※この作品はR-18です。

クマ吉君の野望【2次創作短編集】   作:堀 吉之助

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注意

これは「特別短編 バカテス 木下秀吉」の続きです。
まあ、読んでいなくてもあんまり関係はないです。タイトルをよく読んでから読んでくださるようお願いします。私の制御を離れました。


リクエスト バカとテストと召喚獣 (木下優子×木下秀吉)

 それは美しい土下座だった。夜空に星の映える閑静な住宅街の真ん中でクマ吉は、麗しい曲線を描いていた。彼は深々と頭を垂れて、地面になすりつける。そして両手を地面についてしっかりと三角の形になっていた。まさに「謝罪」の体現であると言ってよいだろう。

 クマ吉は土下座したまま、目の前で唖然としている女の子に言う。ちらりと上げた目は彼女をみない。日本古来よりの伝統的礼法である小笠原流では貴人を直接的にみないことが作法であった。その点はクマ吉であるから、完璧だった。

「僕はクマ吉です。申し訳ありませんでした。さあ、踏んでください」

 クマ吉は首をぐっと前に出す。謝罪の気持ちのこもった言葉に女の子はさらに困惑した。さすがに高校生程度では彼の使う高度な言語にはついていけないのだろう。それに彼女は自分が何故謝られているのかわからない。彼と会った記憶がさっぱりないのだ。

 女の子は木下優子と言う名前だった。栗色の髪を後ろで結び、下には学校指定のジャージを穿いて、上はピンク色の少しゴムの緩んだシャツを着ていた。彼女の姿は俗にいう「ラフな格好」である。ただ、大きな瞳とふんわりとした女の子の香りがクマ吉の脳内に彼女を焼きつかせるには十分であった。

「あ、あの。く、くまきちさん?」

「はい、元気です!」

「??」

 まるで小学校の朝の点呼を思いださせるようなクマ吉の声。何故かその元気な声に困惑を深める優子は、それでもごほんと咳払いしつつ、先ほどクマ吉自身が名のった、彼の名前を呼んだ。

「クマ吉さん。ど、どういった用ですか?」

「……忘れたくなるのはわかるよ……あんなことをしてしまったのだから、僕も若かったのさっ」

「ひ、ひとちがいじゃ……!」

 そこではっと優子は気が付いた。クマ吉が何を言っているのかはわからないが、何故自分に謝っているのかが彼女にはわかったのだ。

 実は木下優子には双子の弟がいた。その名を木下秀吉という。二人は性別こそ違えども、その容姿は瓜二つであり、二人一緒の学校に通ってはいるが、何故かそこの男子には弟の方が人気であるという複雑怪奇な事情があった。ちなみに学力だけであれば、優子の方が数段高い。

 ははーんと優子は呆れた。何をやったのかは知らないが、秀吉とこの謎のクマの間でトラブルがあったのだろう。そこで、このクマ吉は謝罪に木下邸までやってきたのだろうが、運悪く自分が出てしまったのだ。優子は本当に玄関まで出てきてしまったことを後悔した。端的言えば優子はめんどくさかったのだ。まさか、弟が草むらで押し倒されて、ズボンを脱がされ、そこから出てきた「あれ」からタンパク質を搾り取られたとは、さしもの優子でも想像が及ばなかった。いや、この世で想像できる人間自体が存在するのかも謎だろう。

 優子はもう一つ咳払いをする。それは落ち着くためにやったのではなく、声を整えるためにやった咳払いだった。今から少しだけ、声のトーンを変えるつもりなのだ。

「クマ吉。まあ、おぬしも反省しておるようじゃしの……許してらるぞイ」

 最後が少しだけ上ずったかと優子は焦る。彼女は今「弟」の声真似を行っていた。今から家に戻って弟を呼びだしてもいいのだが、どうせクマ吉と秀吉のトラブルなど大したことはないだろうと優子は思い、この場で事を収めようとしたのだ。だから、容姿が似ていることを利用して、弟の真似をしたのだ。口調が独特なのもその表れである。

