ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
しばらくぶりに目覚めた。丸ポッドから出るとカッタツに迎えられた。
「おはようございます」
「おはよう」
「早速ですがアズラエルさんから連絡が入りましたよ」
「ああ、替わろう」
いつもの通信機を手に取る。
「上手く接触できたか?」
「ええ。しかし、お金をせがまれてしまいまして」
お金? どういうことだ?
「あいつらは慈善事業団体じゃなかったのか?」
「本来はお金を取らないそうですが、今回はフリーザとサイヤ人への恐怖で誰も近づきたがらず、仕方なしに我々からお金を取ってもいいことにしたようです。キャッシュマンという方が来ています」
「キャッシュマン? 金にがめつそうな名だな」
それに、どこかで聞いたような気もする。
「本名は別にあるそうですが、悪名を広めたくないので偽名を使っているようです」
「そうなのか。悪いと思っているならしなければいいのに。妙なやつだな」
しかしキャッシュは宇宙共通語ではないはずだ。なぜその音を使ったのだろう。偶然だろうか。
「それで、彼にお金を払おうとしたのですが、私達は彼等の共通通貨を持っていないでしょう? ですから代わりに資源を送ることになったのです」
「へー」
「しかし船に乗せている資源もたかが知れているでしょう? 部品を崩すわけにもいかない。ですから、この近くの星からいただくことにしたのです」
「面倒な話だな」
「そこまで悪い話ではありませんよ。私達は銀河パトロールとつながりを持ちたかったですからね。それに、お金があればスポンサーになることができて、銀河パトロールの一部を動かせるようになるみたいなんです。そうすれば彼等の技術を得ることだって出来るかもしれない」
「結局金か。情けない正義の味方だな。ちょっとおもしろいが」
なんか鳥山ワールドっぽいな。スッパマンとかが正義の味方を自称していたし。
「ハラベコさん達も協力していただきたいのですが、よろしいでしょうか? 今から向かう星には、キャッシュマンさんですら手こずるような悪人がちらほらいるようでして」
「もしかして、レアメタルでできた資源だけの星じゃなくて、人の住める星に行くのか?」
「ええ、そうです。実はキャッシュマンさんの船は小型でして、資源を運ぶことはできないのです。方舟もそう大きくはないし、今となっては技術レベルも低い。どうせだったら資源を運ぶ船を作ろうと思いまして。船を作るためには工場のある星の方が効率がいいでしょう。ついでにその星の住人と同盟を結ぶことができればいいかなあと思っています」
「まあいいだろう。前からそういう約束だったしな。ナメック星以外でしっかりした拠点になる星を見つけるまでは協力する。それ以降も何か問題があれば手伝うさ」
そうして俺達は近くの惑星に向かうことになった。
惑星が見える位置で一旦合流する。方舟のハッチが開き、カッタ3が中に入る。隣にはキャッシュマンのものらしき宇宙船もある。アズラエルを先頭に、その後ろに横一列になって地球人が迎える。彼等に少し離れてキャッシュマンらしき宇宙人。しかしなぜかの彼の手前に、憮然とした表情のナタルがいた。
キャッシュマンらしき人物は肌が紫で、頭はヘルメットをかぶっているような光沢があった。どこかで見たような男だった。鳥山氏の読みきりか何かだろうか?
