ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
ナメック星だ
自力で戻れないナタルの作業ポッドとクルーゼのブリッツであったものを回収し、脱出する。
「ミラージュコロイド作動。方舟発進せよ」
フリーザはエネルギー波の直線上を移動している。よって直線から距離を取れば鉢合わせることはない。ミラージュコロイドによってさらに発見は困難になる。
「問題は戦闘力を計測する機械だ。やつの宇宙船なら精巧な計測器がついているだろう。どこまで逃げればいいのか」
俺はアズラエルに言う。技術屋以外はコントロールルームに集まっている。
「いいや、やつの宇宙船は先のすさまじいエネルギー波で滅んでおる。やつは1人でスカウターさえ付けずに突っ込んできておるだけじゃ」
不意に、どこからともなく知らない男の声が聞こえてきた。頭に直接響く感じだ。
というか、この間の抜けた声の感じは、まさか界王様?
「どなたかは存じませんが、フリーザを監視してくださっているのですか?」
俺は丁寧語で尋ねる。そのことにナタル等が驚く。アズラエルに対してさえ敬語は使っていないからな。
「うむ。そうじゃ。わしは界王じゃ。今回だけはお主等の味方をしてやる」
「ありがとうございます。では、フリーザがあとどれくらいでこちらに来るか教えていただけますでしょうか?」
「お安い御用じゃ。……お前達に理解できる言葉で言うと、約700秒じゃな。その船なら十分逃げ切れるじゃろう。いや待て、ドドリアというやつがフリーザに近づいて来ておる! そいつは宇宙戦に乗っておるぞ!」
「ドドリアが! その宇宙船が来るまでの時間はいくらでしょう?」
「うーむ……、2時間後くらいじゃな。フリーザよりは遥かに遅い」
「そうですか。ありがとうございます」
2時間か。念のために、サイヤ人の気は削っておいた方がいいかもしれないな。
「キャベス、レタツ、オンオン。お前達外に出て、限界まで気功波を撃ってきてくれ。それで戦闘力が下がればやつらに見つかる可能性も下がる」
「いいですわよ。撃つべき方向などはあります?」
「そうだな。フリーザからもザーボンからも見えないように俺が指示する方向に撃ってくれ」
「分かりましたわ」
「私も了解です」
キャベスからは返答が無かったが、不機嫌そうな顔で俺より早くハッチに向かい、出ていった。
俺が飛び立とうとすると、不意にラクスが近づいてきた。
「ハラベコさん、オルガさん達がいらっしゃいませんが」
「あっ」
完全に忘れていた。今から向かって間に合うだろうか? というかあの近くはザーボンがいるからあまり行きたくない。
「お前達がいつも使っているちっこいアタックボールでも寄こせばいいじゃろう。座標はわしが教えてやる」
「そうだアタックボール! あれには発信機が付いているから早く分解しないといけないのです!」
「ん? そうなのか? 困ったのう。銀河パトロールでも呼んでみようかの? よし、そうしよう」
銀河パトロール? 確か異星に送られたサイヤ人の赤子を殺して回っているとかいう卑劣な組織。まあ正義なのかもしれないが。
丸ポッド3つは技術者によって分解されていく。発信機は自爆装置とセットで付いており、これを取り除くのだけは俺が手伝った。手に気を纏い、瞬時に対象を引っこ抜き、手の中で爆発させるという形だ。そうして発信機を取り除かれた丸ポッドは急速に元通りに組み立てられていく。
俺達サイヤ人をコールドスリープで寝させる必要があった。戦闘力を下げて見つけにくくするというだけでなく、船の食料が持たないから。丸ポッドは3つしかないので誰か2人は相乗りとなる。体の大きさから俺とレタツが共になるのが妥当と思われたが、レタツが泣いて懇願するのでレタツとオンオンが共に乗ることになった。
ポッドを修理する間、怪我人達は医者に診てもらう。と言っても俺が最も重傷なのだが。そこら中に打撲と火傷があって骨折も数カ所。戦闘中は興奮でほとんど痛みを感じなかったが、落ち着くと大分苦しくなってきた。医者曰く、並の地球人なら動けない状態らしい。サイヤ人でよかった。
寝る前に一発とか思っていたが、けっこう重傷なので止めておく。戦闘力を上げてはならないって意味でも性交は危険だしな。トレーニングもできないから、本当にすることないな。食べて寝ておしゃべりするだけか。
お腹が空いたので食堂に向かった。大きなテーブルを若い連中が囲っていた。オンオン、レタツ、フレイ、サイ、レイ。ラクスとキラはいない。気を探ってみると、2人共キラの部屋にいた。今頃盛っているのだろう。
「あ! お兄さん聞きましたよ! オンオンさん達とは略奪愛だって! しかもいきなり複数!」
俺に気付いたフレイが怒ったように叫んだ。他のほぼ全員も俺を侮蔑か嫉妬するような目で見てくる。
いきなり面倒なことになったな。覚悟はしていたが。
「フレイ、お前には言っていなかったがな。俺は女好きなんだ」
「えっ……」
いかん、引かれた! 観念して正直に言ったのに!
