超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「あの……」
「……」
腕を組んで、不遜な態度で三人の顔を見比べる。そして、声をかけてきたネプギアに視線を戻した。その眼は明らかに不機嫌さを隠そうともしない。
「危ないところを助けていただいて、ありがとうございます」
「…………」
深々と頭を下げるネプギアを無言で睨み続けていた。眉を寄せて怪訝な表情に変わると、今度はネプテューヌとノワールに視線を移す。
「いやー、本当に危なかったよ。主に貞操が。助けてくれてありがとう! 私、ネプテューヌ」
「あ、私は妹のネプギアです」
「ノワールよ」
「………………はぁ」
「ため息!? まさかの自己紹介スルーからため息!?」
「何しにこんなとこに来たのか知らねぇが、ピクニックなら場所を選べ」
騒ぐネプテューヌから視線を逸らして青年は三人に背を向けた。そのまま歩き始める青年に、ノワールが思わず呼び止める。
「ちょ、ちょっと!?」
「なんだよ」
「せめて、ここがどこなのか言いなさいよ! あと、自己紹介くらいしなさいって」
「……戦場の、最前線。見て分かるだろ」
「えっと……確か、エラヌス……さん?」
ピクリと口の端が引きつるのを見てネプギアが命の危険を感じ取り、咄嗟に身を防ぎながら涙目になっていた。眼光だけで人が殺せそうなほど凶悪な面構えになっている。
「エ・ヌ・ラ・ス、だ」
「ご、ごめんなさい! あの、実は私達――って、ああちょっと待ってください。せめてお話くらい!」
「う・る・せ・ぇ! 俺はこんなとこで暴れ回って長居する気はねぇんだよ! とっととここ離れねぇと面倒くせぇことになる!」
「面倒なことって?」
「だぁー、いちいち説明してる暇なんかねぇよ! ついてくるなら好きにしろ! こっから先は自分の身ぐらい自分で守れ!」
そう言いながらこの場を離れようとするエヌラスに三人が顔を見合わせて距離を取りながらもついていくことにした。
「んふふ」
「……? なんだよ、笑い出したりして」
「もしかして、俗に言うツンギレ属性?」
「キレてねぇよ。ツン百パーセントだ」
「思いの外冷静なツッコミ!?」
“あれ、この人見た目より悪い人じゃないのかな……?”
ネプギアがそんなことを思い、胸の中で謝罪と認識を少し改める。
「あの、ところでどこに向かってるんですか?」
「拠点」
「はぁ……遠いんですか?」
「それなりに」
「……ど、どれくらい」
「ここからだと三時間足らず」
会話をするのが億劫なのか、それとも元々口数が少ない方なのか。沈黙に耐え切れず声を掛けるネプギアとの質疑応答は簡素なものに終始していた。ネプテューヌも勝手の違う世界なのは理解しているのか珍しく大人しい。ノワールは腕を組みながら不審な目でエヌラスの背中を見つめている。
「ねぇ。アナタ、他に仲間は?」
「いない」
即答だった。
「へー、じゃあノワールと同じでぼっちなんだ」
「なんだ、お前ぼっちなのか……」
「ぼっちじゃないし! 勘違いされるでしょ、やめなさいよネプテューヌ!? っていうかアナタも鵜呑みにしないでよ!」
「すまなかったなゆるしてくれ」
「呆れるほどの棒読み!?」
「思ったよりノリが良いんだね、エラヌスって」
「テメェら姉妹は揃いも揃って人の名前間違えやがって! エヌラスだってんだろうが消し炭にすんぞ!」
「口で言っても実行しないでしょー? きゃーこわ――」
ゴガァン!