「私の名は……貯金、戦士、キャッシュマンだ!」
キャッシュマンは戦隊ヒーローのような決めポーズをした。3段階に分かれており、初めはタックルするかのような前傾姿勢、次は手がちょっと内側に反っている直立不動、最後はダブルピースならぬ両手それぞれで親指と人差し指を合わせ円を描くお金のポーズ、さらにそれを顎の下でクロスさせた。
俺にはカッコ良さが分からないので黙っているしかなかった。他のメンバーも同様。ナタルもムッと少し眉を寄せた。
「サイヤ人にはいい噂を聞かないのでな。彼女には悪いが人質になってもらった。だが、そちらが何かをしない限り攻撃は絶対にしないと誓おう」
「そ、そうですか」
さすがに唖然としてしまう。まさか人質とは思わなかった。
気持ちは分かるが、もう正義の味方を名乗るのは辞めたらいいんじゃないだろうか。マンガならギャグになるからいいかもしれないが。
「さすが卑劣なやつらだな。銀河パトロール」
キャベスはボソッと言った。しかし耳のいいらしいキャッシュマンには聞こえていた。
「ムッ、貴様余計なことは言わん方がいいぞ」
キャッシュマンはそう言ってナタルの頭に手を向ける。本当、どっちが悪人か分からんな。
「へっ、私にとっちゃそんなやつの命どうだってっ、うっ、うぐっ」
面倒なことになる前にと、キャベスに抱きついて口を塞ぐ。
「で、では挨拶はこの辺りで星に向かいましょう。えーっと、調べたところ重力は地球とほぼ同じ。月もほぼ同じものが1つあります。大気の構成もほぼ同じですが、量はこちらの方が地球より数十倍多く、月にも大気があるようです。人類の姿形は我々とほぼ同じです。ただ、極端に大きい方が何人かいるようです。その方達の気は私達より大きいですね。サイヤ人の皆さんほどではないですが」
「なんだ。つまんねえな」
「巨人かあ。大猿とどっちが大きいかなあ」
「星はほとんどが海でできていますが、なんと星を横断する巨大な大陸が1つあります。そこには人類が住んでいないようですけどね。人類は小さな島々に住んでいます。初めですから、その島の中でもそれほど大きくない所の近くに着水しようと思います。そこで言葉を覚え、情報を集め、徐々に資材集めや原住民との交渉を進めていこうと考えています」
「まどろっこしいな。いつになったら戦えるんだ?」
「では、そういうことでお願いします。ハラベコさん、サイヤ人の皆さんへの説明をお願いします」
アズラエルめ、逃げたな。だが賢い選択だ。キャベスと会話するとポンポン手足が飛んでくるからな。
「気を探って、状況とかを見て、明らかに悪人なら攻撃してもいいだろう。しかし言葉が分からない段階でやたらめったら戦闘に関わらない方がいい。戦争とかは両方に正義があったりするからな」
「面倒くせなあ。せっかくフリーザの野郎から自由になれたっつーのに」
「俺やオンオンと組手をすることはできる」
「そりゃそうだけどよお。こんな星まで来て変わり映えのしない連中とかよお」
キャベスはがっかりしたようだった。ナメック星が上手くいきすぎて期待値が上がっていたのかもしれない。しかし本来は彼女どころかレタツとまともに戦える存在さえ希少なのだ。
俺は何かあった時のために格納庫で待機し、方舟は大気圏に突入する。多少振動するが問題はない。やがて方舟の胴体部が開き、翼が出て風を受けていく。こうなったら先ほどより揺れ、減速による加速度もなかなかだが、やはり問題はない。
「現在高度1万メートル。3分後に着水します」
オペレーターはアズラエルの愛人兼秘書。トレーニングの成果か、声に張りがある。
その時、船がガタン、と何かに当たったように揺れた。
「えっ、あっ? く、雲が妙に頑丈だったようです。船に異常はありません。進路修正します」
雲が頑丈? 霰とかだったのか? それにしても揺れ過ぎだと思うがなあ。
「電波障害!? ど、どうして!?」
「攻撃を受けているのか!?」
電子戦か? だとしたら好戦的な連中だな。言葉も何もなしにいきなり攻撃とは。
すぐにでも戦えるよう気を高めていく。
「あっ、直りました。進路修正します」
「コンディションレッドです。各員戦闘配置に着いてください」
別のオペレーターがそう言うのとほぼ同時、警報が鳴る。サイヤ人、ナタル、キャッシュマン等が格納庫に入ってくる。
「敵影確認できません。しかし先ほどの進路上に大きな磁場異常を確認。原因不明です」
「警戒は怠らないように」
俺達は緊張感を保ったまま次の指示を待つ。待ち続ける。
しかし何も起こらなかった。ただの磁場異常だったのだろうか。雲が固かったり、変な星だなあ。
「着水約30秒前です。振動にお気を付け下さい。……えっ、あっ! 突然目の前に嵐が現れました!」
「何!?」
