ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
俺がアズラエルに指示された場所に行くと、アズラエルの横にキリッとした美しい乙女、ナタルがいた。
ナタルは着ぐるみの俺を見て一瞬怪訝そうな顔をした。しかしすぐにキリッとした顔に戻った。
「ナタル・バジルール訓練兵であります!」
ピシッ姿勢よく見事な敬礼。なるほどこれは真面目そうだ。
「どうです? 満足しましたか?」
「ああ、素晴らしい」
顔も体つきもな。あとアズラエルのやつ、仕事モードで口調がまろやかだな。
「彼女にはもう話しましたけど、今回あなた達が関わる軍務はトップシークレット。誰かに話そうものなら即これです」
アズラエルは首の前で手を横切らす。まあ俺は殺せないだろうがな。毒殺以外は。たぶん気を高めれば核の直撃にも耐えられるんじゃないか?
「彼女は士官学校に通う学生でした。しかし今回の任務のために休学してもらい、代わりに2年の任期でもって士官学校卒業扱いとすることになりました。必要な訓練と試験は受けてもらいますけどね。その後、私の子飼いであるサザーランド少佐か、あなたの下でおそらく中尉として配属されることになっています」
「ん? 俺?」
俺の下で大尉? 俺は軍人じゃないんだが。
「ええ。あなた私のオモチャの指揮官でしょう?」
いやいやいや。
「ちょっと待て。俺は政府の命令に従うつもりはないぞ。これはお前と俺の取引だったはずだ」
「ええ、ですから名前だけ指揮官です。契約には従ってもらいますがね」
「だったらいい」
ん? おっ? ナタルの気が揺らいでる?
顔もちょっとムッとしてるし、今のやり取りにムカついたようだな。軍を私物化してる俺達が許せなかったか。気持ちは分かるぜ。
「細かいことは訓練しながら話しましょう。今日は私も時間があるので体を動かそうと思っています。しかしその前に、2人にお伝えしておくことがあります。その方がきっと訓練にも身が入るでしょう」
「なんだ?」
「おそらく5、6年後、この星で大きな戦争が始まります」
「えっ」
「なっ」
それって分かるもんなの? と聞きたくなったが、経済が世界を動かしているとは聞いたことがあるし、こいつなら分かるのもかもしれない。
「お分かりでしょうがプラント対地球の戦争です。そこで、あなた達はおそらくキーになります」
「まあ、気を使えればコーディネーターとやらも敵ではないだろうからな」
俺は闘いたくないがな。地獄に落ちたくないから。
「気?」
「まあ訓練所に行けば分かることです。早速参りましょう」
そうして3人で訓練所に向かう。悪ガキ共の巣窟へ。
そこの扉を開けた瞬間、ゲラゲラと笑い声が聞こえた。俺がいないからサボっていたのだろう。しかし俺に気付いてハタと声は静まっていく。
「今日から皆さんと共に訓練することになったナタル・バジルール訓練兵です。仲良くしてくださいね」
「ナタル・バジルール訓練兵であります!」
その瞬間、悪ガキ共のが気色ばむ。
「ひゅーっ! 女じゃねえか!」
「へっへっへっへ。いい女だ」
「真面目ちゃんじゃねえか! かわいがりがいがありそうだぜ!」
「ぐうっ」
下品な男達の言葉にナタルは恐怖で萎縮していく。10代の女1対男多数で不気味なところへ連れられたのだからこの反応も当然だ。
しかし残念ながら今日はもっと打ちのめされることになる。
「今日お前達は、このナタルと格闘技の試合を行ってもらう!」
「え?」
「おっ? どうしたどうした?」
ナタルも聞いてなかったのか驚いている。
「きっとお前達が勝つだろう! だがな、この女は真面目なのだ! あっという間にお前達を追いぬき、お前達がいかに怠惰でダメかということを教えてくれるだろう! くやしかったら真面目に訓練に励むんだな!」
「はあ? 何言ってやがる」
「女に負けるわけねえだろうが!? 頭イっちゃってんじゃねえの?」
少しざわめいたが、無視して格闘訓練用の柔らかい床の上へ移動する。
「打撃でケガすると続きができなくなるからな。ルールはレスリングでいいだろう」
「え? いいのかい?」
「胸触っちゃうぜ!」
「こいつ本当にハラべコか? 気前が良すぎるんだが」
適当に近くにいたバカを指名し、舞台へ上げる。