「えっ……いや、だ、だめだよっ。それじゃあケジメがつかないから、お詫びを持ってきたんだっ。受け取ってよ!」

少しだけ時代がかった優子の口調にクマ吉は驚いた。本当に秀吉の友人であるならば、そんなことを疑問に思うことはないのだが、この二人はただならぬことを草むらで行っていたとしても、別段友人などではない。お互いに名前も知らず、体を知っているのだ。

 それはそうと優子は「お詫び」にぴくりと反応した。さすがに現金などを渡されてしまえば、突き返すつもりだが、お菓子などの軽いものならばもらってもいいだろうと、彼女は思う。

 クマ吉はごそごそと自分の腰のあたりをまさぐった。そして一本の瓶を取り出す。ズボンとシャツだけで、リュックなどを携帯していない彼が、どこから出したかについては言うのは無粋であろう。

「な、なにこれ……あっ! な、なんじゃこれは、ゴミ?」

 優子が言うのも無理はない。瓶の中には黒い液体が入っていた。瓶自体の大きさは五百mmのペットボトル程度だが、その中身の異様さが「ゴミ箱へ」と言うフレーズを呼び覚ますには十分だった。

「ご、ゴミじゃないよっ。これはぼくが一生懸命に一滴一滴ずつ作った栄養剤さっ。毎日のオナ……レディオ体操にも効果的だよ! 一口飲むだけで肌も髪も良質なたんぱく質が行き渡る優れものだよ」

「そ、そうか。これまた珍奇なものを」

 優子は言いつつ、クマ吉のある言葉に惹かれていた。「肌」「髪」。まさに女の子の武器であり、魅力であるそれに栄養が行き渡ると聞けば否応なしに反応してしまう。怪しさは満点だが、優子はとりあえずもらっておこうと思い、瓶を手に取った。中の液体が揺れるが、水音がしないところを見ると粘性が高いらしい。もう優子は後悔した。

「まあ。もらっておこうかの……これで例の件もちゃらじゃ」

 例の件などと言う優子は、何が合ったなど知らない。だが、クマ吉はその優しい言葉に出会って目から大粒の涙を流した。ついでに涎がでる。気味が悪いので優子は彼に背を向けてさっさと自宅に戻った。手には瓶を持ったままだ。

 その後ろ姿にクマ吉は言う。

「あっ待ってよ。その栄養剤は一日に二度飲んだらダメだよっ。ダメだよっ絶対」

 その声を聞き流しながら、優子は家の中に入っていく。

 

さて、姉弟だからと言って人のことを勝手に決めていいのだろうか。その答えは今夜木下優子は身を持って知ることになる。

 

 

「な、なんじゃこれは、ゴミか? 姉上」

「私と同じことを言わないでよ」

 同じ顔がリビングにあるテーブルを挟んで向かい合っていた。片方は木下優子。もう片方は、文月学園高等部の男子用制服を着ていた。勿論彼こそが、本物のクマ吉からの被害者である、木下秀吉であった。

 秀吉は困ったような顔でテーブルに置かれたコップを凝視した。そこには真っ黒な液体がなみなみ注がれていた。まさにクマ吉が渡したあの液体である。わずかに柑橘系の匂いすらするのは何故だろうと、顔色も変えず優子は思う。

 コップの横には、クマ吉の持ってきた瓶もある。少しだけ黒い液体が減っているのは、今秀吉の前に注がれているからだ。

「あんたの友達が置いて言ったのよ。栄養剤らしいから、ちょっと飲んでみなさい」

「と、友達。明久か!? な、なんでこんな真っ黒くてきつい匂いのする液体をワシに送るのじゃ!」

「いいから、注いであげたんだから。あっ……あとその使ったコップ捨てときなさいよ」

「捨てる? あ、姉上は危険物と分かっていてワシに飲ませる……」

「いいから、飲みなさい」

 優子はコップを手に取ると、ぐっと秀吉に突き出した。彼女のじとっとした視線は有無を言わせない迫力がある。姉弟の関係であればなおさらだろう。それは秀吉も例外ではなかった。彼はごくりと息をのんで、あきらめたようにコップを取る。それから黒い液体に映る自分の顔を見つめる。黒い液体には自分の顔が鮮明に映っている。つまるところ透明性が全くないのだ。

