ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
街を飛び出て、森に入った。追手は来ていない。
俺は巨大な切り株にキャベスを寝かせ、レタツを抱きかかえたまま同じ切り株に座る。オンオンはタマギーネをぞんざいに地べたに放った。
「驚きましたわよ。あなたのような年齢でそこまで強いサイヤ人は初めて見ました」
「俺の年齢で? 年齢関係なく俺が一番強いだろう。大猿化を除けばな」
「なっ! あなた不敬ですわよ!」
オンオンは俺に向けて気弾を放つポーズをする。しかし掌に集まった気はフッと消える。
「まあ私如きでは脅しにもならないでしょうけど」
さすがに実力差を悟ったようだな。
「ふっふっふ。俺の勝ちでいいのか?」
「私もサイヤ人のエリートです。戦わず服従することは致しません」
まあそれもいいだろう。
オンオンは平坦な土の上に立ち、構える。
俺もレタツを姉の隣に寝かせ、構える。
「どこからでもかかってきな」
「ではっ!」
オンオンはいきなり飛び込んでくる。
速い。4人の中では誰よりも。
「つえいっ! えいえいえいっ! つあーっ!」
「くっ。上手いな」
技のキレがいい。予備動作も短い。トリッキーに気弾を使ってくる。フェイントが多くて搾りきれない。
「ぐうっ」
痛え。顎にハイキック食らっちまった。脳が揺れる。
「だりゃあああ!」
追い打ちも速い。脇腹への回し蹴り。避け切れん。
肘で足を受ける。衝撃は緩和されたが、体は吹き飛ばされる。
「ぐおっ」
バキバキと木々を破壊しながら飛んでいく。枝に肌が引っかかれてちょっと痛い。
というかこの女、4人の中じゃあ断トツで一番強いじゃないか。気は男に比べると少ないが、戦闘センスが全く違う。技のキレと体捌きが見惚れてしまうほど見事だ。
と、考えている間にも横から殺気が。
「くっ」
慌てて武空術で飛び上がる。
ブーン、と音がした。俺がいた場所を、気の円盤が通り過ぎて行った。円盤の移動上にあった木々は数瞬の後に倒れていく。断面は鋭利な刃物で切断されたようにきれいだった。
「き、気円斬だと!?」
あいつ、そんなものまで使えるのか。というかやばかった。死にかけたぞ。
「ど、どうして!?」
技が飛んできた方向から声が聞こえた。オンオンがショックを受けたような表情で立ち尽くしていた。
俺はスカウターを付けていないから、ふつうは避けられない。必殺の一撃のつもりだったのだろう。というか殺さないでくれよ。
時間を与えるとまた厄介な技を使われるかもしれない。ここは彼女が困惑しているうちに一気に決める。
「だーりゃ! だりゃりゃりゃりゃ!」
気弾を放ちながら突っ込む。オンオンは上手く直撃を避けるが、近くで破裂した気弾の突風でバランスを崩していく。さらには、クイッ、と気弾を曲げて、顔面に命中させる。
「ゴハアッ」
オンオンは顔にダメージを負い、爆発の勢いで地面に叩き付けられる。
その隙に腹へ肘打ちだ。
「ぐうえっ。か、かははっ」
クリーンヒットだ。オンオンの気が急激に下がって行く。
ちょっとかわいそうだが、俺も死の恐怖で必死になってしまった。だが終わりだろう。防御は4人の中で一番弱いかもしれないな。
オンオンはぐったり地べたに倒れ伏す。俺はその上に跨り、マウントポジションで手に気弾を浮かべ、それを彼女に向ける。
「俺の勝ちでいいか?」
「ぐうっ。はあ、はあ。い、いいですわ。はあ、はあ。私の、負けです。はあ、はあっ。ううっ」
勝ちが決まったので、彼女を背負って再び初めの切り株に戻る。
誰か目を覚ましているかもしれないと思ったが、皆横になったままだった。
いや、キャベスの気が安定している。たぶん目覚めているが、寝たふりをしているな。隙を見て殺る気か?
