超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
容姿端麗。眉目秀麗。上から下までスタイル良し。しかし中身はポンコツ。さらに言えば戦闘用自動人形であり、業務上のサポートを目的とした設計のはずであり、目的そのものは完璧に達成した。これ以上ないほどに。
スピカはクリスヴェクター・コンバットカスタムを二挺。.45ACP弾を使用する短機関銃であり、その特殊機構によって反動を抑えているのをいい事にこれでもかとアホのように改造したのがエヌラス。それを平気な顔で使いこなすのが、ロングスカートの中身は乙女の武器庫、スピカ。サプレッサー、ロングバレルの類には手を付けず、フォアグリップがあるべき場所に超大なサバイバルナイフがバヨネットとして追加されており、それを覆う形でトリガーガードまでカバーしているものだからまるで獣の頭を持ち歩いてるように見える。
それとは正反対にカルネの装備は極めて軽装だ。朱い太刀一本。それだけだ。然しながら、その腕前は目を見張るものがある。エヌラスが言うにはカルネの使う太刀は特別な逸品らしい。ちなみに、とあるアパートの近くでゴミ捨て場から“拾ってきた”と言っていた。果たして本当に拾ってきたのかどうかは神のみぞ知る……。
「まぁそのようなことは置きまして、無事で何よりです」
「そうそう。それで、どうして戻ってきたんですか? やっぱりカルネ達が恋しくなって来ちゃいました? 疼いちゃいました? いきり勃ってます?」
「首から上をふっ飛ばされたくなかった今すぐ口閉じろ、カルネ」
「……死姦! 死姦ですか! Hello,New Worldですかエヌラス様フンスフンス!」
アクセル・ストライクがカルネを即座に黙らせた。
「ごめんなーコイツなー有能なんだけどポンコツでなーホントなーゴメンなー」
グリグリと背中を踏みつけてやると「んひぃぃんんっ!」と恍惚とした艶かしい声をあげるカルネを更に強く踏みつける。
「あふぅ! エヌラス様ぁ、もっとぉ……」
「頭の中身も自分好みにできたらよかったんだけどな……」
残念ながら叶わぬ夢。今となっては手の付けられない変態と化していた。眉間を押さえて深々とため息を吐きながら比較的まともに話の通じるスピカに近況を尋ねる。特に変わりはないとのことだ。
「えっと、この死体の山ってなんなの?」
「患者ですけれど?」
「患者!?」
「ですがここは教会ですので、生憎と診断は受け付けておりません。困りましたわ、しかも特異変質体構造患者が殆どですもの」
言われて、改めて目を背けたくなるような死体の山を見て、その中に腕が鉤爪状になったもの、翼が生えたもの、両足が盛り上がったもの。明らかに人間以外の姿形をしているものたちが占めていたことに気づいた。
「数は」
「1890名ですわ。困り果てました」
「少ねぇな」
「す、少ない!?」
「多いって言うのは、万単位からだ。まぁウチでこれだから中央病院には今頃五万人くれぇ担ぎ込まれてんだろ。立ち話もなんだ、中で話すか。外は危険しかねぇし」
それには同意する。今もBGM程度の気軽さで殺人事件とか起きている。だが誰も止めようとしない。ネプテューヌ達も流石にこの街に限っては犯罪行為の数々を黙殺することにした。首を突っ込んでいたらキリがない。
九龍アマルガムの教会である病院の敷地に入った瞬間、何か見えない壁のようなものを抜けた感覚にノワールが振り返った。
「結界……?」
「お気づきになられましたか」
「ええ、なにか違和感のようなものがあったからね。でも、どうして?」
「街がこのような状態では教会を保護するのは至極当然。賊に入られてはたまりませんもの」
それもそうだ。だが、人間ではなく霊的な物を相手にした結界のように感じられて、はてと首を傾げる。それにスピカは「ウフフ」と笑って口元をクリスヴェクターコンバットカスタムで隠す。
「人間でしたら殺せますから」
“言ってることがメチャクチャ怖い!”
