※この作品はR-18です。

ドラゴンボール超H   作:ドラゴンボール超記念

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恐怖の宇宙船

 ミラージュコロイドによって方舟の全容は知れない。ハッチが開き、そこだけ見えている。

 俺達のポッドを先頭に、ほぼ同時に3つのポッドが着艦する。地球人達はアズラエルを先頭に、その他は彼の後ろで横一列になっていた。

 

「ゴホッ、死にかけたぜ」

 

 血まみれの俺がポッドから出る。

 

「ひいっ、お、お兄さん!」

「大丈夫なのか!」

 

 フレイとサイが叫ぶ。他の連中も驚愕していたが、不意にざわめきは納まった。

 彼等の視線は女サイヤ人達に注がれている。アズラエルはにやにや笑っている。後で殺されても知らんぞ。

 

「ふーん。まあまあ清潔だな」

「お、驚いた! ハラベコ様のお仲間って、私達そっくりじゃないですか!」

「チッ、みっともなく叫んでんじゃねえよ」

「ひっ、痛い痛い痛い痛いっ。ごめんなさい。ごめんごめんごめん」

 

 キャベスがレタツの頭をわし掴みし、放す。地球人にとっては今の攻撃的な行動の方が不愉快に映るのは言うまでもない。

 

「ゴホッ。言わずとも分かるだろうが、彼女達は俺と同じサイヤ人だ。この船に乗せることにした。と言っても無理矢理連れて来たようなものだからな。理由があれば共闘するだろうが、完全な仲間というわけではない」

「えっ」

「ほう」

 

 フレイ達が少し怯えた顔になる。キャベスは満足げな表情だ。

 

「そいつの言う通りだ。私達、いや、少なくとも私はお前達と慣れ合うつもりはない。ただ、この船は貴重だからな。別の星に辿り着くまではこの船のために戦ってやる」

 

 キャベスは脅すように気をフレイ達に当てつける。フレイ達はさらに恐怖を煽られ、キャベスは満足げに口端を歪める。

 

「私は下級戦闘員のように非効率的なことは好みませんからね。積極的に情報のやり取りをしてよろしくてよ」

 

 今度はオンオンが前に出て、貴族っぽく優雅に礼をする。サイヤ人にこのような慣習は無いはずだ。たぶん別惑星の住人に育てられたのだろう。俺と同じで赤子の頃に別惑星に送られたのかもしれないな。

 

「お前も何か言ったらどうだ?」

「ひっ、わ、私ですか!? 私は、ええーっと、名前はレタツです! 歳は14! サイヤ人の女の子です! 痛いッ」

「自分で女の子とか言ってんじゃねえよ」

「ごご、ごめんなさい。もう言わないから。ひいっ」

 

 そんな感じで軽く挨拶を交えた。地球側は人数が多いのでアズラエルとナタルだけ挨拶する。

 

「ところで、フリーザの野郎は惑星ベジータに向かったんだが、一部この船を監視していることには気付いているか?」

「なんだって!? なぜそれを早く言わなかった!」

 

 アズラエルが怒鳴る。知らなかったらしい。オンオンも俺の近くで驚いている。

 

「一番強いやつの気は、俺の全力の半分くらいだ。だが、今の俺はあまり戦力にならない。ゴホッ。ここのオンオンを中心に戦ってもらうことになると思う」

「私が?」

「ああ、頼む」

「それは、かまいませんが」

「それと教えて欲しいんだが、やつらのスカウターのレーダーとしての有効な距離はどのくらいだ? 戦闘力によって変わるのか?」

「なぜそのようなことを? 有効な距離は、厳密なところは分かりませんが、惑星と月の間くらいではないですか? もっとも、それは1万を超えるような戦闘力の場合で、そこの下級戦闘員の妹や、もっと弱いだろうあなたのお仲間では惑星中が限界でしょうけど」

 

 なるほど。だがフリーザ軍のデータには、直接行ったことがない星の住人の戦闘力が記録してあった。つまり外惑星の住人の戦闘力すら計ることが出来る装置が存在することになる。それをフリーザの宇宙船に積んでいるかどうかが問題だ。積んでいれば逃げるのはとても難しくなる。

 

「やつらの宇宙船に戦闘力を計測するレーダーがあるだろう。それの有効距離は分かるか?」

「宇宙船のレーダー? それはちょっと、あまり覚えがありませんわね。しかし推測することはできますわよ。星の掃除を終えた私が迎えを待っている時に、生き残りの戦闘力を見つけたから殺しに行けと指示を受けたことがあります。あれは確か、迎えの到着の1日前だったような」