茶化すネプテューヌの足元に銃弾が撃ち込まれた。銃口から漂う硝煙から五十口径のマグナムリボルバーが直撃すれば人間の身体など簡単に吹っ飛ぶ。弾丸の衝撃と風圧で軽くスカートがめくれ上がっていたがエヌラスは見向きなどしていない。笑顔で固まるネプテューヌの顔を冷や汗が伝う。
「…………」
「次、間違えたらケツバットかタイキックな」
「警告のレベル逆じゃない!? 怖いよ! 危ないって! 今の当たってたら私ちょっとグロ方向でアール指定かかって一生車椅子生活だったよ!?」
「当てないように外してやっただろうが」
「当たってる! 銃口当たってるから! あつっ、熱い!」
マズルスパイクを押し当てられてネプテューヌがお笑い芸人よろしくなリアクションで除けた銃をまじまじと見つめる。それがリボルバーでありながら、全体的なフォルムが自動式拳銃と見紛うばかりだ。よく見ればアンダーバレルにバヨネットが隠れている。
触ろうとしたネプテューヌに、エヌラスはトリガーガードに指をかけて器用に反転するとグリップを差し出した。
「……いいの?」
それに手を触れ、両手で構えようとしたネプテューヌの両手がガクンと落ちる。
「重っ!? なにこれ!? 絶対セキュリティ的な何かだよねコレ!?」
「よくわかったな」
すぐに粒子の光になって分解された。マキシカスタムされたレイジング・ブルの重みがまだ手に残っているのか、その残滓を振り払おうとネプテューヌが両手を振っていた。
《…………》
「…………」
そして、そこでようやくエヌラスは自分達が包囲されていることに気づく。丁寧にも事の顛末を一部始終見守っていたらしい。
人型機械の集団。量産機らしくオリーブドラブ一色で染め上げられた機体は無機質な表情から変わりないが、周囲の空気で困惑して呆れているのが分かる。
《……もういいだろうか?》
「ご丁寧に待っててくれてありがとうよ、死ね」
右手に倭刀。左手にレイジング・ブルマキシカスタム。首を鳴らしてエヌラスが戦闘態勢をとって前に出る。その横にネプテューヌ、ネプギア、ノワールが一列に並んだ。
「私達も戦うよ!」
「そうね。アナタ一人で十分だろうけど、手伝うわ」
「さっきのお礼もまだですし」
「けっ、好きにしろ。とっ捕まっても助けねぇからな」
冷たく言い放つが、恐らく自分達がいざ窮地に陥ると助けてくれる。そんな温情がどこかに感じられた。
「行くよ、ネプギア。ノワール!」
ネプテューヌが無銘の刀を召喚して抜き放ち、鞘を放り捨てる。放物線を描いて回転しながら飛んで行く先にはエヌラスの頭。スコーン。
「イッテェ! ゴミ捨てんならゴミ箱に捨てろ!」
「ねぷっ!? ゴミじゃないし、ちゃんと刀の鞘だよ!?」
「使わねぇならちゃんと持ってろ!」
「マジレスこわい!」
《あのー、そろそろバトルフェイズ入っていいでしょうか……》
「アッハイ。どうぞ」
喧々囂々と騒ぎ立てるネプテューヌとエヌラスを無視してノワールとネプギアが人型機械の群れと対峙する。
「あっ、出遅れた!」
「テメェのせいだろうがネプテューヌ!」
「凄い! 初対面で私の名前ストレートに言ってくれた! ありがとーエラヌス! ちょっと好感度上がったよ!」
「ブッ殺すぞテメェ!!!!」
・キャラ紹介
主人公 エヌラス(♂)/戦禍の破壊神
武器 剣(無銘の倭刀)&銃(レイジング・ブル マキシカスタム)と体術。距離を選ばない万能型の戦闘スタイルだが、特化型にもなる。しかし武器の転送にタイムラグがあるため隙がある。
性格 クールで一匹狼。ノリは良い方だが口が悪い。
過去 かつての恋人を敵国に寝取られ、自らの手で壊滅させた。その経歴からか女性に対する警戒心が強い。
外観 全身黒ずくめ。黒髪。黒い半袖に黒いコートを羽織り、黒い指ぬきグローブに黒のダメージジーンズ。黒の鉄板入りブーツ。左胸に獅子の刺青がある。
備考 本来の心臓に付け加えて“銀鍵守護器官”を持つ為、生存率は非常に高い。自らの治める国は地下帝国『九龍アマルガム』