「あの、すみません。私は本気で戦っていいのでしょうか?」
不意にナタルが聞いてきた。ちょっと怒っている。『私がこんなガキに負けるわけないのになんで負けること前提なんだ!』とでも言いたげだ。
「全力でやればいい。勝てれば俺の今月の給料半分あげる」
「なっ! ……分かりました。では手加減無しでやらせていただきます」
そして試合が始まる。
「ひゃあっ!」
「なっ」
ナチュラルでは図抜けて身体能力の高いガキ共だ。ナタルは反応が遅れ、いきなり接近を許し、押されていく。程なくこけた。
「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
「ぐうっ、このお!」
ナタルは身長174センチで女性としてはかなり高く、ガキより一回り以上大きい。しかし体格差の割にパワーに違いがない。体勢のいい悪がきの方が有利だ。
だが、ガキの方が遊んでやがる。太ももを押さえて、股に手を突っ込んで、これはいかんな。
一瞬で両者の前に移動し、ガキの腕を掴む。
「余計なことはするな」
「なっ、わ、わざとじゃねえよ!」
「ウソつくな! それくらい分かる!」
ナタルからガキを強引に外し、投げ捨てる。
「体勢を考えると今の戦いはそいつの勝ちでいい。さあ次のガキ来い」
「おいクソ野郎! 勝手に終わらせるなよ!」
「くっ。私もまだやれました!」
2人の言い分は無視し、次の試合へ。
「へへっ。気の強そうな女だな。泣かせがいがあるぜ」
「ちっ。子どもが舐めた口を!」
「始め!」
次の試合も同じような展開で、ナタルはあっさり追い込まれる。そしてガキは、上手く俺の死角に回りながら、ハレンチなことをしようとする。当然、気の揺らぎや筋肉の動きで俺には分かる。だから再び介入し、2人を引き離し、ガキをギャラリーに投げ捨てる。
「さあ次だ! どんどん来い!」
次も、その次も同じような展開だった。その次のガキはエロいことはしなかったが、わざと力を抜いて苦戦して、体が密着する時間を稼いでいた。
「手を抜くな! お前の勝ちでいいからおしまい!」
「なっ」
「な、もう少しで! はあ、はあ」
ガキは反発しながらもちょっと恥ずかしそうな顔をした。勝てると思っていたナタルは俺に目をひん剥いた。
が、無視して試合は続けていく。その度、悪ガキたちに押され、顔を歪めるナタル。汗で髪がぐっしょり濡れたり、押される時に「ああっ」と言ったり、股にガキの腕が食い込んだり、エロかった。
ガキ共の下半身はギンギンだった。俺はサイヤ人であり身体は一桁で止まっているのでまだ反応しない。
結局ナタルは全敗。大きく息を切らし、汗まみれ、今にも泣きそうな顔で崩れ落ちた。
「いやあ、驚きました。ハラべコさんがこれほど嗜虐性に富んだ方だとは知りませんでした」
なぜか拍手してくるアズラエル。
「何を言っている? 彼女のあの悔しそうな顔を見ろ! きっと伸びるぞ! 俺にはバッタバッタとガキ共をなぎ倒し、神々しく立つ彼女の姿が見える!」
「そうですか。それは楽しみですね」
意味のない誤魔化しをしてから、ふつうに訓練を再開。
アズラエルはガキの中で最も小さくて最も弱いクロトをスパーリングパートナーに指名し、ボコって満足げに帰って行った。
せっかくナタルのおかげでガキ共の機嫌がよかったのに、このせいでまたいつものように不満たらたらになってしまった。
ガキ共の訓練は1日5時間。勉強は3時間。掃除洗濯皿洗いは自分でやらせる。土日は休み。
ナタルもガキ共と同じメニューをやらせるのだが、それだけでは時間が足りないので、空き時間に2人で特訓。これがやりたかった。
「はあ、はあ、はあ」
ナタルはめちゃくちゃ疲れており、初めて会った時のような凛々しさは影を潜めている。代わりに女っぽくしなっとなっていて、エロい。素晴らしい。
「今からお前に気の使い方を教える。とても重要な話だ。なんせアズラエルの言っていたトップシークレットとはこれのことだからだ」
ナタルはハッとして、辛そうに姿勢を正し、キュッと口を閉じた。
「見ろ。これが気の塊だ」
手のひらの上に気弾を浮かべる。ナタルは驚きのあまり大きく目と口を開いた。
「な、なんですか? それは……」
「気だ。誰もが体内に持っている内なるエネルギー。それを上手くコントロールするとこういうものができる。さらに」