「底が全く見えんのじゃが……」

 秀吉の不安が募る。それでも彼はは睨んでくる姉の圧力に耐えることができなかった。それに彼は「鉄の胃袋」と言われるほど、腹の頑丈さには自信があったのだ。

「なむさんっ」

 掛け声とともに、秀吉はコップを口に運ぶ。目をつぶって謎の液体を唇から一気に流し込んだ。しかし液体は謎の粘性を持っているので、なかなか飲めない。秀吉はさらにコップを傾けて液体を飲むというよりも腹に流す。

 秀吉は飲みながら「ん?」と目を開けた。それから飲みにくそうな様子も見せることなく、彼はコップの液体を干す。それから空になったコップを台に置いて、考え込むようにそれを見る。そしてどこか腑に落ちないように言う。

「……見た目は変じゃが、味自体は悪くないようじゃな」

 秀吉は舌をちょっとだけ出して、唇を舐めた。ふむふむと残った味を確かめるように口を動かす。その仕草をみて優子は思った。

(危険はなさそうね……)

どうやら飲んでは大丈夫だと優子は確かめた。確かに「肌」や「髪」への美容効果があるならば、こんな得体のしれない液体でも魅力はあるのだが、いきなり自分で飲むのは気が引けた。それに本来であれば、この液体を渡されるのは秀吉だったのだと彼女が思ったこともある。ゆえに秀吉で実験したのだ。

「なんじゃろう……なんだか、ひどいことを思われている気がするのじゃが……」

 何かを感じ取った秀吉が言う。優子はそれにギクリとしたが、彼を促すように言う。

「そ、そんなわけないじゃない。それよりも早いとこ着替えてきなさいよ。家の中でも制服なんて、だらしがないわよ?」

「……」

 秀吉は無言でだらんとしたシャツを着ている優子を見た。こんなにだらけた格好をした人間に「だらしがない」とは彼も言われたくはない。それでも口にださない。なぜならば出せば間違いなく痛い目にあうからだ。

「なに? 秀吉」

 わざとらしいほどにっこりと笑って優子は言う。その笑顔は秀吉の思っていることを見透かしているようで、実際見透かしているのだろう。秀吉は「い、いやちがうのじゃ、姉上」と言いながら、逃げるようにリビングから出て行った。

 

 優子の前にはあの、黒い液体が入ったコップが合った。彼女は先ほど秀吉がやったように、ごくりと息をのんで、コップを手に取った。

「だ、大丈夫よね……」

 さすがに秀吉で実験したからと言っても、謎の液体を飲むのは気が引ける。先ほどの秀吉の様子からすると、味自体も変なものではないらしい。そう優子は自分を自分で説得する。

 液体に優子の顔が映った。彼女は自分の表情が分かるぐらいに透明性のない液体を睨んだ。それから目をつぶって、コップを口に持って行き。一気に飲み干した。

「……確かに、味自体は普通? 飲んだことない味だけど、ジュースみたいな……」

 優子は空になったコップを台に置いて、「うん?」と考えた。飲み干した後では、さっきまであった警戒心もなくなっている。それに代わって好奇心が湧き上がってきた。

「うーん……どこかで飲んだことある気がする味なのよね……」

 優子は顎に手を置いて、考える。すぐに思い出せそうなのだが、なかなか頭の中から出てこない。彼女は何となく、手元にあった瓶を取る。秀吉と優子の二杯分瓶の中から液体が消えている。だが、まだ瓶の半分以上が残っている。彼女は瓶の中身を凝視したが、そんなことをしてもこの液体の構成が分かるわけではない。

 優子は瓶の蓋を開けて、さっき使ったコップの中に液体を注いだ。どろりとした液体がゆっくりとコップを満たしていく。その粘性には優子は辟易したが、もう飲んでしまった以上は何も言わなかった。

