クマ吉君の野望【2次創作短編集】 作:堀 吉之助
なのでさとりさんには全ての業をかぶってもらいました。
ちょうど10万UA記念ということで、本当にお許しください。命だけは。
古明池さとりはうんざりしていた。
空を見ると冬だと言うのに、燦々と太陽の光が落ちてくる温かな午後。今日に限っては冬の風もなりを潜めて、どこか心地のよい風がふいている。それはさとりの目の前にある野原をやさしくなびかせていた。
「異変」と言うほどではないが、冬の日としてはかなり不似合な日だろう。だが、こんな日が合った方が世の中の人々には寒さの慰めになる。それはさとりを除いての話ではあるのだが。
さとりは少しけだるげな目であたりを伺う。ヘアバンドをつけた桃色の髪に、紅い瞳。どこか幼さを感じさせるような顔立ちだが透けるような肌が、彼女を子供と見ることを許さない。服装は水色の服に、セミロングのスカート。それにミスマッチではあるが小脇に抱えたザル。
さとりの胸元にはなにか赤い玉のようなものがある。その真ん中には「眼」が開いていて、糸のような赤い線がさとりの服に引っ付いている。その「眼」はさとりの持つ力のかなめになるものだ。
「うう……」
さとりはそう唸った。彼女の視線の先には大勢の人間が身を屈めて何かを取っている。幸い、さとりは木の陰に隠れているので彼らにはわからない。かといって人間たちは別段悪いことをしているわけではないし、さとりも彼らに危害を加えるつもりもない。それどころかさとりは大人に交じって、子供達が遊んでいる姿をみて知らずに口元を綻ばせてしまう。
そんなさとりは胸元にある、例の紅い「眼」で一人の少年を見た。
(七草粥をかあちゃんまってるだろうなー)
少年の思考だろうか、さとりの頭の中にそんな言葉が流れ込んできた。それを聞いて、さとりは、はあとため息をつく。
古明池さとりは人間ではない。いわゆる妖怪の一種「さとり」である。彼女は先ほど子供の心を読んだように「心を読む程度の能力」を持っている。相手の心を読めるという強力な力だが、さとり自身の性格が温厚なうえにこれといった野心を持ち合わせているわけではないので、常に人の心を読んでしまうことが彼女には重荷になっているところがある。
誰だって自分の心が見透かされれば嫌だろう。さとりはそういう理由で同じ妖怪、または怨霊にすら忌避されてしまっていた。だから、普段は外にはあまり出ない彼女だが今日は勝手が違った。
その理由となれば単純である。
正月に酒を飲み過ぎ。ご馳走を食べすぎた彼女の仲間が倒れたのだ。中には妖怪のくせに食あたりを起こした者もいるため、ことごとくである。
さとりはそんなこんなで忙しい正月を過ごし、今度は七草粥を作ってやろうとこの地上に出てきたのだ。一応彼女のペット達は無事だったのだが、まさかペットに「七草粥」の材料を取りに行かせるわけにはいかなかった。
そんなわけでさとりはこんなところでびくびくしていた。脇に抱えたザルは七草を採集して持って帰るためのものである。彼女の見ている人々も「せり」や「なずな」などの七草を取りに来た人々だろう。少なくともさとりはそんな中へ入っていく気にはなれなかった。恥ずかしいこともあるが、他人と関わりあいになることも少し気おくれしてしまう。
「もう少し。山の方へ行きましょうか……」
さとりはそう言って、山へ入っていく。少なくともそこには人間はいないだろう。なぜならば山の奥は妖怪の住処だからだ。七草粥はできれば七草がそろった方がいいが、全部入れるのは集まればの話だった。
山を登るさとりだったが、良く考えればなにも七草粥ではなくてもただのお粥でも食べさせればよかった。などと思っていた。そんな彼女はすでに息を切らしている。多分に漏れず彼女も飛行はできるのだが、そんな目立つ行動はできるだけ取りたくなかった。
「一番お空! 一升瓶一気飲みします!」
「にゃはははははは!」
さとりの脳裏に宴会の一場面が流れる。それだけで彼女は、今すぐにでも帰りたくなってきた。だが、せっかくここまで来たのだから、七草がみつからなくても山菜くらいはとって帰ろうとも思う。それも自分たちで腹を壊した子達の為に。とことんさとりは甘い性格なのかもしれない。
「……さて」
そういって、さとりはあたりを見回した。人間も妖怪もいそうにない。好都合な場所である。それでもさすがに草と一体になって座禅を組んでいるクマ吉には気がつけなかった。明鏡止水の心をもってすれば造作もない。
クマ吉はここに修行にきていた。明日で冬休みが終わるという1月7日が今日この日である。明日はどうあっても全校生徒のパンチラ写真を撮らなければいけない。まさに真剣勝負を控えた格闘家の心境であった。
エロいことを考えず、エロいことをする。それがクマ吉が自分に課した、定め。さとりはのんきにそんなクマ吉の前で山菜を探し始めた。膝を抱えて、慣れない手つきで草花をかき分ける。知識はあるが、あまりこんな作業は得意ではないらしい。じいと抜いた草を見つめて、ザルに入れていくのは少し危なっかしい。
「……暇な、巫女にでも頼めばよかったかしら」
さとりはそう思うが、もう時すでに遅しである。後ろには紳士が宇宙の事柄について、そして女性の神秘について考えている。
――巫女さんのパンツは白って相場が決まっているよね!