 

 なるほど1日か。だがフリーザは最新の宇宙船に乗っているはずだから、宇宙船で一週間くらいの距離と見積もった方がいいかもしれないな。ただし、戦闘力が低ければより見つかりにくいはずだ。地球人のように10を下回っていればなおのこと。

 

「俺が思うに、今ここを見張っている宇宙船は、おそらく地球人の戦闘力すら捉えられる。だから戦うしかない。だが、フリーザの乗っている宇宙船はたぶん地球人の気は感じられない距離にある。だから俺達サイヤ人さえ気を押さえればやり過ごせる」

「気というのは戦闘力のことですわよね? 私達もあなたのように下げられるものなのですか?」

「自力でそうできればいいが、できないのならエネルギー弾か何かで気を空っぽにしてもらう。その上でコールドスリープしておけば大分下がるだろう」

「なるほど。しかし賭けですわよ。フリーザの宇宙船が本当に私達を見つけられないかどうか」

「確実なことなんてないさ」

 

 まあ本当にいざとなったら、戦闘力をゼロにできない人以外は死んでもらえばいいけど。そんなことは口に出せないけどね。

 

「いいでしょう。ハラベコ大尉の案で作戦を決めていきましょう。そちらのお嬢さん2人は戦力と考えて、いっ?」

 

 アズラエルがキャベスをお嬢さんと呼んでしまったので、キャベスがアズラエルを思いっきり睨んだ。

 

「ええーっと、レディ2人? うぐぅっ」

 

 キャベスは一瞬でアズラエルの近くに移動し、ミシミシと肩を掴んだ。

 

「戦士だ。戦士と呼んでやれ」

「下級戦闘員の娘で十分ですわ」

「ええーっと、戦士2人は、どの程度戦力になると考えてよろしいので?」

 

 アズラエルが言い直すとキャベスはスッと手を離し、興味なさげに丸ポッドの方へ戻って行く。

 

「あの方には協調性というものがありませんからね。1人で勝手に戦わせるか、この船でお留守番かしかできないでしょう」

「あん?」

「ゴホッ。1人キャベスの戦闘力を大きく超えるやつがいるから、お留守番だな。攻めるのは俺、オンオン、ナタル、とクルーゼでいいだろう」

 

 というかクルーゼってこっちの指示聞いてくれるのか?

 

「ナタル、クルーゼという方は?」

「そこの女がナタルだ。戦闘力はサイヤ人に大分劣るが、気の扱いが上手い。それにブリッツというロボットを扱う。こいつは完全に光情報を遮断する優れものだ。攻撃力はさほどでもないが、ロボットの攻撃に彼女の気を纏わせれば、さっきの宇宙船をぶった切ったくらいの攻撃はできる」

「なるほど。あなた方の技術力というのも侮れないものですわね。クルーゼという方は?」

「それが見当たらないんだが、どこにいるんだ?」

「彼は宇宙船を失ったサイヤ人達と律儀に戦っていますよ。落ち着いたらデブリの中から使えそうな機械を持って来るよう命じています」

 

 アズラエルが答える。

 あいつそんなことしていたのか。サイヤ人並の戦闘狂だな。もしくは死に逝く者への手向けだろうか。戦闘はさすがに終わっているだろう。サイヤ人とは言え戦いながらではもう息が持つまい。

 

「着艦許可をいただきたいんだが」

 

 不意にアズラエルのリモコンが鳴った。そのクルーゼが帰って来たようだ。

 

 クルーゼは一部屋丸ごとという大きな物から、パソコンらしき物や家具らしき物まで持ってきていた。

 

「これは、治療ポッドですわね。割れてしまっていますが」

 

 おおっ、貴重なアイテムだ。割れちゃって中の培養液らしき何かは出ちゃってるけど。使えるのだろうか。

 

 宝探しの楽しみは後にして、もう一度きちんとした作戦を練ることにする。俺は体力回復のために点滴を付けて、さらに食事をしながらだ。

 オンオンが敵の行動予想を話す。

 

「向こうはハラベコさんの戦闘力の変化に気付いているはずですわ。その最大値が彼等を上回ることも。ですから正面からまともに戦ってくることはありません。よほどのおバカさんでない限りですけれどね。私が思うに、やつらはいの一番にこの船を狙ってきます。サイヤ人は宇宙空間で生きられませんからね。そして、船対船になった場合、おそらくあちらの方が遥かに分がある」

