超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ep.185 プラネテューヌに迫る危機
プラネテューヌ郊外。発見された謎の空間より湧き出るモンスターの群れを迎撃するのは、守護女神近衛機兵団の面々。その指揮をプラネテューヌ諜報部であるアイエフがフォートクラブの背中から執っていた。
《へいへいへーい! どうだいどうだいこの辺かいここかいここかいここがええのんかモンスター!》
《どうですかいかがですか最新型の武器のお味はぁ! たーんとおあがりよへいへいへーーーい!!》
《すまん誤射ったわ》
《グワァァァァッ!!! 榴弾砲はダメだって言ってんだろ!!》
《エアバスター今いったぞ》
ちゅどんぼかーんヒューンヒューンヒューン……ズドンボカーン。
アイエフの前で降り注ぐ条約スレスレセーフ、グレーゾーン真っ只中の空中炸薬砲。なんとか地形が変わらない程度の火力に収めてあるが間違ってもこれらを人間に向けてはならない。
「アンタら毎回こんなペースでよく疲れないわね」
《アイエフさんこそよく俺らの指揮執る気になりますね》
「本当は心底嫌だけど、仕事なんだから仕方ないでしょ」
わざとなのか、はたまた合理的判断からなのか、フレンドリーファイアによる巻き添えでモンスター諸共爆風で吹き飛んでいく味方を横目に、シュラはセンサーに捕捉されたエネルギー反応に警戒を強める。
《ムムッ、この反応は……猛争モンスター出現!!》
その一言に醜い殴り合いを始めていた守護女神近衛機兵団のモノアイがきらりと光り、武器を構え直して素早く陣形を組み直した。
《逃げればひとぉつ!》
《進めばふたぁつ!》
《奪えば全部ぅ!》
《殺せば大金星、行くぞぉぉぉっ!》
「……本当に士気は高いのよね、無駄に」
支援型兵装のシュラが高性能センサーによって敵陣の動きを予測。それを遊撃兵装のゼブラが狙撃によって制限し、分断された敵を重火力兵装のディルとゴウがせん滅。強襲型兵装のシャニが砲火を抜けたモンスターをツキカゲとバズとのコンビネーションで撃破していく。
《まったくなぜ我々までもが力を貸さねばならんのだ! 私は武装企業アームドソウルス本社警備隊長だぞ!? それがなぜプラネテューヌ国境警備隊の使い走りをしなければならんのだ、邪魔をするなモンスター共!》
「……とか言いながらしっかりスナイパーキャノンで援護してるじゃない」
《勘違いをするな! ここで働くのは本社補填のためだ。貴様らと馴れ合うつもりなどない。おい強襲班、敵が抜けているぞ早くしろ! 深追いはするなこちらで対処する!》
武装企業警備隊長は、そんな一団の中にあって尚も毅然とした構えを崩さず後方の高台よりモンスターを撃ち抜いていた。3連スナイパーキャノンによる狙撃がアイエフの前に迫っていたモンスターを撃破する。
現れた猛争モンスターは他と一癖も二癖もある相手だ。それを撃破するのは並の冒険者達では歯が立たず、結果としてネプテューヌや守護女神近衛機兵団の活躍によってシェアが回復している。
《いくぜいくぜいくぜイェイイェイイェイ!》
《ウォウウォウウォウ!》
《イェイイェイイェイ!》
《ボンバァァァ!!!》
《バカ野郎ォォォォ!!!》
シュラが仕掛けていたリモコン爆弾が起動。大火力に特化させた爆弾によって猛争モンスターが苦しむがこちらの陣営もまた大損害が出ていた。
後続がいないことを確認してから強襲班がアイコンタクト。前線へ出ると背部ユニットから近接兵装を携える。
《おい青いの! 右にズレろ、巻き込まれるなよ!》