「まったく、パンツの色は白ってきまっているとはいえ……はっ? へっ?」
あわててさとりは口を閉じた。今なにか不穏な言葉が聞こえて、そのまま口に出してしまった。さとりは急いであたりを見回す。どこにも人も妖怪の影もない。ただ木々がそびえているだけで、クマ吉がその木と一体化しているとは気が付かなかった。
無心。それが今のクマ吉である。ただ不覚にも「巫女」の言葉に脊髄が反応してしまったことがさっきの失態だった。これでは明日は始業式が終わってから、送迎の車が来るかもしれない。そう危機感を感じたクマ吉は、目をぎゅっとつむって修行へと戻った。
一方のさとりは顔に手を当てて、かあと赤くなった。なぜ今自分が変なことを口走ったのかはわからない。ということは自分の心の中にある言葉だったのだろうか。そんな思いが彼女を恥ずかしがらせたのだ。
「調子がくるうわ、うね」
顔から手を離して、わざとらしくやれやれという感じで言うさとりだが、噛んでいる。明らかに照れ隠しでしかなかった。それでも彼女はまた、何事もなかったように山菜取りに戻った。
クマ吉はそこで気が付いた。目の前に美少女がいることを。だが彼の脳裏には一文字の言葉も浮かばなかった。これこそが修行の成果だろう。彼は流れるような作業で腰に吊った一眼レフカメラを取り出してさとりににじりよった。彼は何一つ考えてはいない。体が勝手に動くのだ。
クマ吉の行っている爪先立ちの歩法(ほほう)は古武術での動きである。これによって音もなく、クマ吉はさとりに近づくことができた。ここからが正念場である。ちなみにクマ吉がそんなことを知っているのはもちろんエロいことに使えそうだからだ。
さとりは手に土がついたのでぱっぱっと両手を擦って払う。やはり手袋か何かを持ってきた方が良かったのだろうか。そう思いつつ、彼女はうんと背伸びしながら立ち上がった。そのスカートの裾にクマ吉の手が入る。
ばあっとスカートが跳ね上げられた。一瞬見える白地にクマさん。そして響くシャッター音。そしてさとりの悲鳴。
「きわあ!」
変な声を出してさとりは反射的にスカートを抑える。そしてあわてて後ろを振りかえった。そこには一匹のクマが倒れていた。それも苦しげに唸っている。
(よしっ! くまさんパンツがとれるとは思わなかったけど、第一段階はクリアしたよっ。ぐふふふ。こうしてあとは重病人として救急車を呼んでもらえれば、エスケープできるって寸法さっ)
丹念に計画を洗い直すクマ吉は倒れ伏したまま、「うーん」と苦しげな声を出している。それはさとりに助けを求めているように見えた。つまり、このままうやむやにして写真だけを持ち帰ろうと言う、彼が編み出した奥義の一つだ。もしかしたら相手がさとりでなければ成功したかも知れない。
「……」
冷たい目でクマ吉を見下ろすさとり。彼女は胸元にある「赤い眼」で彼を見下ろしていた。その為、彼女の「心を読む程度の能力」でもはやクマ吉の計画は筒抜けだった。ついでに言うと幻想郷に救急車などない。
「……仮病なのはわかっていますよ。おきたらどうですか?」
温度を感じさせない言葉をクマ吉に言うさとり。クマ吉は驚いたが返事は苦しげな唸り声だった。とはいってもさとりに返事なんていらない。
(ええっ。この状況で気遣ってくれないなんて、なんて冷酷なんだっ。とてもいいです)
「だ、誰が。冷酷ですかっ。え? いいです?」
(な、なんで心に思ったことが分かるの? もしかして、僕の修行が足りなかったっていうのか! 始業式まであと24時間もないのに! パンツ見せてよっ)
「見せるわけないでしょう! いいからその機械を渡しなさい」
そう言ってさとりはクマ吉に近づいた。クマ吉は焦る、この一眼レフは十万円程度するのを福袋で当てたものなのだ。それを奪われてはたまらない。お金を稼ぐために内職でやった、ティッシュに広告を入れるだけの簡単な仕事を十万個分やるのはもう嫌なのだ。
(ぼ、僕はくまさんぱんつを守り抜く!)
