の皆さんは気楽に言ってくれるぜ。うちが欲しいくらいだ」

「ふむ。そうは言ってもね、リント君」

「へいへいわかってます。出せる人員は最小限、活躍は期待するなって言っておきますよ」

「あの……! それならわたしに任せてもらえないでしょうか、リント隊長」

「なんでまたお前さんが」

 行方不明の第一部隊隊長の捜索も兼ねて、まだ未探索地域となっている禁域の森周辺へ向かう口実が同時に手に入る。ゴッドイーターはそれを進言した。加えて、こちらの任務は尾行と行動調査に徹する。ということも重ねてリント達に自分に任せてもらないかと食い下がった。

 確かにそれならばこちらか動員する人数も最小限、かつ相手方の要望も飲み込める。動機も納得できた。

 

「確かに。エヌラスは軍から追われている。建前上はこちらで追跡と尾行で護衛に付くべきか」

「しかし、彼自身は既にラステイション軍と事を構えている。ただ教会からの命令に背くわけにはいかない」

「……それでしたら、彼の身柄を極東支部で預かるというのは?」

「いや、教会から間違いなく明け渡すように命令が来るだろうな。時間稼ぎにはなるが」

「…………そもそも、どうして教会側は彼を確保しようと?」

 ゴッドイーターの素朴な疑問、それにリントとサカキ支部長も首を傾げる。そこへ、オルタも入室してきた。

 神蝕種、マガツビとの交流もある魔人。その保護を知らずうちに行っていた極東支部では一気に緊張感が高まった。だが、当人は怪我の手当をしてくれたその恩返しとして居住地などの警備を請け負っている。ラステイション軍の食客という立場に甘んじて、施設内を自由に行動していた。

 

「何やら入り用の話みたいだが?」

「オルタさん。身体の具合はどうですか?」

「問題ない。必要とあれば力を貸すが、どうする」

「えっとですね──」

 ゴッドイーターはオルタに、現在の状況を説明する。守護女神の記憶を失ったと言えど、それも完全ではない。何か違和感のようなものを極東支部の神機使いたちは抱えていた。

 

「──なるほど。あの男とは私も少なからず因縁がある。相変わらず厄介事には好かれる性質らしいが、私には関係のない話だ」

「そうかもしれませんけど」

「恐らく、教会の武装勢力はエヌラスを自分達の戦力として扱いたいのだろう。だからこそ軍を動かしている。だがいかんせん、あの男は守護女神を最優先としている。水と油が反発し合うのは当然の話だ。このまま教会が軍を差し向け続けるのであれば、そう遠くないうちに我慢の限界がくるだろうな」

「もし、そうなった場合は……」

「その結果、何が起きると思う? 教会の襲撃だ」

 想像に難くない。そんなことになれば、それこそ自分達では庇いきれなくなる。そうなる前になんとか手を打ちたい。

 

「なにか良い作戦はありませんか、オルタさん」

「なぜ私に聞く? まぁいい……そういうことなら、私が拠点の防衛を引き受けよう。その間にそちらでエヌラスを追跡なり尾行なり報告なりするがいいさ。禁域の森といったな?」

「ああ。どうもエヌラスはそっちに向かっているらしい。教会からの報告では、そちらに重要人物が逃げる姿が目撃されたんだと」

「すでにラステイションは武装勢力に掌握されているのが現状だ。今の教会にとって何か不都合な相手だとは考えられないか?」

「……となると、教祖様くらいしか」

「ラステイションの女神のシェアクリスタルを持って逃亡しているのだとしたら、今の教会からしたら最優先で排除したい対象だろう」

「となれば……」

 極東支部のやるべきことは禁域の森へ向かい、エヌラスとの合流。神宮寺ケイの保護。主目的はこの二つだ。

 

 

 

 ──任務を引き受けたゴッドイーターは極東支部の輸送車によって禁域の森近辺で降車する。

 長期間に渡る任務となる事を考慮して、バッグに支給品を詰め込んでいた。それと、アバどんの機嫌が悪くなった時の保険として着替えも多めに持ってきている。

 

「よし……ゴッドイーター、任務開始します」

《こちらかナビゲート出来るのは禁域の森の入り口までです。そこから先はラステイション軍でも未踏査区域。十分に気をつけてください》

「了解しました」

《既に周辺にエネミーの反応が多数確認されています。接触禁止種も複数います、見つからないように細心の注意を払ってください》

 無線の調子があまり良くないのか、普段よりノイズが混じっていた。ゴッドイーターは改めて禁域の森と呼ばれる地域を見つめる。

 鬱蒼とした密林地帯。薄暗く、肌寒い空気が漂っていた。まだ昼間だというのに、森は暗闇に包まれている。周辺を徘徊するモンスターの視界から隠れながら、入り口の近くへ身を潜ませた。

 ラステイション軍からの報告では、禁域の森へ向かう道中で休憩を挟んでいるらしい。現在はバイクで移動を続けているようだ。

 

(……教祖様達はもう森の中、かぁ。でもあんな暗い森の中に、本当に街なんてあるのかな?)

 名前を知っている人もそう多くない。本当にあるのかも怪しい。都市伝説のような街、ヤーナム・シティに住まう人々は総じて狩人である。危険な狩りを行う姿は凄惨なものらしく、そのことから獣狩りと呼称された──というのが、ゴッドイーターの知っている限り。

 バイクのエンジン音が近づいてくる。無遠慮な訪問に、モンスター達が一斉に反応していた。

 

「あの、今どうなってます?」

《──ザッ……、──エネミーが一斉にアクティブ化、対象へ向かっています》

「援護に向かったほうがいいでしょうか」

《いえ、その場から退避を──!》

 身を隠していたゴッドイーターが直感的に、身を隠していた岩場から飛び出した。神機で岩の破片を防ぎながら地面を転がると、モンスターが次々と倒れていく。

 エヌラスは無感情にドラッグシガーを咥えたまま襲いかかってきたモンスターを手当たり次第に叩き伏せていた。いつもの魔術ではなく、力任せの暴力。

 

「あ? なんだ、誰かと思えばゴッドイーターか。何してんだそんなとこで」

「……あの、まず落ち着いて話を聞いてもらっていいですか?」

「ラステイション軍は敵に回った、極東支部もだ。一人か?」

「はい。エヌラスさんの監視と尾行の任務で……」

「教会に報告するためなら、同行は許可できない」

《──ッド、……ター……! 聞こえ……》

「…………」

 ゴッドイーターは、エヌラスの見ている前でインカムを外してバッグの中へ入れた。通信機もこの先の森では使えない。

 

「極東支部との連絡は、これでできません。ここからはわたし個人の任務です。行方不明となった第一部隊隊長の捜索をまだ諦めてません。もうこの先にしか、手がかりがないんです」

「……なるほど? それで、俺への監視とケイの保護も兼ねて同行したいと?」

「そういうことになります……本来なら、これは今回の長期任務に含まれていません。ですが同行者がいたとしても、わたしは同じことをエヌラスさんに頼もうと思ってました」

「自分の身は自分で守れ。それと、今の俺は超絶機嫌が悪い。うっかり巻き込んでも謝らねぇからそのつもりでいろよ」

「は、はい……ありがとうございます」

 いつにも増して不機嫌な姿に、ゴッドイーターはエヌラスから距離を置きながら禁域の森へ足を踏み入れる。

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