風の魔法か? それともそれだけの気の持ち主がいるのか? そんなに強い気は感じないが。
それに敵意も感じない。島から悪人の気を複数感じはするが、そいつらはアズラエルに毛が生えた程度。善人含めれば戦闘力300くらいのやつもいるが、そいつの気は落ち着いている。攻撃性は感じない。
嵐の影響か、船が大きく揺れる。オペレーターの慌てたような声が響く。
「し、進路ズレました! 島にぶつかります!」
「い、いかーん! 人にぶつかってしまう! 面倒なことになるぞ!」
キャッシュマンも慌てる。
「ハラベコ大尉! 外から船を押してください!」
「ハッチ開きます!」
声と共にハッチが開く。外は嵐であり、風と雨が激しく飛び込んでくる。どうということもないが。
俺はハッチから外に出て、武空術で方舟の先端に行き、両手で反対側に押す。ただし、力を入れ過ぎれば壊れるので加減しながら。
後方には島が見える。建物や人も見える。彼等にぶつからないよう、余裕を持って上空300mくらいで止めようと思う。
――その頃、地上――
真っ赤な鼻をしたピエロのような男が、物見台にも見える処刑台の上で高笑いしていた。
「ハデに処刑だあああ!」
彼は見の丈ほどもある長刀を両手に持ち、若者を踏んづけていた。若者は手足を木製の錠で拘束され身動きできない。逃れようともがくが、外れることはない。
「ぎゃーっはっはっは! これで最期だぜえええ! 麦わらあああ!」
ピエロのような男は若者の死を煽った。彼の部下ははしゃぎ盛り上がる。
「あの野郎! 何バギーなんぞに捕まってやがる!」
麦わらと呼ばれる青年の仲間が、彼を助けようと処刑台に近づこうとする。が、バギーの仲間が邪魔で思うように進めない。
しかし、肝心の麦わらは他人事のような顔をしていた。
「俺、死刑って初めて見るよ」
「てめえが死ぬんだよ!」
「ええっ! ふざけんなあー!」
そんなやり取りをしていると、キーン、と耳障りな音が処刑台の広場全体を包んだ。
「うるせええええ! なんだこりゃああああ!」
バギー達は耳をふさいで周囲をうかがう。何も見えない。雨で視界も悪かった。
ふと、黒い影が広場を走り、処刑台をすっぽり覆うようにして止まった。と同時に音も消える。
広場にいるほぼ全員が、反射的に見上げた。そして見た。70m近い船のような何かが、空中で静止していた。
「なっ!」
「あ、ああ!」
ある者は見上げたまま口をあんぐり開けて固まる。ある者はプルプルと震える腕で指す。しかし誰もそれ以上の言葉が出ない。ざあざあと地に落ちる雨だけが空しく響いた。
『人が空想できる全ての出来事は、起こりうる現実である』~ウイリー=ガロン~
ふと、船の向こう側の空が光った。
「いたっ」
情けない男の声と共に、甲高い雷鳴が鳴り響く。空気が、建物が震える。
雷が船に落ちたらしかった。
「お、おいあれ人じゃないか!」
誰かが船の先っぽで動くものを指差しながら叫んだ。その声で他の者も動き出す。
「そんなわけあるか!」
「で、でも!」
「お、おい! あの船みたいなやつ傾いてないか! さっきの雷で!」
「お、落ちてくる! やばいぞ!」
雷を契機に船は傾き始めていた。彼等には知れないことだが、船に当たった落雷は船の外側を通り、ハラベコに流れ込んだ。それでハラベコが少しひるみ、船のバランスが崩れたのだった。ただ、それだけ。別に落とすわけではない。
しかし民衆は騒ぎ始めた。処刑執行人もハッとして動き出す。
「や、やべえな! さっさとお前を殺して逃げる!」
「いいっ! しょうがねえなあ。ゾロー! サンジー! ナミー! ウソップー!」
ピエロのような男は慌てて長剣を振りかぶる。麦わらと呼ばれる青年は誰かの名前を呼んだ後、にこりと笑った。
「悪い、俺死んだ」
死ぬ時に笑える者がどれだけいるだろうか。彼の姿を見ていた彼の仲間達、さらには密かに海賊の戦いを見張っていた海兵達は衝撃を受けた。特に、海賊王と呼ばれる男の最期が、青年と同じような曇り一つない笑顔だったと知っていた者はなおさらだった。
「チッ。邪魔が入ったか」
人知れずその状況を見ていたある男は、笑顔で舌打ちした。フードを深くかぶっており、嵐の影響もあってその顔ははっきりしない。その男が処刑台に向かって手を伸ばす。途端、すさまじい突風が吹いた。
「ん? うごおおおっ!」
「うわあああ!」
バギーと麦わらと呼ばれる青年はその突風で吹っ飛んだ。青年の拘束は外れて自由になった。
「おっ、ラッキー。やっぱ生きてた」
「何が生きてただ。油断しやがって」
「遊んでる暇はないぞ。海兵が出てきやがった。さっさとずらかるぞ」
青年の仲間達も青年の近くに集まってきた。3人はピエロの仲間達を蹴散らしながら彼等の船の下へ急ぐ。