※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.206 極めつけの舞台

 

 プラネタワーまでの道を急いで引き返すレオルド達だったが、ダンジョン内部を通る際にモンスターが再出現していることに驚きながらも切り抜ける。先陣を切るバズに続き、シュラが散弾銃で相手を吹き飛ばしてはカバーする形でレオルドが反対側の敵を撃ち抜いた。ゼブラは狙撃銃を覗き込み、高精度照準補正装置によって長距離狙撃で頭を撃ち抜く。

 

《装填開始!》

《了解! 一匹撃破、次!》

《右に三匹、もらうぞ!》

《ホバーマインいくっすよ!》

《よくやったドベ太郎!》

 カーリングのように滑る機雷が曲がり角で反射して通路の向こうで爆ぜる音が聞こえてきた。隊列を維持したまま曲がろうとして、瀕死のモンスターが起き上がろうとしている。

 

《生きとるやないかーいっ!》

《どぉりゃあスナイパー空手!!》

《スナイパーの意味は!?》

 ゼブラが蹴り飛ばして装填を終えた大口径狙撃銃でクイックショット。モンスターの胴体を撃ち抜いて消滅を確認すると難なく通過。

 ダンジョンを抜けると、そこでは既に警備隊長がロゼと共に突如として出現したモンスターの群れをプラネテューヌ防衛軍と共に迎撃していた。高圧縮されたエネルギー球がレオルド達の間を綺麗に抜けていき、背後から迫っていたモンスターに衝突する。小型の爆発を起こしてプラズマを炸裂させるのを見てバズが拳をあげていた。

 

《あーぶなーいぞー》

《あっぶねぇな! こらーロゼ! お前の高出力エネルギーランチャーなんて直撃したら俺達爆散するんだからな!? もっとよく狙って撃て!》

《ごめんなー。撃つぞー》

 大口径ガトリング砲が空転を始めるのを見た瞬間、レオルド達は全力でその場を離れる。ダンジョンから溢れようとしていたモンスターの群れが蜂の巣にされていった。

 

《状況は!》

《ふん、見ての通りだ! 先ほど異常な波形データが確認されると同時にモンスターの群れが現れた! そこ気をつけろ! 幸いにも猛争モンスターの出現はまだ確認されていないがな!》

 接近してくる敵を突撃銃で迎撃しながら警備隊長が腰を落とし、スナイパーキャノンを構えて苦戦するプラネテューヌ防衛軍に援護射撃。モンスターの頭部を見事に撃ち抜く。

 

《既に異常事態は報告済みだ! わかったら貴様らもとっとと装備を整えてこい、それまでこの場は私が保たせる!》

《了解! すぐ戻るっす、警備隊長! 来月昇給させてもいいっすか!?》

《馬鹿を言え、貴様らからの賛辞などいらん! 謹んで辞退させてもらう!》

 スナイパーキャノンから排莢し、警備隊長は怒号を飛ばしていた。

 

 最短ルートを走るレオルド達がゴウやツキカゲ達とすれ違う。だが、互いに先を急いでいた手前、親指を立てて健闘を祈るだけに留めた。

 プラネタワーに到着するなり、格納庫まで一目散。シュラは弾薬補給と装備の換装。バズは先行したツキカゲ達と連絡を取り、必要物資の確認。ゼブラもまた、主兵装を交換している。

 

《レオルド、こっちは俺達に任せろ! お前は先にイストワール様に報告だ!》

《り、了解っす! 俺が到着するまで無理しちゃ駄目っすよ!》

《はっはっは、馬鹿を言え! お前の見せ場がなくなるぜ! こちらシュラ、出撃用意完了!》

 レオルドの肩部装甲を軽く叩いてシュラが早々に格納庫から街の中へ戻っていった。その次にバズが、最後にゼブラが敬礼して腰部バーニアを吹かして走り去る。

 背面の支援兵装パックを降ろし、格納庫を後にしてレオルドがプラネタワーの最上階までのエレベーターを待つ。とはいえ一介のロボット、そう簡単に面会が叶うはずもない──のだが、アイエフがすぐに顔を見せたことですぐに案内された。

 

 

 

 早朝から訪問してきたレオルドをイストワールはちょっぴり寝ぼけ眼を擦りながら対応する。アイエフは既に警備隊長からの連絡で叩き起こされていたため即時対応できていた。

 案の定と言うべきかこのような非常事態に対してワンテンポ遅れるのがネプテューヌ。

 

《イストワール様、守護女神近衛機兵団団長レオルドただいま帰投しました! えぇと、状況が状況なので報告の方は手短にします!》

「はい、かまいませんよ。お願いします」

《この件は、うずめさんの耳に入らないようにお願いします》

「わかりました」

 