「なんども言わないでっ!」
カメラと言うよりもクマ吉には中身が大事らしい。彼はこんな状況である決断をした。それは精神的なダメージを受けることは必死なものである。それでも手に持ったカメラは守り通さねばならない。
クマ吉は体に覆いかぶさるようにカメラを守った。こうすれば、さとりには手も足もでないと踏んだのだ。しかし、さとりがその気になればクマ吉などいつでも灰にすることができるだろう。
「……早くその機会を渡さないと、少し痛い目を見せようかしら」
さとりの声はぞっとするほど冷たかった。温厚な性格とはいえ、多くの部下を束ねる彼女である、それに見た目とは裏腹に長い年月を生きた凄みもある。しかし、そんなことはクマ吉の前では無意味だった。
(さあ、蹴るなり殴るなり、蹴るなり、おっぱいを揉むなり脱ぐなり、蹴るなりするといいよっ。僕は絶対に横暴には屈したりしないよっ)
クマ吉の心の声を聞いて、さとりのこめかみに青筋が立った。ここまで彼女が怒ったのは何十年ぶりだろうか。それでも彼女はクマ吉を殺処分しょうとは考えていない。その点で言えば、他の妖怪たちよりもはるかに優しいだろう。
とはいってもさとりもただで済ます気は毛頭なかった。彼女は「赤い眼」を両手で持ってクマ吉の前で膝をついた。そして、ちょいちょいと彼の肩を指でつつく。
(な、なに? スカートの中のものは複製してアルバムを作るから渡さないよ! 巫女の格好をしてくれたら考えないこともないけど。あっでも、それは単に巫女という神職に敬意をもってるんであって、別に巫女服の胸元がゆるそうだとか考えたことは一度たりともないよ!)