「もう一回飲んでみようかな」

 優子はコップを手に取る。そして、ゆっくりを持ち上げて。口に――。

「姉上!」

「ぶっ」

 がっと勢いよく秀吉がリビングに入ってきた。それに驚いて優子は口に運んでいたコップを取り落としそうになる。幸い、落とすこともなく粘性の高い液体はコップから飛び散ることはなかった。

 それでも驚かされた優子はいらだたしげに秀吉を見た。彼は着替えてきたのだろう、少し大きめのパーカーを着ていた。しかし、優子の視線は其処にはいかなかった。

「す、済まぬ姉上。普通に開けたつもりだったのじゃが、勢いが過ぎちゃ様じゃ。しかしなんだか体が軽いのじゃ」

 ぱっちりとした目がキラキラと優子を見ている。勿論その目は秀吉のものだ。

「あ、あんた」

 秀吉の異様な様子に優子は椅子から立ち上がった。そして彼に近づいて、その頬を両手で触る。そこで優子は驚愕した。まるで秀吉の肌は質の良い絹を触っているようにすべすべである。優子には腹立たしいことではあるが普段から秀吉の肌は艶やかだが、今はそれすらもかすむほどであった。

「な、なんじゃあねうえ」

 困ったように秀吉は言うが、優子は彼の頬をぐりぐりと両手でこねくり回す。明らかに自分の肌質よりも良くなっている。それにほのかにあったかい。まるでお風呂上りの様だ。 

弟に負けた気が舌優子は嫉妬に駆られたように、彼の頬を抓った。

「こ、このお」

「い、痛いのじゃあ?!」

 秀吉は悲鳴を上げる。彼からすれば何故優子が怒ったように頬を弄られているのか全く分からないのだ。それでも、突然くる姉の勘気などいつものことではある。彼は痛む頬を抑えて、ううと涙目になる。

 そこで優子ははっとした。何故いきなり秀吉の肌質が跳ねあがったのかわかったのだ。明らかにあの液体のせいであろう。ここまで即効性のあるものとは流石に優子も思わなかったがそうであるとすれば、優子にもその恩恵が与れるのではないか、と思うのは当然の成り行きであろう。

 そう思うと優子はにやけそうになる。だが、秀吉の目もあるのではっとして、彼女は取り繕うように言った。

「えっ、と。あ! お風呂入ってくる!」

 優子はあわただしくリビングを出て行く。後に残った秀吉は、姉の行動の意図がさっぱりわからず、呆然とそれを見送った。しばらくすると風呂場の扉の閉まる音がした。優子が入ったのだろう。

秀吉はそれでやれやれと思いながら肩を落とした。学校では優等生で通っている姉、木下優子も家では猫のように気まぐれである。彼はそんな姉の性格を知り尽くしてはいるが、いまだにうまく躱すことができない。

秀吉はため息を吐いた。それで目線が下を向く。だから台の上の「コップ」に目がいったのだった。

コップの中には黒い液体がまだ入っていた。いや、優子は一滴も飲んではいないから、まだと言うのは適切ではないだろう。しかし、秀吉にはそんなことはどうでもよかった。ただ放置されているそれを見て「姉上……」と嘆いただけだ。

「これはさっき飲んだジュースじゃの。……ジュースと言っていいかはわからんのじゃが……」

 秀吉はテーブルの上にあるコップを手に取った。そのまま放置しておくのはもったいない。彼はそう思って一気に飲み干した。彼は、今日二回飲んだことになる。

 薬にしろ、栄養補助食品にしろ用法容量を守らなければ、健康には良くないということを彼は「彼女」とともに思い知ることになるが、不幸かどうかは分からない。

 

 

 優子はバスチェアーに座って、タオルでごしごしと体を洗う。あまり広くはない、一般的なお風呂の中には湯気が立ち込めていて、窓を開けていないからか、それとも換気扇をつけていないから白い靄がかかっている。

