クマ吉君の野望【2次創作短編集】 作:堀 吉之助
クマ吉は汗をぬぐった。作業を始めてかれこれ十日は立っただろう。それは彼の目の前にある「作品」がその仕事ぶりを表していた。あたりには油とイカのような匂いが混ざった異臭がする。
「やっとできたっ。ぐふふふ」
クマ吉は気味の悪い笑いを浮かべて「作品」を見る。それはクマ吉と同じ背丈をしているものだった。床から伸びたコードが「作品」に取り付けられている。そしてクマ吉の足元にはあらゆる工具が散らかっていた。それはクマ吉の「作品」が機械類であることを物語っていた。
その「作品」の姿は茶色い体をして、青いシャツと半ズボンをしている。頭には獣耳を付けられ、目はどぶのように黒い。その姿はまさに、クマ吉そのままだった。
そう、クマ吉の目の前に「クマ吉」がいた。
「ぐふふふ、メカクマ吉(イケメン型)が完成したからこれで、僕が学校に行っている間にもいろいろとあの、こうデッサンに必要な写真とか映像とかが撮れるよっ! いやらしいことには絶対使わない、僕にはアリバイがあるんだ! 犯人はぼくじゃない!」
頭の中でシュミレートしつつ、誰もいない中でクマ吉は言い訳を開始した。頭の中ではすでに職務質問されている。だが、目の前のメカクマ吉がどこで何をしていようとも、クマ吉には彼の言ったととおり「アリバイ」がある。つまり、クマ吉はこのメカクマ吉にいろいろと女の子の写真を撮らせつつ、自分は学校に行くつもりだった。
機械工学だとか、電子工学だと彼の難しいことはクマ吉にはわからない。ゆえに彼はフィーリングによってこのメカクマ吉を製造した。使った機材はハーンズマンで調達した物だけなので、意外に安価に完成させることができたのだ。これも求道者としての意地というものなのだろうか。
「これが……完全なはんざ……完全な紳士なんだね。ゴクリ」
口を滑らせそうになりつつ、クマ吉は唾を飲んだ。それでも飲みきれず口元からだらだらと流す。数日間学校へも行かずに作り上げた力作で、これからクマ吉はいろいろなことをしようと考えていた。たいていはエロに関係のあることと、後はエロである。
「あっ、そうだ試運転しておかないと」
クマ吉はそう言ってメカクマ吉の股間を触った、何故かわからないがそこにスイッチがあるのだ。そこを触った瞬間に目かクマ吉の眼が光り、「ぎぎ」と機械音がし始めた。
メカクマ吉がクマ吉をぶん殴った。
「ぐふうう」
いきなりのことに悲鳴を上げて吹っ飛ぶクマ吉。メカクマ吉は、すばやく倒れたクマ吉に近寄って、その股間を蹴り上げた。
「ぎゃ、ああああ……な、んばんで、ばー」
なんでを言い間違えた上に変な断末魔を上げて気絶したクマ吉をメカクマ吉は見下ろしていた。そして緩やかに首をふる。
「ぼ、僕は犯人じゃないよ……ギ、ッギ」
あまりに完成度の高いメカクマ吉。クマ吉をノックアウトして、もはや彼を止めるものはいないだろう。彼はクマ吉をそばに有った縄で亀甲縛りにして部屋の奥へ放り込んだ。その上からビニールシートをかけておいたので、ちょっとやそっとのことでは見つからないし、クマ吉も脱出はできない。
「ふう……」
メカクマ吉は出るはずもない汗をぬぐって、一息ついた。
皇紫音はマウスを動かした。
彼女の前には、少し型の古いパソコンが一台あり、その画面にはフリーゲーム独特の淡泊な表示ではあるが、チェスの盤面が映し出されている。
「チェックメイト」
顔も見えない対戦者に紫音は柔らかな微笑とともにそう言った。それは勝ち誇るでもなく、相手を嘲る様子もなく唯々自然を崩さない、そんな彼女の姿だ。もしも敗北した対戦者が彼女顔を見ることができるのであれば、敗北を認めることはなんのためらいもいらないだろう。
――YOU WIN
画面にそう表示がでたことを見届けてから紫苑は長い紫の髪を払いながら、立ち上がる。すらりとした長身に着崩したブレザー。そこから見えるブラウスと薄茶色のカーディガン。不思議な服装だが、何故か皇紫音はそれを感じさせない。
「今日は温かだね」
紫苑は誰に言うでもなく、そう声を出す。今日は1月の中ごろ。冬の午後とはいえ、日差しが温かな日。あまり寒さに強くない紫音はそのことをかみしめるように、伸びをする。
