※この作品はR-18です。

クマ吉君の野望【2次創作短編集】   作:堀 吉之助

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藤原妹紅が次かもと言ったな。あれは作りかけだ。
今回はエロはまだなしです。長くなったので明後日更新します。

で、こんなタイトル知らんねんという方。バックする前に

シャイニングブレイド サクヤ 
           ユキヒメ

でググってみてください。気持ちが変わるかもです。


シャイニングブレイド (サクヤ ユキヒメ) 上

 盗賊。それは、広い世界、多くの文化の入り混じる悠久の大地に置いても人が人である限りは社会に混じる不純物。時には村を焼き、時には時代の王の配下として活躍したりと歴史的にも多くの意義を持ったその「階層」はここ城塞都市国家シルディア周辺でも存在した。

「げへへ」

 草原の一角。さわやかな風が青い草原をなびかせ、波を作るこの美しい場所で、男は下卑た声を上げた。しかし、それも無理からぬことなのかもしれない。男の前には見目麗しい女性が二人も立っているのだから。

 二人の女性は、両方とも黒髪だった。一方の髪は短く肩までしかないが、大きなリボンを付けている。もう一方の女性は、長い髪を後ろで束ねていた。髪型は二人とも対照的だが、その格好も対照的である。

 短髪の女性はまるで着物をかたどったような服装をしている。上は雪の形の文様が胸元についた服を帯で留め、その上から鮮やかな黒の羽織。しかし、胸元が開いているのと白い短めスカートがその姿にかわいらしさと言うよりは妖艶さを醸し出している。

 長髪の女性は黒のドレスを着ていた。肩口からぱっくりと開いたローブ・デコルテ(作者注・肩の見えるドレスのこと) 、その胸元は豊満なその双丘の肌色が見えている。

「げひひひ」

 男はまた笑った。なんといっても目の前の二人は少女のような幼い顔をしてはいるのだが、その体は成長していて男を悦ばせるのにはこれ以上ないものだったからだ。男は涎を汚れた自らの袖でふく。今日はなんていい日だと彼は、柄にもなく神様に感謝した。

 たしかにこの二人の少女が、ただの少女であるのならばこの男の願いはかなっただろう。

 長髪の女性が一歩前に出る。下卑た笑いを浮かべる男を哀れむような目でみていた。それが男のカンに触った。

「笑ってんじゃねえぞ。いまから二人ともよお。どろどろになるまで犯してやるからよお、げひいい」

 変な笑い声をあげる男。それでも長髪の女性は眉を少しだけ動かしただけで、その顔には恐怖もなにも浮かべなかった。それがやはり男には不満だったが、逆にその冷静な顔がこれから崩れるのだと考えるだけで精神の高揚を感じた。

 男は、腰に吊っていた剣を抜いた。そこから錆びた剣先が鈍い光とともに姿を現す。そして次の瞬間には、その剣は根元から両断されていた。草の上に、両断された剣が落ちる。

「は?」

 男には何が起こったのかわからなかった。彼の目の前の女性はさっきと変わらず、その白い顔を彼に向けている。しかし、さっきとは少しだけ違うところがあった。その手には一振りの刀がいつの間にか握られていた、その刀が男の駄刀を斬り落としたのだろう。

 女性の持っている刀は黒い刀身をしていた。それは男のように整備を怠っているのではない、刀としての強さを表す。そして、たとえ錆びていたとしても男の剣を一撃で、しかも目にもとまらぬ速さで断ったその女性の技量は並みはずれたものだと男にもわかった。

「て、てめえがやったのか」

 男が女性の力に気が付いた途端、彼は震え始めた。元々の大きさの半分にも満たない「剣」を彼は女性に突きだして威嚇するが、その手はカタカタと小刻みに揺れていた。

「……。別にあなたの命を取る気はないわ。ここから去りなさい」

 長髪の女性の声。彼女は一度抜いた刀は一筋の光とともに消える。さきほど男は女性がどこから刀を出したのかわからなかったが、魔法の類だとやっと理解した。正確に言うならば長髪の女性が行っているのは錬金術である。

