※この作品はR-18です。

ドラゴンボール超H   作:ドラゴンボール超記念

2 / 63
修行と地球の権力者

「次ページ? 何を言っている?」

「ただし、俺が教えるのは正体では無い。力だ。強くなりたければ俺の手を取れ。その代わり、多少金の融通をしてもらう」

「な、何をバカなことを! 着ぐるみ相手にそんな取引できるわけがないだろう!」

「だが、これはお前にとって唯一の機会だ。私でなければお前をコーディネーターより強くすることはできない」

「くううっ」

 

 歯を食いしばって目を左右に動かしている。迷ってるな。だが無理そうだ。少なくとも警備員が来るまでに決断はできそうにない。怪し過ぎるもんな。

 

「いいぞ! やってやる! 人質に取るつもりならもうやってるだろうしな!」

 

 え、乗るの? 夢見がち?

 

「決断早いな。お前出世するぞ」

「ビジネスで最も重要なのは一瞬の判断力なのさ」

 

 こいつよくこの状況ですらすら喋れるな。大物か。それともただのバカなのか。

 

「あ、あいつです!」

 

 警備員が早くも集まって来たようだ。銃も持っている。俺には効かないが。

 リモコンで宇宙船を呼び寄せる。一瞬でやってくる。

 

「うわっ! な、なんだ!」

 

 ドアを開け、青年の背中を押す。

 

「入れ」

「うわっ」

 

 そして俺も入り、警備員たちが何かを言っているのを無視し、西の拠点へ移動。

 一瞬で辿り着く。

 

「降りろ」

「うわっ」

 

 青年はどんくさく尻餅をついた。

 

「お前日本語は分かるか?」

「何? 何故だ? その前にどこだここは? まさか、日本、なんて言わないよな?」

「そのまさかさ」

「アンビリーバブル!」

 

 ダメだ。英語で話すのしんどい。

 

「とりあえず日本語分かるか?」

「僕は特別だから、多少はできるが。次は僕の質問に答えてくれるかい?」

 

 おお、理解できるのか。助かった。

 

「かまわない。ただし日本語で頼む」

「それはかまわないけど。ええと、そうだなあ。……きみってあれかい? 世間を騒がせた謎の飛行物体の主かい?」

「世間を騒がせた? 飛行物体? いや、知らないが」

「あれのことなんだけど」

 

 青年は丸いポッドを指差す。

 

「えっ、あれ知ってんの?」

 

 まさか他の宇宙人が来てるのか?

 

「10年くらい前にニュースになってたんだ。僕は興味があったから調べたことがあってね」

「10年前だって!?」

 

 あれか。俺がこの星に来たときか。確かに目立つだろうし、しばらくじっとしてたから、映像が撮られていてもおかしくはない。

 

「どうやら当たりみたいだね。君は何者なんだい?」

「うーむ」

 

 言っていい物かどうか。信用を得るためなら、いずれ必要かもしれないが。世界に知れ渡るのはよくないだろうから、躊躇するなあ。

 

「お前、秘密にできるか?」

「うん? 情報は財産だよ。僕にとってそれが有益なら誰にも言わないさ」

「なるほどな。……お前、盗聴器や場所が知られる類の物は、……身につけてるな。ミスったぜ」

 

 クソッ。携帯のGPSで拠点がバレた。面倒だけど移動しなくちゃならん。

 

「うーむ。俺の正体を知りたければ、俺の信頼を得ることだ。俺には望みがある。それはお前じゃなくとも金持ちなら叶えられることだ。ただ、お前が恩を売りやすそうな学生だったから助けたに過ぎん」

「で、その望みは?」

 

 おっ、話が早いな。

 

「俺は体を鍛えるのが好きでな。その効率を高めるために10倍以上の重力を出せる部屋が欲しい。後はバランスのいい食事だな。その他については、今はまだ話せない」

 

 スカウターを作って欲しいとか、宇宙船を改造してほしいとかな。

 

「なんだ。そんなことでいいのか。だったら宇宙飛行士の訓練施設に行けばいいじゃないか」

「いいやダメだ。既存の場所では俺の身体データを調べられてしまう。この着ぐるみもダメだろうし」

「なるほどね。隠しているのか。それにしてはさっきの行動は目立ちすぎていたけど」

「それくらいお前には期待しているんだ」

「へえ」

 