「あの、あんなところに巫女がいますよ」
「えっ。どこに?」
さとりの声に手もなく顔を上げるクマ吉。勿論のこと、クマ吉の前には巫女などおらず、さとりが腰を下ろしているだけだ。その目は先ほどのクマ吉の思考であきれ返ったのだろう、じとっとした目で彼を見ている。その点で言えば、見ているのはさとりの手元にある「眼」も一緒だった。
「ど、どこにもいないよっ。嘘をついたら警察に捕まるんだよ」
「ケイサツ? なんのことかしら。よくわからないけれど、とにかく少し頭を冷やしなさい……」
そうさとりがいった瞬間であった。なんと彼女の持った「赤い眼」が輝きだしたのだ。まばゆい光が、クマ吉を包み彼の脳を直撃する。
人は誰でも心に傷を負っている物だろう。どんなに素晴らしい人物であれ、凡百の中の一人であれそれは変わることはない。心理学的にいえばそれは「トラウマ」という言葉で表すことができる。
さとりは心をつかさどる力を持った妖怪である。それでも、自在に心を操れるわけでも、ましてや記憶を抉るように読み取ることができるわけでもない。それでも、彼女は恐るべきことにあの「赤い眼」からの光を相手に当てることによって「トラウマ」を想起させることができるのだ。その力を使えば、弾幕ごっこであっても相手の戦ったことのある強敵たちの技を真似することすらできる。
だが、今回はあくまでクマ吉への懲罰でしかない。スペルカードなどで焼き払うようなことをさとりは考えてはいなかった。
「はあ、全く。煩悩があなたは過ぎるようですね。ここで少しだけ教育してあげましょう」
光りを受けてぼんやりとしているクマ吉にさとりの声が届いた。クマ吉は心のどこかでそれを聞きながら、闇の中からくる忌わしい記憶を思い出していた。
あれは寒い冬の日のことであった。その時のクマ吉はまだ若い。というか幼稚園児でしかなかった。彼がいつも日課にしているエロ本を絵本代わりに読んでいる時のことである、急にむらむらとしてきた彼はどうしても我慢できなくなって、お尻に入れるものを探しに行ったのだ。
その時見つかったのはプラスドライバーとマイナスドライバーのセットであった。
『まちなさい。ちょっと、それは』
クマ吉の思いだしている記憶を読み取ったのだろう、どこからさとりの声が聞こえるがトラウマを思い出しているクマ吉には何の効果はない。記憶の中の彼は、迷うことなくズボンを下ろす。そして、まずはプラスドライバーから手に取った。
『やめなさい! な、なんでそんなことを!?』
あわてるさとりの声。記憶の中のクマ吉は反応することなく、入れやすいように股を開く。そうして右手で持ったドライバーの金属部分を地肌に当てて、その冷たさを楽しんだ。それは前戯に過ぎない。
『しっかりしなさい! それ以上思い出さなくていいわ! いや思いださないで!』
幼いクマ吉はドライバーをお尻へ持って行く――。
「いやああああああああああああああ!」
真っ青になってさとりが叫んだ。彼女の目の前にいるクマ吉は血涙を流して、跪いている。だが、今の光景を呼び起こしてダメージが大きかったのは一体どっちなのだろうか。それはクマ吉かそれともさとりか、心理的ダメージは数的に計量ができない。
「……な、なんでそんな恐ろしいことをぉ」
頭を抱えて震えるさとり。クマ吉とどちらが大きなダメージを負ったかはわからないが、少なくともさとりには効果抜群だったようだ。クマ吉の歩んだ道の一端を垣間見たことで、数百年は生きているだろうこの妖怪は恐怖した。
血の涙を流しつつ、クマ吉は
「僕はあの日、悲しみを知ったんだ」
「あ、あなた馬鹿じゃないの!?」
「ち、違うよ。僕はただ、喜びを知りたかっただけなんだ……」
クマ吉は遠くを見る。その目は悲しみ湛えた、さびしそうな顔だった。だが、彼の心の中にはメラメラと情熱が湧き上がってきた。そう全てはあの日の始まったのだ。
「初心に帰れたよ……僕は、もう一度自分を見つめ直すことができそうだよ……」
クマ吉はそう言ってさとりの肩に手を置いた。それから彼女の胸元にある「赤い眼」を取って先ほどのように地面で丸くなった。「赤い眼」は大切に彼の胸元にある。
「あ、あの」