ただ、少しだけ物足りない。彼女のいる部屋には食器棚や本棚から、なぜだか年季の入った白黒テレビ。それに大き目のソファー、しまいには中央に畳が敷いてあり、その上にはコタツが置かれていた。
「真央か……キョロ君でも来てくれればいいのだけれど」
小さな声と弱々しい口調で紫音はこの統一感のない部屋の入口を見た。
紫音がいるのは彼女の所属している部活である「GJ部」の部室だった。その名の通り「何をする部活かわからない部」ではあるのだが、紫音にとってはこの部活ほど心地よいところはない。だから今日も昼休みの時間を使って、この部室に足を運んだというわけだ。
だが、それでも部室にはまだ誰も来ない。昼休みには全員が集まることは少ないが、誰も集まらないこともめったにないのがGJ部である。それでも今日の紫音は不運としかいいようがないだろう。
「まあ、しかたないね」
肩をすくめて紫音は言う。整った顔立ちが、陽にあたって白く映える。口では仕方ないという紫音だったが、ちらちらと入り口を見る彼女の目は少しだけ寂しげだった。
反面メカクマ吉は焦っていた。
今朝、自分を作った偽メカクマ吉(本物のクマ吉。彼の中ではあっちが偽物) から逃げ出してから、特に行くあてもなくこのGJ部の部室、そのコタツの中にもぐりこんだ彼である。隠れたはいいのだが、猫よろしく丸くなっていると皇紫音が部室に入ってきて、出て行きそうもない。
今見つかれば、ほぼ間違いなく通報されてしまうだろう。明らかに部外者な彼はどう考えても「不審者1」でしかないのだ。メカクマ吉はそのことで脳みそ代わりに入れてあるPS1をフル稼働させて考えた。
「そうだ。このまま、このコタツのなかでじっとしていればいいんだ」
十年以上前に発売された当時の次世代機「PS1」でそう答えをはじきだした彼は、こたつの中でさらにまるさを増した。円こそがこの世の心理であると彼は聞いたことがある気がする。
「うう……。少し寒くなってきたな」
紫音はそう言ってから上履きを脱ぎ、畳の上に上がる。そうしてコタツに近づいた。メカクマ吉は体を震わせた。
(な、なんだって。も、もしかしてその足をこのコタツの中にいれるつもりなのっ? だ、だめ、ぐふふ。い、いや違うよっいやらしいことなんて一ミリも考えたこともないよ。もし考えていたとしても、アダムとイブも裸の関係から始まったんだし……そう考えれば自然っていうか。別にいやらしくはないっていうか、ととにかくまずいよ)
このメカクマ吉の完成度は高いのだろう。明らかに本物と同じような思考をしている。しかし、昨日今日生まれただけでのひよっこ、いやクマっこには柔軟な対応が取れない。その点で言えば彼はまだ紳士として未完成とも言えよう。
「ふう、コタツの電源はちゃんと入っているな……」
外で紫音の声が聞こえる。彼女は今電源を確認しているようだ、となれば次に彼女の吊る行動は間違いなくコタツの中に足をいれることだろう。
(ああ、あ、ビガー。い、いれてくるまずビガー。ちょ、ちょっとまともにかんがえれなビガー)
メカクマ吉は脳内に鳴り響く「ビガー」というアラームで焦る。すごく思考するのに邪魔な機能ではあるが、自力できることができないというおまけつきだ。そのせいでまともに対策できないメカクマ吉は一か八かの策に出た。
紫音がコタツの毛布を押し上げた、そしてゆっくりと足を入れてくる。黒いタイツを着ている彼女の長い脚をみてメカクマ吉は「わーお」と感嘆の声を上げた。だが、そうのんびりもしていられない。メカクマ吉は素早く自分の履いていた靴下を脱ぐと、紫音の開けた毛布と畳の隙間から突き出した。
紫音の目の前に現れる靴下。そしてクマ吉の手。彼女は驚きを顔に表そうとしたが、次の瞬間にはさあと血の気が引いて言った。
「な、なんだ? うっ、す、っぱい」
ばたんと音をたてて、倒れる紫音。ぴくぴくと痙攣しつつ、口元から涎をだす。天才な彼女が今まで誰にも見せたこともないであろう顔をしているのは、メカクマ吉の靴下の匂いのすさまじさをものがたっている。
もぞもぞとメカクマ吉がコタツの中から這いだしてきて、息をのむ。
「や、やってしまった」
わなわなとふるえる手で言うメカクマ吉。その手に凶器である靴下が握られていた。手に持っているだけでメカクマ吉の嗅覚機能を完全に停止する力を持ったその魔靴下は、いま一人の少女を犠牲にその威力を見せ付けた。
