ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
ハラベコ等の読み通り、ザーボンの作戦は方舟を戦闘員と宇宙船で前後から挟撃するというものだった。初接触でハラベコ等はフリーザ軍の宇宙船から来るビームを4人で守るのが精いっぱいだったので、ここに自身等が加われば簡単に破壊できると彼は考えた。
しかし予想外なことに方舟はハラべコとオンオンを残して逃げた。ザーボンは一瞬呆気にとられたが、少し考えるとまだまだ自分等が遥かに優位であることに気付いた。
「バカめ! これでは放っておいても我々の勝ちだ! 最大戦力無しであの船を守り抜くことはできん!」
「そ、そうだ! バカだぜあいつら!」
「がーっはっはっは! やりましたねザーボン様!」
ザーボンの部下達が大笑いする。
ザーボンもしばらく満足げに笑むが、フッと真面目な顔つきに戻る。
「だが、より完璧な勝利を考えると、目の前のあいつらも殺してしまうべきだ」
「え? ははは、そんな必要ありませんぜ」
ザーボンは笑った部下の頭をそれなりに強く殴る。
「あがああっ!」
部下は無重力下で吹っ飛んでいく。
ザーボンは全部下にスカウターの通信をつなげる。
「聞け! 我々の目標は戦闘力を自在に変化させる男だ! 接触の段階でやつに総力を持って攻撃を仕掛ける! それでやつの宇宙服を破壊できれば我々の勝ちだ! サイハク! お前も大猿になって攻撃するのだ! 女サイヤ人にブルーツ波のエネルギーボール見られてもいい! むしろ見せろ!」
「はい! しかし、理由を聞いても?」
「貴様は女と戦いたくないのだろう? ならば大猿に変身させて窒息を待ち、後でゆっくり回収すればいい」
「な、なるほど! ありがとうございます! 私達サイヤ人のためにそうまでしていただけるとは……っ」
「言うな。当たり前のことをするだけだ。我々は仲間だからな」
「はいっ」
ザーボンは感動の師弟愛を演じながら、内心ほくそ笑んだ。
サイハクと女を大猿化させるのは、2人を手軽に殺すためである。窒息した彼等を助ける気など毛頭ない。
彼の筋書きはこう。初めザーボン等がハラべコに気弾を撃ちまくり、どうにか宇宙服を破壊する。女サイヤ人が邪魔するかもしれないが、戦闘力の数値を考えるとサイハクの気功波は防げない。いずれハラべコは撃墜される。
その後、ザーボンはサイハクに「女サイヤ人を押さえていてくれ! お前にしかできないことだ!」と言って部下を連れて戦場を離れる。宇宙船にも近くに来てもらう。そして、戦闘中か窒息中かの猿共を置き去りに、フリーザの下へ帰る。
こうしてザーボン側の被害をほぼゼロに、サイヤ人を全滅させることができるのだ!
サイハクを先頭に、ザーボン等が突っ込んでいく。
ハラベコ側は横に並んで突っ込んでいたが、不意に左右に別れ、弧を描くように、オンオンがサイハクに、ハラベコがザーボンに突っ込んでいく。
「弾けて混ざれ!」
サイハクのエネルギーボールでサイハクとオンオンが大猿化していく。
「今だ! 撃ちまくれえええ!」
ザーボンと部下達がハラベコ目がけて一斉にエネルギー弾や光線銃を放つ。
ハラべコは四方八方うねうねと動き躱していく。時には気功波を弾き、時には自ら気功波を出して相殺する。
「さすがに速い! だが戦闘力は徐々に落ちているぞ! 貴様等、撃ち続けろ! やつを休ませるな!」
ハラべコはひたすら防御に徹し、自ら攻撃しなかった。それだけの体力が残っていないからだ。オンオンがサイハクを倒すまで時間を稼ぐつもりだった。
しかし、逃げながらでも弾幕を減らす方法は知っていた。
「うわっ!」
「あっ、すまん」
「おいコラ! 危ねえだろ!」
ハラベコはザーボンの部下と部下の射線上に上手く移動して、同士討ちを狙う。
ザーボンはともかく、部下等は同士討ちの恐怖(特にザーボンの邪魔をして怒りを買ってしまう恐怖)で途端に動きが鈍くなる。
「チッ」
イライラして舌打ちするザーボン。しかしそこで特大のエネルギー波がハラベコを襲う。
「うおおっ」
ハラべコは事前に気付いて急停止した。回避は間に合ったが、スピードは失ってしまう。
「動きが止まったぞ! 今だ! 狙い撃て!」
再びザーボン等が一斉に気弾を放つ。
ハラベコの気は初めより下がっており、さらにスピードまで失っていたので、全てを回避するのは難しかった。
しかし、ハラベコには秘策があった。
危険な気功波を躱し、それでも避けきれない気弾は同等の気弾で相殺する。
気弾の爆発による閃光で視界が真っ白になる。しかしハラべコは気を感じられる。
こちらに向かっている弱い気功波を探す。
「こいつだ!」
ハラべコは、その弱い気功波にわざと接近し、当たる直前に後方に加速する。そしてスピードを気功波に合わせ、己の気をゼロに。
ザーボン等からは、気に当たって瀕死か絶命かしたように見えるはずだ。
この作戦を思いついたのは、先のサイヤ人との戦いで自身が気功波にのまれた後に、大猿がすぐさまいなくなったことを、方舟でナタルに尋ねた時だった。
ハラべコは優秀なナタルとクルーゼが瞬時に全ての尻尾を切り落としてしまったのだと思っていた。しかし事実は、リーダーのもの含めて3つくらいしか切り落とせていなかった段階で、勝手にサイヤ人が大猿化を解いたのだと言う。
「おそらく、やつらは気功波にのまれたハラベコ大尉が死んだか瀕死になったかと思い、戦闘をやめて船に空気を求めたのだと思います」
ナタルはそう言った。ハラベコはそうだったのかと納得しながら、死んだフリは使えるかもしれないなと思った。
そしてまさに今、その死んだフリを使ったのである!
