ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
レタツの気配はナメック星人の村の中にあった。何をやっているのだろう? 暴れていなければいいのだが。
「あの家の中だ」
指差し、キャベスと共にナメクジのような家に飛んでいく。
しかしその時、村の方々からナメック星人がワッと出てきて、家を囲んだ。
「どうも初めまして。私はハラベコというサイヤ人です。こちらはキャベス。同じくサイヤ人です」
俺は笑顔を作り、低姿勢で挨拶する。ナメック星人達は若干刺々しい雰囲気で、油断が無い。やはり俺とキャベスの気が濁っているからだろう。
「ああ、初めまして。私はこの村の村長をやっておるツーリというものじゃ。お主等が先日やってきたという地球人とサイヤ人の一派じゃな?」
「ええ、そうです」
「ふむ。ではこの村へ来た理由は?」
「実は彼女の妹が大慌てで我々の船を飛び出して行きましてね。理由が気になって追いかけてきたのですが、どうやらそちらのお宅にいるようです。何かご迷惑をおかけしていなければいいのですが」
「ふむ。おるよ。お主の言うようにおる。じゃが問題など起こしておらんし、迷惑にも感じていない」
「そうですか。それはよかった」
俺は愛想笑いを浮かべる。そのことにナメック星人達は意表を突かれたような顔になる。そこまで俺が悪人っぽいのだろうか。
「おい、さっさと家に入らせるよう言えよ」
と、キャベスが肘で肩をど突いてきた。しょうがないから頼むことにする。
「えーっと、お邪魔しているようなので、会わせていただきたいのですが」
「それはできん」
「へ?」
な、なぜ? 断られるとは思わなかった。
「お、おいてめぇ! 何のつもりだ!」
キャベスが荒々しい気を飛ばしながら叫ぶ。今にも飛び掛かってしまいそうだ。注意しないとな。
というかナメック星人の長老も、断らないでくれよ! こいつは短気なんだ! 面倒事を起こさないでくれ!
顔でそう伝えようとするが、長老の表情に変化はない。むしろキャベスの気に触れた若者たちが臨戦態勢に入り、状況は悪化した。
「り、理由をお聞かせ願えませんか?」
「レタツという子はな、お主等に怯えておるのじゃよ。心当たりはないか?」
「心当たりですか?」
いや、確かに、びっくりさせて楽しんだことはあったけどさあ。そんなにひどいことはやってないと思うんだよなあ。セクハラはやったけど。でも、アフリカ部族みたいな布切れで生活するサイヤ人にとっては軽いと思うけどなあ。
「チッ。何となく分かってきたぜ。どうせあのアホ、また何か調子に乗ったことをやって、それが私にバレるのが恐くて逃げたんだろう。大人に泣きつくのもいつものパターンだぜ。みっともないったらありゃしない」
「そうなのか?」
「ああ。この前も私の残しておいた肉を勝手に食ってやがって、しつけてやろうと思ったら親父に泣きつきやがったぜ。親父のバカ野郎はあいつを甘やかすから、いつまで経っても甘ったれが直らなかったんだ」
「へー」
「チッ。情けない話させやがって。ただじゃおかねえぞあのアホめ」
キャベスはグッと握りこぶしを作り、スーッとドア目がけて飛んで行く。しかしその道を遮るように長老が割って入った。
な、なぜだ長老よ。これ以上キャベスを怒らせないでくれよ。
「待て。今のお主を会わせるわけにはいかん」
「ああ? なんだってんだてめえ!」
いかん。キャベスが殴り掛かってしまいそうだ。
俺はあわててキャベスの腰に抱きつく。
「おい! 離せ!」
「待て! 話を聞くだけ! 話を聞くだけでいいから!」
「てめぇどっちの味方だオラァ!」
うう、さらに怒りが増してしまった。どうすりゃいいんだ。
とりあえず話を聞くため、うるさいキャベスの口を両手で覆う。
「ううっ! う゛うん! う゛ん!」
キャベスは暴れ、俺の頭を殴ったりほっぺたを引っ張ったりしてくる。地味に痛い。
「り、理由をお聞かせ下さい! 早く!」
「う、うむ。いいじゃろう。レタツという子にはな、休息が必要なのじゃ。あの子はお主等ほど強くない。体もじゃが、心もじゃ。それは悪いことではない。あの子は、純粋なのじゃ。聞けば、お主等サイヤ人の母星が滅んでしまったそうではないか。あの子の父親や仲のよかった友人も皆死んでしまった。あの子は深い悲しみに包まれておるのじゃ。今は戸惑いが大きいために表面には現れておらんが、心の奥は別じゃ。ゆっくり時間をかけて癒していく必要がある」