「はあ、はあ。そこに降ろしてください。はあ、はあ、はあ」
オンオンが巨木の根元を指差した。それに従って降ろす。
「治療はしなくていいのか?」
「はあ、はあ。けっこうです。はあ、はあ。この程度なら、数日寝れば治ります。はあ、はあ」
「そうか。では、質問に答えてもらう。お前は、俺の女ということでいいんだな」
「はあ、はあ。サイヤ人なら、力ずくでそうすればいいでしょう。はあ、はあ。お父様達は怒るでしょうけど、あなたなら返り討ちにしてしまうでしょうね。ふふっ、ゴホッ、ゴホッ」
まあ、強いからっていきなり好かれるわけではないよな。とりあえず力ずくで彼女にしたから、今後どうやるかだな。
「じゃあ、お前は俺の彼女ってことで決まりだ。ふっふっふっふっふ」
景気のいいところで、寝転んでいる女の場所へ向かう。
「起きな」
ぺしぺしとレタツの頬を叩く。
「ううん、お姉ちゃん、やめてよ。苦しい」
寝言を言っている。なかなか起きない。しょうがないから尻尾をギュッと握ってやる。
「あひぃいっ!? だ、誰だ! 尻尾に触ってんじゃ、いいいっ! あ、あんた生きてたの! で、ございます、か?」
飛び上がるようにして起きた。あとは寝たふりしてる困ったちゃんだな。
俺が近づくと、キャベスの気が高まった。殺る気だな。
頬に手を伸ばすと、パッと目が開き、顔に手刀が飛んでくる。
「ふふっ。そんな小細工が通用すると思ったか?」
余裕でキャッチしたがな。
「ショアッ!」
もう片手でも殴ってくるが、それも捕まえる。こいつは両足にダメージがあるからもう戦えないだろう。
「よっ、ほいっと」
「くっ」
掴んだ手を引っ張り、キャベスを回転させ、勢いよく地べたに叩き付ける。
「ぐうっ」
衝撃に怯んでいる内に上に跨り、マウントポジションを取る。そしてオンオンと同じように顔元に気弾を放つ真似をする。
「俺の勝ちだ。諦めな」
「チッ、クソ野郎が。煮るなり焼くなり勝手にしな」
キャベスはフッと全身の力を抜き、不機嫌そうな顔で地べたに仰向けになった。
やっと落ち着いた。これで話が出来る。
「サイヤ人の夫婦は基本的に男女一人ずつ。だがそうでなくてはならないという掟があるわけではない」
「なんとなくそう言いそうな気はしましたけど、私1人では満足できないと言うのですね! それは許せませんよ!」
まあそうなるだろう。サイヤ人はただでさえプライドが高いのに加え、夫婦では女の方が権力が高い場合が多い。悟空然りベジータ然り女には頭が上がらなかったしな。
「だが、王ならば、多くの妻を迎えても問題ない」
「あなたまさか!」
オンオンの気が再び高まり、殺気を帯びる。エリートだからか、王族に対する忠誠心があるらしい。
「俺が殺すわけではないが、ベジータ王は死ぬ。フリーザの野郎がサイヤ人を絶滅させようとしているからな」
「な、なんですって!?」
「なにっ!」
女達が一様に驚く。寝そべっているキャベスも初めて反応してくれた。
「しょ、証拠はあるのですか!?」
「お前達に見せられる物はない。だが不自然だとは思わなかったか? サイヤ人の全てをこの星に集めるという命令は」
「あっ!」
「た、確かに。……ですがっ!」
「フリーザの野郎はあと1週間かそこらでここにやってくるだろう。やつが来てからでは遅い! 今すぐ宇宙に逃げるんだ!」
俺は力強く宣言した。だが女達は衝撃に固まっていて返事がない。
しばらくして、オンオンがハッとして動き出した。
「お待ちになって! ベジータ王にこのことを報告しなくては!」
「いや、目立つのは避けたい。フリーザに目を付けられてしまうからな。こっそり脱出するんだ」
「そんな……」
オンオンはやり切れないような顔になる。そして彼女が何か言いかけた時、キャベスの笑い声に遮られた。
「ハッ! それがサイヤ人のすることかよ! フリーザがなんだってんだ! 向かってくるなら殺せばいいだけさ!」
「無理だな。死ぬだけだ」
「腰抜けが! 戦う前から何を言ってやがる!」
「俺は力の差が分からない愚か者ではない。今回は逃げるが、別惑星で力を蓄え、あの野郎はこの手で殺してやるさ」
