超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
《──以上が、エヌラスさんからの報告になります。守護女神近衛機兵団も零次元への実地調査へ乗り出す方針で考えてます、イストワール様》
「なるほど。報告ありがとうございます、レオルドさん。零次元の調査任務ですが、私からもお願いしようと思っていました」
《本当ですか。ありがとうございます!》
「シロトラの正体についてなにか判明したらすぐに報告してくださいね。何が起きるか未知の世界です。くれぐれも慎重にお願いします」
《はい! 調査班と装備をまとめたらすぐに出発します! それでは失礼します》
プラネタワーでイストワールに業務報告を終えたレオルドはすぐにメンテナンスルームへ向かった。そこではメカニックであるグラさんが一手に整備を担っていたが、ネプギアとユニが機材を前になにか話し込んでいる。
《お疲れ様です、ネプギア様、ユニさん。お二人共どうして此処に?》
「あ、レオルドさん。わたし達もなにかしてあげられないかなって」
《いやぁ、そんな。俺達結局アフィベース攻略作戦でアフィモウジャス相手に時間稼ぎが精一杯だったじゃないすか……》
猛争の力に取り憑かれ、ネガティブエネルギーを振るったアフィモウジャスには守護女神も一度は敗北を喫した。だがそれでもレオルド達はゴールドサァド到着までの間、戦線を維持。パープルハート達をステマックスの助力もあって解放することに成功している。
エスーシャが用意した「ハイパーシェアクリスタル」による守護女神の飛躍的な力の覚醒によってアフィモウジャスは敗れた。だが、レオルド達は自分たちの力不足感が否めない結果だ。
このままでは、シロトラの足元にすら及ばないと確信している。そのための新型フレームの製造をグラさんが進めていたが、その開発途中で座礁に乗り上げた。ネプギアとユニが足を運んだのはその解決策を講じるため。
《戻ったか、レオルド。悪いが新型は俺が使わせてもらうぞ》
《事後承諾じゃないっすか、シャニ。戦闘能力だけでいったら一番なんすから、俺も文句はないっすけども》
《ふんっ》
ケーブルに繋がれた機械質な猛禽類の翼。地上を走るローラー移動を主軸としたレオルド達の共通機構を真っ向から否定する形で用意された飛行ユニットの製造。プラネテューヌの技術のノウハウを注ぎ込んだ大型の飛行フレームは、拡張性能を犠牲にする形となる。そのため、シャニの身体を一度解体して再接続、動力ラインの最適化が必要だ。一時的な戦線離脱となるものの、そこに不安はない。
レオルドは零次元調査班のメンバーにシュラとゼブラを指名した。強襲班からも一名、バズが出動することになったが本人からは嫌そうな声。
《えーマジかよぉー。なんで俺なんだ》
《いやほら、戦力的に……》
《最悪シロトラ教官と衝突するんだろ? んじゃあ俺達全員突入させてくれよ》
《馬鹿言え! それで全滅したら目も当てられんだろうが! せめて俺の調整が終わるまで反撃は待て。今は情報戦に徹しろ》
《ちぇー》
頭部と胴体を宙吊りにされたダルマ状態のシャニから叱咤されてバズは渋々背部ラックに愛用の武器をマウントしていく。
シュラもまた、いつものショットガンと爆薬をセットしていく。だが今回は設置型の広域センサーではなくレーダーユニットをマウントした。高速修復ユニットではなく、応急処置のリペアガンに切り替えている。
《俺の準備は出来てる。先にダンジョンで待ってるぞ》
《頼むっす、シュラ。俺も支援兵装に変えたらすぐ向かうっす》
《……ところでバナナっておしりに入ると思うか?》
《頭吹っ飛ばされたくなかったらさっさと消えてほしい》
──日が沈み、プラネテューヌが人々の営みで照らされる頃にレオルド達は街灯の下を並走して道路を駆け抜けていた。
ゴールドサァド事件は完全な決着が着いている。超次元を脅かす存在は残すところ邪神勢力だけとなった。しかしそれ以上に、加担しているシロトラその人の脅威は計り知れない。
ダンジョンの周囲には警戒網が敷かれ、現在も警備隊長が警戒していた。
レオルド達が到着すると、音もなくエヌラスが森の木々から飛び出して合流する。
「やっと来たのか。寝過ごすとこだったぞ」
《どわぁ!? どっから出てきたんすか!?》
「どこって。あの辺」
《暗殺者じゃないんだから勘弁してほしいっす……》
「さっさと行くぞ」
足早にダンジョン内部へ向かうエヌラスの後に続き、レオルドは警備隊長に敬礼してから進んだ。
──零次元までの道のりは順調そのもの。特に敵の妨害もなく、滅んだ世界へレオルド達が踏み込んだ。念の為ワープゲート近辺にビーコンを設置してからエヌラスと共にゴーストタウンへ向かう。
《はぁ~……聞いてはいたけど、本当に滅んでるんすねここ……》
「見ての通り、生きて動いてるのはモンスター程度のもんだよ。無害なのもいるけどな」
シュラが頭部センサーを切り替えて周囲を見渡す。レーダーユニットを起動させると地形をスキャンする。ネットワークエラーに唸っていた。
《案の定ネット回線は無し、と。となると俺達の情報共有は機体の固有回線だけになるな》
「それはどれくらいの範囲になるんだ?」
《そーですねぇ。大体百メートルくらい?》
「意外と狭いな……」
《まぁ俺等元々作業用ロボットなので》
シャニはその倍以上あるらしい。しかし作業用として開発されたというレオルド達の顔ぶれを見渡し、エヌラスは眉を寄せていた。