「ち、ちがうよ。僕はやってないよ! そ、それに僕の靴下はピャネル5番の香水を使っているからいい匂いだよっ」
ピャネル5番とは普段からクマ吉が愛用している香水の名前だ。安すぎてワキガの匂いがする以外は至って普通の香水である。それをたっぷりと靴下に染み込ませたのだから、靴下はいい匂いがするだろう。人類にとってとは言っていない。
「人は誰だって足の匂いがするんだし……。お、大げさだよ」
人と言うかメカである彼が言ってもあまり説得力ないが、メカクマ吉は倒れて中途半端にコタツに足を突っ込んでいる紫音を見た。ブラウスの胸元が彼女の息に合わせて上下している。
「…………」
メカクマ吉はじっとそれを見つめる。だがはっと我に返ってから言った。
「ち、違うよ、おっぱいなんて関係がないよ。ただ、その、この人も人間だから靴下を嗅いでみようと思っただけだよ」
なぜそうなったのかはわからないがメカクマ吉はもぞもぞとコタツの中に入り直した。そして紫音の両太ももを掴んでコタツの中に引いれる。なかから「うっひょう」と声がした後に「ち、ちがうよ」と言い訳が漏れた。
今この部屋に誰かが入ってくるのならば、ただ紫音が寝そべってコタツに入っているとしか思わないだろう。だが、尋常でないほど青白い顔をした紫音と今コタツの中でする、布のこすれる音を聞けばその評価は一変するだろう。しかし今日の紫音はとことん不幸らしく、誰もこの部室には近寄らない。
「もう、靴下だけなのに。こんなタイツなんて着て! 脱がすのが大変だよっ」
コタツの中で声がする。何かを引っ張る音とともに。紫音は「うう」と苦しげに息を吐くが、目を開けることはない。
「……お、おかしいよ。靴下からいい匂いがするなんて……。がっ、学会に発表しなくてはいけないから持って帰るよ」
わけのわからない言葉がコタツの中で漏れたあと、コタツのぎゅっぎゅっと何かの布を脱がす音がした。それからメカクマ吉がタイツを穿いているのだろう、ゴムを引っ張る音がした。
「ふう。全く訳が分からないよっ」
メカクマ吉がそう言いながらコタツから頭だけを出す。そしてゆっくりと外へ出てきた。下半身にはタイツを着ている。さっきまで彼はきていなかったのだから、どこで調達したのだろうか。
「……靴下からいい匂いがするなんて、もう本当に大発見だよ!」
そういう彼の手元には一枚の布が掴まれていた。その白い布は、やわらかい手触りをして、どこかふんわりとした材質をしている。そして、真ん中に申し訳程度の飾りであるリボンが付いていた。一般的に女性用の下着として使われているものだ。要するにパンツである。
「この靴下変な形しているけど」
メカクマ吉は顔にその布を当てた。
「いいにおぃ、ぐふふ」
えらく幸せそうな顔をしながら彼は言う。そもそもタイツの下に靴下など履く人は少ないだろう。メカクマ吉はそのあたりの常識詳しくなく、彼は「間違えて」この手に持っている布を紫音から剥いでしまったのだ。
「あっおかしいよ、このパ……靴下は足を入れるところは二つあるけどくっついているから、これで歩いてたらよちよち歩きしかできないよ!」
メカクマ吉は焦った。こんなものを紫音に返してしまったら、彼女は変な歩き方が治らないだろう。元々変な歩き方なんてしていない彼女だが、メカクマ吉は善意からそう思った。
「あっわかった。こう使うんだね。ちょうど穴も二つ空いてるし」
メカクマ吉はそう言って「靴下」を頭から被った。ちょうど耳のところに穴が開いているので、彼のクマ耳はしっかりと出すことができる。額にはあつらえたようにリボンがくる。
「これが正しい姿。正装さ!」
メカクマ吉は言う。
さて、一方の紫音である。彼女はコタツの中に入ってはいるが、タイツはすでにメカクマ吉の下半身に穿かれ「靴下」は彼の頭部を守っている。つまるところ、コタツの中で彼女の下半身にはスカートしかないということだ。
「う、うん。さ、さっきはなにが」
不幸な紫音は起きなければいいのに、ゆっくりと身をおこした。先ほど意味の分からないまま、気絶したので彼女は情報を求めるようにあたりを見回した。
「……眠ってしまったのかな……。睡眠時間はとっているつもりだったのだけれど、貧血だろうか……」