「お前だって、目の前でイケメンが死にそうだったら助けるだろう? 複数いたらどうする? 全員連れてくるだろう?」
「そ、そんなこと! だって!」
フレイはジッとサイを見る。彼氏がいるから助けないと言いたいか? それは別の問題だろう。
「フレイなら死にそうな人がいたら助けるかもしれませんが、意中の相手と引き離すことはしないと思いますよ」
サイの野郎がフレイをかばいつつ反抗的なことを言ってきた。ここぞとばかりに狙いやがって。
「サイヤ人にとっては戦いが人生なんだ。女を取り合う戦いは最も神聖なものに分類される」
「複数の女を囲うのはタブーですけどね」
「くっ」
ダメだ。自分でも明らかに自分に非があると分かる。
だが、それでもと言いたい!
「あれだ。王族なら大丈夫なはずだ。男は俺しか残ってないから俺が王。王妃は複数。ちょうど絶滅の危機に扮していて一族復興って大義名分もあるしな」
本当はベジータ達が生きているがな。
「お兄さん、最低のこと言ってますよ」
「だいたいあなたサイヤ人として生きる気がないでしょう。思想も慣習も全く伝統的ではありませんわよ」
くうー、どうしろってんだ。苛めか。どいつもこいつもにやにや笑いやがって。ハメたろうかい!
「えーっと、あれだ! もういい! お前等好きに生きたらいい! 俺は気に入った女を誘う! おしまい!」
「終いじゃありませんわよ!」
「この船に逃げ場はありませんよ!」
俺が逃げようとすると、オンオンとフレイが飛び込んできて俺の左右の腕を捕まえた。
その腕が、ちょうど胸の間に挟まれる形になった。2人のきれいな顔もすぐそこ。ピンチなのにちょっとうれっしい。
「えーっと、待てよ。待てよ待てよ。じゃああれだ。結婚は1人じゃないとダメだが、突き合う(付き合う)人数は何人でもよくないか?」
「よくないですわ! 浮気です!」
「じゃ、じゃあ一回一回付き合い直す! 交際相手は同時期に1人とする! これならどうだ!」
地球のモテ男はだいたいこれをやってるよなあ(というかふつうに複数人と付き合っている)。許してくれるはず。
「不純ですわ!」
「女を舐めないでください!」
「だ、ダメなの?」
「ダメですわ!」
「1人に絞ってください!」
「だけどさ。それじゃあ、付き合うのと結婚するのは同じってことになるんじゃないか?」
「それでいいですわ!」
「それくらい真剣に付き合わないとダメなんですよ! 好きになった人とだけ付き合うんです!」
「くっ、むむっ」
この2人、モテるだろうし、服装はけっこう遊んでいる感じなのに、なぜこうまで硬派なんだ!
特にオンオン! あんな水着を着て、男を誘ってまくっておいて!
