ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
通信から2日後、とうとうフリーザの宇宙船はハラベコ達の気を捉えた。
「SK32の方向に3つのエネルギー反応! 戦闘力は7500、7200、2200です! あっ、GE97にも反応です! 戦闘力は8600!」
「ん? やつの話では男が女3人を攫ったはずだったが」
「正確な情報ではなかったのでしょう。もしくは何か理由があって別れたか」
ザーボンは慌てて身を正し、画面からフリーザに向き直る。
「いずれにせよこの程度の猿4匹ならあなた達だけで十分でしょう。8000の方にはドドリアさん、3匹の方にはザーボンさんが向かいなさい。ただし戦闘は私が惑星ベジータに着くまで待っていてください」
「なぜでしょうか?」
ザーボンがきょとんとして尋ねる。
「殺せば惑星ベジータで私を疑っているサル達が一斉に逃げ出すかもしれないからです。この広い宇宙を一匹一匹殺して回るとなってしまえばさすがに骨が折れますからね」
「なるほど。おっしゃる通りです。では、やつらに接近した状態で監視することにします」
「期待していますよ」
ザーボンとドドリア等は2つの小型艇に乗り換え、それぞれ反応のあった方へ向かっていった。
そしてさらに1日後。とうとうハラべコが目覚める。
「ああ、いい夢だった。女体がいっぱい。ふふっ」
にやつきながら、周囲の気を探る。
近くにはオンオン、キャベス、レタツ。進行方向にはナタル等がいるはずだが、気はまだ感じない。1秒で1万キロ以上進んでいるからな。3分後に到着とあるが、距離はかなり遠い。残り1分くらいになったら気付くかな?
フリーザの気はどうだろう。
「ん? ……え? ええっ? あ、ああ。うん」
や、やばいな。めちゃくちゃデカいのが凄い勢いで動いている。あれで初期状態の53万なのだろうか。最終形態はどうなってしまうんだ。ゴールデンフリーザは考えたくもない。
まあ、方向は完全にずれているがな。あいつは惑星ベジータに向かっているのだろう。よかった。バレていないようだ。
ん? 何か別の気が近づいてきているぞ。後方からだ。
これは、覚えのある気。着地場のエリートサイヤ人のものだ!
なぜ俺を追ってきた? フリーザの裏切りに気付いた? それともフリーザの命令に従ってやってきた? だとしたら面倒だな。
ん? サイハクの気まであるぞ。つーことは、やっぱり裏切りに気付いたのか? だとしたら俺の後を追うのは止めてほしいのだが。分散して逃げた方が確実性が上がるくらい、やつらにも分かりそうなもんだがなあ。
俺はリモコンを取り出し、アズラエルに連絡を取る。
「アズラエル、変なのがついて来ちまった」
「起きたのですか。ええ、こちらのレーダーでも捉えていますよ。戦闘になりますか?」
いつの間にそんな高性能なレーダーができたんだ?
「なるかもな。念のため方舟は隠しておけ。それと、俺の近くにある3つのポッドは女サイヤ人だ。妻にするために拾ってきた」
「女? 妻? というより、その3つのポッドが敵だと思っていたのですが」
「なんだ。やっぱり高性能レーダーはできていなかったか」
俺のポッドは俺が座標を送ったから気付くのは当然だけど。
「俺の後ろにサイヤ人達がぞろぞろ来てるんだよ。到着しそうになってこっちのスピードは落としてるから、相対的にやつらは急激に近づいてきている。箱舟の接触ポイントはズラすべきだな。戦闘に巻き込まれる可能性がある」
「先にブリッツを射出させておきます。パイロットはクルーゼとバジルール中尉です」
「俺の宇宙服も入れておいてくれよ。ポッドでは戦いにくい」
「いいですけど、あなたの妻候補とやらの分は難しいですよ。バジルール中尉に説明したくありません」
「まあいいさ。俺だけでなんとかできる相手だ」
分かっていたが、戦闘が終わってからも修羅場が来そうだな。だが、それを楽しんでこそ男!