口を開けたまま紫音は固まった、目の前にパンツをかぶったクマが立っているのだからそれもしかたないだろう。しかも、下半身にはタイツを着用している。紫音はごくりと唾を飲み込んで、できるだけ平静を装って言う。
「ど、どちら様かな?」
「えっ? 僕? 僕は本物のメカクマ吉」
「ほ、本物? メカ?」
クマ吉のことすら知らないのにメカが出てきて紫音は混乱しそうになった。しかも「本物のメカクマ吉」である、ということは別のメカクマ吉もいるのだろうかと紫音は思うが、そうではない。単にメカクマ吉がクマ吉をメカクマ吉の偽物にしているのだ。ここまでややこしい関係は地球上に存在しないのではないだろうか。
「で、ではメカクマ吉君。き、きみびゃ」
奇声をあげてからびく、と紫音が跳ねた。その顔が首筋から真っ赤にそまり、耳まで赤くなる。それはクマ吉の頭に見覚えのある「布」を見つけたからだった。彼女は唇を震わせつつ、クマ吉に聞く。
「そそっそそその頭にしているのはなななにかなメカクマ吉君」
紫音は指をメカクマ吉の頭を指さして言う。だが、メカクマ吉はその程度では慌てない。淡々と返す。
「靴下だよ?」
「靴下!?」
紫音はあまりにみょうちくりんな答えにコタツから飛び出しそうになった。だが、彼女は腰を浮かしたところで気が付いたらしい。さっきよりも顔を青くしてゆっくりとコタツの中に入り直す。
紫音はコタツの温度設定が熱すぎるのか、それとも別の気がかりなことがあるのかわからないがだらだらと汗を流した。その顔はメカクマ吉に助けを求めているような、非難しているような複雑な表情をしている。
「ど、どうしたの?」
「い、いや。ず、ずいぶんか、下半身が寒いとお、おもって」
オブラートに包んだ言い方で紫音は言い、いけしゃしゃあとメカクマ吉は返す。だが、メカクマ吉とて鬼ではないクマ吉である。彼は紫音にやさしく言った。
「だ、大丈夫なの、よかったら僕のパンツをあげるよ?」
紫音はメカクマ吉の額を凝視したまま、顔を上下に振った。言葉を言うには恥ずかしすぎる。メカクマ吉は「わかった」と快諾しつつ、ズボンを脱いだ。
「め、メカクマ吉君?」
メカクマ吉はにっこりと笑ってから、ズボンを放り投げた。その下に着た、青いトランクスに手をかける。そこではたと紫音は気が付いた。このことで気が付くのはやはり天才と言わざるをえない。
「い、いや。やっぱり、ぱ、ぱ……はいい。いや、大丈夫だ、脱がなくていい。ダイジョウブだ! 大丈夫だからあああ!! 脱がなくていいっ、あ、あああ」
必死になって止めようとする紫音の努力もむなしく、するするとメカクマ吉はトランクスを脱いだ。露わになった股間には、一本の塔がたっている。それはメカらしく、太く長い。それを直に見てしまった紫音は「は、あああ」などと声を上げて顔をそらした。手で顔を覆い、見えないようにしているが彼女の指の隙間が少しだけ空いている。
メカクマ吉は逆に「パンツ」を紫音が噛んで「ぱ、ぱ……」と言ったのをお父さん的な意味に解釈してうふふと笑っている。それでも彼はやさしさを忘れなかった。脱いだトランクスをまるで賞状のように両手で捧げ持って紫音に差し出す。紫音は顔を背けたままではあるが、メカクマ吉に対して言った。
「ちがう。いや、あのその気遣いはありがたいんだが、その私がほしいのはこれよりもむしろ、君の頭にあるそのぱ。いや、靴下なのだけれど」
「ええっ? せっかく脱いだのに、わ、わがままだよっ」
「そ、そうだろうか? でも、その君の額にあるそれは……」
「靴下?」
紫音は困惑した。どうやっても話がまともな方向へ向かいそうにない。それどころかトランクスまで手渡されそうになっている。
(お、落ち着くんだ私。彼のかぶっているものがわたし……いや女性用の下着であるかどうかはまだ仮説でしかない。実際にあの布は彼の頭についた耳を出すには理想的な形をしているわけだから仮に私が今朝シャワーを浴びた時に見たものが彼の頭の上にあったとしてそれは問題はない)
問題が歴然としているのに問題ないという彼女の思考は明確に混乱の極致にあった。だが、それを非難することは誰にもできないだろう。いきなり靴下の匂いで気絶させられて、その上でタイツとパンツを剥ぎ取られかつ、しかもパンツを変熊の頭にかぶられる状況だ。人生を百回やり直したとして、そうそう出くわせる事態ではない。