 優子はプラスチックの桶に湯船からお湯を汲んで体にかける。彼女の細身の体をお湯が流れていく。それだけで彼女の体についていた泡が落ちていく。彼女の髪はしっとりと濡れていて、顔がほのかに赤い。

 優子は自分の腕を撫でてみた。さっきとはまるでちがう手触り。触った手が滑るように肌をなぞっていく。体を洗ったこともあるのだろうが、さっき飲んだ液体の効能は素晴らしいものだった。ドモホルンホルンリンクルよろしく、クマ吉が一滴一滴作った液体であるから、もはや翼を授けるレベルの飲み物ではない。

「す、すごい」

 それ以上の言葉は優子にはなかった。体のどこを触っても、すべすべである。それどころか心なしか気分もよい。彼女は自分の手を頬にあてて、頬ずりするように動かす。肌と肌の擦れる音が風呂場にゆっくりと響く。

「お風呂からあがったら、もう一杯……」

 ――「あっ待ってよ。その栄養剤は一日に二度飲んだらダメだよっ。ダメだよっ絶対」

「ああ、そういえばあの熊変なこと言ってたような……」

 優子はぼんやりと思いだしながら、手前にある洗面器を取った。それから顔を洗おうと、洗顔料を取る。だから後ろの入り口の曇りガラスに人影が映っていることが分からなかった。

「ふんふーん」

 ご機嫌な優子は何かの鼻歌を唄う。彼女は手に洗顔料を手に取る。だが、それを顔に漬けることはできなかった。それは彼女の後ろの入り口が開いたからだ。

「は?」

 優子は呆けた顔で後ろを向いた。一粒の水滴が、彼女の髪から落ちる。

 そこには優子と同じ顔が合った。湯気で表情は見えないが、もう一人の優子いや、木下秀吉がそこに立っていた。湯気が彼の体を包んで、その肌を優子に見せない。

 つまり、優子の後ろに立っている秀吉は「お風呂に入る格好」をしている。一糸も纏わないその姿は、彼の目の前にいる優子を映し出したようだった。秀吉は自分の開けたドアを閉めて、ドアについた簡単な鍵を締める。これでお風呂場は簡易な密室になった。

「あねうえ……ワシ、ワシ。おかしいのじゃ……」

「?」

 秀吉の呼びかけに答えず、優子は首を傾げた。「なぜ自分がお風呂に入ってる時に秀吉が入ってくるのだろう」となんのひねりもない疑問を思う。驚くには状況が理解不能すぎるのだ。だから彼女は口をぱくぱくさせるしかなかった、言うべき言葉がない。もしくは見つけることができない。

 秀吉が優子に抱き着いた。

「!?」

 優子はさすがに暴れようとするが、その前に彼女の唇に秀吉は自分のそれを合わせる。

 優子は驚愕に目を開いた。今目の前に弟がいて、その弟に唇を奪われたのだ。彼女はもがいて逃げようとする。普段から秀吉にはプロレスの技をかけたりと力については優位なはずだった。

 秀吉が優子の両手を巻きこむように、彼女の体を抱きしめる。この体勢では優子もどうしようもなかった。ただ、驚きと困惑が綯交ぜになった不思議な感覚のまま、秀吉のとキスをする。

 糸を引いて秀吉が顔を離す。優子はきっと彼を睨んで抗議の声をあげようとする。

「あ、あんた。いったいむぐ」

 もう一度秀吉が優子の唇を奪う。今度はさっきよりも強く彼女を吸う。くちゃ、二人の粘液が口の中で音を立てる。優子には顔にかかる、秀吉の息が温かく感じてしまう。

 また、秀吉が優子を離した。優子はさっき言えなかった言葉を言おうとする。いや、正確にはさっきできなかった抗議をした。数秒前の言葉など忘れてしまったからだ。

「な、なんのつもりよぉ」

 答えずに秀吉がまた優子にキスをする。三度目はさらに深く、優子の唇を舐めるように。

 秀吉の抱きしめる力が強くなった、優子はそれだけで心が鷲掴みされてしまったように頭が真っ白になった。自分の姉としての何かが崩れてしまいそうだった。

 秀吉が唇を離す。優子は真っ赤になった顔で、舌を少しだして泣きそうな顔で口元から、滴を垂らす。

「ふ……あぁあ」

 優子はもう言葉が紡げない。とろけたような顔で目の前の秀吉を見てしまった。いきなりの三度のキスが彼女の心を溶かしてしまった。それには「あの液体」の効果もあるのだろう。