「おいおい、なにをやってんだよ」

 男の後ろから声がした。それで男は救われたように息を吐く。

「お、おかしらあ。こ、この女どもがなめたまねしやがったんでさ」

 男の後ろにはいつまにか、10人を超える男達が集まっていた。それぞれが大小の得物(この場合、武器) を持っていて、一様に二人の女性を見ると口元を緩める。彼らは皆、女性を脅していた男と同じ盗賊団だった。

 男のすぐ後ろに立った大柄の盗賊、さきほど「おかしら」と呼ばれた頭目が顎をさすりながら前に出る。彼の手には、大刀が握られていて、その腕は丸太のように太い。彼は頭髪の女性を馬鹿にしたようにみてから言う。

「俺の子分にいたずらしたらしいなあ、嬢ちゃんがた。とりあえず着ている物を脱いで手えつけて謝ってもらおうか? そうしたら、ちょっとは可愛がってくれる爺のところに売っぱらってやるよ」

 頭目の言葉を聞いて「ひゃはは」と盗賊団が笑う。

「とりあえず、たのしませもらうけどなあ」

「おれとあそうぼうぜえ」

 下種な声が草原に響く。盗賊団はすでに勝った気でいるのだった。しかし、彼らは気が付ない。長髪の女性は目をつむって涼しげな表情をしていることに。今の状況にはなんら危機感すら抱かない、いや抱けないという彼女の心に。それは短髪の女性も一緒だった、そちらはこめかみに手を当てて、やれやれと困った表情をしている。

 そもそも先ほどまで、彼女たちを脅していた男の後ろから現れた彼ら近づいてくることを、二人の女性は気が付かないはずはなかったのだ、それでも逃げることも悲鳴を上げることもしなかったのだから、盗賊団はこれを訝るべきだったのだろう。

 長髪の女性が言う。

「とりあえず、お灸をすえてあげるわ。今日で改心しなさい」

 傲慢ともとれるその言葉に頭目が青筋を立てた。彼はちっと舌打ちをして、部下に合図した。

「お灸をすえてほしいらしいぜ、野郎ども。この馬鹿女をひん剥いてやりな!」

 

 

 

 気が付いた時には夕方だった。遠くの地平線に夕日が沈もうとしている。

 頭目は痛む体を起こして、あたりを見回した。仲間達がそれぞれ倒れている。あの女性にやられたのだろうと、彼は気が付く。しかし、その記憶は全くなかった。いつやられたのかすらわからないのだから、その実力差はいかんともしがたい。

 盗賊団の団員に死んでいる者はいないと頭目は思う。誰も血を流していないのがその証拠であろう。少なくとも、鈍器で殴られたとしても外傷は残るから、女性に急所を的確にやられたことで皆気を失っているだけらしい。

 つまり手加減されたのだ。

「ち、ちくしょおおおおおお」

 頭目は咆える。悔しさで頭がおかしくなりそうだった。あんな小娘にやられたことも、舐められたことも我慢できない。しかし、実力差は歴然としている。復讐すらもままならないのなら彼には声を上げるくらいしかできなかった。それは惨めなものであると彼にもわかってる。

「おかしら……」

 咆哮でいくらかの団員が起き上った。彼らも何が起こったのかだんだんと理解したらしく、幾人かは悔しさのあまり涙をこぼすものもあらわれた。

 夕日の中で哀れな盗賊たちが泣き、吠える。起き上る人数が増えるたびにその声は大きくなって行った。

――おっぱいが揉みたいか?

「?!」

 頭目が顔を上げた。今誰かがすさまじいほどに馬鹿なことを言った気がするのだ。確かに聞いたはずなのに気のせいだろうと思えるほどわけのわからない言葉を聞いた。だが、彼はその言葉が現実のものだとすぐに分かった。

 ――おっぱいが揉みたいかい?