それでも皇紫音はそのあり得ないほど複雑奇怪な状況に出くわしていた。非難されることはないだろうが、これを自力で解決しなくてはいけないのだ。紫音は混乱しつつも少しずつ、思考を整理し始めた。彼女の天才的な頭脳を持ってすれば、こんな状況でも打開できるだろう。
もちろんそんな暇を与えるメカクマ吉ではない。彼はズボンを脱いだからか「寒い」と言ってコタツの中に頭から潜り込んでいく。紳士と一般人の住んでいる世界では、その進む早さが違うのだ。メカクマ吉の行動は紫音の思考の速度ををはるかに凌駕している。
「きゃあ」
女の子そのものの悲鳴を上げる紫音。だからと言ってコタツのから飛び出すことはできない。そもそもこの学校の制服はえらく丈が短いのだ。そんなもので外に出ようものなら、間違いなく見える。
メカクマ吉はコタツの中で丸くなろうとしていた。だが、良く考えれば今朝あの偽物のクマ吉のところから逃げ出してから、なにも補給していない。さすがに空腹感はないが、なにかエネルギーを補給せねばならないだろう。
メカクマ吉は目を開けると、天井に付けられたヒーターからの熱気で目が熱くなる。それでもこのコタツ特有の薄いオレンジ色の光で中は明るい。だからメカクマ吉の眼にも、紫音がコタツの中で必死になってスカートの中を保護しようと足を組んでいるのが見えた。メカクマ吉はとりあえずそれにもぞもぞと近づく。
メカクマ吉の目の前には紫音の太ももがあった。とりあえずメカクマ吉は舐めてみた。ほどのよい肉づきに白い雪のような肌をメカクマ吉の舌がすーと線を付ける。
「ひゃあ! なにをするんだ」
紫音はそういうのだが、メカクマ吉は元気百倍である。こんなエネルギーの補給の仕方は彼にしかできまい。だが、まだ足りないらしく彼は目の前の太ももにしゃぶりついた。引っ張りながら舌を太ももへ這わせるので油断すれば、脚を組んでいるのが解けてしまいそうだ。
「や、やめるんだっ。め、メカクマ吉君。あっ。なめるのは。ざらざらして……」
紫音は舐められるたびに体を動かすのだがコタツから出ることもできず、かといってメカクマ吉を撃退する明確な策があるわけでもないので、体を震わせることしかできない。だがメカクマ吉は容赦しない。するすると彼は太ももを伝って、上へ這いあがってきた。勿論紫音は身を下げる。だが、太ももに蝉のようにメカクマ吉に張り付かれてしまっているのだ。どうしようもない。彼はぐんぐんとコタツの中で紫音の足を開かせようとしている。紫音は必死に中を見られまいとスカートを手で押さえる。
「ぐふふふ」
いきなりコタツの中に機械音が鳴り響いた。外の紫音には何が起こっているのか、さっぱりとわからない。それはメカクマ吉の手が変形する音である。彼の右手はその指や毛を中に引っ込めて、丸い先端になった。メカクマ吉が変形させた手はまるで大きな男根、もといマッサージ機に見えた。正確に言うならば腕そのものが「マッサージ機」なってしまった。
メカクマ吉は腐ってもメカである。それも一級の紳士が作り出した最高傑作であるのだ、体内のいたるところにはありとあらゆる淫具が内臓されている。ローションも然りだ。
メカクマ吉はその手を紫音の太ももに付けた。すばやい行動は紫音には止めることができない。メカクマ吉は彼の「手」に脳から指令を送った。それだけで太ももに当てた手はぶるぶると振動し始める。
「……ほ、本当になにをやっているんだ。そろそろ悪ふざけはやめておかないと……きゃ」
紫音が悲鳴を上げてから、目をつぶった。それは太ももになにか冷たいものがかけられたからだ。
「なにをした、んだ。メカクマ吉君、い、今ならまだ穏便にことを済ますこともああ、つめたい」
なんとメカクマ吉の変形した先から粘液が出ているのだ。それが太ももに粘液を飛ばすので、すべすべの肌がどろどろの液体でコーティングされていく。むろん紫音は足を動かして抵抗するのだが、メカクマ吉にはあまり効果はない。
「ぐふふふ、お仕置きだよっ」
「お、お仕置き? わ、私はなにも」
「さっき嘘をついたじゃないかっ。僕は分かっているんだ」
「嘘? ひぅ、そ、それを止めてから話し合わないか……、っ」