 なんだか嫌な感じの含み笑いだ。

 ……分かった。こいつ俺の弱みを探ってやがるな。生意気な。

 

「で、僕の見返りはなんだい? 君のように強くなれるとは思えないけど。僕は君と違ってナチュラルなんだ」

 

 ここの区分なら俺もナチュラルだが、無暗に情報は与えない方がいいだろう。

 

「お前でも今の俺程度なら強くなれる。DNAの問題じゃない。厳しい訓練と、これについての知識が必要なのさ」

 

 俺は手の平を付近の岩に向けて伸ばし、軽く気功波を放つ。

 気のエネルギーは岩に当たって爆発し、岩全体に大きく亀裂が入り、表面から50センチ程えぐれた。

 

「あっ……」

 

 青年は目と口を大きく空けて固まった。まあこうなるだろう。

 

「お前でもこれができるようになる。そうすればあんなやつら楽勝さ」

「は、は、はははははは! アーッハッハッハッハッハ!」

 

 びっくりした。急に大声で笑い出すから。驚き過ぎて壊れたか?

 

「ははははは。くくっ。すまないね。ぷくくっ。うれしくってさ。あの汚らわしいコーディ共を、この手でぶっ殺すことができると思うとさ」

 

 いきなり殺すとか、物騒だな。サイヤ人でもないのに。それだけ恨みが溜まってたのか。

 

「厳しい訓練になる。……そうだな。お前、大学はどれくらい休める?」

「休む? ……君が世間に正体を隠したいなら、僕を休ませない方がいいと思うけど」

「だが暇な時間だけ訓練させた場合、コーディ達に勝つまでどれくらいかかるか。気という概念を感覚で理解できれば、後は自分で高めることもできると思うが」

「気、というのはさっきの爆発したやつかい?」

「そうだ。お前に才能があれば1年くらいで出せるようになると思う」

「1年か。うーん。……僕から提案していいかい?」

「言ってみろ」

「自分で言うのもなんだけど、僕の家はかなりの資産家でね。軍部にもつながりがあって、コーディネーターを超える肉体を持つナチュラルの研究も行っているんだ」

「へえ。だが、軍部ではやはり情報が外に漏れる。俺はお前個人に設備を用意してもらいたいんだ。もしくは金を出せる知り合いを紹介する」

「まあ待ってよ。僕個人でも、たぶん出せると思う。重力って要するに円運動させればいいんだろう? 旧式の訓練施設をちょっと改造すれば、10倍の重力なんてすぐだし、安上がりだよ」

「お、じゃあ頼んでいいか?」

「うん。僕を鍛えるっていうのは、そんなに急いでくれなくていいよ。その代わり、僕以外に交渉を持ちかけないで欲しいんだ」

「なるほど。情報を独占したいのか」

「そうさ。君の目的にも合ってるだろう?」

「まあな」

 

 それからいくらか交渉を行った。

 重力室はやつの私有地に作り、特別に認めた人間以外立ち入り禁止とすること。俺やポッドのデータを得ようとしないこと。決まりを守らなかった人間を殺しても文句は言わないこと。俺に大西洋連邦住民のIDを与えること。俺に食事を提供すること。やつ以外の人間に俺の情報を話さないこと。私有地の外に出る場合は報告すること。やつのスケジュールに沿って気の使い方を教えること。等が決まった。

 

「ところでお前の名は?」

「僕を知らないで誘拐したのかい?」

「そうだ。適当に金持ちそうな学生を探した」

「ふう。思ったより考え無しなようだね。忠告だけどもう少し慎重に行動した方がいいよ」

「ありがたく受け取っておく」

「僕の名はムルタ・アズラエル。アズラエル財団の御曹司さ」

「俺はハラべコ。最強の無職を目指している」

 

 こうして俺は悟空よろしく修行ニートになる権利を得た。私有地云々は監視されているようで気に食わないが、やつも気功波のコツを掴む前に裏切るとは思えないので、それまでは深く考えず自分の修行に集中したい。

 