俺はグッと手を握り、気を高めていく。
「くうっ」
気の突風にあおられて、キャベスも口をつぐんだ。
「ちょ、ちょっとお待ちになって! 逃げると言っても宇宙船はフリーザ軍の監視下にありますわ! どこに逃げたかは簡単に分かってしまいますわよ!」
「知ってるさ。だからやつらの物ではない宇宙船を用意してある」
「え? ど、どうやってですの!」
「別惑星の人間と仲良くなっただけさ」
そこで女達は再び衝撃を受ける。サイヤ人がサイヤ人以外と親しくなるのはタブーだからだ。下級戦士ならエリートに殺されることもありえる。しかし、フリーザ軍の宇宙人はなんとなくで例外的に協力してもいいということになっている。
俺が思うに、もともとサイヤ人には優性思想があったが、フリーザはそれを助長して他民族との交流を防いでいるのだと思う。バカをバカのままにしておく愚民政策というやつだ。
「俺達はサイヤ人の唯一の生き残りとなり、新たな王族となる。もうフリーザ達の命令に従う必要はない! 自分で得た金は全て自分で使う! 宇宙船も完全に自分達の物を手に入れる! 自由だ! 何物にもしばられず、自由にこの宇宙を駆けるのだ!」
まあ自由と言っても、虐殺とかは勘弁願うがな。演説としてはこんな感じでいいだろう。
女達はまた呆けたような顔をしている。しかし先ほどよりは心象が良さそうだ。気の流れを読めば分かる。喜びや好奇心を感じる。
「ところでオンオン。この星にお前より美しい女はいるか?」
「なっ! あなたまたそのようなことを! 言っておきますけどね! 私が見る限り、明らかに私がこの星で一番美しいのですよ! 美しさだけではなく、強さ、器量、度胸の良さ、床の上手さ、挙げればきりがありません! 総合的に私が断トツで最も素晴らしい結婚相手なのです! 王妃は、まあ素晴らしかったですけど、子どもをお産みになってからは訓練も休みがちですからね。それにそこまでお若くもない。今は私の方が張りがあってよろしいはずです!」
おお、ダメかと思ったけど、こんな質問でも丁寧に答えてくれた。自慢がしたかっただけかもしれないが。
王妃か。その字面だけで寝取ってみたくなるが、ベジータの母親だからな。ちょっと気持ち悪い。スルーでいいだろう。
「ケッ。よく言うぜ」
キャベスが恥ずかしそうに1人つぶやいた。
この表情は、ギャップも相まってかわいい。あのイケメンはこういうところに惚れたのかもしれないな。
というわけで、ここにいるメンバーで脱出の手順を考えることにした。
女は3人で終わり。少ないような気もするが、そこまで悪くはない。船にはラクスとナタルとフレイがいるからな。ドラゴンボールの地球に行けたらブルマとかともやりたいしな。初めっから数が多過ぎると対応できんかもしれん。こんなものでいいだろう。そもそもあまり数が多いといくつかの理由で船に乗せることもできんしな。
まずはオンオンからこの星の警備状況を説明してもらう。
「丸ポッドの着地地点は2つ。この街と、ここに対してほぼ星の反対側にある街です。あちらは王宮が近いので、おそらくこちらより強力な見張りがついているでしょうね。ですからこちらを奪う方が簡単なはずですわ」
「なるほどな。じゃあこっちを奪うか。夜のセキュリティとかはどうなっている? 見張りは減るのか?」
「減るでしょうけど、丸ポッドを保管している倉庫に近づけば警報機が鳴るでしょうから、いずれにせよ戦闘は避けられないと思いますわよ」
「そうか。じゃあこういうのはどうだ? 俺がやつらと戦っている内に、お前達がポッドを盗むんだ。倉庫の扉を戦闘の余波で壊しておけば、警報機が鳴っても不自然に思われないだろう。そして気を見計らって俺も離脱し、お前達に合流する」
「スカウターで後を着けられるのでは?」
「その心配はない。俺は戦闘力をゼロ近くまで下げることができる」
「え? 本気で言っておりますの?」
と、会話中に大きな気が近づいてきているのを感じた。
これは、サイハクだな。意識が戻ったか。
俺は会話を中断し、空を見上げる。