「わ、分かった。なら俺は付き合わないさ。女を拘束しない。遊びたい女と遊ぶことにする。体だけの関係だ」
モテ男は黙ってやってることなのに、何故口に出さなければならないのだろう。
「最低ですわ」
「最低ね」
「最低だ」
「最低だな」
食堂にいるほぼ全員が俺に侮蔑の表情を向け、同じことを言ってくる。
アズラエルは笑顔で拍手しながら「最低ですね」と言った。それに彼の愛人兼秘書が倣うという、どの口が状態である。
なぜか他の連中もアズラエルのように拍手をし始めた。エヴァの某『おめでとう』みたいだった。
俺は腹を空かせたままとぼとぼと個室に戻った。しばらくすると、ポッドが直ったと連絡があり、格納庫へ向かった。今回はまともな挨拶はなく、アズラエル達には笑われ、他からは軽蔑の目線を向けられながら長い眠りについた。
次に目覚めた時、方舟は緑色の惑星に引っ張られ始めたところだった。フリーザ達の気は感じない。上手く逃げ切れたようだ。よかった。
緑色の星には、あまり多くないが複数の気配を感じる。地球人ほどではないがどれもこれも小さくて、地球人よりおだやか。ナメック星人は普段気を押さえているからこんなものだろう。
続々とサイヤ人達が目覚めていく。すっかり仲良くなったフレイがオンオンに近づいていく。俺には業務的にナタルとアズラエルが近づいた。
「どうだい? ここがナメック星で違いないかい?」
「ああ、気の感じはたぶんそうだ。それに間違っていたって問題ない。気がとてもおだやかだ。戦闘になることはないだろう。宇宙共通語は習得しているか?」
「僕やナタルはね。でも技術者達は怪しいかな」
「学生達は?」
「フレイって子以外はなんとか意思疎通ぐらいならできると思うよ」
「そうか。まあ使っていれば嫌でも覚えるだろう」
そうして方舟はナメック星に降りていく。俺は腹が減っていたのでチューブ飯をゴクゴク飲んだ。食堂では、さすがに日が経っているので、あの時のような軽蔑の視線はなかったが、それ以前のような尊敬の眼差しも無かった。
失うものは大きかった。だが2度目の人生は正直に生きると決めている。これでよかったのだと思う。
何の問題も無くナメック星に着地する。方舟で空気をチェックする。異常なし。俺の指示で箱舟は近場の集落へ飛ぶ。村まで500mあたりの距離で再び着地する。
俺、ナタル、アズラエル、秘書達、アルスター事務次官、サイ、だけ降りる。残りはお留守番。オンオンにはキャベスの監視を頼んでおいた。
若いナメック星人達がぞろぞろ集まって来ていた。気を高めて戦闘態勢の者もいる。俺やキャベスの濁った気を警戒しているのだろうか。
事前に説明していたが、アズラエル等はナメック星人の見た目に面喰ったようだった。しかし一瞬で笑顔を繕った。俺は実写版ナメック星人を見れてちょっと感動する。やはりハリウッドとは違う。
「何者だ? この星に何のようだ?」
ガタイのいい若者が探るように聞いてくる。その視線は俺に向いている。気は下げているが、内に秘められた力をざっくり理解できているのだろう。そして俺が最も危険だと考えた。
初めの挨拶はアズラエルに任せることになっていた。よってアズラエルが答える。
「私は地球という星から来た地球人。こちらは惑星ベジータから来たサイヤ人です。我々は手を組んでいます。この星に来たのは交渉のためです」
「何の交渉だ?」
「大きくは2つあります。1つは対フリーザ軍を想定した何らかの協定を結ぶこと。もう1つは技術や情報のうちで教えていただけるものを教えていただくことです」
「協定? それは私の判断では不可能なことだ。しかしお前達のような怪しい者を揃って長老に会わせるわけにもいかん。……そうだな。3人選んでくれ。ただし、その者を選ぶことは認められない」
ナメック星人は俺を指差す。まあ警戒するのは分かるがな。
「構わんぞ。どうせ俺は政治家じゃないんだ。一応サイヤ人代表として顔を見せようと思っていたがな」
「交渉人は、私と、アルスター事務次官と、バジルール中尉でいいでしょうかね」
「まあいいんじゃないか」
そうして3人を残して俺達は船に戻る。
「あの、僕って必要なんですか?」
「あなたの気は暖かくて安心するらしいですよ」
サイがアズラエルの秘書に質問している。俺の方が詳しいが俺とは話したくないんだろうな。
ふと、船のトレーニングでキャベスとオンオンの気が高まっていることに気付いた。一色即発な感じだ。船で暴れられたらたまらん。急いで仲裁に向かうことにする。というかこういうことがありえるから俺は船に残るべきだったね。
「この、エリート気取りの自惚れクソ女が!」
「自惚れ? 私は自分の優秀さを自覚しているだけのこと。あなたは嫉妬しているのではなくって?」
「嫉妬なんざするか! お前みたいなやつは殺してやりたいくらい嫌いなんだよ!」
2人が手を伸ばせば届く距離で向き合って立っていた。お互い怒りでわなわな震えておりいつ手が出てもおかしくない状況だ。本当にギリギリだった。
