※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.126 頂上疾走

 

 

 

 魔術工房で目を覚ましたカルネは、すぐに服を着替える。メイド服に袖を通してから時計を確認して青ざめた。スピカに言われたとおりに朝食の準備を済ませて、すぐにエヌラスの部屋へと向かう。しかし、中にいたのは裸で寝ていたスピカだけだった。傍らのテーブルには二挺拳銃が置かれている。

 

「おはごじゃもうすご主人様ー!! と思ったけどごじゃもうせなかった! スピカ姉、朝だよ」

「…………うるさい」

 毛布にくるまり、寝言のように呟くスピカは背を向けた。朝は低血圧気味だが、何か違和感を覚えたのか身体をすぐに起こす。部屋の中を見渡して、テーブルの上に置かれた二挺拳銃を見て目を細めた。

 

「カルネ、ご主人様は?」

「えっ? 私さっき起きて超速で朝食用意したんだけど」

「この愚妹。便器掃除一週間」

「非道!」

 ベッドから降りると裸のまま工房の中を歩き、自分のメイド服に着替えたスピカは二挺拳銃を後ろ腰のホルスターに交差させるように差し込む。コントラバスケースを開けて、銃器を収納していく。身の丈を超える巨大な楽器ケースを肩紐で担ぎ上げると魔術工房から出ていった。カルネは手を付けない朝食を保存して緋太刀と高周波ブレードを後ろ腰に下げて続く。

 

「ぐえっ!」

「何をしてるんですか、カルネ」

 早速ドアに引っ掛けて転んでいた。ちょっと間の抜けた妹を呆れながらも、ちゃんとついてくるまでスピカは立ち止まっている。背負う形に切り替えて、カルネが小走りで後に続いた。

 魔術工房の正面玄関前でハンティングホラーがスタンドを立てて待機しているのを見て、二人は目を丸くする。

 

「ハンティングホラー、ご主人様はどちらに?」

 スピカの問いに、漆黒の魔獣はエンジン音を唸らせて答えた。スタンドを上げて、二人の前に静かに近づく。

 カルネがハンドルを握り、その後ろにスピカがしがみつく形で乗車すると自律駆動を始めた。

 向かう先は黄金の頂。何故エヌラスがハンティングホラーと愛銃を置いていったのか二人は察していた。

 自分の老い先が短いことを知ったから信頼している相手に預けようというつもりらしい。

 

「カルネ、飛ばしなさい」

「おーらーい、アクセル全開! 風になーれー!」

 ハンティングホラーが鈍重なエンジン音と共に走り出す。

 

 

 

 傭兵組織ヘイヴン拠点・アーセナルシェルター跡地にブラックハートとブラックシスターの二人がラステイション軍を引き連れて到着すると、跡形もなく破壊された拠点の様相に目を丸くしていた。ここを壊滅させた時よりも更に酷い。これでは立ち上がろうとする気も無くす。

 廃墟、あるいは更地にも等しい跡地でブラックハートは深くため息をつく。

 

(これだけのことをしでかしておきながら、瀕死とか信じられないわよ……)

 エヌラスがやったであろう破壊の痕跡は大体ひと目でわかる。例えば──ガラスのようにな切り口の隔壁。内側から()()()()()かのような穴。サイズにして拳大ほどのそれは、魔導発勁によるものだろう。

 ブラックハートとブラックシスターが拠点の中を見て回り、教会から奪ったと見られる物資を片端から取り返す。着の身着のまま逃げ出した、或いは準備する暇もなく襲撃されて手つかずとなっていたものもあったことから、エヌラス達の強襲はそれほどまでの効果を及ぼしていたと窺える。

 これまで、何度も思い知らされてきた。魔人という本質の欠片を。だが、それでもいいと思っていた。相手が誰であろうと、自分が認めた仲間なのだから。度が過ぎるのが玉に瑕だが、エヌラスは大事な、とても大事な仲間だ。それを失うと考えるだけで胸がひどく痛む。