「あねうえ……わし、からだがほてって……おかしいのじゃあ」

「みれば……わかるぅ……」

「あねうえ」

 また、秀吉がキスをする。今度は不用意に優子の出していた、舌に彼は自分のそれを絡ませて深く彼女を求める。今度は優子も全く抵抗しなかった。秀吉の肌の暖かさに身を任せてしまう。彼らはしばらくして離れる。

 少しだけ二人は見つめ合ってから、秀吉が言った。

「あねうえ、からだをあらってあげるのじゃ」

「う、うん」

 優子はバスチェアーに座ったままだったから、動く必要はなかった。彼女の体を離した、秀吉は近くにあったボディーソープの容器から、ソープ出して手に取る。タオルなど使ったりはしない。

 秀吉は自分の手に取ったソープを両手でこする。当たり前だが、大して泡立ちはしない。彼はその手で優子の肌に触る。優子はソープの冷たさに「う」と艶っぽい声を出してしまう。それでも優子の体を「洗う」ことを秀吉はやめなかった。

 優子の腋下に秀吉は手を入れて、撫でるように彼女の体にソープを塗っていく。少し体を動かして彼は優子の後ろから抱き着くようにそれを行う。

「ア……」

 手が動く。優子の肌を滑り、ゆっくりと彼女を洗う。ぬるりとしたソープの感触が彼女には気持ちがいい。秀吉の手はお腹にを触って少しずつ、上に昇っていく。

「あねうえ、ここを……」

 優子の両胸を包むように秀吉は両手をつかう。優子はびくりとしたが、こくりと顔を動かす。声を出すのは恥ずかしいという程度はまだ、わかる。

 胸を洗う。ふくらみにソープを付けて、わずかに泡立てながら「彼」に手が「彼女」を洗う。ぬるりとした液体は、優子の胸にここちよい。

「あぅ」

 きゅっと体を動かす優子。それからはあはあと息を吐いて「大丈夫」と何が大丈夫なのか、秀吉に伝える。秀吉は真面目に彼女の胸をまんべんなく洗う。いつしか、その先端に手を近付けてつまむ。

「そ、そこは、あん」

「……」

 優子の言葉を無視するように秀吉は彼女の乳首を摘まんで、指で揉むように洗う。彼は後ろから優子を抱くようになっているから、優子には体をわずかにひねる程度の抵抗しかできない。

 だんだんと優子の体が動き始める。感じてしまっていることもあるのだが、秀吉に洗われてしまったことで心臓の動きが早くなってしまう。それに合わせるように優子は体を反らせる。

 天井を見上げて、優子は後ろの秀吉に体重をかける。荒い息を、なんとか抑えながら気持ち良さに心を奪われていく。彼女は自分から、言う。

「ひでよし……したも……あらわないと……だめで、しょう?」

「わかったのじゃ……」

 秀吉の右手が優子の太ももの間に入る。それは優子の最も大切なところに入り込んで、ゆっくりと彼女の下の「入り口」に指を入れる。そして洗う為に動かす。

「あ、ん」

 優子は抵抗するわけではないが、身を反らした。それでも秀吉の指が動くたびに、声をあげてしまうのだから、姉としてはこれ以上ないほどに無様なのかもしれない。だが、それをどこのだれが否定するのだろうか、ここには二人しかいないのだ。

