※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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ep.213 プランG

 

 ホワイトシスターの二人がパープルシスター達と合流した直後、ワープゲートから盛大な土煙が舞い込んでくる。

 その通り道から瓦礫の破片が落ちてくるのを見てアイエフは歯噛みした。

 

「アイツら……!」

 わかっていたはずだ。こうなることなんて。

 守護女神が囚われたと知った時から、自分たちが足手まといになることくらい。あまりに人間じみた人格構成プログラムのせいでそんな素振りひとつ見せなかった、わからなかった。

 彼らは最初から自分たちを“壁”とするつもりで着いてきてくれた。相手はあまりに強大で、とても敵わないと。

 

 ワープゲートの向こう側からくぐもった銃声と砲声が響いてくる。エネルギー砲の炸裂音に重機の衝突音。迫りくるシロトラを相手にディル達が時間を稼いでくれている。

 頭のネジが足りてない連中なのは嫌と言うほど知っていた。だがそれが、どれだけ自分たちを悲しみから目を背けさせてくれていたのか。あれは変態共なりの気遣いだったのだ。

 本当に、どうしようもない連中だったけれども。

 ──ドン底でも絶対に俯くことはなかった。

 

《みんな……》

「ボサッとしてないの、レオルド! 早く走って!」

《ひぇっ、了解っす!》

 ダンジョン内部は既に掃討されていたが、階段を降りる際の振動でレオルドが抱えていたうずめがうめき声を挙げる。

 

「う、っ……っく……──!」

「うずめさん、しっかりしてください!」

 ホワイトシスターが回復魔法をかけるが、それでも一向に傷口が塞がらないことに涙を溜める。海男はヒレを組んで容態を観察して、ある考えがよぎった。

 

「うずめの怪我は、シロトラが?」

《そうっす。完全な奇襲でした》

「となると……もしかしたら、うずめの怪我は普通では治らないのかもしれない」

「そんな……!」

「シロトラは対守護女神決戦兵器のようなものだ。彼の攻撃を受けたらぎあっち達もひとたまりもない。となると、彼の攻撃はシェアエネルギーそのものに影響するものだと推測できる──なら、うずめのシェアが尽きようとしていると考えていい」

《それはつまり、このままじゃ消滅しちゃうってことっすか!? どうにかしてシェアを確保しないとうずめさんが》

「そう、そこだ。レオルドが言う通り、シェアを確保しなければうずめは危ないだろうね」

 ダンジョンを抜けて、零次元へ出るとパープルシスターが遠方に覗く廃墟を見て思い出す。

 それは自分とネプテューヌが初めて訪れて、女神化できなかった時の窮地。うずめと初めて出会ったときのことだった。

 

「──シェアクリスタル! 零次元にならあるはずですよね、海男さん!」

「その通りだ。アジトのいくつかはエヌラスが暴れたせいで崩れたけれど、幸いにもシェアクリスタルを保管したアジトは他にもある」

「わたし、取ってきます。海男さん、案内をお願いできますか?」

「もちろんさ」

 パープルシスターは海男を抱えてアジトへ先行する。

 

《うずめさん、もう少しの辛抱です! 耐えてください!》

 レオルドを護衛する形で全員がその後に続いた。

 

 

 

 ──心次元で衝突する守護女神近衛機兵団とシロトラの戦況は、傾きつつあった。

 頭数と手数で押しても、その全てを覆す形で一騎当千の戦闘兵器はディル達の猛攻を凌ぎながら少しずつ戦力を削り取っていく。

 他の追随を許さない一点突破の機動力を犠牲に高火力と重装甲を実現した相手に、苦戦を強いられていた。

 

《シュラ、ロゼの機体反応はまだあるか》

《信号は微弱だが、確認できる》

《救援に向かってくれ》

《大丈夫なのか?》

《俺は仲間を絶対に見捨てんっ!》

 二門の機関砲によってシロトラの行動を阻害し、隙間を縫う形で強襲班のツキカゲとバズが挟撃を仕掛ける。だが一撃離脱を徹底していた。右手のブルースザッパーがどれほど強力無比な武器であるかはよく知っている。

