ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
そして脱出へ
気を隠して着地地点に近づいていく。見張りの連中は、暇を持て余している感じだった。誰一人真面目に周囲を警戒してはいない。黙々と筋トレに励んだり、軽く組手をしたり、世間話に馬鹿笑いしたりしている。
オンオンの言っていたポッドの隠し場所を確認する。頭の中で自然とそこに気弾を撃つまでの流れをイメージする。
よし、いいだろう。早速はじめよう。
気を高め、やつらの前に姿を現す。
「やあ、皆さん」
「あっ、てめえは!」
「何しに来やがった!」
やつらの表情が怒りに変わり、一斉に近づいてくる。中には笑みを浮かべて準備運動している者もいる。よっぽど暇だったのだろう。
「この前逃げてしまったのは、お前達にとって残念だったろうが、俺にとっても疑問があってな。サイヤ人なら戦うべきだったのだ。お前達も暇だろうからちょうどいいだろう?」
「ん? へへへっ。話が分かるじゃねえか」
やつらは途端に機嫌をよくする。やはりサイヤ人にとって戦闘は何にも勝る快感なのだ。
「俺だァ! まずは俺にやらせやがれェ!」
と、俺がぶっ飛ばしたおっさんが出てきた。頭には包帯を巻いている。
「何言ってやがる! お前の出番は終わっただろ!」
「そうだぜ! お前は負けたじゃねえか!」
「俺はまだ負けてねェエエ! ぶっ殺すぞてめえ等ァ!」
何もやってないのに一色触発な感じになった。都合がいい。
「俺も雑魚と遊ぶ趣味はないからな。おっさんとお前等と、強い方と戦わせてくれや」
「なんだとぉ!」
「てンめぇクソガキィ! あんま舐めてっとぶっ殺すぞオラァ!」
「ダメだ! 俺がやるんだァ!」
「あ、おい!」
結局おっさんが突っ込んできやがった。その後ろから頭の悪そうな方達もぞろぞろと。
「オラア!」
首を傾けておっさんの右フックを躱す。躱しながら半身になっておっさんの足首をつかむ。そしてジャイアントスイング。
「ぐううっ」
「オッラアアアアアアアアアアアア!」
おっさんを振り回し、俺に突っ込んできたサイヤ人達を突き飛ばす。
粗方片付いたところで、怖気ずいている雑魚へおっさんを投げる。
「ぐアアアッ!」
「へ?」
「うわわっ!」
2、3人は片付いただろうか? いや、ダメだな。まだ全員動けている。
だが隙はできたぞ。
「ぐふっ」
「がはっ」
おっさんをぶつけられて怯んでいるサイヤ人達に止めの一撃を加える。ついでにおっさんにも。
「つ、つええ」
「はっ! そいつらを倒したぐらいでいい気になるなよ!」
残る男達の反応は対照的だった。単純におっさん等より弱い連中はビビり、強い連中は戦意を高めている。
その時、一際デカい気が前に出てきた。
「俺がやる。お前達は下がってな」
顔に複数の傷を持つリーダーらしき男だった。
「ゴーボウ……」
「あ、ああ。分かった」
野蛮な男達が少し怯えた風に引いていく。やはりこいつがリーダーか。
「へへっ。久しぶりに楽しませてくれそうだ……ぜっ!」
言葉と共に突っ込んできた。なかなか速い。踏込だけならサイハクの少し下くらいだろうか。
「シャアッ」
素直な右ストレートを、左手で受け止める。なかなか鋭くて重い。オンオンとタマギーネより若干劣るが。
「ヒャアッ、ヒャアッ、ヒャアッ! ドリャアアア!」
休む間もない連撃。やはり鋭いがオンオンにあと一歩劣る。フェイントが無い分受け止めるのは簡単だが、一撃一撃が重い分反撃はしにくい。
だが、そろそろこっちからも攻撃したい。
受け止めて、躱して、もっと小さな動きで躱して、今!