俺はとん、とジャンプする。5mはあろう天井に軽く手を付く。
「なっ。い、今、どうやって……」
「これが気の力だ。身体能力を遥かに高めることができる。ナチュラルとかコーディネーターとかそんな区分は意味なくなるくらいにな」
「う、ウソだ! ありえない! 着ぐるみに何か仕込んで!」
「ふっふっふ。じゃあこれならどうだ?」
俺はナタルに手をかざす。
「え? あ? う、うわあああああ!」
ふわふわと舞い上がった。3mくらいの高さで静止する。
「このように浮かすこともできる。お前は何も仕込んでないだろう? 磁力でもないし重力波でもあるはずがない。これが気の力なんだ」
「あ、ありえ、ない……」
相当ショックだったのか。だんまりになってしまった。まあふつうの人間ならこういう反応をしてもおかしくない。
30分程度どうすれば気が使えるようになるか説明し、俺の気を別けてやる。
「ら、楽になった!」
そして訓練スタート。今日は疲れているからジッとして気を感じる練習だけやらせた。本人の気を感じることはできず、俺の気を与えるだけで終わったが。
そんな生活を1年あまり続けた。ナタルは徐々に強くなり、クロトになら稀に勝てるようになってきた。そんな折、とうとう俺の新しい重力室が完成した。
5階建てくらいありそうなデカい球体だった。鎖は無く、外壁は二層になっており、内部の壁が高速で回転する。陸上では30倍の重力が。宇宙では50倍の重力が実現可能。
「これはすごい」
見るからにめちゃくちゃ金がかかっていた。ちょっと申し訳ないくらい。
「うちとしてもかなり大きな賭けだったよ。大事に使ってもらいたいものだ」
「ああ、ありがとう」
アズラエルは侮れない男だが、さすがにお返しをしたくなる。
俺は、自分のためにも、ある情報を解禁することにした。
「アズラエル。俺の丸いポッドを調べてもいいぞ」
「え? どうしたんだい藪から棒に」
「お前には話しておくべきことがある。外宇宙の生命体の存在と、来たるべき敵についてだ」
俺はフリーザ一味がこの星を狙っていること、俺の一族もその一味であり、俺は裏切り者に当たることを話した。
そして俺の考える対策。一番いいのは、フリーザより強くなって倒してしまうこと。次善策は、この星の住民を殺したとウソをつき、惑星ベジータに帰り、別の惑星の座標を得て、隙を見て逃げること。このためには追跡されないように宇宙ポッドを改良しておく必要がある。自分達だけ上手く逃げても、いずれウソがばれるので、この星に残った人類は殺される。
フリーザがサイヤ人を殺そうとしていることは説明しなかった。前世のことを話す必要が出てくるからだ。
アズラエルはしばらく衝撃に固まっていた。
しかし、不機嫌そうな顔でふう、とため息をつくと、探るような理性的な口調で話しかけてきた。
「君はいざとなったらこの星の住民を見捨てて逃げるつもりなのかい?」
「その通りだ。だが仇は討ってやるさ。フリーザも無敵じゃないんだ。別惑星の戦士と協力すれば勝てるはずだ」
「なるほどね、分かったよ。宇宙船は僕の財団を上げて全力で調べさせよう。僕も死にたくないからね。同じ船を作って逃げることにするよ」
「ウソだとは思わなかったのか?」
「世の中に確実なことなんてないさ。ただ、そっちに賭けた方が分がいいと思っただけだよ」
――ハラべコと同じようにアズラエルも真実の全てを伝えてはいなかった。実はアズラエルは密かに宇宙船のX線撮影をしていたし、ハラべコのDNAも調べていた(食器についた唾液のDNAから)。その結果宇宙船に関してはほぼ全てが不明。ハラべコはコーディネーターでもナチュラルでもない不思議な生命体と分かっていた――
とかく、新しい重力コントロール室により修行の効率は格段にアップした。
宇宙船は厳しい管理の下慎重に分解され、外宇宙の隔絶した技術が調べ上げられていった。
――そしてそれから4年。ヒーローと呼ぶには自己中心的な戦士と資本家が生き残りをかけて試行錯誤する中、人類は愚かにも戦争に突入する。
これは本来あるはずべき歴史よりも1年前のことだった。アズラエル財団がプラントへの手綱を緩めたことで一部独立派が増長し、計画を前倒しにしたためだった――