俺は舞空術で2人の顔の高さまで浮かび上がり、2人の目の前へ移動し、視線を遮るように手を伸ばす。
「なんだ? 邪魔すんならお前から殺すぞ!」
「あら? ずいぶん早いお帰りですわね」
オンオンはフッと殺気を収めたが、キャベスさらに怒りを増した。口だけで押えるのは無理そうだな。
「俺は交渉の役から外れたんだ。だから今は自由時間だ」
「そうでしたの。ちょうどよかったですわ。この珍獣は落ち着くということができませんの。押さえてくださいまし」
おい、お前もそんなに煽んなよ。
「なんだとオラァ!」
キャベスは拳を振り上げとうとうオンオンに殴り掛かる。俺がガシッとキャッチしてやったが。
「てめぇ! 邪魔すんなっつっただろうが! 先に死ぬかァ!」
そう言いながらもう片方の手でも殴ってくる。しかしそれもガッチリキャッチ。
「チッ、ウラァ! ラアッ!」
さらには足が飛んできたので舞空術で上へ移動して躱す。その勢いでキャベスの後ろに移動し、腕をクイッと捻って前のめりに転ばせ、その上に乗る。
「チッ! クソ野郎! 退きやがれェ!」
キャベスは拘束から逃れようと暴れる。俺から抜けられるような力ではないが、怒って船の中で気弾を使われては敵わないので、少し譲歩することにする。
「お前、暇だろうから戦ってやる。だが船の中ではダメだ。外に行くぞ」
「舐めやがって! 今すぐ殺してやったっていいんだぞ!」
そんなこと不可能だって分かってるだろうに。無理しちゃってさ。
「お前も来るだろ?」
「もちろんですわ」
レタツは、まあいいか。キャベスがこれ以上怒ったら面倒だしな。
そうして俺達3人でトレーニングルームを出る。
「離せ! 自分で歩ける!」
怒られたから離してやった。ただしオンオンにキャベスの背後に回ってもらった。翻って船を盗もうとされたら困るからな。もちろん俺がいる限りそんなことはさせないが、人質を取られた場合下手したら誰かが死ぬから困る。
船から100キロ程離れ、ナメック星人の気配からも遠い荒地に降り立つ。ここなら誰かに迷惑がかかることもないだろう。
「さあ、どこからでもかかってきな」
「その舐め腐った顔がムカつくんだよ!」
キャベスは相変らずバカ正直に突っ込んできた。攻撃も直線的。動きは初めて戦ったときより鋭いが、俺も久しぶりにダメージを負い回復したことでパワーアップしており、相対的には前回より弱く感じる。
「ほいほいっと」
「ぐあっ」
手を掴み地面に叩き付け、フッと手を放す。
「さあ、何度でもかかってきな」
「はあ、はあ。ぶっ殺す!」
それから同じようなことが何度も繰り返された。腕を掴んで転がし、足を掴んで転がし、足元を引っ掻けて転がす。その度起き上がってくる根性は素晴らしいが、工夫しないのはつまらないかな。まあ彼女のような癇癪持ちに強くなられ過ぎても困るが。
「はあ、はあ、はあ、はあ。ぜえ、ぜえ、ぜえ」
30分くらいでキャベスは大の字になって倒れた。俺は多少疲れた程度。
「なかなかいい汗がかけた。じゃあ次はオンオン、かかってこい」
「待ちくたびれましたわ」
そうしてオンオンとも組手を始める。
オンオンとの戦闘は難しい。まず俺のリーチを意識して微妙な距離にいるから攻撃を当てづらい。ガードや受け流しも上手い。攻撃はフェイントを多用し重心が崩れた隙をついてくるから、考えて動かないといくら動きが速くても当たってしまう。
「あっ」
「ふふっ」
まあ腕とかを掴んでしまえばこちらのものだけど。
力で強引に手繰り寄せ、回転させ、地面に叩き付ける。その上に乗る。さりげなくお尻を揉む。メロンみたいに巨大でもちもち。しなやかな筋肉の塊だ。弾力が気持ちいい。
「私のお尻が魅力的なのは分かりますけど、私も溜まっておりますの。戦ってくださいまし」
「うん? まあいいけどさ」
溜まっているという表現。地球人なら性欲がほとんどだが、サイヤ人なら戦闘欲も表す。戦闘はサイヤ人にとって生理的な娯楽、オナニーのようなものと言えるかもしれない。
オンオンとも何度も打ち合い、転ばせ、解放と繰り返していく。キャベスもそうだったが、オンオンも戦っているうちにとてもいい笑顔になった。負けると悔しそうだが、それ以上に強者と戦える喜びのような物を出してくる。子どものように夢中になって挑んでくる。かく言う俺も割と楽しい。やはりサイヤ人の血が戦闘を望んでいる。それに、美女に追いかけられているって考えると、幸せに思う。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
オンオンも30分くらいで倒れた。ダメージはオンオンの方が少ないが、もともとの持久力がキャベスの方が上で、同じくらいの時間で体力が尽きたようだ。
「いつつっ。何発かいいのもらっちゃったなあ」
オンオンは顔や急所等の鍛えにくいところをタイミングよく突いてくるからふつうに痛い。もし戦闘力が互角だったら何度も死んでいると思う。いい技術をたくさん盗めるから、今の修行パートナーとしてはすばらしい。