超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ダイアルゼブラ荒原でバルバロスと共に行動を続けるアルシュベイトは、表向きは武装企業やエスーシャと対立しながら猛争モンスターの調査とソルジャー部隊を支援していた。その行動から着々とデータを収集してキャロラインはエスーシャの次の動向を予測する。エスーシャから不審な眼差しを向けられ、マークされても欠片も意に介さずキャロラインは行動を継続していた。
ベールはニトロプラスに協力しながらも、ソルジャーとして活動しつつ、さらに並行してリーンボックスに逃げ込んできたという大罪人の調査も進めている。それだけでも多忙を極めるが、普段の女神としての職務から解き放たれたベールは現在の状況を最大限に有効活用していた。
「ベールさん!」
「まぁ、ネプギアちゃん! わたくしに会いに来てくださったのですね! 流石はわたくしの妹ですわ!」
「えっと、お姉ちゃんに頼まれてお手伝いにきました。無事だったみたいでよかったです」
「ええ、ええ! もちろんですわ!」
「……あとわたし、ベールさんの妹じゃ……」
「今はそんな些細な事はどうでもいいのです、ネプギアちゃんがわたしのところへ来てくれたのですから!! ささ、お入りになってゆっくりくださいまし!」
ソルジャー部隊が宿泊しているホテルでネプギアがベールの部屋を訪れると、即座に連れ込まれる。そこにはすでに客人がいた。他ならぬニトロプラスはベッドに腰かけて銃の手入れをしていたが、ネプギアの姿を見ると会釈に留めて作業に戻る。
(あれ……この人が使っている銃、エヌラスさんの銃にそっくりだ……)
「あ、こちらはニトロプラスちゃんですわ。訳あってわたくしが協力している方です」
「よろしくね」
「はい、こちらこそ」
ベールにあてがわれている部屋は、これまでの働きもあって他のソルジャーよりも豪華な設備になっていた。ワンルームではあるが一通り揃っており、隣室はまるまるシャワールームとなっており、日頃の疲れを癒やすのに十分すぎるほどのスペースが用意されている。一人で入るには少々過分なほどだ。
ひとまず、ネプギアとベールはこれまでお互いが得た情報を交換する。その話に聞き耳を立てながらニトロプラスはバヨネットを研いでいた。
「──なるほど。マジェコンヌが」
「はい。最近プラネテューヌで農産物の売上、特にナスの品質低下で発覚したんですけど……」
「そのマジェコンヌってヤツは農家なの?」
「えー、と。まぁ色々ありまして……」
「ふーん……敵なら容赦しないけどね」
研ぎ終えたバヨネットに満足して、弾倉を回すニトロプラスはネプギアの視線が気になったのか顔を上げる。
「なに? アタシの銃がどうかした?」
「あ、いえ……ニトロプラスさんの使っている銃に、よく似たものを使っている人がいたもので」
「そうなんだ。なんてやつ?」
「エヌラスさんです」
「……またソイツか」
知っているのか、と尋ねてみるとつい先日もアルシュベイトから同じ人物の話を聞いたらしい。
「ですが、こうして話してみると……よく似てますわね。髪といい目の色も。それに戦闘スタイルも似通っていてまるで兄妹のようですわ」
「勘弁してくれない? まだ会ったことないけど度し難いクズなんでしょ、そいつ。そんなのと一緒にされたくないんだけど」
「た、確かにエヌラスさんそういうところもありますけど」
「否定しないんだ……」
「でも、そうなっちゃったのも事情があるというか、複雑過ぎてちょっとわたしの口から語るのは気が引けて……とにかく、一度会ってみて話をしたら印象も変わると思います」
「確信を得るだけだと思うけどね」
引き合わせたいような、そうでないような……。ネプギアは気を取り直して、リーンボックスの状況が武装企業の協力もあって良い方向に転んでいると判断した。それにはベールもニトロプラスもおおむね同意する。
「ただ、アルシュベイトさんはどうしましょうか」
「そうですわね。下手をしたらつるちゃんが殴り込んでくる可能性もありますし……」
「もしそうなったら事態は混乱しますよね……」
「ですが、ネプギアちゃんが来てくれたのなら百人力ですわ。これはもう妹百人分ということでわたくしの妹なのでは?」
「ベールの言っていることちょっとわかんない。ネプギア、わかる?」
「理解しかねますけど言いたいことがわかっちゃいます……。と、とにかくプラネテューヌはレオルドさん達が頑張ってくれてるみたいですし、ラステイションもユニちゃんが情報収集を頑張ってくれてます」