なるほど。分かる話だ。というか肉親に全く情の無い俺が異常過ぎるんだよな。キャベスやオンオンも心の中では悲しんでいるのかもしれない。
ふと、キャベスは暴れるのを止め、とんとんと俺の腕を叩く。言い返したいようだ。まあいいだろう。気もさっきよりは落ち着いてるしな。
「今弱いならば、訓練して強くなればいい。それがサイヤ人の生き方だ」
真面目な顔で言いながら、さりげなく俺に裏拳を放ってくるが、軽く受け止める。
「思想というものは種族でくくれるものではない。あの子個人の意思を尊重するべきじゃ」
「あん? そりゃあ甘やかすってことかぁ!?」
うわ、一言で激怒しちゃった。また拘束しないといけないのか。
「そうではない。彼女の意思を汲み、弱い者の立場も理解してやれと言いたいのじゃ」
「だから弱いやつは強くなればいいっつってるだろうが!」
「物事はそう単純ではないのじゃ。お主の考えが全てではない。広い視野を持ちなさい」
「わけ分かんねえこと言ってんじゃねえ! 結局は強さで決まるんだろうが! 余計な甘やかしは必要ねえんだよ!」
「必要なのじゃ。人生を豊かにするのは暴力ではない」
「なんだとお!?」
とうとうキャベスが長老に飛び掛かる。もう言葉では治まらないだろう。
しょうがない。俺は再び後ろからキャベスに抱きつき、今度は首を絞めに掛かる。
「て、てめぇ。何のつもり、だ……」
キャベスは白目を向いて気絶した。この場を静めるにはこれしかなかった。しかし俺はものすごく嫌われてしまうだろう。せっかく仲良くなりかけていたのに。
はっきり言って長老にムカついている。俺にこんなことをさせた。もっと穏便に済ませてくれたら良かったのに。
「大丈夫なのか? その娘は」
「体は無事だと思いますよ。私は後でめちゃくちゃ怒られるでしょうけどね」
「それは済まないことをしたな。良ければこちらのものに回復させるが?」
回復? デンデのようなやつがいるということか。欲しいと思ってしまうが、口に出すべきではない。
「そうですね。彼女にナメック星人を恨ませないために、そうしてもらった方がいいでしょう」
「ふっ。お主はふつうのサイヤ人とは少し違うようじゃな」
長老が探るような笑みを浮かべる。やめてほしい。
「ところで、どうやったらレタツに会わせてくれるんです?」
「そうじゃな。その娘が戦い以外に目を向ければ、じゃろうか」
「それは……」
サイヤ人にはきつい話だ。というか悟空は戦闘狂だけど人格者扱いだったよな。穏やかだったらいいのだろうか。
それに、キャベスも完全に戦闘だけというわけではない。
「でも彼女も家族愛はあるみたいですよ。ほら、そこの容器見てくださいよ。パーティを抜け出した妹のために、余った料理を詰めて持ってきていたんですよ。自分がお腹を空かせているのにも関わらずです。ナメック星人の皆さんには分かり辛いかもしれませんが、これって私達にはなかなかできないことなんですよ」
「なんと、これは……」
長老は目に見えて驚いていた。思ったより衝撃が大きかったようだ。
長老は目をつぶり、眉を寄せ、うーんとうなり始める。しばらくすると、フッと笑みを漏らした。
「これは、私のおせっかいだったかもしれんな。……そうじゃなあ。私からあの子に説明しよう。君には素晴らしい姉がいるということを」
「では、キャベスはレタツに会えるのですね」
「うーむ。できれば、姉の方にもじっくり考える時間を与えてやりたかったがのぉ」
この言い方、もしかしたら長老はキャベスの方も救おうとしていたのかもしれないな。俺には悩んでいるようには見えなかったが。それとも癇癪持ちを治してくれるのだろうか? それなら助かるが、暴れるから危なっかしくて長老には任せられないよなあ。
長老は家に入って行った。俺はキャベスが起きてしまわないかとビクビクしながら待つことになった。もっとも、キャベスの寝顔がかわいらしかったので、途中から頭を撫でたりほっぺたを突いたりして遊んだが。
