超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
パープルハート達が守護女神近衛機兵団との合流地点へ急ぐ。そこではアイエフがフォートクラブの背中に座り、馬鹿な真似をしないように監視していた。せっせと忙しく突入準備を整えているところを見ると、今のところ真面目に仕事をしているようだ。
「あいちゃん、お待たせ」
「おかえり、ネプ子。レオルドはどうしたの?」
「ちょっと飛ばし過ぎたかしら……」
思いのほか劇物だったことを話すと、即座にトライアドの三名が呼び出されるなり説教される。
「アンタ達ねぇ! 災害用の超大容量外部バッテリーになんてことしてんのよ! それで助かる人命もあるってこと考えられないわけ!?」
《それについては俺から話します》
挙手したのはシュラ。他のメンバーよりもそうした情報処理能力が高いことから支援兵装を唯一愛用している。
《サテライトバンカーですが、確かに中身をあれこれいじくり回して取り返しのつかないくらい壊した点は仰る通りですが、元々演習で使用していた物です。起動方法についても、設置する際に俺達の動力源で補助する必要があります。いわば安全弁みたいなものですね》
サテライトバンカーの起動そのものに、レオルド達の動力源とのアクセスが必要となること自体が安全装置の役割を果たしていた。
《それが壊れたのもシロトラ教官に原因があります。一度だけ使用してもらったところ、誤作動を起こしたのをセインがなんとか修復できないかと手を加えた結果がアレです》
「そうだったのね。でもなんでかしら。シロトラもアンタ達と同じロボットじゃないの?」
《俺達も最初はそう思ってましたが、エラーログを解析したセインの奴しか真相はわかりません》
それでどうすることもできず、かといって廃棄するわけにもいかず、結果として第三資源採掘場へ遺棄することが決まった。それが外部に漏出しないようにするために。仮に使用できたとしても一度限りになるだろう。
「それで、アンタ達がさっきっからやってるアレはなに?」
《俺達のメカニックであるグラさんがその話を聞いたところ「んじゃあいっそ宇宙に打ち上げちまおう」って言い出しまして……》
空中戦艦の進路予定地にビーコンを設置、敵艦の攻撃を無力化後、サテライトバンカーを遮断装置に搬入。反重力装置の乱れを逆に活かすことで宇宙まで浮上させて放棄する。そのために必要なものは、なんといってもサテライトバンカーを保護するための遮断装置。パッと見た目はテトラポットのようだが、サイズはだいぶ小さい。人一人入れるかどうか、という程度だ。
「その設置をしていたわけね」
《サテライトバンカー起動後、速やかに回収。打ち上げのためのメンバーを残して俺達も突入準備をしておきます》
「……まともに話せるじゃない」
《ちんぽにゃ》
「黙って」
危うく聞き逃すところだった。なんだったら一瞬聞き返しそうになった。脳が理解するよりも先に本能的に拒否したことで間一髪。シュラが押し黙った後ろ、ツキカゲとバズが高機動型なのを活かしてちょこまかと資材を運搬していた。
その組み立てをゴウが行い、シャニがデータ処理と同時に敵艦の進路を確認。ネプギアもそのデータを受け取り、並行して座標の計測を行う。
《アイエフさん。こちらサテライトバンカー設置の用意はいつでもできています。敵艦のコースこのまま、予想では攻撃能力の半数を無力化が見込めるものも思われます》
「でも直撃させたら戦艦撃墜するんじゃない?」
《心配には及びません。あくまでも敵艦の火器管制装置の一時的な無力化が狙いです。加えて、サテライトバンカーによる反重力装置の稼働は著しい重力場を発生させることにより敵艦の速度を低下させられます》
つまり、空中戦艦の速度を殺しつつ、攻撃に晒される心配もなくなる。なんて上手い話なのだろうか。仮に被害が出るとしても人体に無害。ちょっと電気風呂に浸かるようなものだ。
……磁場が発生?