《ふん、やってみろ赤いポンコツ! 貴様程度に遅れをとる強襲班班長ではない!》
リザードマンを難なく撃破、次々と蹴散らしていくが、モンスター群の奥に見える巨大な体格を見てゼブラが狙撃銃のスコープ越しに姿を確認した。
《猛争モンスター確認、エンシェントドラゴンだ!》
《クソッタレ!》
《イビ・カイエ!》
《どっかのバカの仕掛けた爆弾でこちらも被害甚大!》
《手が滑った》
《グワァァァァッ十秒ーーー!!!》
「ねぇアンタらわざとやってるでしょ! 絶対わざとやってるでしょそれ!」
いくら支援型兵装のシュラが機体修復ユニットを装備しているからと言ってすったもんだの大乱闘をしていいはずがない。ご機嫌なサービスで足の引っ張り合いどころか作戦に支障をきたしているのはなにか考えがあってのことかと警備隊長が勘ぐるが絶対に何も考えていないことだけは確かだ。
と、アイエフがフォートクラブを携帯端末で操作しようとした矢先。急接近してくる機影があった。
《こちら守護女神近衛機兵団団長、レオルドっす! ビーシャさんと共に近隣区域の避難誘導は完了しました、現着まで三十秒! 状況は!》
「あぁよかったまともなのがやっと来てくれるわ」
《おい小娘! 私もまともな方だとカウントしろ!》
「あーはいはい、アンタのせいで厄介事プラス一くらいよ。黙ってて警備隊長」
《どいつもこいつも私を苛立たせる……!》
「猛争エネルギーに取り憑かれたエンシェントドラゴンと交戦中よ。特務班が総じて自爆したせいで手こずってるわ。できれば速攻で片付けてほしいところよ」
《レオルド、了解!》
シュラからの共有データを確認して、レオルドはアサルトチャージャーを吹かすと崖の上から飛び立つ。
《目標確認! シャニ、援護を頼むっす! 重火力班は取り巻きを!》
《よぉっし任されたぁ!》
比較的軽傷だったディルが左肩に背負ったミサイルポッドを持ち上げるとマルチロックによって八連装マイクロミサイルが噴射された。続けてゴウがロケットランチャーを担ぎ、雑魚を掃討していく。その活路を塞ごうとするモンスターを警備隊長が隙なく撃ち抜いた。
着地寸前に一度だけバーニアを噴射して落下制動を行うと、レオルドは即座に実弾突撃銃で接敵する相手を確実に仕留めながらエンシェント・ドラゴンへ一直線に向かう。背部のユニットに突撃銃を懸架し、折り畳まれたグレートソードの柄を握り抜刀する。
刀身をスライドさせ、展開した刃は重量で叩き割る方向性に舵を取られ、それはレオルド本人の要望あっての調整だった。
機動力に特化した機体調整を施されたシャニが撹乱し、軽量スピアで足を負傷させると大きな翼を広げてエンシェント・ドラゴンが宙へ浮かぶ。その翼膜を撃ち抜く一条の光。
単独で遊撃手を買っていた特務狙撃班のジーンが大出力光学狙撃銃のマガジンを装填した。
バランスを崩したところへ、追い打ちと言わんばかりにゼブラが負けじと大口径実弾狙撃銃で逆の翼を吹っ飛ばす。
《おいドベ太郎! 一撃で仕留めろよ!》
《それが出来たら苦労しねぇっすよ! どぉりゃあああっ!!》
落下してくるエンシェントドラゴンの頭部めがけてレオルドが加速装置を噴射しながら全身を使ってグレートソードを振り回した。重く鈍い刃が側頭部にめり込み、わずかに引っ張りながら振り抜くと巨大な体躯のエンシェントドラゴンがきりもみ回転して地面に倒れ込む。
《ぃよぉーし修理完了!》
《追撃じゃ撃ちまくれーーー!!!》
《やったか!?》
《誰か余計なこと言ったな!? ちょっと多めに撃ち込めぇぇぇ!》