「どうかされましたか?」
「あっ、サイハクさん!」
レタツが俺の視線の先を指差す。サイハクはスカウターを付けて真っ直ぐこちらに飛んできていた。
「皆こんなところにいたんだね。キャベスは……」
やつはホッとした表情で付近に着地し、視線をキョロキョロさせる。そして俺の股の下、サイハクから顔を背けている人物に目を止める。
「あ! キャベス! おい君、彼女から離れるんだ!」
殺気を出して怒ってきた。彼氏としてはふつうの反応なんだが、こういうタイプは面倒だなあ。
「サイハクさん! 実はとても大事な話があるんです! なんとフリーザ様が私達サイヤ人を皆殺しにしようとしていて」
「皆殺し?」
「おい、言うな」
俺はレタツの顔に軽く気弾をぶつける。
「いたたたたっ。ど、どうしてですかあ! サイハクさんならおやさしいですし、きっとお力に!」
「どういうことだい? フリーザ様が? どうして突然そんな話が? 証拠は?」
「はっ! お黙りなさい!」
ふと、オンオンがドドン波のような細い気功波をサイハクに放った。それはサイハクのスカウターに当たり、破壊する。
「い、いきなり何をするんだい。オンオン」
「まずいことになりましたわね。今の話、フリーザ一味に盗聴されていたら」
「あっ、そうか! スカウター!」
「今すぐ行動した方が良さそうだな」
しかし、サイハクへの説明をどうするか。面倒だな。気絶させてしまおうか?
「丸ポッドはいくつ盗めばいいのですの?」
「4つだな」
「えっ! 足りないじゃない! です、か。私達は6人! もしかして2人で乗るんですか!? 私とハラべコさん以外大きいですからきっつきつですよ!」
レタツよ、俺はハーレム宣言をしたのだぞ。他に男が必要と思うか? 特にこいつのような面倒そうな男はダメだろう。空気を読んでもらいたい。
「集合場所を決めておきましょう」
「適当に離れてくれたらいい。俺はスカウターがなくともお前達のいる場所が分かる。そういう技を習得しているんだ」
「なるほど。それであの時……」
「えっ、どういうことですか? そんなことありえるのですか?」
「ポッドを盗む? 何の話をしてるんだい? 先程のフリーザ様の件と何か関係があるのかい?」
ええいっ、うるさい! 話の邪魔をするな!
「その囮役、俺も交ぜてもらっていいか?」
ふと、野太い声が響いた。
「タマギーネ! あなた!」
「邪魔はしない。お前の船に乗せてくれと言うつもりもないさ」
なんだ突然。それは都合がいいが、なぜそんなことをこいつがする?
「ど、どうしてですか! 一緒に乗るのでは!」
「女を取られた相手に命乞いする気はねえよ」
「えっ」
タマギーネは一睨みでレタツを黙らせる。
「俺のことは憎いはずだ。なぜ協力する?」
「別に。黙って見ているだけってのも癪だからな。体を動かしたくなっただけさ」
へえ。かっこいいこと言うじゃないか。
「怪しい行動を見せたら背中から撃つ」
「やらねえよ。そんなこと」
「ふっ、いいだろう。ならば1つ言っておくが、ポッドを盗んで1人で逃げてくれる分には文句を言わんぞ。むしろ奨励する。お前達にフリーザの意識が向かえば、それだけ俺達が逃げ切れる可能性が上がるからな」
「へっ。言われなくてもそのつもりだったさ。だが俺からも言っておく。今回は負けを認めるが、俺は諦めるわけじゃねえ。いつかお前より強くなって、惚れた女を取り返してやるぜ」
それは、面倒だな。こいつエリートだから簡単に抜かれるかもしれんし。
だが、まあ、こういう性格は嫌いじゃないから生かしてやる。
「お前も3秒以内に選べ。協力するか邪魔をするかの二択だ」
俺はサイハクに向かって言う。
「え? どういうことだい? 二択も何も、僕にはまだ何がなんだか」
「3秒だ。お前には気絶してもらう。死にたくなければ宇宙船を奪って逃げることだな」
俺は気を高め、サイハクに強烈なボディーブローをお見舞いする。
「かはっ……。また、腹、を……」
「きゃああああ! ど、どうしてですかあ!」
サイハクは気絶した。さて、丸ポッドを奪いに行くか。