※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.116 情報通の最強武器はペン

 デンゲキコはどうやら、最近巷で話題となってしまったエヌラスの取材に来たようだが、女神ブラックハートのファンクラブ会員でありながら女神の記憶がすっぽ抜けている。しかしノワールの事は指名手配されたことで情報を仕入れていたようだ。記憶がなくてもそこは抜かりなく。

 

「なにか飲むか?」

「じゃあスポーツドリンクお願いします! 実はちょっと走ってきたので喉が……」

「水でいいか」

「スポドリで!」

「そんなん都合よく置いてるわけねぇだろうが! あったわ!」

 スピカがあらかじめ冷蔵庫に数種類の飲み物を備蓄していた。流石は有能メイド。ただしポンコツなのが玉に瑕。エヌラスはデンゲキコにコップを渡す。

 

「それで、何の用事だ」

「え? ですから取材ですよ、取材」

「……なんか取材されるようなことあったか?」

「ありますよ! 例えばヤーナム・シティや、禁域の森、それだけでなく今回の教会奪還の件について独自取材を!」

「仕事熱心だなーお前、なんか救われるわ」

 ゲイムギョウ界がこんな状況になっても変わりないデンゲキコに免じて、エヌラスは情報交換という体裁で自分が見聞きしたことを話すことにした。

 

「そうだな……そっちで他の国のゴールドサァドは掴んでないのか?」

「残念ながら。やっぱり政治的な情報を掴むのは骨が折れますねー」

「なるほどな」

 ラステイションのゴールドサァドに関してはこちらが一歩リードしているが、デンゲキコが質問攻めをしてくるだろうことは容易に想像できるので黙秘する。

 

「ファミ通はどうした?」

「プラネテューヌで取材中ですね。わたしはラステイションからほとんど出てないですから」

「……なら、ラステイションの情報は俺よりも持ってるはずだな」

「もちろんです!」

 胸を張り、自信満々に答えるデンゲキコだが、小首をかしげた。

 

「あの、なんでファミ通さんのことを?」

「え? だっていつも一緒だっただろ」

「いやいや、いやまぁ……確かにライバルですけど! だいたい一緒にいましたけど!」

「だからてっきり一緒にいるものだと思ってたんだが」

「あー……はは……と、とにかく! こっちの取材をさせてください!」

「わかった。話せるだけのことは話す」

 

 

 

「──なるほど。ではラステイションの政治はこれから不在のゴールドサァドに代わって、教祖様が執り行うんですね」

「そういう方針だ」

「でもエヌラスさんは国際指名手配されたままになりますがいいんですか?」

「別に。追われる身は慣れてるからな」

「そうですよねー。特に女の子から。でもエヌラスさん、女性のことは追いかけないですよね」

「そりゃあな」

「……そういえば、色々な次元を旅してきたのにそこで出会った人達のこと全然喋らない気が」

「話しても仕方ないだろ」

「会いたいと思わないんですか?」

「叶うならもう一度くらいは」

「えー、なんですか冷たいですね……」

 それが叶うなら、という願望は果たして。だが、今の自分には不可能だろう。次元渡航も失い、邪神ヌルズが本領を取り戻した今となっては。

 デンゲキコはメモにまとめているのか、話し終わった後もペンを走らせていた。

 

「ふむふむなるほど……」

「書き終わったか?」

「はい! それで興味本位なんですけど、これまでどんな女の子達と出会ってきましたか?」

「なんで女の子限定なんだよ!?」

「え。だってエヌラスさんと言えば無自覚に女性を口説き落としてるイメージが……」

「口説き落とした覚えは一切ない」

「じゃあ恋に落としたりはしている、と……罪作りな人ですねー」

「突き落としてやろうかデンゲキコ。四階から」

「リアルで死にそうで死なない絶妙な高さから人を物理的に落とすそうとするのはいかがなものかと思いますが!?」

「知ってるか。人間、上手く着地したとしても落下の衝撃をうまいこと逃がせないと内臓圧迫されて最悪死に至るんだぞ」

「今の話をされたあとだとものすごい怖いんですけど!」

 話が脱線しそうなのでエヌラスは早めに話題を切り替える。

 

「教会を占拠した武装勢力について、なにか情報は持ってないのか?」

「反女神派と傭兵組織のことですか? あれは元々ラステイションで悪さをしていた集団です。名前は……えーと……どのページだったかな……」

 電撃マークのページを捲り、デンゲキコは独自調査で手に入れた情報をまとめた付箋を探した。

 

「あ。ありました! 傭兵組織はギルドのクエストの仲介業者のような方たちですね。モンスター退治や、新型兵器の実践テストなどを金額次第で請け負ってたりする人達なんですけれども、それも女神様がほとんど片付けて仕事の収入が減っていたみたいで……あれ? なんでここに女神様のこと書いてあるんだろう……」

「なるほど?」

 それが反女神派と結託した理由は、逆恨みのようなものだろう。動機も理解できる。ただブラックハートが守護女神として優秀過ぎたがために起きた悲劇だ。そのことで責めるつもりは微塵もないが、それにしても不運な話である。デンゲキコはしきりに首を傾げて唸っていた。

 

