※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

710 / 814
ep.145 不屈の撃墜王、再臨

 なぜ此処に? という疑問をよそに、怒り心頭の剣姫は軍服姿に羽織を肩から下げていた。完全にやる気満々なようだ。

 

「貴様が此処に来るまでの間、あまりに退屈過ぎてモンスター共は一匹残らず駆逐してやったわ! おれの邪魔をするとは命知らずもいたものだな! どこぞの馬鹿魔導師と違って! どこぞの! 馬鹿と違って!」

《お、御姫……その、なんだ。何をそこまで怒っているのだ?》

「なに……? アルシュベイト、貴様よもや。何故おれがこうも頭にきているのか全くわからんとでも言うつもりか? 本気で言っているのか? うん? そこのところどうなんだ?」

《おぉう……》

 アルシュベイトが、気圧されて唸っている。かーなーり、頭に来ている模様。とはいえ、とんと思い当たる節がない。物事には順序がある。それを追って紐解いていけばきっと剣姫が機嫌を損ねている理由がわかるはずだ。

 

《御姫! まずは、うむ。俺が悪かったと謝罪をしよう! すまなかった!》

「おう! だがおれの腹の虫が収まるはずがなかろうが! 一発殴らせろ!」

《その前に、何故お前がここにいるのか話を聞かせてもらうがよろしいか!》

「いいだろう!」

 

「ねぇ、大声出さないと死んじゃう病気なの二人共? スポ根ポンコッツなの?」

「でも確かに。どうして御姫さんがここにいるのかは不思議です。どうしてですか?」

 げんなりとしたニトロプラスに、ネプギアは話を促した。

 

「俺が来たのは先日の夕方のことだ!」

「あまりに唐突過ぎませんか!?」

「次元転送装置の利用には教祖の許可がいるが、そこはセキュリティ強行突破! 女神に不可能なし!」

「力押しと勢いでとんでもないことしてませんこと!?」

「あのクソメガネの用意するセキュリティ程度乗り越えられるわ! おれをなめるな! 伊達に守護女神を名乗っていない! リーンボックスに来てみたら、あろうことか守護女神政権が乗っ取られているではないか。これはどうしたことかと急遽ゴールドサァドを名乗るエスーシャと話し合いをした結果──」

「結果……、どうしたんですか?」

「アルシュベイトは一国に追われる身。ベールはソルジャー部隊に格落ち、リーンボックスは内部紛争状態。そんな大事を見て見ぬ振りなどできなくてな。ここいらで全面的に解決する方向としてこちらから武力行使に出た」

《うむ、まさに考えることは全く同じだったわけだな!》

「おう! 一心同体というやつだな! 人様の国で戦争おっぱじめる馬鹿が二人、いやぁ手がつけられん! しかしこのまま膠着状態を続けても仕方がないだろう。大魔導師のやつが瀕死のエヌラスを担いでアダルトゲイムギョウ界に戻ってきたものだから、何事かと思ったわ」

 つまり、事態の早期解決を目処に行動を起こした。ということになる。それがどうして黄金の頂にエスーシャを引き連れてくることになったのかはわからないが。

 

「では、どうして此処にエスーシャを?」

「うむ? 目的はそうだったのだろう? 何を言っているんだ、ベール。以前訪れた際には存在していなかったこの黄金の塔が、ゴールドサァドの力の源ならば守護女神が地位を取り戻すためには攻略が不可欠だろう。エスーシャも自分の目的を果たすために計画を進行させていたようだが」

「その計画、とは……」

「かつて失った友達を蘇らせるというものだ。その生贄としてソルジャー失格者であるらん豚千匹を用意していたみたいだがな」

「……ベール、知ってた?」

「いえ。ただ、たまにらん豚が発生しているという話は耳にしてましたわ。ですがそれも元はリーンボックスの民ならば、計画は阻止させなければ」

 しかし、何も考えなしに突入してきたわけではない。一昼夜の合間にアルシュベイトの作戦を見抜き、想定外の打撃を与えることで両者の先手を取る電撃戦の展開。流石はアゴウの守護女神として君臨しているだけはある。だが、そこで更に疑問が湧き上がる。

 それは、アンノウンの正体だ。

 

《御姫。ならば、傭兵部隊を撃退しているのは一体何者なのだ》

「言うは易し、お前自身の目で確かめるがいい! 話は以上だ、とりあえず一発殴らせろチェェェストォォオオオオッ!!!」

《衝撃態勢! ふぅんぬぉああぁぁっ!!》

 剣姫の拳がアルシュベイトの胸部装甲を叩く。大きく後ずさり、危うく足場から落下する手前まで吹き飛んでいる。直撃すればひとたまりもないだろう。機械人類が踏ん張って、それなのだ。人間など星になってしまう。ニトロプラスが間の抜けた顔をしていた。

 

「うわぁ……」

「だいじょうぶですか、アルシュベイトさん!?」

《毎度のことだ! 戦闘行動に支障なし!》

 サムズアップで答えるアルシュベイトに、キャロラインから緊急回線で通信が入る。切羽詰まったような声に何事かと思えば、黄金の頂周辺に展開していた傭兵部隊がほぼ壊滅状態にまで追い込まれたらしい。