紫音が何を言おうともメカクマ吉はやめる気はなかった。そう、先ほど紫音は嘘をついたのだ。メカクマ吉のパンツがほしいと言っていたのに、結局取らなかった。これは重大な嘘と言っていいだろう。少なくともメカクマ吉はそう思っていた。
(ぐふふ、昔話で樵さんが湖に斧を落とした時に正直者には金の斧と銀の斧を手にいれられた話が合ったんだ。逆に嘘をついた樵さん斧を全て奪われてしまった…………ということは……)
――紫音の着ている物を全て、とっても問題ないのではないだろうか。ついでにお仕置きしても正当な権利だし、問題ないだろう。
「よーし、いこうよ」
「は? や、やめてくれ。そ、そこから上は」
メカクマ吉の手が紫音の太ももを濡らしながら徐々に彼女のスカートに近づいてくる。紫音は危機を感じた、このまま上に来られれば高確率でスカートの中にあの「マッサージ機」が入ってくる。それも粘液を出しながらだ。
紫音は顔中を真っ赤にしながらスカートを抑える手に力を入れた。これで容易にはメカクマ吉も中に侵入はできないだろう。だからと言って紫音にもこれから先どうすればいいのかわからない。
「…………や、やめるんだ。メカクマ吉くん」
紫音はそう懇願するしかなかった。だが、彼女はメカクマ吉を甘く見ていた。メカクマ吉はその振動する手を、コタツから紫音の口元に突き出したのだ。それはまっすぐ紫音の口に入っていく。
「むが、はひも」
変な声をだして紫音はクマ吉の右手を加える。その口の中に粘液がたっぷりと入っていくのだ。メカクマ吉はギアを一つ上げて、紫音の口の中で右手を振動させた。
「これが、僕の力だっ」
まるでバトル漫画のようなセリフを出すメカクマ吉。それでも紫音には効果絶大である。彼女は口の中にいきなり入れられた異物をどうすることもできず、まるでフェラをさせられるように舐めさせられる。その間にも謎の液体をどばどばと飲まされているのだ。
数秒してからやっとメカクマ吉の「手」が紫音の口から抜かれた。彼女は涙目になりつつ、咳をして口の中の物を吐出そうとしたが、すでに大量の液体を胃の中に収められている。
「げほっ、げほ。な、何を私に飲ませたんだ」
「…………」
メカクマ吉は答えない。コタツから顔を出してきょとんとした表情をしている。紫音はもう一度問う。
「ま、まさか毒物などを飲ませた……い、いや、め、メカクマ吉君何を私に飲ませたんだ! こ、こたえてくれ」
「…………さあ?」
「…………えっ?」
メカクマ吉は今紫音に飲ませた液体の情報など知らない。本当に何を飲ませたんだろうと彼は首をひねるが、まあエロいものだろうと納得した。その点では無害なものだということに関しては彼は自分の作り主を信頼している。だが紫音は納得できない。
「な、なにをのませたんだ? わ、私は何を飲んだんだ?」
「夢と希望さ!」
「そ、それ、うっ。あれ、目の前が、か、」
紫音は体が熱くなってくるのを感じた。まるで運動した後のように、だんだんと息が荒くなっていくのがわかるほどに体が火照っていく。それどころか、体中がむずむずとした感覚に襲われる。
「ふふふ、効いてきたようだね」
メカクマ吉の言うとおりよくわからない何かが効いてきたらしく、紫音は小さく舌を出して赤い頬に大粒の汗を流す。その口からはあ、はあと艶のついた息を吐く。
「わたひは……どうなっ、て」
呂律が回らない。紫音はもぞもぞと体を動かすがその動きはかなり鈍くなっている。メカクマ吉はコタツの中に戻っていき、スカートの裾にいまだ「クマの手」である、左手をかけた。ぺらりとめくろうとする。
「!」
さすがに紫音は反応した。メカクマ吉がスカートをめくり終える前に、両手でスカートの中。彼女の秘所を抑えて隠してしまった。つまり股間を両手で押さえているのだ。
メカクマ吉は「ちちち」とまるでハムスターのように鳴いた。なぜそうしたのかは彼にもわからない。
「だ、だめだよ。映画館は開いてないと!」
「……?……! そ、それこそだめだ。こ、こんなところをひ、人に見せられなぃ……」
ちょっと考えないとわからないメカクマ吉の言葉を理解した天才は語尾を弱めつつ、自分の局部を守る。だが彼女の小さな手から漏れた「肌色」がメカクマ吉の情熱を燃え上がらせた。
「しかたないなあ」