「ちょっと待って。それってつまり、一時的に外部との通信ができなくなるってこと?」
《設置後に照射されるソーラーパルス信号での電子機器の無効化はおよそ数十秒、完全回復まで一分足らずです。理論上》
「なるほど、それじゃあわたし達が敵艦に突入可能な時間は実質一分も無いってことね」
「でもその間無防備なんでしょ? だったら装甲でもなんでもぶち抜いて突入すれば済む話じゃない」
「ノワールの言う通りだな、戦艦の装甲程度でアタシら止められると思ったら大間違いだ。任しとけ」
話がまとまりつつあるそこへ、ようやくレオルドがサテライトバンカーを持って到着するとパープルハート達の顔がキュッと引き締まる。
《ひぃ、ひぃ、流石に俺一人だと運搬するの大変っす……》
《遅いぞ万年ビリケツドベ隊長! さっさとよこせ! 女神様達が首を長くしてお待ちだ!》
待ちくたびれていたシャニはレオルドの手からメカニカル松ぼっくり、サテライトバンカーを引ったくるとテトラポット状のアンカーの上に置いた。
《設置完了! では女神様、ご武運を! 突入班、輸送ヘリに搭乗!》
《了解!》
《俺の台詞なんすけど……まぁいいや……》
輸送ヘリなんて便利なものがあるのなら最初から使えばいいものを、とブラックシスターがツッコミを入れると即座に守護女神近衛機兵団が沈痛な面持ちと空気を醸し出す。
《燃料代……》
《ヘリの整備点検……》
《現場までの急降下許可申請……》
《ちくわ大明神》
《俺達の予算カツカツで……》
「今の誰!?」
《遊んでいないでさっさと突入用意しろ! 隊長はレオルド! ディル、シュラ、ジーンの特務隊は搭乗後サテライトバンカー起動まで待機! それと例の捕虜も連行していけ!》
シャニの命令に従い、統率の取れた動きで特務隊が輸送ヘリへ乗り込む。
ティルトローター機は資源採掘用ロボットとして開発されたレオルド達の災害派遣用として設計された輸送機であり、最大四名までの搭乗が可能となっている。速やかに離陸できると同時に、内蔵されたカタパルトによって彼らを射出する形で現場へ急行させることも可能となっていた。
ただしそれは後方に向けての射出となる。彼らを着艦させるためには、空中戦艦の上方に機体を射出させなければならない。当然、そんなことになれば艦砲射撃のいい的だ。
その陽動も含めて守護女神達が必要になる。
突入可能時間、一分以内。しかし万に一つも失敗することだけはありえないという確信がレオルド達にはあった。
特務部隊トライアド。ド変態共であることを除けば、その戦績は「部門最優秀賞」のトップエリート集団だからだ。
《よーしお前らおやつは持ったな!》
《バナナはおやつに入りますか!》
《おしりには入るんじゃないかなぁ!!》
「もうほんとお願いだから黙って仕事して」
……ド変態であることを除けば、本当に優秀な戦績なのだが。
──空中戦艦「アフィベース」
秘密結社「アフィ魔X」の本拠地であり、多額のローンを背負って購入された戦艦の司令室。そこにアフィモウジャスはいた。
モニターには何やら烏合の衆が集まってわいわいと騒いでいる。その傍ら、アフィモウジャスは運営している超大手まとめサイトである「@将軍のまとめサイト」のアクセス数と稼働状況を眺めていた。
守護女神の悪評を広め、ゴールドサァドに嘘を吹き込み、更にはステマックスを教会へ忍び込ませて窃盗を働かせていた将軍の身体からは黒い霧のようなものが溢れている。
「ふはははは! 何も知らぬ愚かな守護女神め。貴様らなど一捻りにしてくれるわ。このネット通販で買った無敵の──」
艦内に警報が響き渡り、それがレーザー照射を受けているものだとモニターが警告を示していた。だが回避行動に舵を切る前にアフィベースが衝撃で激しく揺れ出す。狂ったように計器が震えだし、次々とモニターがブラックアウトしていく。
「な、なんだとぉ!?」
あれほどけたたましく鳴り響いていた警報も何もかも急に静まり返った。
──地上では、設置したサテライトバンカーを起動。無事に攻撃の無力化が成功したことでティルトローター機が急接近していく。
守護女神達は既に上部甲板に取りつき、ホワイトハートとブラックハートの攻撃によって艦内へ強行突破した。
残り、四十秒──ディル、シュラ、ジーンの三名は右舷ブロックに取り付くと高威力特化型リモコン爆弾を設置。機体が入れる程度の二メートル四方の隅に置くと距離をとって起爆。表面装甲が吹き飛び、タガの緩んだそこへ向けてディルが蒸気式射突型杭打機を高く構えて叩き込む。残り三十秒。
《どっせい!》
重火兵装の総重量、自分の体重を加味してディルがヒップドロップすると見事にくり抜かれたそこへ、ジーンがセントリーガンを投げ込む。周囲を索敵して安全を確認すると通路へ降り立ち、前後を素早く警戒して狙撃銃のスコープから目を離した。
《敵影無し、クリア》
《ケツがいてぇ!》
シュラがレオルドとステマックスの到着を待ち、それから先行した二人と合流する。
残り十五秒。戦艦の機能停止からわずか四十五秒で艦内へ突入成功した旨を左舷ブロックから侵入したパープルハート達に通達。
守護女神達はそのままブリッジへ向かうとのこと。こちらも同様に右舷ブロックから目指し、合流する作戦を伝えるとディル達は深く頷いた。
《ぃよーしっ! 空中戦艦攻略作戦だ! 片っ端から壁ぶち抜いていこうぜ!》
《やめるで御座る! 将軍が多額のローンを背負って買った漢の浪漫をこれ以上壊さないでほしいで御座る!》
《買うのが夢なら壊すのも漢の夢だろうスケベマックス!》
《馬鹿やってないで早く移動するっすよ》
レオルドがステマックスを担ぎながら移動する。
仕方なくディルは双門機関砲を構えながら後に続いた。ジーンは狙撃兵装のセントリーガンを回収し、シュラが最後尾からついてくる。