 レオルドは零次元で入手した情報について、イストワールに説明した。

 別次元のプラネテューヌ、滅亡した次元。その中で入手、解析したデータによって判明した事実には、さすがのイストワールも衝撃を受けている。だがレオルドは偵察任務で得られた情報を包み隠さず報告した。

 零次元より更に先、繋がる次元に邪神達の本拠地があることも含めて。

 

「……そうでしたか。シロトラの製造元は」

《はい。その、俺達もまだにわかには信じ難いっすけど……》

「ですがそれでも、彼の持つ能力そのものの解明には至りませんね。守護女神すら越えかねないクリスタルの力には引き続き警戒してください」

《了解です。パープルハート様達が戦わないように俺達が足止めするのが仕事っす。報告は以上となりま……あ!》

「どうしたのよ、レオルド。いきなり大声出して」

 うっかり忘れるところだったが、エヌラスが現在零次元で猛争モンスターの大群を相手に孤軍奮闘。それどころか大乱闘中なのを慌てて補足した。さすがのアイエフも額に手を当てて頭を悩ませている。

 

「ちょ~っと見ないとまぁたそういうことするんだから! イストワール様」

「はい。こちらとしても早急に対応しないといけませんね。各国の守護女神達と協力して、急ぎ零次元へ向かってください」

《了解しました! こちらも急ぎ、ダンジョンの制圧を進めます!》

 敬礼するとレオルドは踵を返してそそくさとプラネタワーの格納庫へ向かっていった。アイエフがネプテューヌとネプギアを起こし、コンパも朝食の支度で慌てている。うずめも毛布にくるまっていたが、騒ぎに大きなあくびをこぼしていた。

 慌ただしい状況を見ながら、イストワールが顎に手を当てる。

 

(しかし、一度は安全を確保したダンジョンに再びモンスターが大量に出現するなんてこと有り得るでしょうか? 罠の可能性も──いえ、今はそんなことよりも、エヌラスさんの方が気がかりです)

 瀕死の重体から復帰したとはいえ、今のエヌラスは「魔神メモリー」によって身体を維持している状態だ。

 魔人──邪神によって造られた血縁者という意味合いでは、絶望の邪神ヌルズ・エクス・モルテスの息子ないし、兄弟ということになる。だが「魔神」となると話が違う。

 それは、守護女神を脅かす世界の敵だ。ましてやエヌラスは“邪神狩り”を続けてきた歴戦のバーサーカー、それが敵に回ればどれほどの苦戦を強いられるのか想像に易い。

 エヌラスに限ってそれはないと思うが──ネプテューヌ達と衝突すれば、お互いに無事では済まないことだけは間違いなかった。

 

(エヌラスさん。どうか、お願いです……その力に溺れることだけは絶対にしないでください)

 

 もしもその時は──貴方は世界の敵として認めなくてはいけなくなるのですから。

 

 

 

 ──零次元が震えていた。辛うじて残っている自然も、廃墟も、瓦礫の山も何もかも。まるで暴力に怯えているかのように。

 猛争モンスターが雪崩込む先には、ただ一人の魔神が立っていた。

 倭刀を右手に構え、左手はゆらりと開いている。

 あくまでも、構えはゆるく、だがそこに隙はなかった。

 

「──」

 僅かに息を吐き、エヌラスの手から倭刀が閃く。胴を薙がれ、返し刃で側面の魔法を弾き、その勢いで頭頂部から両断。足を振り上げて跳躍すると、消滅するまでのタイムラグを活用して足蹴にしながら自分の身体を電磁加速襲撃で撃ち出す。

 これまで培ってきた武技の全てを、今の自分に合わせて最適化させていく。

 一匹、また一匹と斬り伏せ、蹴り飛ばす。肉と骨を断ち、穿つ感触に眉を寄せながらも威力を修正。込める魔力と破壊の権能を微調整していくうちに雪崩込む敵の数が減ってきていた。

 

 そうして──猛争モンスターの群れは影も形もなくなっていたことにエヌラスは無人の荒野でようやく気づく。

 血振りを行い、納刀してから自分の手をじっと見つめながら感覚を確かめた。

 

「……ま、雑魚ども相手にするならこれくらいでいいか」

 一撃必殺。これに帰結する。魔導発勁に合わせて相手の体内に破壊の権能をぶち込むという、倫理観もへったくれもない術理だが、もちろんそれで倒されたモンスターからドロップアイテムなど無い。ギルドからクエストも受けられないことが確定したことにエヌラスが肩を落としながらも周囲を見回す。

 生産工場から離れて、超次元へ繋がる道で交戦していたはずだがいつの間にか街の方にまで来てしまっていたらしい。とはいえ暴れ倒したせいで半壊どころか荒野となっているのだが。

 

「っべー、うずめのアジトまでぶっ壊してなけりゃいいけど……海男の奴巻き込んでねぇよな」

 羽根を伸ばした破壊活動など久々過ぎてついつい興が乗ってしまった。

 うーん自重しなければ。エヌラスがひとりで頷いていると、物音に素早く倭刀に手をかけた。

 