メカクマ吉は紫音の両手首が交差している場所に右手を置いた。彼の右手の振動が伝わって、紫音の手も揺れる。そのうえそこからあふれる液体が、手を伝って指の間から彼女の局所へ流れ込んでいく。
「あっ、ぃ」
紫音は手に力を入れた。指の間をしっかりと閉じて、中に液体が入らないようにする。それでも、力を入れてしっかりと手のひらで秘所を隠してしまうと振動が直に伝わってしまう。
「……ぁ、……だめ、だ」
びくびくと体を動かして紫音はメカクマ吉の振動攻撃に耐えた。少しでも快楽を逃がさないと手を離してしまいそうだったのだ。だが、彼女は身体的に強い方ではない。だから時折指の力が弱まってしまう。そこから液体が入っていくのだ。
これぞメカクマ吉の編み出した二重の策である。さすがクマ吉という変態紳士界の偉材をベースに作られているだけはあった。
「あぁ……し、振動をよわめて……くれ」
「わかったっ」
とりあえずメカクマ吉は右手のギアを上げる。さらに強く右手が振動し始めた。
「!」
「わ、わざとじゃないよ」
紫音はメカクマ吉の言葉にこたえる余裕がない。唯、ふうふうと荒い息を吐きつつも唇を噛んで耐え忍んでいる。それでもその彼女の手のひらに液体が溜まって、しっかりと紫音の局所に液体を吸収させてしまっているのだから、皮肉だろう。
ぶぶぶとメカクマ吉の右手が動いている。それ自体は紫音には何の危害も加えない。ただ液体をかぶった彼女の秘所に紫音の振動する手が当たっていることが、とてつもないほどに気持ちがいい。
「ひっく、めか、くん。やめ」
紫音がコタツに顎をついてよがる。耐え忍んではいるのだがいつ終わるかわからない責めが、彼女の精神を溶かしていく。手の力が弱まってしまう。
紫音の指がほどけた。メカクマ吉の目がきらりと光る。
「今だよっ」
右手を強く動かして、紫音の両手を払った。それで彼女の秘部は彼の前に露わにされてしまう。肌に開いた「われめ」が中に桃色をみせて、液体を溜めこんでいた。メカクマ吉は真剣な表情で右手の振動を一度止めた。
紫音は見られたことを感じて、目を見開いた。羞恥に顔を歪めるべきなのだろうが、次の瞬間には強い衝撃を股間に感じる。
「ひっ」
メカクマ吉は紫音の割れ目に右手を突っ込んだ。粘液をかいくぐりながら、紫音の秘部を広げてぐりぐりとはいっていく。中で液体がくちゅと音をたてて、メカクマ吉は右手を動かした。振動を開始した。
「ぁあ、あ。ひぅあああああああああぁあああ! と、ととめてくれぇえあああああ」
右手が振動する。紫音は叫んだ。彼女の手つかずのデリケートな部分が今音をたてて、かきまぜられている。まるで体中を揺さぶられるような振動と頭の中を真っ白にしてしまう快楽に紫音は思考をどろどろにされていく。
「だめ、やえて。み、みぁあ」
猫のような声で紫音は暴れる。何とか腰を引いて中の物を出そうとするのだが、メカクマ吉に手は奥まで刺さっていて、外れようがないのだ。紫音はそのせいで、無様に「はひぃ、はひい」と息を漏らすだけだった。それでも振動は止まらない。
ぶぶぶぶ。と唸り声をあげるメカクマ吉の手。そのたびに、びくびくと紫音は唇を噛んで耐えるのだが、コタツにぐりぐりと頭を押し付けて嬌声を抑え込む姿にはもはやなんの策も思いつかないだろう。
「さあ、こっちの穴もね!」
「こっち?……ひい」
紫音は聞いたが前の穴をさらにかきまぜられて、叫んでしまった。
メカクマ吉の左手がいつの間にか右手同様に変形していた。しかし同じ形ではない、先端がドリルのようになっていて「返し」がついている。とは言っても材質はジェルのようで、あまり硬さは感じられない。
紫音はぐっと横を腰だけ向かされた。それで後ろのが見えてしまう。メカクマ吉はそこに向かって左手を突き入れた。彼女のお尻の間にだ。彼女の小さな入り口から、大きなドリルが入っていく。
「あ、ぃい、そこはあ、そこはああ」
お尻の穴がローションでぐちょぐちょにされつつ、ドリルの攻勢に合う。返しが「中」で引っかかって紫音がいくら腰を引いても取れない。それどころか、前を避けようと腰を引けばお尻に深く刺さり。後ろを避けようと腰を突きだせば、前の穴が広げられてしまう。
「め、めかく。わかった、わ、わたしがなにかしたなら、あやまるぅ。だからやめてくれえ」
「ダメだよ、悪い子はお仕置きがひちゅようさ」