 その日軽く運動させてから、アズラエルは家に帰した。3日後、やつの私有地という山に呼ばれて行ってみると、巨大な倉庫に巨大な棒が2つ付けられその先に部屋があった。やはり遠心力系の重力発生装置だという。ただし宇宙飛行士の訓練用ではなく遊園地の遊具を改造したものだが。重力は2倍から14倍まで可能という。部屋が2つあるのは重心を取るためと、アズラエルも訓練できるようにするため。

 

「大学では無知を貫いたよ。君なんか知らない。ポッドなんて見てない。小さな着ぐるみの少年が優秀なコーディネーターより強いわけがない。つまらない冗談はよせってね」

「そうか。迷惑をかけたな」

 

 その日から、俺は毎日そこで修行した。アズラエルは夜と土日が主。ある程度体を鍛えなければ気功波は出ないが、やつは当然初期クリリン程の体力もないので、亀仙流は負荷が大きすぎる。しばらくは単純なダッシュや筋トレを繰り返してもらった。

 やつは相当俺のことを隠したいようで、料理を運んでくるバイト君すら中に入れさせない。俺の姿を見たようなら殺してくれて構わないとまで言った。また、月1で重力室のメンテに来るおっさんの弱みを握っており、おそらく外に漏らすくらいなら死を選ぶ、という状況だそうだ。物騒なことだ。俺にはそれくらいの価値がある、らしいが。

 

 疲れたら俺の気をわけてやることで、やつの訓練の効率化を図り、気の認識もさせた。アズラエルはだいたい1年くらいで運動部員の平均程度の肉体を手に入れた。プロ選手程度まではもう2年くらいかかりそうだ。

 アズラエルには根気が足りなかった。辛くなるとすぐにさぼった。そして口癖のように「僕の代わりに僕のおもちゃを鍛えてくれないか?」と言うのだ。そんな時俺は「思い出せ、苛められた日々を。痛みを。コーディ共の憎たらしい笑みを。金づるにされたんだろう? 気になる女を取られたんだろう? 本当は自分自身でやり返したいはずだ」と説得するのだ。そうすると「ふっ、そうだったね。僕としたことが忘れていた」とやる気を取り戻した。

 本当は恨みとか辛みとかの負のモチベーションより、体を動かすのが気持ちいいとか強くなるのがうれしいとか前向きなモチベーションの方がいい。だがやつに「いい汗かいて気持ちよくなっただろう?」と聞いても「そんなわけないだろう! 辛いだけだ!」と怒られるだけだったし、「体が動くようになっていくって楽しくないか?」と聞いても「ああ、楽しいね。これはカウントダウンなんだ。やつらが処刑されるまでのね」と負のスイッチが入ってしまった。今ではそういう性格なのだろうと割り切っている。

 

 俺の修行は順調だった。重力室で筋トレや殴る蹴るのシャドー。普段と同程度動けるようになったら重力を上げる、という手法でちょっとずつ重力を上げて行った。体重と同じ重りを付けながらだからか、惑星ベジータの重力に当たる10倍を克服するまで1年かかった。そこからは薄い空気で訓練するために、ガスマスクも付けた(アズラエルの毒殺が恐かったのもある)。さらに1年で14倍まで克服し、新たな装置を作ってもらえることになった。なお、アズラエルの前で着ぐるみを脱いだことは無い。テーマパーク等で10着盗んで入れ替え着ている。

 

 この間アズラエルは大学を卒業した。やり返す前にいじめっ子と別れてしまったのでちょっと申し訳ない。構わないと言ってくれたが。

 その代わり、やつのオモチャ(私兵)を鍛えてくれとしつこくせがまれた。俺の望む40倍50倍の重力室のためには、軽くて丈夫な素材を使いつつかなり巨大な装置が必要になる。やつとしても辛いくらいの出費になるそうだ。しかし俺がやつの私兵を鍛えるならば、ナチュラルによるコーディ打倒の研究費用を全て俺に回してもいい、とまで言ってくれた。さらに、今なら、その金を自由に使ってもいい。人事を動かしてもいい。私兵の指揮官にしてもいい。愛人を用意してもいい。と続く。

 ここだ! と思ったが、悟られないようにいくらか間を開ける。

 旅行してもいい。軍の研究施設を見せてもいい。

 