「よし! やつはもう終わりだ! 仮に生きていたとしても宇宙服が壊れただろうから程なく死ぬ!」
「やったぜ!」
「よっしゃあああ!」
ザーボン等は見事引っかかり、喜びに沸いた。
そしてチラと大猿同士の闘いを見る。
「くっ、このっ」
「ふん! つえいっ!」
「ぐっ」
一方の大猿が明らかに他方を押していた。両者とも大猿で見た目に元の面影はないが、ザーボン等は戦闘力の違いからサイハクが押しているのだと思った。見た目では無く戦闘スタイルを見ていれば、オンオンが押していたことに気付けたかもしれない。
とかく、ザーボンは予定通り、サイハクに女サイヤ人を押さえるよう命じるつもりだった。しかしよく考えると、大猿になった時点でスカウターは顔から外れ、ザーボンの声は届かなかった。
そこでザーボンは部下に命じることにする。
「よし! 猿は猿に任せて我々はずらかるぞ! わはははは! 完璧な戦術の勝利だ! これが知性を装った猿と文化的生命体の違いというやつだ!」
ザーボンは部下を連れて一斉に飛び出す。サイヤ人の戦いなど気にも留めず、ひたすら戦闘区域から離れていった。大猿に対する恐怖が、彼の逃げる以外の選択肢を奪っていた。
そしてその頃、大猿の戦いが終息を迎える。
「ふんっ!」
「か、かはあっ。……うぐうっ!」
オンオンのショートアッパーがサイハクの鳩尾を捉え、サイハクは大きく息を吐き出してしまう。
「か、かひゅっ! か、か……!」
気付いた時にはもう遅い。サイハクは戦闘を取りやめ、空気を求めてザーボンの下へ逃げる。しかし飛び出した時、そのザーボンがどこにもいないことに気付いた。
「かひゅっ。かっ」
苦しみに顔を歪めながら、酸素を求める肉体に鞭打ち、気を振り絞る。
「くひゅっ」
気功波を上空に3度撃つ。これはフリーザ軍の救難信号を表す。
また、そうしながら己が作った大猿化パワーボールに気功波を打ち、かき消す。そしてオンオンに向かって両手を上げて、降参の意を示す。
オンオンは息を止めたままポケットをまさぐり、己のポッドを呼んでいた。しばらくして彼女の丸ポッドが到着する。
サイハクはにたあと笑って、オンオンの後ろからそれに乗ろうとする。
「い゛っ!」
しかし、蹴飛ばされた。ポッドはサイハクを置いて去って行く。
彼にとっては信じられないことだった。いくら敵対していたとは言え、同族であり、幼馴染でもある。それに、降参した相手なのに。
サイハクは絶望した。絶望しながら怒りと苦しみに包まれた。その巨大な怒りが契機となり、死と覚醒の狭間でサイハクの生命エネルギーは大きく揺れる。
ほんの僅かだけ、黄色のスパークの走った。しかしそれが極大、以降サイハクの生命エネルギーは落ち続け、程なく絶命した。
ザーボン等はスカウターで戦況を伺っていた。大猿の戦闘力をスカウターで見ると壊れてしまうので、30秒毎に1人ずつ計測してみて、人型になる時を待った。
2つのスカウターは壊れてしまったが、それ以後、人型になったサイヤ人の戦闘力は追えていた。しかし、サイハクが絶命の間際で覚醒しかけた時、彼の戦闘力はスカウターの限界を一気に振り切り、全てのスカウターを破壊してしまった。
ザーボン等は宇宙空間にぽつんと残されて迎えを待つことになってしまった。