「ええ、それこそ百でも二百でも千でも、なんなら今から万単位で少しばかり虐殺してきてもよろしくて?」
「いい、全然いいから! そういうのそこまでしなくていいから!」
「拙者であれば三日もあれば造作も無いこと」
「聞いてませんからブシドーさん!」
「百万人死のうが別に問題ねぇけどな」
「ちょっと、アナタ国王よね!?」
「死体のほうが以下略」
「もぉおおおお!!!」
ノワールが半ギレになる以外は概ね平凡に教会の中へと足を踏み入れる。
病院のような外観から、中は一転して様々な生き物の標本や奇怪な
「イッタ~イ。ビリっときたよビリっとー。でもちょっと楽しかったかも。もう一回」
「いや、遊ぶなよ。そこにあるやつだけで街一つ消し飛ぶんだから」
「やっぱやめよ」
即座に手を引っ込めた。
未確認生物までも捕獲されて檻の中で喚き散らしている。エヌラスが一喝すると怯えて隅の方に逃げ込んだ。
さらに奥、風変わりな扉を開けると景色が一変する。そこに広がる広大な敷地。そして大豪邸。芝生の敷き詰められた青々とした庭――エヌラスの本拠点、自宅だった。
「教会から位相をズラして異空間の自宅に通じる扉だ」
「青いタヌキのどこでもいけるドアみたいだね」
「でも自宅って……」
「自宅兼作業場兼仕事場だ。教会の方で出来ない仕事やるから、まぁ九龍アマルガムに関してはこっちの方が本拠地だな」
「じゃあさっきの趣味の悪い博物館って」
「……師匠の収集品。自慢したくて置いている」
ヘタすれば世界が滅ぶような代物をまるで見世物のように放置しておくというのは豪胆と言うべきか世紀の大馬鹿野郎と罵るべきか判断に迷う。
エヌラスが正面玄関の扉を開けると自動人形のメイド達がせっせと掃除に精を出していた。それも十人十色、全員の容姿が違っていた。
『おかえりなさいませ、エヌラス様』
「出迎えご苦労。仕事に戻ってくれ」
「……人形趣味?」
「アホ言え。普通のメイドだったら半日経たずに発狂して使い物にならねぇよ」
「アナタの自宅に一体なにがあるってのよ……」
「スピカ、カルネ。四人をもてなしてやってくれ。俺は着替えて仕事片付けてくる」
「かしこまりました。では、こちらへ。ブシドー様は?」
「拙者に気遣いは無用。然しながら、護衛を任された身。同伴させていただく」
そうしてネプテューヌ達は応接室へと案内された。豪華な調度品に、見るからに高級品で埋め尽くされた室内はそれとなく気が引き締められる。カーペットにシミひとつ作ろうものなら一体幾ら請求されるものやら……ネプテューヌが生唾を呑み込んだ。
「……もしかして、エヌラスってホントはものすごくお金持ちなんじゃないかな」
「あら、エヌラス様のことご存じなかったの? ここにあるの全部あの方の私物ですよ?」
「どえぇぇぇぇぇぇっ!? こ、この豪邸も!?」
「はい。そりゃもう当然。他のメイド達だって全部ご自分のお金ですし。一度購入してから自宅でバラしてもう一度組み立てるくらいには趣味の良い方ですので目指せ玉の輿!」
「カルネ、手元が狂いました」
「うっひゃあああ!?」
クリスヴェクターと朱い太刀が火花を散らす。
「うふふふふ、どうにも出来の悪い妹でごめんなさいねー今お茶を淹れてきますので。ほら、いきますよ」
「……気の休まらない自宅ね」
とはいえ、これで一段落だ。四人は大きく息を吐き出す。ブシドーだけは腰を下ろさずに壁に寄り掛かっていた。