 刀身をエネルギー膜で覆った状態での斬撃と光波はいとも簡単にこちらの装甲を溶断してくる、最軽量にして高機動の強襲班にしてみれば掠りでもすれば致命傷となるだろう。

 

《装填開始! ゴウさん!》

《任せろ!》

 機関部の放熱と共に弾倉を交換するディルに代わり、ゴウが自らにヘイトを向けるように大口径ガトリング砲を連射しながらシロトラへ接近する。廃ビルの割れた窓を装甲で突き破りながら柱の影に隠れた相手を追跡しながら縫い止めていると、ツキカゲが左前腕部に保持されている弾薬箱から手榴弾のスイッチを押して投げ込んだ。

 

《ちぃっ!》

 シロトラは削り取られていく柱から離れ、逆側の窓からビルを抜ける。左右の大型バーニアを逆噴射させてその場で急旋回すると右肩のエネルギー砲を構え──奔る一条の閃光によって砲身を撃ち抜かれた。暴発寸前の武装を即座に切り離すと、閃光の軌跡を視線で追う。

 

 廃ビルの三階。そこには大出力光学狙撃銃を構えて屈んだジーンがいた。

 弾倉は一発限り。銃身の放熱も相まって取り回しは劣悪だが、威力だけはお墨付きだ。当たれば強い、を体現したような狙撃銃をジーンは好んで愛用している。整備性も劣悪、定期的にメンテナンスも要求してくるが、それも含めて手放すことはなかった。

 

《やってくれる……!》

《……》

 マガジンキャッチを押して弾倉を廃棄、再装填するが加熱された銃身の放熱が終わるまでの間完全な無防備を晒す。

 ジーンへ向けてシロトラが左手の双門式バズーカランチャーを構え、咄嗟にその場から横に移動すると間一髪、銃声が響いた。徹甲弾は僅かに外れてビルの壁に風穴を開ける。

 

《あっ、くそ! やっぱ上手くいかないなぁ!》

《……ふっ》

《勝ち誇った笑みが腹立つーーー!》

 身を晒すことで敢えて相手の視線をこちらに向ける。その死角からもう一人が狙撃で仕留める、狙撃班によるクロスファイア。それもまたシロトラ自身が彼らに教えたことだった。

 彼らの連携による後方からの援護射撃は前線でモンスター達と戦う仲間たちの手助けに一枚噛んでいた、それすら今となっては懐かしい。だが、その郷愁すらシロトラは振り払って駆け抜ける。

 

《装填完了! どすこぉぉぉいっ!!!》

《ッ!》

 壁を持ち前の装甲で粉砕しながらディルがシロトラの前に飛び出すと、双門機関砲を突きつけた。それに示し合わせるようにブルースザッパーを振り上げて銃身を逸らす。代わりにバズーカランチャーを向けるが、タックルで防がれた。重量に突き飛ばされることなく踏みとどまったシロトラのバイザーカメラとディルの頭部ユニットが火花を散らす。

 

《どうしたぁ教官! 速さが足りていないなぁ! あんまり早いのも女の子に嫌われちゃうゾ☆》

《相変わらず本気かどうかわからん奴だ!》

《俺はいつだって本気だ! ──ところで最近俺は男もイケるクチになりました》

《そんな近況報告はいらん!》

 互いに銃身を突きつけようとするが、巧みに機関砲で捌くディルへブルースザッパーを向けるが刀身の腹を機関砲で払われて二度目のタックルがシロトラを突き飛ばした。たたらを踏みながらバズーカランチャーを向け、ディルはそれを深く屈み込んで射線から逸れる。

 その背後からロケットランチャーを構えたゴウが飛び越えてきた。

 

《ディル、肩を借りるぞ!》

《ンぎもぢいいッ! アイエフさんに踏まれてみたかったなぁ!!》

 曲面装甲の肩部に足を乗せてゴウが腰部バーニアで滞空しながら発射する。

 シロトラはトリガーを引かず、バズーカランチャーを投擲した。その場から下がりながらエネルギーグレネードを手にする。

 砲弾がバズーカランチャーに直撃し、爆風に煽られる。大きく山なりに投げたグレネードがディルとゴウの足元に転がり込んだ。同時に、シロトラはブルースザッパーを青いエネルギー膜で覆う。