しばらくして、長老はレタツの手を引いて家から出てきた。レタツは顔を涙でぐっしょり濡らしていた。俺はそのことにとても驚いた。レタツは本当に大きな悲しみを抱えていたのだろうか。それに、アホっぽいとは言えサイヤ人である彼女を、よく人前であれだけ泣かせたものだ。俺は長老への評価を改めた。
「ひぐっ。ぐっ。うっぐ。ごべんなざいお姉ちゃんん。ごめんなさいいい」
「起こしてやりなさい」
「は、はい!」
レタツの泣きっぷりに唖然としていたナメック星人の若者の1人が、長老の命でキャベスに近づいていく。俺はそっとその場を離れた。
ナメック星人の若者がキャベスに手をかざす。よく分からないエネルギーがキャベスに送られ、気が安定していく。
「うっ」
意識が戻った。暴れないように警戒しないと。
「ごめんなさいお姉ちゃん! ごめんなさいいいい!」
キャベスが目を開く前に、レタツがキャベスの腹に突っ込む。
「ん? レタツ? 何を泣いてやがる」
「ごめんなさいお姉ちゃんんん。ごめんんん」
「何がごめんだ。早く泣き止め。というか、ここはどこだ? なぜ私は寝ていた? ……あっ、ハラベコの野郎!」
「ごべんんん」
「お、おい! いい加減に泣き止め! 汚い! おいアホ!」
レタツが泣きついてくれたおかげで、キャベスの怒りがそこまで上がらない。俺は助かったのか? 分からないが。
俺はそっと長老に近づいていく。
「そう言えば、私はナメック星人との合同訓練を行おうと思っていたのです。若者を借りてよろしいですか?」
「ん? あ、ああ。構わんが。急じゃな」
「他の村にも声をかけたいのですが、その、1人では骨が折れるので、手伝っていただくことはできないでしょうか?」
「ああ、よいぞ。場所は、そうじゃな。ツノ高原というのが西にある。そこでやるとよい。場所は若い連中が知っておる」
「ありがとうございます。ではそうさせていただきます」
そうして1日後にツノ高原で合同訓練が行われることになった。
サイヤ人と若いナメック星人はもちろん、まだ幼子と言えるナメック星人や2つの村の長老(一人はツーリ)、それに地球人からもナタル、レイ、フレイ、サイ、ラクスが参加した。
まずサイヤ人の力を見せつけるために俺と大猿化したオンオンが組手をする。
「この姿になったら興奮して抑えが利き辛くなりますの。怪我しても文句言わないでくださいな」
オンオンは明らかに俺に怒っていた。いつもは大猿になっても上手く手加減してくれるのだが、今日は雰囲気が違った。
しかし、近くにはダメージを一瞬で治療できるナメック星人がたくさんいる。それほど危険ではない。むしろパワーアップするチャンスだ。このために彼等との合同訓練を望んだというのもある。
「来い!」
そうして俺達はぶつかり合った。気の大きさはほぼ同じだが、体格差があるのでオンオンの方がずっと力が強い。しかし小回りが利くのは俺だ。
総合的な身体能力はほぼ変わらない。戦闘技術も、大猿化したオンオンは人型ほど細やかな動きが出来ないので、あまり差はない。よって総合的な戦闘能力もほぼ互角。
「オラオラオラオラ!」
俺は接近し連撃でダメージを与えていく。
「くっ、ぐっ」
受けるオンオンは、タイミングよく体をいなす。いなしながら俺が避ける方向まで予想して、巨大な手足を振るう。
「ぐはっ」
ガードの上から凄まじい衝撃で吹き飛ばされる。受けた腕が痛みと衝撃でジンジンしてほとんど動かない。
「うおおおおお!」
その隙を狙うように、大猿オンオンが突っ込んでくる。
「波ああああああああああ!」
俺は足でかめはめ波を撃ち、牽制しつつ後方へ加速する。
しかしオンオンはカパッと口を開け、かめはめ波より巨大な気功波を放つ。
「い、痛いのは嫌だあああ!」
さらに足に気を込めてオンオンの気功波に対抗する。しかし足だから上手く気が伝わらない。オンオンの方が有利。またあれにぶたれるのか。
「くうっ」
俺の体が気功波に包まれる。あの時のような全身をぶちかまされる感覚。痛い。あの時ほどではないけど。
「はあ、はあ、はあ」
気功波を受け切った俺は、全身ボロボロだった。
そろそろ回復を、と思ったのだが、大猿が勢いよく突っ込んでくる。
「も、もういいだろう! 俺はボロボロだ」
「があああああ!」
「うわっ」
殺気を込めて殴ってくるオンオン。やはり怒っているのか。だがオンオンらしくない直線的な動きだからそこまで避けるのは難しくない。
