※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.142 なるはやで!

 

 ──ベールとネプギア、ニトロプラスの三人はホテルの一室で頭を悩ませていた。

 追われる身となったアルシュベイトの行方は以前として掴めず、各地の拠点を転々としている。それだけでなく傭兵達の支持もあった。そこから、間接的に武装企業のバックアップも受けている状態だ。実質、ゴールドサァド対レジスタンス勢力という形に収まっているのが、現在のリーンボックス。

 

「はぁ…………」

 それに、重々しくため息をつくベールが胸を持ち上げていた。

 ニトロプラスとしては自分の追っている大罪人さえ処罰できればそれで良かったのだが、こうも混沌とした状況ではそれも難しい。なにせ街で不審な動きを見せればソルジャー部隊がすっ飛んでくる。ベールと共に行動していたとしても、それも含めて怪しまれた。

 

『むむっ、スパイか! そういえば貴様どことなく教会で管理されていた大罪人に似ている!』

『むむむっ、そこのゴスロリ少女! 怪しいぞ! 雰囲気が武装企業半壊の引き金となった人物によく似ているがもしや関係者かあるいは血縁者か!』

「…………あたしはベール達の言うそいつにあったら、まず殴るわ。もしくは斬るわ」

 深い溜め息をつき、ニトロプラスはまだ見ぬ相手へ静かに敵意と殺意を研ぎ澄ませている。なにをどうしたらここまで要注意人物としてマークされるのか。呼吸するだけで余罪追加されてるのかそいつは。危ない笑みを浮かべながら、赤い太刀を研ぎ始める。

 

「ふふ、今宵の太刀は血に飢えているわ……」

「ひぃっ。あ、あのニトロプラスさん! 決して悪気があってやってるわけではなくてですね」

「悪気がないのに、何をどうしたら呼吸するように罪が増えるの!? 生きてるだけで罪なら死んでも変わんないわよ! あーなんか段々と腹が立ってきた!」

「落ち着いてください! わぁぁぁ、いけません銃は! ダメですってばー!」

「大丈夫ですか? わたくしのおっぱい、揉みますか?」

「…………」

 もみもみ。ぱふぱふ。渋い顔をしながら、ベールの胸を揉み始めるニトロプラスはまだ腸が煮えくり返っているのか黙々と揉み続けていた。

 そんな時である。ベールのソルジャー端末当てに一件の着信。相手は非通知設定にされていた。

 

「あら、誰でしょうか。ひとまずポチッと……もしもし?」

《────》

「ノイズが酷いですわね。もしもし、もしもーし」

《──…………ル、ベール──聞こえるか。こちらアルシュベイトだ》

「まぁ、ご無沙汰しておりますわ。今はどちらに?」

《所在は明かせぬ。調子はどうだ》

「ええ。無病息災、何事もなく。今はネプギアちゃんとニトロプラスちゃんと一緒にホテルで作戦会議中ですわ」

《そうか。いや実は、少々マズイことになってな》

「……何かありました?」

《三日以内にリーンボックスを女神政権に取り戻さない場合、大魔導師が乱入も辞さない宣言だ》

 ベールの顔が、笑みを浮かべたまま一気に青ざめて固まる。

 

「……三日、以内ですの……?」

《うむ。つい昨日通告された、よって残り二日だ》

 卒倒しそうになった。だが、ギリギリで踏みとどまる。今気絶したら通販限定物販の荷物を受け取れなくなってしまう、それだけは回避しなければ! ──気丈なるゲーマー精神によってベールは気を保つことに成功した。

 

「ベ、ベールさんどうかしたんですか?」

「…………」

 ニトロプラスはまだ無心でベールの胸を弄んでいる。目が死んでいた。

 

《よって。こちらも計画を早急に前倒しにすることになった》

「計画?」

《それを今から話す》

 これまで武装企業とバルバロスの支援によって各地のソルジャー部隊の戦闘に介入してきたが、不審な動きがいくつか見られている。それらに確証が持てずに調査を武装企業へ依頼していた。

 まず、ラステイションとの戦争は真っ赤なウソだ。最初からリーンボックス内の工場から製造されたロボットとソルジャー部隊を交戦させていた。国内の緊張状態を維持する名目での戦争の疑問はさておき、次。

 エスーシャは二重人格であるということ。アルシュベイトはもうひとりの人格であるイーシャと何度か面識がある。いずれもエスーシャ自身に記憶はない。内密に文面でやり取りしていたが、どうやらエスーシャの計画を止めようとしているようだ。

 黄金の頂がそれに深く関与している。しかし、その門を開けることができるのはゴールドサァドのみ。これは武装企業とも見解が一致している。

 

《まず、十中八九。ゴールドサァドの力の源は黄金の頂だ。その内部にあるであろうクリスタルを破壊すれば、本来の統治者である守護女神に信仰が集まるものと仮定する。最終目的はリーンボックスの守護女神、グリーンハートの信仰の回復ならびに女神の政治的復権だ。これには教祖チカも全面的な協力をすると言っている》

 武装企業で現在も匿ってもらっているチカだが、裏方からサポートしてくれていたことにベールは言葉もなく感謝した。だが、病弱なだけに過大な期待は禁物だ。

 

《こちらもフリーの傭兵部隊を率いてソルジャー部隊との大規模な交戦を予定している。周辺の被害状況を最大限、考慮した上で交戦区域を大まかに分けている。地図は手元にあるだろうか?》