 

《こいつはマズイか。どっせい!》

 ディルは迷わずゴウをビルの中へ突き飛ばした。体勢を低くして機関砲を盾にエネルギーグレネードのパルス爆風に耐えると同時に、シロトラのブルースザッパーによる光波を防御。だが、機関部が大破するとシロトラは迷わず距離を詰めてきた。主武器を放棄するまでの僅かなタイムラグに突き出される切っ先が右肩のジョイント部を溶断する。

 ディルの右腕が双門機関砲を保持したままひび割れたアスファルトに落下し、重苦しい音を立てた。

 

《貴様のパイルバンカーは厄介だからな》

 蒸気圧射突式パイク。削岩用として開発された物を武装として転用したディルの近接兵装こそシロトラは警戒した。レオルドのグレートソード、セインのエネルギー刃、ツキカゲの光刃鎌、バズのダブルクロー、様々な近接兵装が存在したがその中でもまさに一撃必殺を体現したディルの近接兵装はもっとも油断禁物の兵器だった。当人の性格も相まって、よもやという時に打ち込んでくる。それで泣きを見た者は少なくなかった。

 だが──。

 

《ゴウさん! 今だぁぁ!!》

《…………!》

 機関砲の下敷きにされた右腕に、あるべきものが付随していないことにシロトラが気づく。距離を取ろうとするよりも先にディルがシロトラに組みつき、突き飛ばされていたゴウがロケットランチャーを懸架して()()を引いていた。

 ──蒸気圧射突式パイク。鉄芯を高負荷に耐えうる素材で組み替えた新型のパイルバンカーからは白い蒸気が吹き出し、機関部が唸りを上げている。

 突き出された拳が《ライデンHⅡ増加装甲》の胸部を叩き、同時に鉄芯が射出された。その威力は凄まじく、踏みとどまろうとしたシロトラを吹き飛ばしていく。だが同時に鉄芯の先端がひしゃげ、ゴウもまた右腕に掛かった負荷によって関節部に火花を散らしていた。

 

《っしゃあ! 一本!》

《ここまでしてようやく有効打が一撃か。まだまだ先は長いな》

《なぁに、ソウルブラザーに比べたら屁でもない!》

 残った左腕でサムズアップすると、ロゼの救護へ向かったシュラから通信が入る。

 

《副長、ロゼだが……動力炉をやられてる。復帰は無理そうだ》

《了解》

《──ご……めー……》

《気にするな、ロゼ! よくやってくれた!》

《こちらもすぐ向かう。バリアユニットは無事だ、そちらへ持っていく》

《それは助かる。頼んだぞ》

 ツキカゲとバズが弾倉を交換しながらディルと肩を並べてシロトラを警戒していた。

 

《……どう思う?》

《シロトラ教官のことだ、まだ本気じゃないだろうな》

《むしろ強化装甲引き剥がすだけでこの損害は洒落になってないんだけどねぇ》

 肩をすくめていると、吹き飛んだビルの奥から見慣れた青い光弾が連射される。散開し、すぐに武器を向けた。

 

《──褒めてやる。ここまではな。そして認めよう、お前たちは確かに強くなった》

 土埃で身体を汚しながら、左胸の強化装甲に風穴の開いたシロトラが姿を現す。追加武装は全て破壊に成功した。増加装甲も損傷させた──それでも、ディル達は決して警戒を緩めない。

 

《俺も教官として鼻が高い》

 ライデンHⅡ増加装甲各部に仕込まれた爆裂ボルトが一斉に起爆する。硝煙を漂わせながら装甲を強制解除したシロトラの純白の機体は、左胸に辛うじて亀裂が入っただけに留まっていた。それを見てディルがゴウにアイコンタクトを取る。

 プランGの決行に予断はない。こちらが用意できる最大火力は、蒸気圧射突式パイクだったのだから。それが不発に終わってしまった今、できることはそれしかない。

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