「ええ、そうみたいですわね」
「そうなんだ」
…………。
「……ねえ、アタシが聞いた限りじゃゲイムギョウ界ってもう一つ国がなかった? 確かベールから聞いた話じゃ、北の方にある白い大地の……ルウィー、だったっけ? そこはどうなの?」
「くっ、さすがニトロプラスちゃん。わたくし達ができるだけ触れたくない話題にさらっと触れてきますわね……!」
「わたしもあんまり言及したくないんですけど、ロムちゃんとラムちゃんのこともありますし話さないといけませんか……」
「なんでそんな嫌そうな顔するの? 聞かせてくれる?」
「え~っと……そうですね」
ルウィーではハンター制度が導入され、国を統治しているのはゴールドサァドではなくアズナ=ルブという反女神勢力の権力者。現在は行方をくらまし、姿を消した統治者に成り代わってルウィーの教会で実質的に支配しているようだ。教祖である西沢ミナはブランのシェアクリスタルを持って逃亡、ルウィー軍に追われる身。
ロムとラムはまだブランの足取りが掴めず、ハンター達の協力を得ながら捜索中のようだ。
「ベールの話じゃ、守護女神が本来国を治めている大陸なのよね。それが、エキシビジョンマッチをきっかけに世界が変わってしまった……その時に出現したのが、あの黄金の塔。そしてゴールドサァドってことで合ってる?」
「ええ、その通りですわ」
「そのゴールドサァド、なにが目的だったの? 女神に代わって国を支配するっていうなら、姿を眩ませてたら意味ないじゃない。まるで役割から逃げてるみたい」
ニトロプラスの言葉に、はたとベールとネプギアが驚く。
それもそうだ。統治者として活動をしているのが唯一リーンボックスのゴールドサァド、エスーシャだけなのだから。そして、厳密にはそのエスーシャですら別な目的で動いている。
「言われてみればその通りですわ。まるで突然大役を任されたような、そう、例えるならばイベントを目前に控えてギルドマスター権限を譲渡されたような」
「ベールさんのそれはちょっとわかりにくいです……ニトロプラスさんはどう考えてますか?」
「そうね。仮定としては、そのゴールドサァドは利用されたんじゃないかしら。打倒女神計画に。だから、いざ計画が成功してみると当人たちも知らされてなくて困惑しているってところ?」
「となれば、本当の黒幕がいるわけですわね? といっても、思い当たる節は一人だけですが」
「……」
プラネテューヌでマジェコンヌと行動していたクロギアから、ヌルズ・エクス・モルテスが糸を引いていると見て間違いない。だが、そうならば既に手を打っているはずだ。
あれほどまでに用意周到に立ち回っていた邪神がここで静観している理由がわからない。その意図が掴めずにネプギアが唸っていると、ベールに頬をつつかれた。
「ひゃあっ」
「そんな難しい顔をしてはいけませんわよ、ネプギアちゃん。きっとなんとかなりますわ」
「──そうですね。お姉ちゃん達だって頑張ってますし」
「それで。なんでさっきは嫌そうな顔してたの? 今の話をしていた限りじゃ特になにも問題なさそうだけれども」
ニトロプラスの言葉に、ネプギアとベールが視線を泳がせている。
ルウィーには、アレがいる。他でもない、ヤベーのがいるからできるだけ話題に出したくなかったからだ。
ハァド大戦では大浴場から狙撃でリーンボックス沿岸警備部隊をほぼ壊滅に追い込み、さらに浮遊要塞の戦闘能力を激減までさせた超常の化物がいる。むしろなんで今までおとなしくしているのかが甚だ疑問でならなかった。
「えっと、ですね。今、ルウィーにはかなりの要注意危険人物がいるんです……」
「名前を出しただけでもひょっこり出てきそうで怖いですわ」
「なにその都市伝説みたいなやつ」
「歩く超常災害みたいな人って言えば、伝わります?」
「なにそのどっかの財団で管理されてそうなやつ? っていうか人間なの?」
「一応国王様です……」
「あと、エヌラスの師匠でもあるみたいですわね」
「……だんだんアタシの中でそいつの評価が大暴落してるんだけど、そいつ頭大丈夫なの?」
ダメかもしんない。思っても二人は言わなかった。
「と、とにかくそんな人がいるんです! ルウィーでハンター制度が導入されて、その人達が愛用している温泉協会が大繁盛してるのもその人のせいでして」
「今回の事件に関しても完全にノータッチきめてそうですわね、あの御仁は」
「師弟揃って、クズね」
会えばわかる。そんなことも言えなくなる。ニトロプラスに教えてやりたかったが、ネプギアは何も言わなかった。ベールも何も言えなかった。