「だ、誰だ、ど、どこにいやがる!」

 ――ここだよ

「ここだと……ここには俺達しか……」

 と頭目が目線を落とした時である。そこには異常なものがあった。

「僕はここだよ」

 クマの顔が地面から出ていた。顔だけであり、まるで水泳で背泳ぎをする時に顔を水面に上げた格好でクマ吉が其処にいた。しかし、ここは土の上である。

「う、うおおおおおおおおおおおお??」

 頭目は飛び上った。いきなりクマ吉が地面に埋まっているのをみたのだから、そうなるのは必然と言える。盗賊団も口々に驚きの声を上げた。それでも顔だけだしたクマ吉は言う。

「ぐふふふ、僕はずっとここで見ていたんだよ。君たちとあのおっぱいの女の子のことをね……」

 それを聞いて頭目は悲痛な顔をした。無様な姿をこの得体のしれぬクマに見られたというのだ、恥ずかしいと彼は感じる。それでもよくよく考えれば、こんなところに埋まっているクマ吉の方が無様な気がするので複雑だった。何故埋まっているのかは全く想像できない。

「だ、だからどうしたっていうんだよ」

「ぐふふ、おっぱいを揉みたいんだね」

「ば、馬鹿かテメぇ。おちょくってんのか?」

「ええ? 揉みたくないのかい」

 くっ、と頭目は言葉に詰まった。何を言っているのかは分からないが、クマ吉の言葉に反論できなかったのだ。だからクマ吉が言う。

「あの大きなおっぱいを揉みたいんでしょ? あのお姉さんたちの」

「……そ、そりゃあな」

「じゃあ、揉もうよ」

「っ。あ、あいつら化け物じゃねえか。まあ、髪の短けえほうは分かんねえが、あの痴女みてえな方は強すぎンだよ」

 盗賊団が頷く。それでも正しいことを言っているはずの頭目は自分で言っていて、情けなくなってきた。クマ吉はそんな彼に言った。

「じゃあ、揉めなくてもいいの? あそこにおっぱいがあるんだよ」

「だ、誰が、揉めるってんだよ……。あいつらは……化け物だ、揉める相手じゃねえんだ」

「それは違うよ!」

 びくと頭目は下がった。クマ吉の覇気に押されたのだ。

「それは違うよ。男の子はね……おっぱいが揉めるんだよ……。その両手は何のためにあるの? 揉むためでしょ! さあ、目を覚ますんだ。僕達は揉める。ウーキャン揉む!」

 頭目の目が開かれた、やけに夕日が眩しくて、ぼやけて見えた。彼はクマ吉の前に膝をついた。彼の言葉は、悲痛なその叫びは、心から出るものだった。いつの間にか盗賊団全員が涙を流していた。変な小娘に敗北したショックで判断力が落ちているのだ。

「おっぱいがもみたい……です」

「そうだよ。男の子には……それが必要なんだ。人は誰だってコツコツと積み重ねていけば、いつかおっぱいに手が届くんだよ……」

「あんた、名前は?」

 頭目は聞く。クマ吉は言う。

「僕はクマ吉だよ。しがない監督さっ」

 クマ吉は近くの村で、女の子の下着が干してあるところを監督しているところ、村人に捕まってここに埋められたのだった。しかし、これが運命的な出会いを果たすのだから世の中わからない。頭目はクマ吉に言う。

「監督、どうすればいいか教えくれ……」

 夕日が沈んで、夜の帳がゆっくりと広がっていく。

 

 

朝は十キロランニングから始める。街道を走るのだ。

「とーぞーく」

「ファイト!」

「とーぞーく」

「ファイト!」

 ランニングは二人五列で行う。先頭を走る頭目が掛け声をして、全員でそれに合わせるのだ。皆足並みをそろえている。そして最後尾からクマ吉が走ってくるのだ。彼の役割は怠けている者がいないか調べるためだった。彼が一番疲れている気がするのは気のせいであろう。

 もちろん早朝とは言っても人とすれ違うことはある。そこは盗賊であるから、やることは一つであった。とりあえずは帽子を取って彼らは道行く人々にそれをする。

「こんちわ―」

「こんちわー」

「こんちわー」

 挨拶である。道行く人々も、少々戸惑いながらも挨拶を返してくれることが盗賊団にとってささやかな喜びであった。勿論人の邪魔にならないように列を崩してはいけない。それをすると後で、近隣住民からクレームが来るので練習がしにくくなるのだ。