しらばくして、一瞬ナタルの気が高まり、方舟の場所を知った。指定ポイントからややズレている。ポッドのリモコンで彼女に通信を入れる。
「先に来ている4つのポッドは俺と仲間のサイヤ人だ。相手にしなくていい。その奥の気は感じるか?」
「はい! 複数の巨大な気を感じます! これがサイヤ人、なのですね!」
ナタルの声に怯えを感じる。俺にとってはやや面倒な格下だが、彼女にとっては確かにどうしようもない相手だろう。ブリッツを使えばかなり戦えると思うがな。特に宇宙空間では。
「ちなみにフリーザの気は感じるか?」
「はい、ずっと遠くに、それらしきものは。しかし、一瞬触れただけで、底なしの溝に落ちたような感覚になってしまいましたよ。思い出したくもありません。今は感知能力を落としています。クルーゼは逆に、高めているようですが」
なんだそれ。Mか?
「あいつうれしそうだったか?」
「それもあまり思い出したくありませんが、気味の悪い笑みでした」
「そうか」
まあ生きがいを感じてくれたなら、連れて来た意味があったというもの。フリーザは惑星に向かってるから、強いて戦う必要はないんだけどね。
ん? 待てよ。1つ、近づいて来てないか! 大きい気が! フリーザの方向から! い、いや。近づいては無いかもしれない? 止まっているようだ。よく分からない。
まあいい。とりあえずサイヤ人の相手をするか。
ナタルが再び気を高め、俺に位置を教える。おそらくミラージュコロイドが無ければ視認できる距離にいた。丸ポッドも相対的にほぼ静止している。
座標を微調整し、ナタルの10mくらい手前に移動する。オンオン達の丸ポッドは俺達を通り過ぎ、3キロ程度離れて停止した。
不意に目の前の空間が揺らぐ。ミラージュコロイドの揺らめき。それが収まる頃には、白い宇宙服がポツンと浮いていた。
丸ポッドを一瞬開け、宇宙服を掴み引っ張り、再び閉じる。サイヤ人だからできる芸当だ。
それから急いで着替え、丸ポッドから出る。
もうサイヤ人達は来ていた。丸ポッドかと思ったら、どこかで見たような大きな宇宙船でやってきていた。
「あれ欲しいな。無理かもしれないが」
フリーザ軍の宇宙船は位置を知らせる発信機が付いている。拾ってもそれを取り除けなければ、捨てるしかない。なんせすぐ近くにフリーザがいるのだから。データとか部品とかはもらってもいいけどね。
ふと、やつらの船の底の一部が開き、空気が漏れる。それに流されるように、ゾロゾロとサイヤ人が出てきた。
話し合うか? だがどうやって? いくら俺でも、不意打ちで宇宙服を壊されてはたまらん。あの宇宙船の中なら、空気があるからある程度安心できるが。
なんて思っていると、サイヤ人達の気が高まった。これは明確に戦闘の意志!
「ハラベコ大尉! 戦闘許可を!」
「いいぞ!」
俺が応じるのと、やつらが気弾を放ってくるのはほぼ同時だった。
30人くらいで一斉に放った気弾の嵐。宇宙服のことを考えると一発でも食らえば非常に危険。これは肝が冷える。
上下左右に大きく逃げる。しかしそれを見越して放ってくる気弾も多くある。このまま逃げ続けるのは辛い。
ふと、攻撃が弱まった。ブリッツのビームライフルで何人かやられ、それに驚いて攻撃を止めてしまったようだ。
「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」
この隙に俺からも気弾を撃ちまくる。雑魚たちがどんどん消えていく。
ん? この感じは?
「しまった! 大猿化か! どこだ!」
エネルギーボールを探す。しかし気弾が迫ってきて邪魔される。
というかあいつらの宇宙服ぶっ壊れないのか? それとも戦闘服の材質でできた宇宙服があるのか?
「ハラべコ大尉! 尻尾を切ればいいのでしたよね!」
「あ、ああ」
だが、あまり戦闘力に開きがあるとそれも難しい。いや、ブリッツなら問題無いか?