 アンノウンが突入し、現在こちらに向かってきているものと見て間違いない。

 背後からの飛行音に振り返れば、灰色の機体色。アルシュベイトですら存在を知らない新型の機械人類が剣姫の傍らに着地した。

 両手に握りしめている短機関銃は、同一モデル。軍事国家アゴウで広く愛用されているものだ。ここへ来るまでに相当の弾薬を消費したのだろう、弾倉を廃棄すると即座にリロードを済ませている。

 複眼の網膜ユニット。六つ目の機体とアルシュベイトが睨み合っていた。

 

《──お久しぶりです、アルシュベイト様》

《その声……ゼロワンか》

《はい》

 静かに肯定して、会釈する。

 

《となれば、その義体は》

《電脳国家との共同開発による新型モデル、といったところでしょうか。私のためだけに用意されたもので、実質ワンオフ機ですね》

「とはいえ急に駆り出したものだからパーソナルカラーも塗装する暇もなかったがな! 武装も最低限積めるだけ積んだ形になる」

《だがそれで傭兵部隊を壊滅に追い込めているのだ、戦果としては上々だろう》

「貴様の相手など新型ゼロワンで十分だ! おれはベール達を相手にするぞ!」

「えっ、あれ!? そういう話でしたの!?」

「やかましいわぁ! おれは今無性にむしゃくしゃしているのだ、少し付き合え!」

「あの、お互いに協力してゴールドサァドを打倒するというのは」

「知 る か!!!」

「ですよねー」

 剣姫にとって、エスーシャ打倒など二の次三の次。今最も大事なことは、ストレス解消。このまま放置していたら破壊活動をしかねない。人様の土地で。どこぞの破壊神のごとく。

 突き立てていた日本刀を引き抜き、肩に担いだ剣姫が羽織をなびかせながら風を切って歩む。

 

「逃げも隠れも臆しもせん、正面からでも堂々とかかってこい!」

「ねぇ、これ大丈夫? 手加減できそうな相手じゃないんだけど」

「ネプギアちゃん、ここは一気にいきますわよ!」

「はい!」

 二人が女神化すると同時に、剣姫に向けて一気に接近する。ニトロプラスは心底やりたくない気持ちでいっぱいだったが、手を抜くわけにはいかない。レイジング・ブルマキシカスタムの弾倉を確認してから息を吐いて駆け出した。

 

 アルシュベイトとゼロワンは睨み合いを続けていたが、短機関銃による連射で火蓋を切って落とすと空戦機動へ移行する。

 大型可変翼を採用された跳躍ユニット。その推進剤の内容量も大幅に見直されており、加速性能はアルシュベイトとは比べ物にならない。ノズルをすぼめて突き放すと、即座にターンして一気に接近してくる。

 足場に大型片刃刀を突き刺して急制動を掛けると、左手に防壁を転送した銃撃を防ぐ。反応装甲が炸裂する瞬間、ゼロワンは横へ回避していた。後退翼から前進翼へ可変させて旋回性能を上昇させると、低空機動で肩部ユニットを擦りながら回り込む。

 

《流石新型、惚れ惚れする機動性能だ!》

 連射に次ぐ連射に、アルシュベイトが足場を持ち上げて防御する。二挺拳銃を背部の武装ラックへ担架すると、右手が淡く輝いた。

 

拡張装備(パッケージ)換装! 震雷!》

 電脳国家インタースカイの武器庫に格納されていた大型支援火砲がその手に転送される。次元間光速回線による無機物の送受信はソラのお家芸だ。銃身内部に内蔵されている電磁投射機構によって加速した弾丸が床を削り取っていく。天然の防壁が瓦解した直後、大型防壁が投擲された。

 回転しながら迫るそれを強化拡張された網膜ユニットで脅威判定から予測して足場代わりに踏みつけるとアルシュベイトの頭上を取る。

 ライフルを突きつけるが、相手は武装ラックに刀を収めていた。今にも振り抜かんと両腕で柄を握りしめて踏み込んでいる。

 

《チェェストォオオオオオッ!!!》

《っ──、流石は!》

 抜刀術式“震電”の剣圧を回避して、ゼロワンがライフルを転送する。代わりに手にするのは、標準的な大型片刃刀。アルシュベイトと同モデルだが、急遽用意されたもので女神の加護は付与されていない。耐久力であれば不利であるが、それを一対。二刀流で携える。

 

《白兵、仕る──!》

《応! 参れ!》

 刃先で地面を擦り、火花を散らして丁々発止。剣の腕は互角。

 

《こうして刃を交わすとあの選定試験を思い出すな!》

《ええ、まったく!》

 捌き防いでいたアルシュベイトが一瞬の間を置いて剣戟のタイミングをずらすと、前蹴りでゼロワンの胴体を突き飛ばした。頭上に掲げた片刃刀を振り下ろして風圧による追撃を行うが、横にバーニアノズルを向けていたことにより免れられる。

 機体性能の差はあれど、まだ身体に馴染めていないのだろう。どこか動きが硬い。それでも神格者に迫る性能は凄まじい。技術の進歩もさることながら、そうまで心血を注いだ電脳国家の技術提供には感謝してもしきれなかった。

 この先の戦いで、不要な戦力など誰もいない。戦えるものは刃を手にしてもらわなければ、決して生き残れない。それは、アルシュベイトが予感していたものだった。

 ここまでたった一人で奇跡のような綱渡りを繋いできた好敵手(せんゆう)に応えるには、それしかない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。