「ふっ、そこまで言うなら仕方ない。やってやる」

「本当かい! 契約破棄は認めないからね!」

「俺が契約を破ったことがあったか?」

 

 そもそも引きこもり修行ニートだしな。

 

 人事権を得たので汚らしい研究員を減らし、シュッとした女性は残した。どの道恋愛に発展しそうな女性はいなかったが。

 アズラエルの最も優秀な私兵とやらは、12歳から15歳くらいの頭の悪そうな少年達だった。それも天然とかドジとかではなく、暴れまくって言うことを聞かないタイプ。サイヤ人の劣化版みたいな。

 さらに、こいつらは捨て子で、IDも存在せず、殺しても問題ないそうだ。なんでそんな特殊なやつらの相手をせにゃならんのか。

 嫌な気分になりながら、亀仙流を教えることにした。

 

「まずこの重りをつけてもらう。ほら、巻いてくれ」

「おい、なんで着ぐるみ着たままなんだ? バッカなんじゃねえの?」

「ダッセー!」

 

 ウザすぎる。やる気が出るはずがない。

 

「お前みたいなガキに教えられることなんかねえよ」

「おい、反射神経鍛えるあれはやんねえのかよ。ゲームみたいで好きなんだ」

 

 ダメだ、サイヤ人の本能が殺せと言っている。勝手に気が充満してくる。

 

「くぅー、参った。殺さないよう我慢するのが精いっぱいだ」

「はあ? 何言ってんだ」

「ははははは! 脅してるつもりなんじゃねえか? 俺達の恐ろしさを知らないらしい」

「バカすぎるぜ!」

 

 殴りたい殴りたい殴りたい。

 

「それよりバスケしないか? うざい科学者共はいなくなったんだ。遊んでも多分ばれねえぜ」

「でもこいついるじゃん」

「構うもんかよ」

「もう面倒だしさ。こいつ俺達で倒しちゃわない? そしたら俺達の方が優秀って証明できるから、こいつの命令聞かなくても許されるんじゃないか?」

「それはやばくねえか?」

「いいぞ」

 

 もう我慢ならん。ボコボコにしてやろう。

 

「あ?」

「ほら、かかってこい。いや、俺から行くぞ」

「は?」

 

 その瞬間、やつらにはきっと消えたようにしか見えない速さで、アホ面Aの真下に移動。強烈なボディブローをお見舞いする。

 

「次はお前だ!」

「なにっ!」

 

 今度はかかんでローキック! めっちゃ痛いスネを強打してやった。

 

「あああああ! いたたたたっ!」

 

 そんな調子で次々のしていく。あっと言う間に全員地べたに転がった。

 いい気分だ。これでは訓練にならんがな。

 

 やつらが回復するのを待ってから、訓練再開。今度はある程度聞いてくれた。

 

「チッ、しゃあねえなあ」

「いつかお前より強くなって今日の借りを返してやる。覚えてやがれ」

 

 しかし亀仙流はけっこう厳しい。こいつらはアズラエルよりは体力があったが、根気がないのはアズラエルと同じだった。

 

「はあ。かったるい」

「喉乾いたぜ」

「筋肉プルプルだぜ。しんどお」

 

 俺はなぜ、生き残れるか否かがかかっている貴重な訓練時間をこんなことに割いているのか。腹が立ってしょうがなかった。

 そもそも気の訓練以外なら俺が面倒を見る必要はない。俺の代わりに亀仙流の指導ができる人物を見つけ、そいつに教えさせたいと思った。

 

 ここで俺はあしたのジョーの矢吹丈と青びょうたんの関係を思い出していた。ひょろい青びょうたんがおっちゃんの教えを受けてジョーを圧倒し、ジョーは拳法のガードの大切さを知る。これである。

 才能は大したことないが、真面目な人間を鍛え、そいつにこのカスたちを倒させる。そうしてプライドをズタズタにしつつ真面目に訓練するよう矯正するのだ。

 

 俺はこのことをアズラエルに伝えた。アズラエルは渋ったが、結局若い女軍人のリストを作ってくれた。この中から選べ、と。

 なんてご褒美! 気が利き過ぎる! と思いながら、一番美人だと思う女を選んだ。ナタル・バジルール。軍学校所属の18歳だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。