何故かメカクマ吉は興奮のあまりに舌をもつれさせてしまう。普通に考えれば、メカである彼が舌をもつれさせるわけはないだのだろうが、そこはメカクマ吉である。
ともあれ、彼は両手をつかって紫音を前から後ろから責め立てた。
「ああぅ、ひいぃ、ああぁあ」
律儀に声を上げる紫音。メカクマ吉はなにか変なスイッチがはいったらしく、リズムカルに彼女を責めあげる。
「マッサージもウドに入ります。これから120分間の間は全システムをうひょおお」
「ひゃ、ひゃくいにじゅ、たえ、たえれない、あ、あああ。しんどうがあはげ、はげしくっ」
本当に変なスイッチが入ったメカクマ吉は両手をまるでピストン運動のように動かした。紫音は懇願するように、自分の股間に刺さったメカクマ吉の右手を掴んだ。
「は、はなしてくれぇ」」
紫音は何とか自分から手を抜こうとするのだが、いかんせんしっかりと奥まで入っているそれを抜くことはできない。その上、こういった事態に備えて、ある機能をメカクマ吉は搭載しているのだ。
「逮捕するよっ」
そうメカクマ吉が言うと、なんと彼の右手側面から手錠が出てきた。それは右手から小型のマジックアームと一緒に紫音の手に伸びて、かちゃりと彼女の両手を捕獲してしまう。つまり紫音の両手を「逮捕」してしまった。
「ええっ?」
いきなり拘束されて紫音はメカクマ吉のように声を上げる。だが彼女の両手を拘束したまま、メカクマ吉の右腕は、彼女の秘所を突き上げた。
「ひぁあああ!」
彼女は完全に抵抗する方法を奪われて、淫楽に沈んでいく。
「あと121分だよ」
「ふ、ふえているじゃないかあぁあ」
紫音はなにを勘違いしているのだろうか、メカクマ吉は空くまで「120分間の間は全システムをうひょおお」としか言っていないのだ。誰も120分後に電源が切れるなんて言ってはいない。
メカクマ吉は返答とばかりに両手のギアをさらに上げる。それだけで紫音の思考はもはや機能を失ってしまう。それでもメカクマ吉の手は、彼女の両方の穴を調教することに余念がない。
「……あっ。あっぅ、あっ」
紫音は仰向けに倒れた。下半身はコタツの中なので、まるで寝そべっているだけのようにも見える。それでも、彼女の下半身は蹂躙されていた。
「あと、122分だよ!」
「ひぃひい、いっ、きゃう」
紫音はこれから、たっぷりと時間をかけて教育される。ずりずりとコタツの中に引きずりこまれていくのだ。
紫音がコタツの中に入ったあと、制服やブラウスがたたまれた状態で、外へ出された。コタツの中からは悲鳴とも嬌声ともとれない声が響いていた。
「ふんふーん」
軽快な鼻歌とともに、神無月環は部室のドアを開いた。彼女はあれと首を傾げて、部屋の中を見る。どうやら、まだ誰も来ていないらしい。
「ん? なんですかね。これ」
部屋の中央にある畳の上、コタツの横に折りたたまれて置かれた制服が合った。カーディガンもあるので、環は紫音のことを思い浮かべたがまさか部屋で脱ぐとは思えないので、すぐに思考を打ち切った。
「それより、今日は寒いです。ううー。おっ、コタツの電気つきっぱ!」
ラッキーとばかりに彼女はコタツに潜り込もうとした。その時である。彼女の太ももを片方ずつ、クマの手が掴んだ。足一本につき二つの手だ。
「へっ、は? は、はなしやがれです……えっ、ちょ」
そのまま環はコタツの中に引きずり込まれた。
「ひゃあああああああああああああああああああ」
環の声が響く。その後に畳まれた制服がもう一着、コタツの横に出てきた。
もぞもぞとコタツが動く。
中から出てきたのは、メカクマ吉となんとクマ吉であった。メカの方は白のパンツ、もとい「靴下」を頭にかぶり、どうやってあの状況を抜け出したのかわからないがこの場所に現れたクマ吉はピンクのパンツを頭にかぶっている。
「さあ、いこう」とメカクマ吉」
「そうさっ、休んでいる暇はないよっ」とクマ吉。
二人は頭に手に入れたものをかぶったまま、部室を出た。二人とも考えていることは一緒だ。警察が来たら、犯人は隣にいる方を突きだせばいいのだ!
数時間後、この頭に下着をかぶった目立つに二匹は、仲よく手錠をかけらることになった。
そこでクマ吉はこういった。
「……たとえ、姿かたちが似ていても。責任は一人一人の胸の中にあるんだ……」