 ランニングが終わると、アジトの清掃と朝食の準備を班に分かれて行った。一点の埃もないようにアジトは綺麗にする。勿論シーツなどは日干しであった。

「おかしら―。石鹸がありませんぜ」

「買い出しに行って来い。あっ、あと人参がほしいからな、今日はカレーだぜえ」

 いやっふうと盗賊団が活気づく。水曜日はカレーの日であると、クマ吉から教えてもらったのだ。そのクマ吉は今は窓ガラスを拭いていた。

「はあ、はあ。はあ」

 なんだか卑猥な声をあげながらクマ吉は窓に息を吹きかけて拭く。それでピカピカになるのだから、盗賊団の者からしたら不思議であった。

 朝食が済んだら素振りである。

 それぞれバッターボックスなるものを描いてから、しっかりとおっぱいを想像して武器を振る。最初は百や二百も振ればばてていた盗賊団の面子であるが最近は千振ることもできるものもあらわれた。バッターボックスは何の役に立つのか彼らは分からないが、それでも監督の言うことだからと信じていた。

「揉んだら、寄せる。真ん中へ」

 クマ吉は時折ジェスチャーを踏まえてアドバイスを行うのが日課である。それを聞きながら盗賊団も「なるほど」と頷くのだから、吸収が早かった。

 午後は畑仕事である。

 食い扶持を自分で稼ぐのが盗賊であろう。その為、新しく森を切り開いて開拓した土地に麦を植えた。男手は大量にあるのだから、なかなかよい畑ができたのだ。それにクワを振り上げ、振り下ろすその行為はなかなかに力がいるから、戦闘の訓練にもなる。

「へへへ、かんねんしなお嬢ちゃん」

 雑草をむしりながら、なにか言う盗賊の一人。彼の額には労働で得た汗が、太陽の光で銀色の輝きを見せている。

 日が沈むと、それぞれがペアになって武技の研鑽を始める。かがり火をたいて、男達は半裸のまま、木刀やそれぞれの武器を木でかたどった武器を使って打ち合うのだ。盗賊団は日ごろの盗賊として畑仕事や素振りをして鍛えた筋肉と、朝のランニングで絞りに絞った肉体に汗を流す。筋肉に覆われた男の肉体は動くたびに赤銅色の肌をさらに熱くする。

「そんなんじゃだめだよ! おっぱいを絞に絞るにはまだたりないんだっ」

 全国の盗賊団の中でも厳しい練習を行っているがクマ吉にはまだまだ甘い。盗賊団はそれで奮起して、打ち合った。

 こうして一日が終わりをつげ、後は食事の後に歯を磨いて盗賊団は泥のように眠る毎日であった。当たり前だが、ストレッチは必ず行う。

「いつか、おっぱいを揉もうな……」

「ああ、いつか。必ず」

 盗賊団は誓いあう。

 

 月光の中で盗賊団の頭目が木刀を振る。

 あれだけ厳しい訓練を積んだのだが、彼は仲間たちが眠っている間にアジトを抜け出してひとりで修行を行っていた。訓練の疲れはたまってはいるが、そんなことで音をあげていては盗賊団の頭目は務まらない。

「…………」

 それを木の陰から見守るクマ吉。彼はズボンを脱いで、そこにあるものを風に当てていたのだ。そこでたまたま頭目の秘密特訓を見つけた。しかし、彼は頭目へ歩み寄ることをしない。静かに見守るだけである。

 

 数か月がたった。

 ある時から近隣の街にボランティアを行うようになった盗賊団は、次第に地域住民の人々から頼られる存在へと変貌し始めていた。それだけではない、自警団としての役割も持つようになった。それでも彼らは、訓練をやめなかった。初志貫徹をその身で持って示しているのだ。唯々、おっぱいを揉みあげることだけを考えていた。

 秋。盗賊団の前には小金色の麦畑が広がっていた。

「うおおおおお」

 自分たちで作り上げた黄金の麦畑。それを見て盗賊団は目を赤らめて、皆で喜び合った。

「お、おれ盗賊やってきてよかった」

「盗賊冥利につきるぜえ……」

 そう言う団員もいる。それをみて頭目も不覚にも涙を流してしまった。今この盗賊団の団結力はこの上なく上がっているのを見て、クマ吉は今日のミーティングである発表をしようと決心した。それは頭目だけには先に伝えた。