いきなりのことに無意識で「赤い眼」を渡してしまったさとり。しかし、この不用意さが彼女の運命の歯車を狂わせることになった。なぜならば、クマ吉は彼女目を持ったまま「過去を見つめ直し始めた」からだ。
「!あっ」
気が付いた時、さとりの頭の中にクマ吉の記憶が流れ込んできた。それもどれも、ディープな内容である。途端にさとりは真っ赤になって、ほっぺたに両手をあてた。
「あ、あああ。やめなさい。そ、そんなことをしてわいけないわ……それは犬の食べ物よ!」
なにを見ているのか、クマ吉は何を思い出しているのかそれは二人にしかわからない。こう書くとまるで恋人のようだが、そんなものでは断じてない。
「ふ、ふああああ」
さとりは尻餅をついた。砂埃がわずかに舞う。彼女は焦点の合わない目で、自分の手を口の中に入れた。目には涙がたまっていて、なにを見ているのか時折怯えるように体をふるわせる。
クマ吉は今、自分のルーツを想起していた。過去から現在まで、じっくりと思いだしている。勿論彼の胸にさとりの「赤い眼」がある限り、彼の思考からさとりは目を逸らすことはできない。
「く、クマ吉さん? そんなことをしてもなにも意味はないわ! そんなの入るわけないじゃない?」
いつのまにかさとりはクマ吉を名前で呼んでいた。ゆさゆさと丸くなったクマ吉を彼女はゆすった。今すぐにでもその記憶の想起をやめてもらわなければならない。これ以上は、年齢の割に純情精神を持ったさとりは耐えられそうにない。彼女は自分で、心を読むことをやめることができないのだ。
ちなみにクマ吉を灰にすることもできない。なぜならば、彼の胸には大事にさとりの「赤い眼」が握られているので、それごと焼き払うなど彼女には考えることができない。
「はなしなさいい」
さとりは必死にクマ吉から「赤い眼」を引き離そうとした。少女体型ではあっても、あくまで妖怪である彼女は、人間を基準とするのならば怪力である。それでもクマ吉は抗った。
さとりの手に力が入り、クマ吉の体がみちみちと音をたてる。紅潮した顔のさとりには手加減する余裕がないのだろう。妖怪という超常の世界の住人であるさとりから身に力を加えられてクマ吉は血を吐いた。しかし、クマ吉とてギャグ漫画世界の住人。その程度の傷など、なにほどのことがあろうか。
「僕は、あきらめない!」
なにを諦めないのかさっぱりとわからないが、頑なにクマ吉はさとりに「赤い眼」を返さない。それどころか、記憶の想起をやめないのだからさとりはますます恥ずかしくなってきた。
「い、いいかげんにしなさい!」
さとりはどんとクマ吉を叩いた。妖怪の力で叩かれたクマ吉はげふうと悲鳴を上げて、吐血した。しかし、彼は体を崩さない。唯、少しだけ顔を上げてさとりの顔を見た。
「な、なんなの?」
吐血するほど叩いてしまったことに罪悪感を覚えてしまったさとり。こんなことは紳士にとってデザートのアイスについてくるクッキー程度のことなのだが、彼女のようなものには理解できないのだろう。
ただし、これからさとりは理解することになる。それもクマ吉の記憶を使ってだ。
「……?……あっ。やめなさい、あ、なた。なにをお」
いきなりさとりは慌てはじめた。クマ吉はさっき上げた頭をまた、もとに戻してから。記憶を初めから思い出しはじめる。
「あああ、やめてえ。あ、あなたの顔を私にして、思い出すのはやめてええ」
さとりは目を見開いて、叫んだ。
今彼女の頭の中でクマ吉の行動を真似するさとりが存在していた。もちろんクマ吉が思い出しているのだ。
さとり頭を抱えて、左右にふる。それは忌まわしきイメージを取り払うためだが、そんなことはできないことを彼女が一番しっているのだ。
「ま、まいなすドライバーは、そんなところにはいれてはいけないぃ」
びくびくとさとりは震えた。今彼女はクマ吉の記憶を追体験しているのだ。それも最初からだ。この世にこれほど恐ろしいことがあろうか。リアルタイムでさとりは自尊心を砕かれているのだ。
「わ、わかったわ。く、くまきちさん、謝る。謝る。だから、やめなさいい」
やめる理由はクマ吉にはなかった。よくよく考えてみれば自分を思い出すよりもさとりを使って思い出したほうが、エッチい。だから彼は思考を加速させていく。
「あああああ、私はそんなことはいわないわぁあ」