と思ったらフェイントだった! 俺の避ける方向を予想して放ったと思われる上段蹴りがピタッと止まり、カカト落としとなって俺の脳天に振り下ろされる。
「うおおおおおお!」
し、死にたくない。その一心で頭を全力でガードする。
「ガアアアアア!」
腕の痛みと共に衝撃。脳が揺さぶられ、意識が揺らぐ。程なく地面にぶつかる衝撃。しかしなおオンオンの足は俺の体を圧し続ける。地面と足に挟まれ、ミシミシと全身の骨が悲鳴を上げる。めちゃくちゃ痛い。
「うううっ」
痛みに発狂しそうになった時、不意に何かが切れ、俺は意識を失った。
しかし、程なく体が軽くなり、目覚める。
「ふう」
「おおっ!」
「お兄さん! 死んじゃったかと思った!」
俺を囲むように地球人達とナメック星人達がいた。予想通りナメック星人が治してくれたようだ。
そして、気を練ってみると、やはりこちらも読み通り。
「ふっふっふっふ」
「ど、どうしたんですか? 頭でも打ちましたか?」
俺の気は大幅に上がっていた。笑うしかない。フレイ達には気味悪がられたが。
オンオン、キャベス、レタツ等は遠巻きに俺を眺めていた。オンオンは俺と視線が合うとプイと他所を向く。キャベスは傷ついた俺に「いい気味だぜ!」と爆笑。レタツだけは俺が復活してホッとした様子だった。
その後、ナメック星人と俺、オンオン、キャベス、レタツ等が組手をしていった。俺はナメック星人が認知できるギリギリの速さで動くことで、彼等の気の感知能力を高めさせた。オンオンはいつも通りフェイントを交えながらの戦闘で、ナメック星人に戦闘技術を教える。キャベスは片っ端から勝負を挑み、倒していくだけだ。逆にレタツはナメック星人より少し弱いので、稽古をつけてもらっている。地球人達もそうだった。
オンオン、キャベスとナメック星人の戦闘力の差は2倍程度なので、彼女等は徐々に疲れていく。対してナメック星人はやられた端から回復させているので、体力は無限。少しずつ、ナメック星人の攻撃が彼女達に当たり始め、体力をさらに削って行く。
「はあ、はあ、はあ。くっ」
そして、とうとうキャベスが倒れた。回復能力のあるナメック星人が慌てて近づき、彼女の体を癒していく。
「ふう。あんがとよ」
そして復活するキャベス。ナメック星人は「あっ」と言って気付いた。
彼女の気が、復活する前より上がっている。俺と違って大きさのコントロールをしないので、復活した時点で明確に分かるのだ。戦闘力で言えば、9000くらいかな?
「よし! もう一回だ! かかってこい!」
そうして彼女達は強化されていく。あまり強くなられ過ぎると俺の立場が危ういのだが、それを口に出すことはできなかった。
そうして3時間近くが経過した。死にかけからパワーアップと言っても限界はあるらしく、彼女達の気の上昇率は徐々に低まり、2万近くでピタリと止まった。それでも7000と2万では段違いだ。特にベジータ王の1万2000という数値を超えたのが大きい。サイヤ人の種族としての戦闘力を超えたと言えるかもしれない。
今後、重力装置でトレーニングをしながら死にかけからパワーアップをすれば、3年もあればフリーザを超えられるだろう。
「ははははは! こりゃあいい! めちゃんこ強くなってしまったぜ!」
「どうやら私達は体力を失った状態から回復するとパワーアップするようですわね。限界はあるようですが」
キャベス、オンオンはとても上機嫌になっていた。何度も何度も立ち向かってくるナメック星人相手に、戦闘欲は大分満たされただろう。さらに以前とは次元の違う強さまで得られたのだから、喜びもひとしおという物。
レタツも戦闘力3500くらいになっており、ナメック星人と互角に戦えていた。
お腹が空いて来たので、一旦休憩。ナメック星人は水を飲み、地球人はチューブ飯を飲む。サイヤ人にはそれでは足りないので、気を探れる俺が肉を取りに行く。オンオン、キャベス等も食べられる山菜を探しに行った。
食事を終えてから、少し休憩を挟む。地球人達の様子を見に行く。
「よっ、調子はどうだ?」
「ハラベコ大尉」
「お兄さん! いやあ、サイヤ人がすごいのは知ってましたけど、ナメック星人もとんでもないですね! なんだか私、地球人に産まれて申し訳ない気がしちゃってますよ。ちょっとだけですけどね。ははは」