当社比二割増しで一斉射撃を叩き込み、猛争エネルギーに取り込まれていたエンシェントドラゴンの身体が消滅していったのを確認してから全員がマガジンを再装填した。
《消滅確認! 次!》
《敵影無し、周囲の警戒行動へ移る!》
《総員弾薬の確認を怠るなよ! 警備隊長、そちらは!》
《バカどもが! 弾薬費もタダではないのだぞ! こちらはまだ余裕がある、弾薬の補充が済み次第警戒に移れ! こちらが索敵を請け負う!》
《ヒューッ、警備隊長の奢りだ! 撃ったれ撃ったれ!》
「馬鹿やってないでさっさと補給してきなさいっての! やりなさいフォートクラブ、ロケットパーンチ!」
《グワーッ、アイエフさんからの愛の鞭ッ!》
携帯端末からの指示に、フォートクラブが閉じた鋏を撃ち出す。ワイヤーに繋がれた質量の塊にぶっ飛ばされて守護女神近衛騎兵団は散り散りになりながら補給ラインまで撤退していった。
そこへレオルドがグレートソードを懸架してやってくる。
《アイエフさん、お疲れ様っす》
「ええ、レオルドも最近隊長ぶりが板についてきたじゃない」
《いやぁ、俺なんてまだまだっす。それにしても、この穴は一体何なんすかね?》
「さぁね。モンスター達がなだれ込んでくる以上放っておけないことだけは確かよ。それに……なんだか嫌な感じもするしね」
《そういう物っすか。自分は機械なんでちょっとそういうのわかんないっすけど……警戒するに越したことはないですね》
ゴールドサァド事変が収束した矢先にこれだ。間違いなく敵方になにか動きがあったと見るべきだろう。
フォートクラブの背中に座り込んだままアイエフは腕を組んで悩み始める。青空を見上げれば、雲の間に見えるのは謎の空中戦艦。プラネテューヌ諜報部を悩ませるネット上の誹謗中傷コメントの荒らし。まだまだ問題は山積みだ。
そのストレスを中和できるのは、揃いも揃って馬鹿騒ぎの馬鹿揃いのどんちゃん乱痴気頭パッパラ隊の作戦指揮をしているときくらいだ。なんだかんだ奇行に走りながらも戦績そのものは優秀の一言に尽きる。これでは文句も出てこない。
「とにかくこっちはアンタ達に任せるわよ。ねぷ子達守護女神はあの戦艦に突入する予定なんだから」
《はい! 粉骨砕身のていで当たらせてもらうっす!》
「砕けちゃダメなんだってば……」
《でもアイエフさん。戦艦の撃墜ならエヌラスさんとか、武装企業に依頼をすればいいじゃないですか?》
「……エヌラス、ね。なんだか久しぶりに名前を聞いた気がするわ。ルウィーでの目撃情報を最後にぱったり姿を消してるみたいだし、プラネテューヌを避けてるような気がするのよね」
《まぁ、他の国の問題が急務みたいだったので無理もないと思うっすよ》
「それもそうね。武装企業に関しては、流石にリーンボックスの企業が介入してくるのは問題だからよ。だから結果的に女神様に頼るしか無いってわけ」
肩を落とし、ため息をつきながらアイエフは風に煽られる髪を押さえながら遠くを見つめていた。
「──まぁ、たまには顔を見たくなる時くらいあるわよ」
《自分もっす。それじゃ、そろそろ周囲の警戒任務に入ります。警備隊長、よろしく頼むっすよ!》
《ふん。貴様に命令されるまでもない! ゲート近辺はこちらが監視する! 貴様ら近衛機兵団は周辺の索敵と交通封鎖並びに逃げ遅れた住民の確認をしていろ!》
「口は悪いけど本当に仕事は出来るのよね……それじゃレオルド、任せたわ。アタシは一度プラネタワーに戻るから」
《了解っす! お気をつけて!》
フォートクラブが脚部のタイヤを展開して身を屈めると悪路を苦ともせず走り出す。
《……俺等もああいう新兵器欲しいっすね》
《馬鹿なことを抜かすな。そんな予算は無い》
世知辛い。