「ええ。ネプギアちゃん、お願いできますか?」

「はい、任せてください」

 沿岸部。中でも輸出入ビジネスの盛んな場所。その近辺。

 山岳部。こちらも物資の運搬によく使われる場所だ。

 都市近辺。国民の恐怖を煽るようなやり方だが、一国を治める主ならば放っておくことはできないだろう。

 黄金の頂。最も相手が警戒している場所。

 大きくわけてこの四箇所。まるで同時テロだ。しかし、必要に迫られればその手段を淀みなく実行に移すアルシュベイトには意外だった。もっとこう、正面から堂々と行くものだと思っていただけにベールは疑問を浮かべる。

 

「それにしても、ここまでの策を弄するとは意外ですわ」

《俺自身、似たことをやられてアゴウを陥落させられた経験があったのを思い出したからな》

「…………誰に?」

《うん? エヌラス以外にいるか?》

 嗚呼、道理で──。確かに、エヌラスならばこの手の策は大の得意だろう。戦闘に関しては異常なまでにキレる感性の持ち主だ。

 しかし、軍事大国相手にそれだけのことをしただけで、陥落させられるのだろうか? 確かに、あの火力一辺倒ならば可能かもしれないが。それにしても不思議な話だ。

 

《話を戻そう。計画としては、まず今話した場所で陽動を行う。ソルジャー部隊と交戦、その後に増援として送り込まれる武装企業の傭兵達と合流。全戦力を持って教会を包囲する。とはいえ、そこまで本気ではない。抜け道も必ず用意しておく》

「そこをわざと抜かせるわけですわね」

《黄金の頂の扉をエスーシャが解錠さえしてくれれば、こちらのものだ。後はクリスタルを破壊するだけだからな》

 なんというか、えげつない。だが、これを一人でエヌラスがやったとなると協力者が気になるところだ。

 

「エヌラスはこの作戦を、単独で?」

《あいつは常に一人だが。決して孤独ではない。常にもう一匹引き連れているだろう》

 ハンティングホラー。エヌラスが従える魔獣の存在に、ベールが頷く。誰よりも長く、永く、とても長い間(ロング・ロング・タイム・アゴウ)、伴侶のように連れ添っている。唯一、全てを共に見てきた存在だ。

 永劫にも似た地獄の旅路に、今までずっと。ネプテューヌ達ですら知らないエヌラスの姿を全て記憶してきた。

 もはやエヌラスにとって無くてはならない右腕のようなものだ。

 

《……少しだけ、昔話をしてやる。アイツがアゴウを“一撃”で陥落させた日のことだ》

 軍事大国攻略決戦兵装──アルシュベイト、ならびに守護女神ブレイドハートを完封するためだけに構築された規格外にして荒唐無稽の想定外の殲滅力に特化した殺戮兵器。

 その名を、“天雷(てんらい)”という。

 ただ一刀を持って天を屠る雷刃の威光。目視不能、回避不能、予測不可能な見敵必殺。

 陽動されたアルシュベイトと剣姫が国を空けた僅か数秒でアゴウの首都ならびに政治中枢である教会が、消滅した。雷鳴が轟いた次の瞬間の出来事だ。それが、エヌラスがかつて最強の好敵手と認めた相手に用いた“英雄(せんゆう)殺しの外道魔剣”。

 遂には、対面することすら叶わなかったが。それでもアルシュベイトは覚えている。

 天に座す神すら失墜さしめる、血の滲むような悲鳴にも似た絶叫を。あれは、哭いていたのだ。

 それを用いた一方的な虐殺(ワンサイドゲーム)をしなければならないほどに追い込まれて、それでも誰にも助けを乞うことなど出来ずに。ただ全てを背負って歩き続けた。

 己の弱さと、諦観が招いた悲劇だ。一国一城の主に留まり続け、それを是とした己の未熟がエヌラスをあそこまで追い込んで、壊してしまった。

 ただ一人、好敵手(せんゆう)と認めたはずの男を。

 今となっては、悔やんでも悔やみきれない。本当に戦うべきは、自分であったはずなのに。

 

《──以来、アイツはそれを使うことは二度となかった。武装企業の時でさえそうだったがな》

「そんな戦略級の兵装を使われても困りますもの」

《そうだろうな。エヌラスが加減できる武器など作るはずがない。やるなら、正面から徹底的に蹂躙して殲滅できて当然という火力だ。長話となったな、すまない》

「いえ、お気になさらず。それで、作戦の決行はいつ頃?」

《明朝に仕掛ける》

 ベールが時計を確認する。

 現在、午後三時を回っていた。優雅なシェスタの時間。お楽しみのおやつタイム。

 明朝って何時? 朝六時。残り十五時間──リーンボックスを火の海にするカウントダウンが始まっていた。

 人間は、女神は睡眠時間が必須である。それを計算に入れても、ベール達が動けるのは少なくとも残り十時間を切っていた。

 

「おほほ、お待ちになって?」

《むっ、感づかれるか。ならば予定を大幅に詰めて三時間後でもこちらは動けるが》

「お待ちになられて?」

 これだから戦争バカは。どれだけ用意周到に計画を進めていたのだ、追われる身となっていながらにして。武装企業の支援が間接的にあったとはいえ、やりすぎである。

 結局、従来の予定通りに明朝六時作戦決行。

 作戦名──「なるはやリーンボックス奪還作戦」である。

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