「ここも……あれ、ここもだ。なんでわたし、こんなにたくさん女神様のこと書いてたのかちょっと記憶に無いんですよね」

「ちょっと見せてみてくれ」

「ダメに決まってるじゃないですか! このメモはいわば乙女の秘密ですよ!?」

「秘密は暴くもの、墓と一緒。アトラック=ナチャ」

「メモ帳ー!! ダメですってば、返してください!」

 指先から魔力で編んだ蜘蛛の糸を射出すると、メモ帳をデンゲキコの手からひったくる。

 ページを読んでいくと、そこには簡潔だが要点だけをまとめたかわいらしい文字が一面を埋めていた。時々ポリゴンのクマが吹き出しを出している。特に重要なところにはそのクマを書いているようだ。

 

「なになに? ……「女神ブラックハート様の活躍一覧」。○月×日、モンスター退治十件。地方都市のクエスト達成。女神の威厳、見せつける……おまえこれ、ほとんどストーカーみたいなものじゃないのか?」

「ちーがーいーまーすー! いいから! 返して! ください!」

「えーとどれどれ? 他の情報は……」

「ちょっとぉぉぉ!! 聞いてますかエヌラスさぁん!?」

 顔を真赤にしながら迫るデンゲキコがローテーブルに足をぶつけて半泣きになりながらソファーでくつろぐエヌラスの手からノートを取り返そうとする。しかし、その場から動かずに手をかいくぐり、避けられた。

 

「傭兵組織、ヘイヴン。創始者ボス? 信仰に頼らない時代を作るための武装集団。反女神派と結託……不穏な動き有り……守護女神ブラックハート様(←ココ重要)の活躍により拠点のアーセナルシェルター陥落……一部メンバー消息不明……リトルアイランドプロダクション解散の危機」

「返してくださいってばぁぁぁ……!」

「ええいちょっと待て。もう少し先を読ませろ」

 追いすがるデンゲキコの顔を片手で押さえつけながら、エヌラスはページを読み進める。

 傭兵組織もトップとメンバーで何か諍いがあったのか内部分裂が起きた。その軌道修正をしていたようだが、そこにブラックハートによる武力行使が行われて壊滅。メンバーは散り散りに。その余波を受けて資金援助や武器開発を請け負っていたリトルアイランドプロダクションが解散に瀕していた、という。メンバーの名前までは流石に載っていなかったが、ケーシャもその一人だったと考えれば、二度に渡る狙撃も納得できる。

 エヌラスは不意に力を弛め、引き寄せるようにデンゲキコの身体をソファーに倒した。ちょうど膝の上の身体が横たわるように。

 

「仮にも相手は武装組織だってのに、よくこんな情報集めたな」

「ふふん。ペンは銃より強し、です」

「気をつけろよ」

「リスクが伴ってこその情報ですからね! って、いいから返してくださいよ」

「ほれ」

 素っ気なく返されたメモ帳を受け取り、一安心する。だがやはり気にかかるのか、なぜ統治者であるゴールドサァドではなく記憶にない守護女神について書き記していたのかデンゲキコは考えていた。

 

「で、俺への取材はもういいのか?」

「はい、ありがとうございました。いやー、これで秘匿が破られますね! ラステイションの謎がまたひとつ解明されて女神様も喜ぶと思います」

「先に教祖様現地入りしてたけどな」

「あー……じゃあ正式に発表されるまで控えます……政治的理由でもみ消されたり情報差し押さえられるのかなり辛いので……」

「割と切羽詰まった理由だな……」

 そこはちゃんと譲るらしいようで安心する。

 

「なぁ、デンゲキコ。ラステイションの統治者ゴールドサァドをどう思ってる」

「え? いえ特に、なにも。これといって興味が湧かないんですよ。長年不在なわけですし」

「長年? それでどうやって治安維持してたんだ?」

「……教祖様が仕切ってたから?」

「傭兵組織は女神様とやらが壊滅させたんだろ」

「そう! それです! この女神様が何なのかまったく情報がなくて、その手がかりを得ようと思って来たんですよ、そうでした! 女神ブラックハート、一体何者なのかわたし気になります!」

「いや、女神だろ……」

「そうじゃなくって! ──って、あれ? なんか情報が矛盾してるような、なんか違和感が」

 どうも、記憶が無くなってもその違和感は拭えないようだ。いないのが当たり前と刷り込まれているのならば、挽回の余地はある。しかし、それも結局は守護女神自身の信仰次第だ。

 自分では力になれそうもない。なにか方法はないか考える。

 

「教会占拠してた武装勢力は撤退したわけだが、どこに行ったか知らないか?」

「うーん、そうですねー……目撃情報からですと、拠点跡地かと」

「……どこにあるんだ、アーセナルシェルターは」

「まさか行くつもりですか?」

「売られた喧嘩は徹底的に買う主義だ」

 だが決して独りで行くつもりはない。スピカとカルネが戻ってきてから行動を起こすつもりでエヌラスは取材を終えたデンゲキコを見送った。

 ──翌日、カルネが頼まれていた道具を持ってきたものの、追加のメモを渡されて半べそかきながら九龍アマルガムへとんぼ返りすることになる。だが、スピカの見積もり通りに四日目に二人は戻ってきた。

 ケイが教会に戻ってからラステイションは驚くほど静かだった。まるで元ある鞘に収まったかのように、一週間足らずで女神へのシェアが回復しつつある。その奮起ぶりにはデンゲキコも触発されたのか記憶が無くなった今も同じようにラステイション専門で記事にすべく情報を求めているようだ。

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