「ふんっ!」
「ばっ!」
おっ、手で受け流した? 初めての反応だ。
「オラオラオラッ」
「ぬっ、はっ、見えてるぞ!」
クソッ、当たらん。戦い慣れてやがるな。俺が行動する前に防御が完成している感じだ。たぶん予備動作とか視線の動きで次の行動を読まれているんだろう。
やり辛いな。
「くそっ」
「甘い! そこだ!」
ぐっ、そんなに強くはないが、腹に一発もらっちまった。
「この野郎!」
「ぬっ!」
だがやつが接近してくれた分、一発横っ面をぶん殴ってやったぞ。あまり体重は乗せられなかったがな。
「チッ、下手くそのクセにタフな野郎だぜ」
こっちはほぼダメージなし。あっちは若干左ほほがつり上がっているから、多少ダメージがあっただろう。だが、このままなら長引きそうだ。
俺も技術を使ってみるか。
オンオンの構えを思い出し、彼女と同じように半身になってリラックスする。
「ん? 小細工なら効かんぞ」
確かに付け焼刃だ。だが俺の方が身体能力は格段に上回っているから、多少やつを崩せれば後はゴリ押しで行けるはず。
俺は右肩から相手に突っ込む。ように見せて急停止し、左フックを放つ。フェイントというやつだ。
「くっ」
脇にかすった程度か。だが当たったぜ。
この隙にもう一度足でフェイント。ローキックの構えで蹴ろうとし、突然股関節を持ち上げてミドルキックへ。
「なにっ!」
見事命中。やつは吹っ飛んでいく。サイヤ人だからかいきなりやっても上手くいくものだ。オンオン程のキレは無いが、以前の地球人の格闘家を真似た動きよりはいい。
と、せっかく技術を使ったところだが、実はフェイントを使わずともやつを圧倒する方法がある。
気を両手に集め、やつ目がけて連続で解き放つ。
「だりゃりゃりゃりゃ!」
エネルギー弾の打ち合いなら格闘技術はあまり問われない。たいてい力の強い方が勝つ。はずだ。
「チッ。くくっ」
俺の方が遥かに気が大きい。やつもエネルギー弾を放ってくるが、俺の気弾はやつの気弾をのみ込んでなおやつに突き進む。結局やつは逃げ回るしかできず、徐々に傷を増やしていく。勝ったな。
余裕が出てきたところで、一発丸ポッドの倉庫に当てておく。
見事命中。やつらは戦いに集中していて何が壊れたかなど注目していない。上手くいったな。
しばらくは気弾で時間を稼ごう。
「はあ、はあ、はあ」
おっと、疲れてきたな。少し威力を下げよう。
「ダラララララ!」
というか、あいつそろそろ終わったんじゃね? いつの間にか気が消えかかってるんだが。
おっ、オンオン達が倉庫の中に入ったな。あと少しだ。
ふふふっ。どうせだから他の仲間達も潰しちゃえ。ちょうど気弾で土煙が上がって、油断しているだろうからな。
気を消し、近くの男へ移動し、気を一瞬高めて腹パン。
「チェイッ」
「っ! か、かはっ!」
ふふふ。楽勝だな。この調子で狩って行こう。
「ぬんっ。オラッ、つあっ!」
「ぐはっ」
「うおおっ」
「ぐばあっ」
いや、本当簡単だな。初めからこうすればすぐに全滅させられたかもしれないな。
「な、何が起こってやがる!」
「あいつ手当たり次第に殴ってるんじゃないか!? スカウター付けて無かったろ!」
「た、確かに!」
「上へ逃げろ!」
と思っていたら、土煙の上に飛んでしまった。これではサイレントキルは無理だな。
おっ、オンオン達が大分離れたな。俺もそろそろ離脱しよう。
気を隠し、地面を蹴って全力移動。3分程で、オンオン達がいる森の奥地に到着した。やつらは追って来ていない。現在タマギーネの気が大きく揺らいでいることを考えると、タマギーネはやつらと戦っているから、やつらも追いかける暇はないだろう。
「成功だ」
「ほ、本当に来た」
驚くレタツとキャベス。疑っていたようだな。
ポッドは、5つある。予備で1つ余分に取ってきたのだろう。
近すぎれば気功波で落とされる可能性があるため、少し移動し、そこで箱舟の座標を教える。
「入力は済んだか?」
「はい」
「ちょ、ちょっと待ってください。ええっと、できました!」
「では早速船に向かうぞ! 覚悟はいいな!」
「ええ。できてましてよ」
「お、お役に立てるかは分かりませんが」
「……ふんっ」
俺は丸ポッドに乗り込む。オンオン、レタツと続き、キャベスも不満げな顔で入った。
そして座標を入力。あとはコールドスリープで就寝だ。3日後にフリーザに見つかっていなければ俺の勝ち。見つかってしまった場合は、クルーゼ頼みか。
――その頃――
目覚めたサイハクは、キャベス等を探すために街へ戻った。彼にはスカウターが必要だった。
ハラベコを信じたわけではないが、言葉は気になったので、丸ポッドの着地場へ向かった。しかし、そこで目にしたのは瓦礫の山。そしてケガ人達。エリートサイヤ人達が脇腹や足を押さえて、よろよろ動いている。
「何があったのですか!」