「ナタル! 俺が気を引く! どんどん尻尾を切っちゃってくれ!」
という間にも、大猿化したサイヤ人達が巨大な気弾な放ってきた。口からでは無く、手から。どうやって呼吸するのかと思ったら、あいつら息を止めてやがる。無茶苦茶だな。皮膚の蒸発とかは、気で押さえているのだろうが。
迫りくる気弾。さっきよりずっと速くてずっと大きい。やばいな。壁が欲しい。
「くっ」
俺は大猿の中でも雑魚に突っ込み、そいつを壁にして他の攻撃の角度を失くす。
この大猿は俺の全力の気より少し下。息を止めたままだからか動きは鈍い。俺も宇宙服で制限はあるが、差し引きやや俺に分がある。
この状態で、避けることに集中する。拳、膝、尻尾。やや大きめに躱していく。だが、時間を稼ぐだけでいいんだ。ナタルが尻尾を切っているし、息を止めているこいつらはやがて動けなくなる。
ん? 四方でデカい気が高まっている!? やばいぞ! あいつらこいつごと俺を撃つ気だ!
慌てて上方へ飛び出す。すぐ下を特大の気功波が突き抜けていく。大猿は爆散。
しかし、この俺の動きを見切っていたやつが1人いやがった。宇宙船を守るように突っ立っている最も気が高い大猿。
目の前に迫る巨大な気功波。これは避けきれん。
「ナタルうううう! 急いで俺を回収してくれえええ!」
叫びながら気功波を放つ。気功波の押し合いになるが、明らかに俺の分が悪い。
やがてフッと相手の気功波が弱まった。ナタルが大猿の尻尾を切ったらしい。しかし俺の気も尽き、相手の気功波にのみ込まれる。
「スーッ」
大きく息を吸い、痛みに備える。
来た! 全身をダンプカーで何度も何度も突き飛ばされるような衝撃! 地獄の窯で焼かれるような熱!
く、苦しい。痛い痛い痛い。
痛みに発狂しそうになる。思わず空気が漏れる。しかしすぐさまそれを止める。理性ではなく生存本能で反応できた。
俺は気功波に乗せられ、遥か彼方へ飛ばされていく。これではブリッツでは追いつけない。
「くっ」
痛みと息苦しさに耐えながら、最後の力を振り絞って特大の気功波から脱出する。
だがこれで完全に気は尽きた。やばい。死にそう。ナタルううー! 早く来てくれえええー!
ガン、と何かに当たって動きが止まった。すぐさま誰かに体を掴まれ、引っ張られた。
むにゅっ。
顔が柔らかい何かに包まれる。
「情けないですわよ! 私の夫になろうという方が!」
「お、オンオン様……」
感動のあまり様をつけてしまった。しかし助かった。
柔らかい女の体に意識を取られながらも、敵の気配を探る。大猿らしき反応はない。全て尻尾を切り落とし終えたのだろうか? 優秀なやつだ。クルーゼも手伝ったのかもしれないな。だが、小さくなってからの方が、MSには辛いかもしれない。アムロも生身のシャアには当てられず、『モビルスーツなら人じゃないんだ』とか言って憂さ晴らしにモビルスーツを蹴散らしてたしな。
俺が行くか。
「ゴホッ」
動こうとしたら、咳が出た。しかも血を吐いた。
いや、これは口を切ったり鼻血だったりを吐いた物なのだが、とても不安になった。そもそも気がほとんど残ってないし。
逃げた方がいいかもしれないな。
リモコンでナタルに通信をつなぐ。
「ナタル、相手の宇宙船を適当に壊して方舟に帰艦しろ」
「だ、大丈夫なのですか!」
ああ、俺を回収させるために呼んだのだったか。記憶が飛んでいたよ。
「ああ、仲間のおかげで助かった。俺は丸ポッドで箱舟に帰る。お前もやつらの船を動けなくしてから帰艦しろ。完全に破壊し尽くす必要はない。利用できるかもしれないからな」
「了解です!」
よし。これで逃げることはできるだろう。初めからこうすればよかったかもしれないな。まああいつらが敵か味方か分からんうちに攻撃するのは躊躇われたが。
「逃げるのですの? 今の声はお仲間?」
「ああ」
「どうやってゴーボウ等の尻尾を切りましたの?」
「隠れて近づく技術があるんだ。俺達が乗る予定の船もその技術で近くに隠れている。もっとも、宇宙空間の戦闘区域外での近くだから、視認できるかどうかの距離だがな」
説明しながら、キャベスとレタツの気を探る。あいつらも連れて行ってやらんとな。
「大猿化を解かれたサイヤ人達は一斉に宇宙船に向かっています。胸や喉を押さえています。空気を欲しているのでしょう。戦闘の余裕はないと思われます。では攻撃開始します」
「ああ、やれ」
「はい!」
ドアの外を眺める。
宇宙船付近に突如ビームサーベルの細長い閃光が現れ、宇宙船に切りかかる。
ナタルめ、真っ二つにしようとしているな。利用すると言ったのに。まあ、どの程度壊せば動かなくなるかなんて俺にも分からないから、仕方ないっちゃ仕方ないが。
「あの船の中にレタツとキャベスがいらしてよ」
「えっ、どういうことだ!?」
た、確かに船の辺りに姉妹の気を感じる。何故?