 

「……お姉ちゃん?」

「なんでもないわ。次の部屋に向かうわよ」

「うん」

 照明の破壊された薄暗い施設の中を進む二人。廊下に散らばる瓦礫と弾丸、むせ返るような鉄と硝煙の香りに顔を曇らせながら部屋を調べる。そこは資料室だったのか、書類が棚に詰め込まれていた。ほとんどは床に散らばっている。

 これまでの活動記録。兵器のテスト結果や予算案に資源の記録が事細かに記載されていた。この拠点を運営するのだってタダではないのだから当然だろう。

 ブラックハートがその書類を拾い上げて何となく目を通していると、組織の創立者について記載された重要書類が出てきた。なんて大雑把な情報管理なのだろう、傭兵なんてそんなものだろうかなどと考えながらも読み進める。

 

 誰も名前を知らず、ボス、或いはジョン・ドゥなどとはぐらかされて呼ばれていたらしい。潜入工作任務のエキスパートであり、銃撃戦はもちろん、白兵戦、のみならずサバイバル能力も群を抜いていた。一線を退いてからも教導官として従事していたらしい。女神への信仰だけでなく自分達の力だけで生き抜く術を叩き込んでいたようだ。

 書類に目を通しているブラックハートとブラックシスターのもとへ、ラステイション軍の一人が駆け寄ってくる。

 

「失礼します、女神様。黄金の頂へ調査に向かった別働隊から報告が」

「なに?」

「傭兵組織が全滅した状態で発見されたと……」

「……どういうこと?」

「全員、死亡していた、と。それと門が開いているとも同時に報告が寄せられました」

「──ココは貴方達に任せるわ。わたしとユニはそちらに急ぐわ」

「はい。了解しました」

 事務的に報告を終える兵士を追い抜いて、ブラックハートは青空へ向けて飛び立つ。その後に続いて、黄金の頂に急ぐ。

 寒気がした。何か、良くないことが起きるような気がして。

 

「全員死亡していたなんて……もしかして、エヌラスさんが?」

「……考えたくないわ」

 ゲイムギョウ界に来てから、誰も手にかけていないことが奇跡的に過ぎるほどだ。それも一重に自分達のためだと考えると、それほどまでに負担を強いていたのだろうか。

 

 黄金の頂前には、ラステイション軍が傭兵達の死体を前に嫌悪感を露わにしていた。銃痕や切り傷で亡くなっていることから、本当にエヌラスがやったのかと思ったがブラックハートは何か違和感を覚える。

 銃痕にしたって、小さい。こんな細々としたものではなく、大砲のようなもので撃ち抜かれるはずだ。肉片が飛び散るほどの破壊力で。剣にしたって、切り口が焼け焦げている。もっと的確に急所を貫いたりするはずだし、殴打された死体が一つも見当たらないのは妙だ。第三者が行なったと見て間違いないだろう。

 開かれたままになっている黄金の頂、その門を見てブラックハートとブラックシスターは一度だけ女神武器を構え直し、中へ突入を試みようとする──その矢先に、聞き慣れたバイクのエンジン音が響いてきた。

 ハンティングホラーに跨ったカルネと、スピカの二人が女神に先んじてラステイション軍の頭上を飛び越えながら黄金の頂へと突入していく。呆気に取られていたが、気を取り直して後を追う。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい二人とも!! 何してるのユニ、急ぐわよ! あの二人に先を越されてたまるもんですか!」

(お姉ちゃん、ストレス溜まってるなぁ……)

 怒りに眉を吊り上げる姿に、そんなことをぼんやりと考えながらブラックシスターは先行するハンティングホラーを追跡する姉に続いた。だが、流石はエヌラスが愛用する鋼鉄の魔獣だけあり馬力も怪物じみている。それどころかカルネがナイトロを吹かして爆音と共に疾駆させていた。

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