極東に入って約4日間。訓練場のアラガミはいつも通り無機質な部屋に湧いて出て来る。
それをどれだけ切っても満たされないのはただただ実地での任務が待ち遠しいからだろう。
俺、高森トウヤは訓練を終え、自室のベッドに腰をかけた。
「この服、動きやすいけど…カッコ悪いよなぁ。」
なんて服作ってる人に言ったらどんな顔されるかわかんないし、どーせ新人が生意気だ、とか言われてみんなから変な目で見られるんだろうな。
なんてこと考えてると、部屋の玄関口から乾いたノックを2回聞いた。
俺が軽くどぞー、なんて促すと、線の細いメガネのお兄さんが入ってきた。
「ふむ、思ったよりは疲れていないみたいだね、トウヤ君。」
「いんやぁ、今からシャワー浴びて布団にバタンキュー、ってとこでしたよ…支部長。」
極東支部で一番偉い人、ペイラー榊さんがそこらへんの神機使いに会いに来るとは思わなんだ。
「そんで、何か御用でも?あ、ビール飲みます?」
「支部長の前で堂々と未成年がビールを出している様子が見れるとは思わなかったよ。生憎僕は下戸でね、折角だけど遠慮しておくよ。」
そりゃ残念。缶のプルトップを引き、カシュッ、と子気味良い音を立て、溢れ出る泡に口を継いだ。
運動後はこれやな。うん。
「まぁこんなご時世に未成年も何も言っていられないか。君には一応話をしておきたくてね。」
「ナナちゃんとシエルちゃんの好み…とか?」
なんて小ボケをかましてみるものの、榊さんは相変わらずのニヤケ顔を貫き通している。
ニヤケ顔って言っちゃダメか、微笑。
「残念ながら彼女たちのタイプは分からないなぁ。そこは自分で聞いてみるといい。僕が話すのは君が入隊する、ブラッドについてだ。」
なるほど、俺が入る超ウルトラスーパーミラクルハイパースペクタクル先端部隊ね。
うん、自分で考えて長い。もっとみじかくしよう。
「今のブラッドはナナ君、シエル君、ギル君、そして隊長君が在籍しているが…隊長君にはリンドウ君と共に別件でグラスゴー支部に行ってもらうことになってね。現状、君を含めて四名の部隊として活動してもらうよ。」
「別件てのは推測するに…向こうで強力なアラガミが出現した、ってことで間違いないですか?」
「うむ、その事については隊長君の出発前に自分で聞くといいだろう。」
隊長さんはさぞ腕が立つ人だそうで、さらに甘いマスクでアナグラの一部の人達はファンクラブなんか作っちゃってるそうな。羨まけしからん。
「ブラッドが今の人数になるまでには色々と事があってね…君にはその事を知っておいて貰いたいんだ。これから一緒に戦う仲間として、ね。」
「…その事、っていうのは?」
「ブラッドには、他に二名、所属していたんだよ。一人はロミオ・レオーニ少尉。彼は…とても人懐っこい性格でね。彼がいると周りが思わず和んでしまう、いわばムードメーカーだった。しかし、やむ無きことから命を落としてしまってね。フライアの庭園に彼の墓石があるんだ。今度みんなと一緒に尋ねてやってくれると有難い。」
ロミオさん、か。ナナちゃんから聞いたなぁ…とにかく底抜けに明るくて、芦原ユノに会ったときはとにかく興奮しっぱなし、って。
「もう一人は…ジュリウス・ヴィスコンティ。知っているであろう、この世界の救世主だね。彼は螺旋の木内部で今も特異点として存在しているとされている。ナナ君やギル君から聞いた話によると、今も絶えず迫るアラガミを斬り続けているそうだ。あの、聖域に立つ一時の平和の象徴に、ね。」
テレビで見た。神機兵の開発に携わるまで、ブラッドの隊長として戦い続けた人。実は俺の憧れでもあるんだよね。
「この両名は、他のブラッドの諸君の中で今も『仲間』そして『家族』として、生き続けている。彼らにとってはかけがえのない存在なんだ。君もどうか心に留めておいてほしい。」
「もちろん。俺だってブラッド、ですから。ロミオさん、ジュリウスさん、そして今いるみんなが築いた礎の上に俺は立つんです。だから、俺も…会ったことはなくても、彼らを信頼して、尊敬して、共に歩むって。」
「…ありがとう。その言葉を聞いて、胸が楽になったよ、僕の要件はそれだけだ。邪魔したね。」
踵を返しドアに身を消す榊さんを見送る。
その後、幾許かの静寂が、俺の部屋を支配した。
お初にお目にかかりまする。
スピア厨です。
よしなにオナシャス!
初めはなんかちょっといい雰囲気にしたくてこんな感じのを書きましてん…
最初っから私の引き出しはクライマックスに差し掛かっておりますゆえ、齟齬が目立ちますが暖かく見守ってください(殴