ああ、船のエンジンか何かが爆発した。貴重な女体が逝ってしまう。
「まあ、彼女達はポッドのリモコンを持ってらっしゃるでしょうから、ポッドが壊されていない限り助かると思いますが」
た、確かにな。というか俺も俺のポッドがあったな。ナタルに助けを求める前にリモコンを動かすべきだったぜ。
船は木端微塵になり、デブリが散らばる。中にいた多くのサイヤ人は空気を求めて右往左往する。その顔に浮かぶのは絶望と怒り。
俺達は姉妹を回収する、俺が気を探ってオンオンがポッドを動かす。まずはレタツから。
一瞬で彼女の近くに移動する。彼女は、割と冷静な顔でポッドを呼び、笑顔で中に入っていく。
「あなたより賢いですわね」
いや、俺には戦闘のダメージがあったから。
レタツのポッドに、空気に飢えたサイヤ人達が群がって行く。レタツのポッドは逃げるように後方へ飛び出した。
もう大丈夫だろう。後はキャベスだな。まあ妹があれなら姉は安心だろうけど。
オンオンに指示し、キャベスの下へ急ぐ。
彼女は宇宙船の残骸の中にいた。一室丸ごと無事だったので、空気の心配をしなくていいようだ。ただし、同じ部屋にサイハクの気配がある。
残骸にちょこんと触れて、お肌の触れ合い回線で中の会話を聞くことにする。
「お前はバカか! なぜフリーザのことなんざ信じてやがる!」
「君だって! どうして僕よりあんなわけの分からない男のことを!」
「べ、別に信じたわけじゃねえよ! 発信機の付いていない宇宙船で逃げるっつー発想は悪くないと思っただけだ。その宇宙船だって、私は隙を見て奪うつもりだった」
そうだったの? まあ女サイヤ人の心を簡単に縛れるとは思ってなかったけど。
「だが、そんなバカげたことをする必要はない! フリーザ様は私達を高く評価しておられるんだ! このまま星に帰れば、もっといい生活を送れるようになる!」
「バカげてるのはてめえだ! 胸糞悪いフリーザなんぞに尻尾振ってにやにやしてんじゃねえ!」
「なんだって! そんなつもりはない! フリーザ様とはあくまでビジネスの関係だ! 僕はただ、母星で君達と一緒に穏やかに過ごしたいだけなのに!」
「腑抜けが! 付き合い切れねえぜ!」
「ま、待て! どこに行くんだ! 宇宙空間に出たって死ぬだけだ! ぐっ」
そこで大きな振動があって、ポッドは宇宙船の残骸から離れる。当然会話も聞こえなくなる。
程なく、残骸のドア開き、中からキャベスが出てくる。彼女はポケットをまさぐりリモコンを手に取り、ポッドを呼ぶような動作をする。しかしポッドはやってこなかった。爆発か何かで壊れたのだろう。
途端に慌てるキャベス。オンオンは楽しげに笑う。
「ふふっ、このまま眺めるのもおもしろいですけど、自暴自棄になって暴れられたら困りますからね。そろそろ助けてあげましょう」
オンオンのポッドを彼女に近づけつつ、普段使っているのとは別のリモコンで俺のポッドを呼ぶ。
キャベスは笑顔で俺達のポッドに近づいてきた。自分のポッドだと思ったのだろう。しかし先客がいることに気付くと、途端に眉間を険しくした。ポッドをその彼女に接触させ、説明する。
「俺のポッドが近くにあるはずだ。そっちに乗ればいい」
そうして彼女は俺のポッドに乗った。
その後レタツを回収し、方舟に帰艦した。