 

「今日はコムスメーズに試合の申し込みを行った」

 ミーティングで頭目が言うと団員たちはざわめき始めた、来る時が来たのだ。あれから数か月、毎日おっぱいのことを考えて過ごしてきたのだ、精神的にも肉体的にもため込んだものを全てをあの女の子で発散することができると彼らの士気は静かに上がっている。だが、ミーティングで頭目がしゃべるときに私語をするものが盗賊をやれるはずはない。彼らの心の中は熱く燃えたぎっているが、表面はクールだった。その点、紳士と通ずるものがあった。

 あの二人の女性はどうやら仲間らしいので、決闘状はユキヒメ名義で一通だけを出した。その決闘状には場所と時間がしっかりと明記されているので、あちらからの返信を待つ必要はない。盗賊団が指定した場所で待てばいいのだ。

 女性が受けるかどうかはわからないが盗賊団はこのミーティングが最後になるかもしれない。

 

頭目の横にはホワイトボードが合った、そこにはところ狭しといろいろな情報がかきこんである。これは今の今まで盗賊団が総力を挙げて調べてきた結果である。全て、あの二人の女性の情報だった。

 ホワイトボードに頭目が二枚の写真を付けた。一方はあの長髪の女でその下に「サクヤ」と書いてある、そしてもう一方は短髪の女の子で「ユキヒメ」と書いてあった。

 サクヤは錬金術の達人らしく、霊刃を作り出すことのできる、それで生み出された剣がこの盗賊団を倒したのだろう。他にもあらゆる知識を広く知っていて、手ごわいおっぱいであることは間違いない。

 ユキヒメは人間ではないらしい。どうにも剣の化身という奇妙な出自の彼女だが、そんなことはどうだっていいのだ。唯、おっぱいがあるのであれば、揉むことに不自由はない。勇者以外が触るとダメージを受けるかもしれないとも調べはついているが、それについての対策も盗賊団ではしていた。彼女もかなりの剣の使い手であることも特記されていた。

 つまるところ時間はたっぷりと合ったのだ。盗賊団は日ごろの訓練の合間に、ありとあらゆる策を練り、道具を作成し、勉強した。簡易な魔法ならば、この盗賊団で使えないものはいない。そして三人集まれば文殊の知恵ともいうが、ここには十人以上の盗賊と一匹がいた。喧々諤々の議論の果てに、女の子二人への対策は済ませた。

「以前からの懸案だった。二人のスリーサイズは分からなかった。だが大きいことは間違いない」と頭目。

「くそっ。それが分かれば、戦いやすいんだけどなっ」

 盗賊の一人がそうため息を漏らす。スリーサイズは戦いにおいて重要な意味を持つらしい。頭目はそれを聞いて言う。

「確かに、そうだが。俺達はこの数か月、本当に努力した」

 頭目の言うとおり、この盗賊団の団員は全員が一回りも二回りも体つきを大きくしていた。それも筋肉の鎧と言えるほどに、絞り上げられた肉体である。今では騎士と言えどもその鍛え上げられた盗賊団には及ばない。要するに鍛え方が違うのだ。

「俺達は勝てる。みんなで力をあわせりゃあ、こわいもんなんてなんにもねえよ」

 おおと盗賊たちが頭目の言葉に呼応した。彼らも同じ気持であった。みなおっぱいを揉むことだけが望みである。そのささやかな望みの為に、数か月間血が滲むような努力をしてきたのだ。

 クマ吉が一歩前に出る。「監督!」「お言葉を」と盗賊団が口々に言う。それを目で制してクマ吉は口を開いた。

「明日僕たちはおっぱいを揉むんだ。夢にまで見た、柔らかいふくらみがすぐそこにあるんだ」

 盗賊団の眼の色が変わっていく。そこに熱い情熱を宿して、眼光が光りを増していくのだ。

「さあ、行こう。僕たちの明日へ! 揉むために」

 うおおと盗賊団は鬨の声をあげる。木でつくられたアジトがびりびりと震えるほどの、彼らの咆哮は強かった。

 