クマ吉の中でさとりは何を言ったのだろうか。彼女は赤い顔のまま、涙を流した。その時、クマ吉は思った。たしかにさとりは相手の「思った心」をよめるのだろう。だが今の様子を見れば、過去の映像を加工してイメージしてもいいらしい。繰り返しになるが、さとりは記憶を読んでいるのではない。あくまで相手の思考を読んでいるのだ。ということは何もクマ吉の実体験でなくてもいいわけである。
彼が見てきたことでもさとりは思いだしてくれるだろう。
「な、にかしら、これは。ここは」
さとりは頭を抱えたまま唸る。彼女は今深い記憶の中である「女の子達」を思いだしている。
――クマ吉は想起する
さとりの気が付いた時、彼女の周りは一面の空だった。夜空には大きな月が浮かんでおり、黄金の光が世界をどこまでも照らす。そして彼女が下をみると草原がどこまでも広がっている。
「こ、ここは」
いつの間に飛行したのだろうか。さとりは今空を飛んでいる。それどころか、背中には透明の羽が生えて。まるで緑色のドレスのような服を着ている。
「ぐふふふふ」
「はっ」
さとりがクマ吉の声ではっとした時である、四方八方から植物のツタが襲ってきた。さとりはなんとか逃げようとしたが、何故か体が重い。
「く、くう」
縛りあげられるさとり。彼女の目の前には、巨大な植物がいた。凶悪なほど巨大なそれの中央にはクマ吉の姿が合った。彼女はなんとかツタを引きちぎろうとするが無理である。
「そーれ」
クマ吉が唾をさとりに飛ばす。それが胸元にかかって、どろどろにとかしていく。
「い、いや。ど、どうして」
ドレスがとろけて、彼女の右胸がその肌を見せる。白いふくらみと上を向いた桃色の乳首が、空気に晒される。
「あ、ああ。こ、この状況は? い、いった」
恥ずかしさとあまりのわけわからないにさとりは体を揺らす。しかしツタに縛られた、彼女の体は四肢を拘束されてどうしようもない。ただ、月明かりの中で少女の胸を揺らすだけだった。
植物のツタがもう一本、さとりの前に降りてくる。それは先端に花をつけている。そのい花がぱかあとひらくとどろりとした粘液が、落ちていく。そしてその花はご馳走にしゃぶりつくのだ。
さとりの右胸に花がくらいついた。
「あっ、ないをするの。い、いああ。す、すわない。すわな」
さとりの胸が粘液を付けて吸われる。ちゅうちゅうと音をたてて、彼女は乳首を存分に吸い尽くされるのだ。粘液は体を敏感にするものだった。
「ひい、ぃい」
口を開けて涎を垂らすさとり。彼女はさらに胸を吸われる――
――クマ吉は想起する。
「はっ」
さとりは目覚めた。彼女はいつのまにかベッドの上で、仰向けに寝ていた。
さとりはここはどこだろうと体をおこそうとする。だが起こすことができない。いつの間にかさとりは服を着替えていた。いや服ではない、紺色のスクール水着だ。
「な、なんでこんなかっこう?!」
さとりは気が付いた。彼女の両手は後手で手錠がかけられていることにだ。どうやっても動くことができない。
「ぐふふふ」
「はっ?」
後ろに圧迫感を感じて、さとりは振り返った。そこにはクマ吉が涎を垂らして、きりっとした顔をしている。さとりは反射的に逃げようとしたが、クマ吉の方がはやい。
うしろからさとりは抱き着かれた。クマ吉の手がさとりの両胸を掴んで揉みあげる。
「はっはあ、っ、こ、この、みずぎぃ」
さとりは気が付いた。彼女の着ているスクール水着の中はぬるぬるとしたローションで満たされている。それがクマ吉に胸を揉まれるたびに、くちゅりと彼女の両胸とともにかきまぜられるのだ。
「あっ、ぃい。やめ、やめてぇ」
さとりは体に力が入らない。それどころか後ろ手に手錠をかけられているので、スクール水着の中で胸を張りだした格好になってしまう。
クマ吉がさとりの胸を揉む。彼女の小さな胸がローションで敏感にされながら、可愛がられる。さとりは膝立ちになって、はあはあと舌を出してしまう。クマ吉は右手で彼女の胸を揉みながら、左手をさとりの股に動かす。
さとりの水着の股の間がずらされた。それは彼女の秘所が無防備になったということだ。
「くまきじい」
さとりはクマ吉に抗議の声を上げるが、どうようもない。
「いくよおお」