「そこのホバー機体はどういう作業用だったんだ?」
《俺ですか? 見ての通り高機動なんで、まぁ、物資運搬とかパシリです……》
「聞いて悪かった。作業始めるぞ」
《でも具体的にどうやって調査するんすか?》
「機械見つけて中身ぶっこ抜く」
《わぁ犯罪》
「いいんだよ取り締まる人間いねぇんだから」
暴論にも程がある。法治国家の右頬を助走つけて殴るレベルの暴挙にレオルド達はドン引きしていた。
ゼブラが索敵機を飛ばすと、今のところ周辺に魔人らしき姿はないらしい。だが、なにかに気づいたのかレオルド達と固有回線で共有していた。
《エヌラスさん、もしかしたらなんすけど……ここの地形、プラネテューヌと似通ってるかもしれません》
「本当か?」
《はい。崩れたビルや道路の状況もありますが、共通箇所だけで言えば七割程度》
《でかしたゼブラ! それなら俺のマッピング能力が活かされるぜ! 任せろ、サボりとアイエフさんから逃げ回る時に活用した裏路地と捨てられているビニ本探求の旅は無駄ではないことをここで証明してやる!》
エヌラスは無言でシュラの関節部をへし折ろうかとコブラツイスト。いくら最軽量級の機体といえども相手はロボットだ。だが拘束を引き剥がすどころか逆に蛇に絞め殺される鷹の如く足掻けば足掻くほど万力のように身体が軋んでいく。
「馬鹿言ってねぇで仕事しろ」
《うっす……すいませんでした……》
レオルド達は初めて零次元に来たとは思えない足取りで調査任務を進めていた。時々モンスターの襲撃もあったが、エヌラスとバズが蹴散らす。ほぼエヌラス単独で文字通り一蹴するだけだったが。
プラネテューヌのマップと照合しつつ、向かった先は大型施設の廃墟。部外者の侵入を拒むための大型のゲートがあったがエヌラスはぶち抜いた。
「ほれ行くぞ」
《エヌラスさん、もうちょっとこう……穏便にいけません?》
「最近暴れてないからフラストレーション溜まっててよ……」
《怪獣ですか貴方》
ひしゃげたゲートを抜けて、なぜか申し訳なくなりつつレオルド達は施設内部へ侵入する。
沈黙を貫くフェンスゲートをこれまたエヌラスが物理的に解錠。我が物顔どころか手慣れすぎて常習犯の疑いがあった。
電気が通っていないのか非常灯すら点いていない施設の中は暗闇と静寂に包まれている。レオルド達のライトを頼りに壁を伝って進む。
レーダーユニットを起動、エコーモードでシュラが内部構造を探知。それをレオルド達が受け取り、進んだ先で電源装置を発見すると配電盤に拳を叩き込んでエヌラスが“
命を吹き込まれた動力が次々と動き出し、やがて非常電源が再起動すると明滅していた照明が壊れた館内を照らし出す。
「うーし動いた。調査開始」
《なんだか犯罪の片棒を担がされてる気がするっす……》
あまりにスムーズにやるものだからやはり常習犯なのでは? ──訝しむもののレオルドは内部の調査を開始した。
建物内部は相当広く、細かい部品があちこちに散らばったままにされている。壁は剥がれ、天井も抜けている箇所があった。床も割れており、ちょっとした衝撃で崩れそうになっている。
バズは持ち前の軽さと機動力で先行調査、安全を確認しつつエヌラスと共に通路を進んでいた。レオルドも今回は支援兵装、光学散弾銃を手にシュラと肩を並べて歩く。ゼブラは最後尾で殿を務めている。
《いやぁ~こういう建物の調査任務もたまにはいいもんだ。新鮮な気持ち》
《シュラの考えてることわかんねっす……俺は不気味で嫌っすね》
《ほぉらそこの物陰から白い着物の美人さんが》
《ベッタベタなホラーじゃないっすか》
《できればつるぺたで純真無垢な妹キャラですりよってきてもらいたい》
《今俺の隣にいる同僚が何よりもホラーなんすけど?》
「馬鹿やってると壁に埋めるぞ」
《すいません、ホラーより怖いことするのやめてもらっていいっすか!?》
管制室と思わしき部屋を見つけ、レオルドとシュラの二人にハッキングしてもらう。本来支援兵装はそうした目的の物ではないのだが、特務支援班であるシュラは独自に改造を施していた。
機体からコードを引っ張ると、挿入口を探す。
《どうでもいいことなんですけど、イカとかタコって触手が性器じゃないですか。ということはですよ? 俺から出ているこのコードってそれはつまり俺のちんぽなのでは!? 性器を堂々と露出しているわけなのでは!?》
「公然猥褻罪で死刑にされてえか」
《接続開始。セキュリティ突破するまでお待ち下さい。──サルベージ開始します》
後頭部に冷たい銃口をグリグリと押しつけられてシュラは肝を冷やしながらサルベージ作業に集中していた。
なるほど、変態はこうやって制御すればいいのか。三人は感心していた。
帰ったらアイエフさんにも教えてあげよう。レオルドが周囲を見渡すと、テーブルの上に見慣れない携帯端末を見つけた。
割れた液晶。摩耗したボタンや側面からして、長年使われてきた事がわかる。カバーを外してから、レオルドも自分のケーブルを引っ張り出すとデータの復元を試みる──のだが、うまいことハマらない。
《あれ? あれ、おかしいっすね……》
《どうしたレオルド! うまく
「今からテメェのちんぽを引きちぎる」
《勘弁してください。一生のお願いです。見逃してください》
チャリーン(エヌラスは2000クレジットを入手した)。
「ちっ、しょうがねぇな。今回だけだぞ」
《俺のエロ本代が……!》
《シュラ、来月から減給しとくっすね。あ、いけた》
メソメソと泣き言が聞こえてきた瞬間エヌラスはシュラのケツを思い切り蹴り上げた。