サイハクは事情を聞いた。ハラベコとタマギーネが彼等に戦いを挑み、彼等はリーダー含めほとんどやられてしまったらしい。
「あれは、とんでもない強さだった。戦闘力1万のゴーボウがあんなに簡単にやられちまうなんて」
「そうですか、なんてひどい……。ハッ、宇宙船は! あいつ宇宙船を盗むとかなんとか言っていた!」
「何!?」
男達は慌てて丸ポッドの保管されている倉庫に向かった。不自然に入口のドアだけ破壊されている。また、付近の丸ポッドのいくつかが盗まれている形跡があった。
「あ、あの野郎おおおお!」
見張りのサイヤ人達は怒った。やつらのせいで任務失敗してしまった。
「とりあえずフリーザ様に連絡を!」
「待て! 俺達で探す! フリーザ様に気付かれる前に、やつらをこの星に連れ戻すんだ!」
「何? ……いや、お前の言う通りだ」
「だが、俺達だけでできるか? あのゴーボウですら敵わなかった相手だ」
「宇宙ならポッドさえ破壊すればやつらにはどうしようもありません。それに、僕も手伝いますよ」
サイハクが男達に割って入った。
「弱虫お坊ちゃんかよ……」
「何言ってやがる! 貴重な戦力だぜ!」
「まあ、そうだな」
そうして男達はハラべコ等を追いかけることになった。丸ポッドで丸ポッドを追いかけては追いつかないので、フリーザ軍の技術者が持っている宇宙船を使わせてもらうことにした。もちろん、脅して奪うわけだが。
そこまでは上手くいった。宇宙船の中に治療ポッドが1つあり、ゴーボウの回復も間に合うことになった。これでいける! 男達にそんな希望が湧いてきた。
しかし、サイハクは喜ぶ彼等を軽蔑の目で見ながら、密かに個室に入った。そして、スカウターの通信を利用して、彼が尊敬するフリーザ軍の先輩に連絡を入れる。
「お久しぶりです。ザーボンさん」
「サイハクか。どうかしたか?」
「あの、フリーザ様がサイヤ人にお怒りと聞いたのですが、何かあったのでしょうか?」
サイハクは言葉を選んだ。
「ん? そりゃあ温厚なフリーザ様でも怒ることはあるだろうな。誰に聞いたんだ?」
サイハクは相手の声色の変化を探った。しかしいつも通りな気がした。
「ハラベコというサイヤ人です。今回フリーザ様がこの星にサイヤ人を集めてらっしゃるのは、お叱りするためだと言っていました」
「ふっ。そんな非効率的なことをするはずがないだろう。もっと高度な軍事的目的のためさ」
「そうですか。詳しく教えていただくことは?」
「サイヤ人の大きな配置転換だと言っていたな。詳しくはまだ聞いていないが、きっとお前達に都合のいい話だろう。フリーザ様は褒めておられたぞ。何せサイヤ人は好戦的な者が多く、フリーザ軍で最も業績を上げていると言っても過言ではない」
「そんな、買いかぶり過ぎです」
「ふっ、貴様はおもしろいサイヤ人だな。謙遜などと」
サイハクはフリーザが怒るどころか喜んでいると聞いてとても安心した。その論理も納得できる。そもそも理性的なフリーザが見境なしにサイヤ人を絶滅させるというのは信じられなかった。中には従順な者もいるし、そうでなくともサイヤ人はフリーザ軍に貢献している。サイヤ人の凶暴さをフリーザが恐れるということもありえない。戦闘力にそれだけの絶対的な隔たりがある。
以上から、やはりザーボンが正しく、ハラベコが間違っているのだと思った。サイハクはザーボンを完全に信じ切っているわけではないが、自分の女を奪うようなやつよりは断然信頼できた。
サイハクはホッとするどころかフリーザを疑ってしまったことに申し訳なく思ってしまった。
「ところで、そのサイヤ人は今どこに?」
「実は、惑星ベジータの外へ逃げてしまったようで」
「なんだと!?」
ザーボンのこれほど取り乱した声は初めて聞いた。サイハクの方が驚いてしまった。
「だ、大丈夫です。今僕たちが中型の宇宙船で追いかけています」
「そうか。いつ頃追いつける?」
「ええっと、3日でしょうか」
「3日か。……少し待っていろ。フリーザ様にお話をうかがってくる」
「は、はい!」
しばらくして、サイハクのスカウターにフリーザの声が届いた。サイハクは心底緊張して受け答えすることになってしまった。
フリーザは少し怒っているようだった。フリーザ等も脱走者の拿捕に向かうらしい。そこで、もし先にフリーザ達が脱走者を捕まえた場合、ゴーボウ達(サイハク含む)にはひどいペナルティがあるという。
サイハクはギョッとした。恐怖のあまりその後の言葉がほとんど頭に入らなかった。しかし通信が切られる直前、どうしても言わなければならないことがあったことに気付いた。
「そ、そうだ! やつは女性のサイヤ人を攫っているのです! 彼女達に罪はありません! どうかご容赦を!」
「……ほっほっほっほ。そうですか。数はいくつですか?」
「3名です!」
「……いいでしょう。そのように伝えておきます」
「はっ、ありがとうございます! 失礼します!」
そうして通信は切られた。