「ひで、よし……あっ。もっと、ゆっ、ゆっくり」

「こうか……の」

 指が優子の中でゆっくりと動く。それはしっかりと優子に感じさせるような動きになってしまった。だが、自分から言った手前、優子は文句も言えない。

 優子の中で音が鳴る。彼女の愛液がしっとりと彼女の膣を濡らす。それであっても優子が解放されるわけでないし、彼女が解放されることを望んでいるわけではない。

「……ひでよし、そ、そろそろ。お湯で、ながして」

「いやじゃ……」

「えっ。え? ひ」

 優子の膣から指が抜かれた。そしてその秀吉の手は彼女の膝の後ろに回された。さらにもう一つの腕は優子の無防備な背中を支える。優子はまるでお姫様だっこのようにされてしまった。

 だが、すぐに優子は床のタイルにおろされてしまった。その上から、秀吉がのしかかるように体を重ねる。彼の顔は優子の胸のあたりに合った。

「だ、だめ」

 優子の静止は聞かず、秀吉が彼女の胸に吸いついた。それで優子の抗議の声は嬌声に代わってしまう。秀吉は彼女の胸を舌で舐めながら、その乳首を口の中で湿らせる。わずかにソープはかかってはいるが、ほんのわずかそれを体中に塗ったのだから、あまり気にはならない。

「あっ、ひい、ぁあ」

 優子は床に押さえつけられたまま、色のついた声を上げる。それを抑えようとしても、無理だった。どうしても声を出してしまうのだ。

「ひでよしじ」

 泣きそうな彼女の声はやめてと言わなかった。何故か言えなかったのだ。秀吉はそんな彼女の胸を噛む。

「ぃい!」

 びくんと優子は跳ねる。それから「はあぁ、はぁあ」と深い息を漏らす。彼女の手はぴくぴくと動いて、秀吉には抵抗したりはしない。そんなことを考えることももうできそうにない。

 秀吉は優子の胸を舐める。それは愛撫と言うよりはハムスターがじゃれついているような、たどたどしさがある。それでも優子には十分に過ぎるのだ。

「ひでよし……わたし、わたし」

 優子は秀吉の顔を見る。それにひきつけられるように秀吉は彼女の胸から口を離す。少し糸を引いて。

 二人は見つめあう。上には秀吉、下には優子。いつもとは逆なその状況で、二人の顔がゆっくりと近づく。そして、また唇を合わせた。

「ん、ん」

 優子が何かを言う。彼女は秀吉の体をその細腕で抱いた。秀吉もそれに合わせるように、彼女を抱く。二人は唇と体をゆっくりとすり合わせるように二人は動く。

 抱きあったまま、秀吉は下半身を動かす。そうして、彼は優子の中に、自分の「それ」を挿れる。優子は抵抗することなく、受け入れる。

 湯気の立ちこめる風呂場の中で、優子と秀吉は一つになって、動く。二人の唇から洩れるのは、淡い嬌声と交じり合った滴。それでもだんだんと彼らの動きは激しくなる。

 優子は秀吉を強く抱きしめる。

 秀吉は優子を強く抱きしめる。

 二人は気持ち良さに身をよじり、目の前の最愛を求める。二人は唇を離して、強く体を動かす。秀吉が口をあけて、弓なりに身をよじる。そして、二人は動きを止める。しかし、それは今が終わっただけである。

 優子は弟の耳元で恥ずかしげに囁く。

「もう……いっかい」

 もう一度、二人の時間が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 夜空を見上げると星がきれいだった。

 クマ吉は両手にかけられた手錠の冷たさを一時忘れるほどの夜空に、白い息を吐く。怪訝な顔でおまわりさんが彼に速くするようにただす。

 クマ吉はおまわりに言う。

「ふう。愛の形はいっぱいあるんだよっ。それが例え、乾してあったパンツをカメラで撮ったとしても、愛の形なのさ」

 この日、クマ吉は木下邸とは関係ない別件逮捕された。罪状は不法侵入と覗きであったという。

 




ありがとうございます。

おかしいなあ。クマ吉君。気がついたらこうなっていました。
もういいやとクマ吉君では絶対にさせないキスをさせてみました。








ところで私はエロ部分の分量を気にしながら書いています。約3000強以上は書くようにしていますが、どんなものでしょうか。長い、短い。ご意見いただけたら参考に致します。
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