クマ吉がさとりの水着の中にその肉棒を挿入する。さとりの膣が肉棒で開けられて、奥までローションが導いていく。
「ぴいい」
体を」弓なりにそらして、さとりは震えた。だが、クマ吉は彼女の両胸をまた揉みし抱き始めた。それもさっきとは違い。彼に胸を揉まれるたびに、体が突き上げられる。
「ぇ、……ぅうあ、あっ。ひきい」
さとりは嬌声を上げてよがってしまう。子宮を揺らされるたびに気持ちがいい――
――クマ吉は想起する
「はっ、こ、ここは」
さとりは目を覚ました。今度はどこだろうか、だんだんとさとりは自分が誰かのやられたことを追体験させられていることがわかってきた。さとりはそれだけで体の芯から震えた、後どれだけ犯されてしまうのだろう。
いや、とさとりは思う。自分は本当に犯されているのではなく、あまりにリアルなクマ吉の記憶を追体験しているだけなのだ。耐えきれば、どういうこともない。
さとりはまた違う服を着ていた。白いドレスのような格好で、腰には剣をもってる。
それを確認して、さとりは顔を上げた。上げてしまった。
「えっ…………」
絶望という顔だった。さとりは首をゆっくりと回して、あたりを見回す。
ここがどこだが、さとりにはわからない。空がピンク色だという異常な世界だということはわかる。それよりも異常なことがさとりの目の前にあった。
無数のクマ吉が目の前にいた。さとりを取り巻くクマ吉の姿は、万ではたりまい。それだけのクマ吉が彼女を取り囲んでいるのだ。仮に彼女が本気を出そうとも、まず間違いなく殲滅は不可能なほどの数だった。
「ひっ」
臆した。さとりは心の底から怯えた。これほど絶望的な状況にはあったことがない。
クマ吉達が唸り声をあげる。
「ひっひっふうう」
謎の歓声を上げてさとりに殺到する。
「い、いやああああああ」
さとりは背中を見せて、逃げ出そうとした。しかし、そこにも数万のクマ吉が目前に広がっていた。簡単に彼女は捕まってしまう。
「や、やめなさいい」
さとりは無数のクマ吉の手に揉まれた。太もももお腹も胸も、局部もとにかく揉まれてしまう。いつの間にかドレスの中でパンツが剥ぎ取られて、胸は露わにされてしまう。
さとりの口にクマ吉の肉棒が入る。そして、四つん這いにさせられて彼女は後ろからお尻にも、秘所にも肉棒をいれられてしまう。もはやなにがなんだかわからない。
「ん、んんぅう」
悲鳴なのか嬌声なのかさとりは無限のクマ吉の肉棒を味わう。全てのクマ吉の相手を彼女はしなければいけない――
――クマ吉は想起する。
電車の中だった。さとりは気が付いた時にはもう、パンツ以外ないも身に付けてはいない。つまりほぼ裸の状態だったのだ。
「わ、わたしはこ、こんどはなにをされるの……」
さとりはこのクマ吉の記憶の中で叫ぶ。
――さとりは小さくされる魔法をかけられて、瓶の中で精液に漬けられてしまった。
――さとりは昆布に巻かれた状態で、空を見ながら屈強なクマ吉に突きあげられてしまう。
――さとりはオイシャサンゴッコの最中でクリトリスをたっぷりと吸われてしまう。
――さとりは三画木馬の上で男性器に模した、棒で突き上げられてしまう。
――さとりは「令呪」などというもので洗脳されて、クマ吉を自分から求めた。
――さとりは台に固定されて女性器をハムスターにはみはみされてしまった。
――さとりはお尻から「お酒」をお注射されて、そのまま体中にジャムを塗られて舐められてしまう。
「い、いつおわるの。あああ、ああやだああああ」
妖怪も怨霊も恐れる少女はクマ吉の心の中で彼に突かれながら、叫ぶ。
「ひ、ひい。ひい」
地面にばったりと倒れてよだれをたらすさとりをクマ吉は見下ろしていた。
「人の記憶はね。簡単にさわってはいけないんだよ」
クマ吉はそう言って踵を返す。その手には一眼レフ。その中にはさとりの「パンツ」の写真。今回は以外にはないもしていない。
クマ吉の後ろでは愚かにも人のトラウマを呼び起こしてしまった、少女が衣服の乱れもなく倒れている。
「くまきひひゃま……」
後日村に向かったクマ吉は、妖怪と間違えられて逮捕されるが、それは別のお話。
お疲れさまでした。
できれば批評などお願いいたします。もう少し研鑽したいなと思っているのです。