 

 

ユキヒメは朝に届いた手紙を見て愕然とした。しっかりと封筒された書状は達筆の字でこう書いてあったのだ。

 

「拝啓 ユキヒメ様。

秋も深まり、涼しい季節になってまいりました。ユキヒメ様に置かれては、どのようにお過ごしのことでしょうか。

 さて、突然のお願いで大変恐縮ではございますが、決闘についてのお願いがあり、お便りを差し上げました。

 私ども盗賊団は」

 ここまで読んでユキヒメはびくりと体を震わせる。だが、まだまだ手紙は続く。

「春の戦いに置きまして、ユキヒメ様方に敗れて以来、研鑽を積んでまいりました。そこで勝手とは思うのですが、再戦の機会を拝領したくお願い申し上げます。

 つきましては、明後日のお昼ちょうどに前回お手合わせ願いました、あの夕日の映える草原でお待ちさせていただく所存にございます。

 ユキヒメ様方もお忙しいこととは存じますが、お時間をいただけるよう平にお願い申し上げる次第でございます。また重ねてのお願い大変申し訳なく存じますが、何卒当日はサクヤ様も御同道をお願い申し上げます。

                             恐々謹言

                             盗賊団 頭目     」

 ユキヒメはぽかんと口を開けた。今手に持っている手紙が決闘状なのだということは理解したが、ところどころで「盗賊団」と書いてあることに混乱したのだ。彼女はなんといっていいのか、どうすればいいのかわからずに首をひねった。何故か目は泳いでしまう。

「な、なんだこれは」

 呻くように言うユキヒメ。しかし、言葉を出したところでなにもわからないことは一緒であった。どう考えてもおかしいのだが、厳然と盗賊団が送ってきた書状が目の前にある。

「……決闘? 盗賊などにしりあいはいないはずなのだが」

 ユキヒメは完璧に盗賊団のことを忘れていた。苛めたことを忘れるのは人間の悪いところである。逆に苛められた盗賊団は覚えているのだから、彼女の罪はこの時点で重い。しかし、実際に手を下したのはサクヤなのだからユキヒメが覚えていないのも無理からぬことでもあった。だがしかしその連帯責任は彼女にあるのだ。

「あっ」

 ユキヒメは何となく思い出した。数か月前に、考え事をして草原を歩いていると盗賊に絡まれて、たまたま近くにいたサクヤに追い払ってもらったような気がする。そのことをこの書状の主は言っているのだろうか、とユキヒメは推測した。完全に思い出したわけではないので、あやふやではある。

 追い払ってもらったのであって、助けてもらったのではないのはユキヒメも剣が相当使え、自力で倒すこともできたからだ。

 ユキヒメはふっと息を吐いて、書状を閉じた。呼ばれたからと行く義理はないのだ、それにサクヤにもこんなどうでもいいことで来てもらわなければいけないのは気が引ける。

 そう思って、ユキヒメは書状を封筒の中へ戻そうとした。だが、その拍子に封筒から何かが出てきた。一枚の紙だ。そこにはクマ吉の顔が印刷されていて、こう書いてあった。

「追伸 もし来ていただけない場合。隙をみてパンツを盗みに入ります。ぐふふ。逆に来てもらえれば、二度と悪いことはしないよ。あっ盗んだパンツは、別に悪いことには使わないので、大丈夫」

 ユキヒメは唇を噛んで何とも言えない顔をした。こんなうっとおしい連中に付きまとわれるくらいならと明後日に行くことにしたのだ。そこで全員打倒してやろうと思う。罠かもしれないが多少のことで負ける気は彼女にはなかった。

「レイジにも来てもらう……いや、たかが盗賊団だからな。コテンパンにしてやろう」

 ユキヒメは一人、呟く。一応、呼ばれているのでサクヤにもついてきてもらうつもりだった。二人の方が手間は省けるのだ。それにすぐ終わるだろうと彼女は思っている。

 

 間違っていることは、正しいと信じながらやるものである。

 

 

 

 

 






吉田松陰の本を読んでいると、思いついた話です。やはり古典はいい。
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