超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
次の一手を放とうとして――ドラグレイス=シルバーソウルが地平線を見上げた。濃紺の三機、それを率いる一機の軍神。
《その勝負、それまでだ!》
「アルシュベイト!? テメェまでどうした!」
《スマン、俺の不徳が成すところ――アゴウの右翼防壁が破られた。例の崩壊によって前衛を勤めていた三百名余りが“消滅”して現在は復旧作業に全力を注いでいる! “奴ら”が此処に向かっているぞ!》
「数は!」
《おおよそ、三千! 故に共闘を申し出る!》
「データよこせ、協力してやる! パープル、ブラック! 見てねぇで降りてこい!」
二人はドラグレイス=シルバーソウルの『セブンス』をようやく防ぎきったのか、息を上げて降りてきた。
「なんで私達を名前で呼ばないの?」
「今のお前をネプテューヌと呼ぶのは納得いかない」
《え、もしかしなくても君はあのやかましかったちっちゃい子?》
「ランス01、貴方まで私のことをやかましかったと言うの? ちょっとショックだわ……」
《……美人なのに残念だ》
「だろ? 中身残念だよな」
《ああ。残念女神だ……》
「貴方達、本当に失礼ね!?」
《茶番はそこまでだ! ドラグレイス、まだやるか?》
「グッ…………」
唸り、一本だけ突撃槍を発射させる。だが、その高速回転する一撃をアルシュベイトがただの一突きで消滅させた。
逆回転の捻りを加えた突きが、物理的に突撃槍の限界耐久を越えた威力で叩きこまれ自壊する。
《俺を貫きたくば、あと百本は持ってこい。して、どうする。お前から相手をしても俺は構わぬ》
「――――イイ、ダロウ……」
変神解除したドラグレイスが大剣を担いで、エヌラスを睨んだ。
「貴様は絶対に殺す。覚えておけ」
「やってみやがれ。今はそれどころじゃねぇ」
「えーっと、いいかしら。アルシュベイト、アナタさっきどれぐらいの数が来ているって?」
《三千だ。接敵予想時刻まで、百二十秒》
「残り時間二分!? ちょ、ちょっとそれでどうしろって」
《黙れ。作戦は無い! 近づいてくる連中を一匹残らずこの場で迎撃する! それだけだ! 以上で作戦の説明を終了する!》
「十秒足らずでブリーフィング終了!?」
そんな大雑把に拍車をかけたような作戦でいいのだろうか。だが、相手が作戦を持たぬ輩である以上はこちらも頭を悩ませる必要はない。正面から叩き潰す。これが最適解となる。
「“奴ら”って、なんなんですか?」
《説明していないのか、エヌラス》
「テメェの国に連れて行く予定はなかったんでな」
《それもそうか。説明は――》
《アルシュベイト様、来ます!》
《応ッ!! 潰しながらだ!》
対敵を確認したランス01が武装を構え、アルシュベイトが背中の長刀と突撃砲を両手に携えて切っ先を向けた。
《アレこそ俺が三千世界に唯ひとつ、討ち滅ぼすと決めた無尽蔵の絶望――“ヌルズ”だ》
「――――」
その数、三千。圧倒的物量でありながら、その種族は多様な生態系によって構成されるものの知能は持ちあわせておらず、ただただ本能的に行動する。その進行速度は土煙が上がるほど怒涛の勢いで差し迫るがアルシュベイト達に恐怖はなかった。
《
《応ッ!》
《殿はランス02,並びにドラグレイス!》
《了解です!》
「……フン」
《エヌラス達は俺達の討ち漏らしを排除してくれ。出来るな》
「聞くならやらせんじゃねーよ、やってやらぁ!」
倭刀を構えるエヌラスに、アルシュベイトがその不調を尋ねようとして顔を背ける。
《貴様と肩を再三、並べることになるとはな……此度は奇妙な縁だ》
「腐っても縁は縁だ。切って離せぬ情けありってな!」
アルシュベイトが腰部ブースターを吹かして跳躍する。地を跳ねるように移動するアルシュベイトとランス03がヌルズの先陣、その鼻先に着地と同時に長刀を振り下ろす。
《チェェェストォォオオオッ!!》
《チェェェヤァアアアアッ!!》
気迫一閃。土煙が源泉の如く舞い上がり、アルシュベイトが突撃砲をすかさず掃射する。網膜ユニットには次々と目標が補足されていき、それに向けて引き金を引いた。
ヌルズの構成陣形――
前衛を務める斥候の小型タイプはいくら相手しても苦にもならない。それどころか踏み潰せるほど脆弱な存在ではあるが、中型タイプはその全長がアルシュベイトの身の丈程もある。純粋に二百人を相手取るようなものではあるが、それがどうだと言わんばかりにアルシュベイトが腕を振り上げた。
《震撃・陽炎!》
炸裂する反応炸薬装甲が小型タイプをなぎ払い、ベアリング弾が中型タイプも巻き込んで引き潰していく。何匹か抜けた――とはいえ百匹程度だが、エヌラス達の手によって残らず倒された――次には、格闘型タイプ。その数にして三百。
大きく盛り上がった両肩に頭が埋まりかけている間の抜けた図体で野牛の如く野太い脚で一歩一歩大地を踏みしめる。拳と呼ぶのもおこがましい両手は、指さえ無かった。ただただ鉄球の如く堅牢な皮膚があるだけだ。
ランス03が突貫する。アルシュベイトはその場で留まり、進軍する中型タイプを食い止めていた。
拳を振り上げ、脚を使い、長刀を振りぬき、突撃砲で胴を撃ち抜く。孤軍奮闘にして万物不当。ヌルズはアルシュベイトに傷一つつけることは敵わなかった。
腰部ブースターを片側だけ点火して軸足で回転しながら切り払う。接地と同時に長刀を下げ、切っ先を地面に当てる。次いで、逆側の推進剤を点火しながら切り上げると衝撃波が中型タイプの中央に大きな穴を開けた。陣形が崩れたそこへ、アルシュベイトは両腕を天に掲げる。
《御剣・武御雷ッ! チェェェストォオオオオオオッ!!》
稲光が鉄槌のように叩きつけられ、ヌルズの陣形は二つに分かたれた。陣形を大きく崩されたヌルズは習性である無意識集合によって進軍する足を止める。奴らは群れで行動し、必ず陣形を崩されればそれを直すために動く。それを知って、アルシュベイトは愚行とも言える一刀を振り下ろした。
その場で大きく跳躍し、背部ラックに武装を戻すと上空から状況を即座に判断する。
《トーネード!》
両腕で保持される大型ライフル。樽のような弾倉を持ち、突撃砲とは破壊力が違う。それに使用される弾薬は対物質量に匹敵する――本来ならば城壁や機甲兵器に用いられる物を改良した徹甲芯炸薬弾は、もはや小型グレネードライフルとして空中からヌルズ達を“爆撃”していく。集合しようとするヌルズが更に分散され、孤立した矢先にランス03の二刀流で血の雨となって消え失せる。ランス02も遠距離からグレネードによる援護射撃によって正確な射撃で相手の動きを妨害していた。
《エヌラス、切り込め! 今ならば烏合の衆も同然! 残敵は五百を切った!》
「俺達いらねぇじゃねぇか! おら行くぞぉぉぉッ!!」
エヌラス。ランス01、そしてネプテューヌ達が散り散りとなったヌルズ達を一匹残らず全滅させていく。それでも包囲網を抜け出し、しぶとく九龍アマルガムを目指そうとするものは残らずランス02の射撃とドラグレイスの魔法剣によって余さず瓦礫の染みとなって消えていった。