 ──カラッ。

 

 ただ瓦礫の破片が崩れ落ちただけだったことに肩の力を抜きながらも、エヌラスは決して警戒を緩めない。

 

「なんでぇ、驚かせんなよ──で。テメェは誰だ?」

 指はすでに鯉口を切ろうとしている。首だけ向けると、そこにはうずめと瓜二つの少女が立っていた。少しだけ驚いた顔をしていたが、すぐに目を細める。

 

「はじめまして、かな。こうしてキミと会うのは。オレの名前は……まぁ、好きに呼べばいいよ。キミの知っている“うずめ”とでも、それとも黒いから“くろめ”の方がわかりやすいかな」

「……んで、そのくろめちゃんが俺になんか用でもあんのか? あいにく葬儀屋に知り合いはいないんだけどよ」

「面白い言い回しをするね。でも残念、オレにそんな予定はないよ」

 敵意は感じられない。あくまでも物腰は柔らかく、口ぶりも穏やかだが──エヌラスの嗅覚はくろめを敵だと認識していた。

 

「うーん、そうだね。まぁ、世間話みたいなものさ。あれだけの猛争モンスターをけしかけておいてなんだけどまさか一人で全部倒してしまうなんて、驚いたよ。敬意を表して、こうしてオレが直接会いに来たんだ。もう少し喜んでほしいな」

「……テメェが邪神の協力者で間違いねぇな?」

「キミみたいに勘のいいヤツは嫌いだよ──なんて、ね」

 くすくすと笑い声をこぼすくろめに、エヌラスはやはり倭刀から手を離さない。

 

「厄介なヤツだよ、キミは本当に。オレとしても、そんな瀕死の身体でうろつかれても邪魔なんだ。それなのに、予想以上にしぶとい。叩いても潰しても死にそうにない。それは困るんだ。だからキミにはそろそろご退場願いたいんだけれども……オレからの頼みを聞いてくれるかな?」

「絶対に嫌だね、ごめんこうむる、死んでも御免だ。テメェが死ね」

「オレの頼みを聞いてくれた方がキミのためでもあると思うんだけどね」

「ヌルズ──邪神のやつはどこだ」

「生憎と留守だよ。残念だけど」

 これ見よがしと大きめの舌打ちをこぼす。その言葉に嘘偽りがないことだけは目を見ればわかる。自分が邪魔者であることも含めて。

 頭を掻きながら、わざとらしくくろめは困った顔を見せる。

 

「お願いは聞いてもらえないかぁ、困ったな。キミをオレの力で創り出そうとすると、どうにもうまくいかないんだ。だからこうして直接頼みにきたんだけれど、断られたのなら仕方ない──キミにお似合いの地獄を用意しておくとしよう。極めつけの絶望の舞台をね」

 エヌラスはその言葉を鼻で笑い飛ばした。

 

「ああ。オレならこの先の“心次元”で待ってるからさ。ゆっくり来るといい。キミを心配して追いかけてくる愛しの女神様達と一緒に──女神候補生だったかな? まぁいいか」

「……ひとつだけ聞きたいことがある」

 その場から去ろうとしていたくろめが足を止める。

 

「なんだい?」

「テメェはうずめとどういう関係だ?」

「キミと同じだよ。邪神の一部から生み出された“搾り滓”のキミと──」

 超電磁抜刀術が放たれたが、それは空を切った。黒い閃刃はそのまま廃ビルの上階を消し飛ばし、やがて塵となって消えていく。

 くろめの声が響いた。

 

 ──安心しなよ、オレは逃げも隠れもしないから。ああ、準備だけはしっかりしておくのをオススメしておくよ。

 

「……うるせェな。俺の人生にセーブポイントなんかどこにもねぇんだよ」

 

 

 

 荒野にひとり立ち尽くしていたエヌラスのもとに、パープルシスター達とうずめ。そしてレオルド達守護女神近衛機兵団が到着する。だがその顔色は一様に焦っていた。

 ダンジョン内部にひしめくモンスターを撃破しながら零次元を目指していた守護女神四人の姿が突如として消えた。合流しようとしていた女神候補生達も猛争モンスターに足止めされ、レオルド達が駆けつけた頃にはその場に姿がなかったという。

 エヌラスはそこで、どうして黒幕が自分のもとへ姿を現したのか真意を悟った。最初からそれこそが狙いだったのだろう。

 守護女神を分断するために、そしてその奪還に自分たちが乗り出すことを知った上でくろめはこちらを挑発した。

 そうする以外の道が無いと。

 

 ──守護女神奪還の道には、自身の破滅しか無いと理解しながらエヌラスは歩みを止めようとはしなかった。

 取り戻しに行くぞ、とだけ告げて。

 先陣を切り、一度も振り返らなかった。

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