「まあそうだろう。じゃあこっちから突っ込むのか?」

「そうですけど、ハラべコさんは残っていただきたいのですわ。私も残ります。ブリッツだけで攻めるべきですわ。やつらが完全に油断しているところを叩き、まず船を壊してしまうのです。そうすればやつらの移動スピードは格段に落ちます。こちらの船の守りが簡単になりわすわ。ただし、それでも船を守ることが第一。ハラベコさんはこちらに残っていてくださいまし。私だけで攻めます」

「勝てるのか?」

「大猿化すればあなたより私の方が強いのですよ?」

 

 言われてみれば確かにな。じゃあ楽勝か。

 

「下級戦闘員の尻尾は切っておいてくださいな。暴れられたらたまりませんわ」

「分かった」

「もう切っている! さっきの戦闘で大猿化しかけた時にな!」

 

 なんだ。手間が省けたな。

 

 ――その頃、ザーボンの宇宙船――

 

「対象の戦闘力、現在、220です」

「こ、故障だったんだ。41000なんて」

「大猿化したわけでもないしな。ははっ」

 

 モニターを眺めるオペレーター等が乾いた笑みを漏らす。ザーボンは、ガン、とそのうち1人の頭を小突いた。

 

「いてっ」

「貴様等の目は節穴か? 3万の大猿に対し優位に戦い、11万の大猿のエネルギー波を受けて生き残っている。4万という数字に偽りがない何よりの証拠だろう」

「し、しかし。それでは勝ち目が。ひいっ」

 

 ザーボンは弱音を吐いたオペレーターの口を掴み、持ち上げた。

 

「逃げることは許されん。フリーザ様の期待を裏切るわけにはいかんからな」

 

 ザーボンはパッと掴んでいた手を放す。

 

「ゴホッ、ゴホッ」

「やつらは所詮猿だ。宇宙では生き残れんから、船さえ壊せばこちらのもの。ならばこれは、力では無く戦術の戦いとなる」

 

 その時、ザーボンのスカウターに通信が入った。サイハクからだった。

 

「あいつめ、まだ生きていやがったか。悪運の強いやつ」

 

 ザーボンは手で部下に黙るように指示する。

 

「どうした? 何があった?」

「ザーボンさん申し訳ありません。あと一歩のところまで追いつめたのですが、やつを逃がしてしまいました。妙な技を使って来たのです」

「ほう?」

「突然です! 本当に突然、どこからともなく光の刃が現れ、我々の尻尾を切って行ったのです! その攻撃で我々の船も破壊され、現在身動きが取れない状態に」

「そうか。それは災難だったな」

 

 ザーボンの宇宙船は複数の弱い気を捉えており、伏兵がいることは知っている。今の言葉はそいつらの技のことだろうと思った。

 また、サイハクが人質と言った女達のうち少なくとも一人は、男側についたことにも気づいていた。それらを加味すると、少し分が悪い気もしていた。男に尻尾がないことは確認済みだが、女には尻尾がある。7500の女が大猿化すれば7万5000。ザーボンも恐怖を感じるレベルだ。

 その不安から、切り捨てたはずのコマをもう一度使うことにした。

 

「いいだろう。我々の宇宙船で貴様を拾ってやろう。ただし、その分戦ってもらうぞ」

「ありがとうございます! 精一杯頑張ります!」

 

 ザーボンの宇宙船はサイハクの下へ移動する。それが契機となった。

 

 ――方舟の格納庫――

 

「動いた! やつらこっちに近づいてきているぞ!」

「少し角度が違うな。なぜだ?」

「とりあえず発進でいいでしょう。ハッチを開けてください」

 

 ハッチが開き、ブリッツが飛び出していく。その後を戦闘服の上に宇宙服を着た俺、オンオン、キャベス、レタツ、さらにはレイと三馬鹿の乗る作業用モビルスーツが続く。戦闘能力はほぼ無いが、壁にはなるだろうということだ。三馬鹿はともかくレイは少年なので出来る限り生かしてやりたいと思う。

 

「分かったぞ! やつらサイハクの元に向かってるんだ!」

「サイハク? 誰です?」

 

 アズラエルが尋ねてくる。俺はオープンチャンネルで全員に聞こえるようにする。

 

「やつらはサイハクという若いサイヤ人に接近している! おそらく利用するためだ! 俺より弱いが大猿化すればかなり厄介な相手だ!」

「まずいですわね! 私が向かいます!」

「いや、間に合わん! ポッドでも無理だ! あと数秒で接触する!」

 

 サイハクが大猿化してしまったら、相手できるのはオンオンだけだ。俺は2万くらいのやつの相手をしなければならないだろうな。体調だけが心配だ。

 まあ、ブリッツが尻尾を切ってくれるまで耐えればいいだけだが。

 