そう言うフレイは冗談交じりだったが、ナタル、サイ、レイは本気で落ち込んでいるようだった。
分かる話だ。せっかく頑張って強くなったのに、宇宙人にとっては虫けら程度の強さでしかなかった。今までの努力はなんだったのか、何をやっても無駄ではないか、と思ってしまっても不思議ではない。それに、サイヤ人なら野蛮な戦闘民族だからまだ納得できるが、ナメック星人は理知的で大人しい。そんな連中に負けてしまえば、地球人は何を誇ればいいのか分からなくなってしまう。
そんな感じだった。コーディネーターに劣等感を抱くナチュラルを見ている気分だ。
「まあ、俺達サイヤ人だってフリーザの才能に比べれば月とすっぽんだ。俺が何十年もトレーニングを積んでようやくあいつを超えられたとしても、あいつがたった1年でも本気でトレーニングすれば再び抜かれてしまうだろう。だからと言って卑屈になる気はないがな。人生楽しんだもの勝ちだ。楽しくトレーニングできればいいのさ」
「はい! そうですね!」
フレイはにっこり笑う。やっぱりこの娘とは考え方が合う。根が俗っぽいからだろうか。
「しかし、弱いままでは、蹂躙されてしまいます。私達は、地球に住む人々を守ることが出来るのでしょうか?」
ナタルが縋るような目で尋ねてきた。俺は安心させるようにフッと笑う。
「心配したってしょうがない。お前はお前のできることをやればいいんだ。こうやってトレーニングしたり、アズラエルのように同盟を組もうとしたりな。それにな。地球人だってもしかしたらフリーザを倒せるかもしれないぜ。クルーゼのあの力を見ただろう?」
「あっ」
地球人達は一斉にハッとしたような表情になる。
「でも、あれはサイヤ人の死者の力だから」
力を理解しているレイだけは反論しようとした。しかし俺は手で続きを制する。
「クルーゼが赤色のオーラを纏っていただろう? あれは体内の気を増幅させ、瞬間的に限界以上の力を得る技だ。気の扱いが上手いやつなら10倍や20倍まで増やすことが出来る。そして、あのとんでもない死者の力を纏う技。あれはやりようによってはフリーザどころかその何十倍も強い相手だって殺せる。あの時クルーゼが利用したのは死者だけだったが、上手くやれば生者の力だって利用できるんだ。要するにこういうことだな」
俺はフレイに俺の気を分けてやる。
「あっ、す、すごい! すごい力が出ますよ!」
フレイは戦闘力300程度の気を纏い、はしゃぐ。そしてポンとサイの体を押すと、サイは吹っ飛んでしまった。
「いてててっ。お、おいフレイ!」
「ごめーん! どうしても試したくって」
フレイは笑顔で舌を出して、テヘッという感じで謝った。サイは困ったような顔になるだけで、それ以上責めなかった。
「あの、どうすればその技が使えるのですか?」
レイがそう言うと、地球人達は希望にあふれるような目で俺の返答を待った。しかし俺は難しい顔になる。
「残念ながら、俺にも使えないし方法も分からない。俺もどうにしかしてこの2つの技を使いたいと思っているんだ」
「そ、そうなんですか」
あからさまにがっかりする地球人達。
「だがな、この技にとって重要なのは気のコントロールだ。そしてその点で言えば、俺よりお前達の方が才能があると思っている」
「えっ」
「それはないですよお」
「本当だ。俺がお前達のレベルまで気を操れるようになるのに3年はかかった。お前達は1年くらいだろう?」
「そ、そうなんですか?」
地球人達は遠慮気味にホッとしたような表情になった。自分達の無力さを感じつつ淡い希望を持つ、という微妙な感情なのだろう。
休憩後の訓練は筋トレや瞑想や技の練習が中心となった。ここでも疲れたらナメック星人に回復させてもらった。特にキャベスはレタツに付きっ切りで、休む間も与えず扱いていた。前日レタツが逃げた理由は、パーティの食事を食べてしまったからだと、当人が泣きながら暴露していた。その時、キャベスは泣いているレタツに暴力を振るいはしなかったが、「明日から修行だ。死んだ方がマシと思えるような地獄を味わわせてやる」と脅していた。レタツは再び「ひええ! 助けてええ!」と長老に泣きつき、長老ツーリは「わしも一緒に行ってやるから安心せい」と言った。実際ツーリはこの場に来ており、常にレタツの近くにいた。