 やつらの気がサイハクの付近で停止する。やはりサイハクを利用するようだ。

 しばらく静止した後、急激にこちらに向かってくる。

 

「今度こそ来たぞ! 速い! 俺が撃つ方向に撃ちまくれ! 弾膜を張るんだ! だりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」

 

 連続で気弾を放つ。それほど気は込めておらず、躱させて正面からの接近を防ぐのが目的だ。あわよくば当たって欲しいが、1万キロを超える距離でこの加速度相手には当たらないだろう。

 遠くで白い閃光がいくつも上がる。ミサイルか何かに気弾が当たったのだろう。

 

「まずいっ!」

 

 ビームが複数飛んできた。俺は射線上に体を入れる。

 

「だりゃあああ! だらららら!」

 

 両手で片っ端から弾いていく。速いが、さしたる威力ではない。

 

「はっ、せいっ」

「ふんっ、おりゃあ!」

「うりゃあっ。いぎっ!? いってえええええ!」

 

 女達も守ってくれている。しかしギリギリだな。4人いてよかった。

 三馬鹿は当然のように反応できていない。レイは俺達の邪魔にならないように後ろで守っている。

 

「来た!」

 

 敵の宇宙船が小さな点として見えた。と思った時には真横に来ていた。思わずゾッとする。そう感じた時には通り過ぎていた。

 めちゃくちゃ速い。こりゃあ簡単には当てられんぞ。

 

「ナタル、当てられるか?」

「正直、とても厳しいです」

「クルーゼは?」

 

 返事は無かった。しかしやつの気はその大きさからは考えられないほど広がり、この流域に浸透している感じがした。

 やつめ、信じられないくらい集中している。というか気も思ったよりデカい。100くらいあるんじゃないか? なぜここまで急激に増えた?

 

 と思っていると、やつらの気の動きがふと止まった。いや、違う。戦闘員だけ降りたんだ。宇宙船にも何人か乗っている!

 

「戦闘力2万のやつとサイハクが船を降りたぞ! だが宇宙船は旋回している! やつら挟み撃ちにする気だ!」

 

 こっちの戦力を別けた状態であのビームを防ぎ切れるか? だがサイハクと2万のやつを相手できるのは俺とオンオンだけだ。

 いや待て、だとしてもサイハク等が船の破壊を狙ってきたら絶対に防ぎきれん。どうする!?

 

「方舟を動かします! 戦闘員の方はハラベコさんとオンオンさんが相手をしてください! 他の全員で箱舟を守ります!」

 

 珍しいアズラエルからの指示。だが悪くない。向こうの戦闘員は方舟を追えないから、敵を宇宙船だけに絞れる。守りはその方が確実だ。

 初めてアズラエルが役に立ったな。

 

 ハッチが開き、急いでモビルスーツを回収していく。時間が足りないので3馬鹿は置き去りにし、キャベスとレタスは丸ポッドで移動することになった。

 久しぶりにミラージュコロイドが解かれ、方舟の全容が露わになる。

 そこで再びビームの雨。だが先ほどより大分数が少ない。俺とオンオンだけで楽に弾ける。

 

「うおりゃあああ!」

「はっ、ふんっ」

 

 向こうにとってはチャンスなのに、助かった。それとも砲身の熱やらエネルギー充填やらでもう最初みたいな攻撃はできないのかな?

 ん? 船の動きもずいぶん直線的で遅くなってるぞ。まさか故障したのか!? フリーザめ、安もん使ってやがったか!?

 

 ――その頃、ザーボン宇宙船――

 

「うえっ、ザーボンさん飛ばし過ぎだぜ。酔っちまった」

「腰いてぇ。俺たちゃ戦闘員じゃないんだぜ。あんな加速耐えられるかっつうの」

「俺なんて戦闘員として入隊したのに頭くらくらだぜ」

 

 艦橋ではオペレーター達がぐったりしていた。

 艦長はぜえぜえと息をしながら指示を飛ばす。

 

「右舷弾幕薄いよ! ごほぉっ。何やってんの! ぜえ、ぜえ」

「うう、撃ってますけど、眩暈があ」

「こっちは熱で撃てません! あと20秒!」

 

 そこで急にオペレーターの1人が叫ぶ。

 

「おい! 急に敵の船が現れたぞ! しかも逃げていく!」

「なんだと!? 追え! 追え! う、おええっ」

 

 艦長は体を張ってギャグを完成させてしまった。部下達は笑いをこらえるのに必死で、次の行動が遅れてしまった。

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