ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
ナタルが銃弾に倒れた時、革命軍のリーダーであるコーザは和平交渉に応じようとしていた。バロックワークス社員はそれを邪魔しようとしたが、ナタルが撃たれてもビビ等は反撃せず、逆にバロックワークス社員が革命軍に捕えられた。
雨が降らなくなった理由が謎であることが、革命軍を不安にしていた。しかし、クロコダイルの受け取りに来た海軍がアラバスタに向かう折り、その理由を偶然見つけた。不審な船を囲い、調べたところ、その船がダンスパウダーという雨を降らせる粉を空中に散布していたことが分かった。これは周辺の雲の水分を奪って雨を降らせるので、一部は恩恵を被るがその周辺は害を受ける。よってその使用は法律で禁止されていた。クロコダイルはこの粉を使って王制への不満を煽り、革命の火を焚き付けていたのだった。
それが分かったことと、コーザと王による和平交渉の成功と、海軍が革命を取り締まったことにより、革命は急速に収まって行った。ハラベコ等は、海軍が港に着いて少ししてからウォーターセブンへ旅立った。
一方、ビビを求めて砂漠の道をひた歩き、なんとか首都アルバーナに辿り着いた麦わらの一味とミスター・ナイン等は、和平交渉が成って歓喜に沸く民衆の声を耳にしていた。
「いえーい! 戦争は終わったんだー!」
「やっと平和な日々が戻ってくる! 全部クロコダイルのせいだったのよ! 国王様ばんざあああい!」
ビビを助け、彼女に惚れられることを期待していたサンジ、金を得ることを期待していたナミ等はポカーンと口を開けるしかない。
「ふう。まあ何事もなくてよかったな。では、私はミス・ウェンズデーに割のいい仕事を紹介してもらうことにするよ。さらばだ!」
ミスター・ナインは笑顔で民衆の中へ消えていった。
ウソップがハッとして気付いた!
「おいお前等! ポケッとしてる暇はないぞ! ルフィを助けるんだろうが! 急いでなんとかポースってやつを探すぞ!」
しかし一味は動かない。サンジは気怠そうにため息をついた。
「はあ、あんなアホ面の男を助けてもな」
「て、てめえ! 仲間をなんだと思ってやがる!」
「あいつがいると、食費がけっこうかさむのよね」
「おいてめえも! いつまでカネカネ言ってんだ! おいゾロ! おめえもなんか言ってやれよ!」
「戦闘はないのか。つまんねえな」
「お、おい! この一味はバカばっかりか!」
ウソップは眉を寄せて叫んだ。その隣では、ミス・バレンタインがお手上げのポーズでため息をついた。
少ししてから、麦わらの一味はエターナルポースを探し始めた。お腹が減っていたので食堂に行った。食べながら店の情報を集めた。
「ねえマスター。この辺でエターナル・ポースを売ってる店ってない?」
「エターナル・ポース? そういうのは港町に売ってんじゃねえか?」
「はあ、そうよね。とんだ無駄足だったわ」
「まあそうがっかりすんな。今日は景気のいい日だ。タダにしといてやるよ」
「ホント! おじさんだーい好き!」
ナミは中年の主人に抱きついた。主人は顔を赤くして鼻の下を伸ばし、ナミが内ポケットの財布を盗んでいることに気付かなかった。さらに、彼の妻が物陰から彼を睨んでいることも。
「あんた達! 遠慮せず食べなさい! 今日はタダだそうよ!」
「えっ! マジか!」
「よっしゃあああ!」
ナミが言うとサンジ、ゾロ、ウソップの男連中がガッツリ食べ始める。さらにそれを見た他の客たちも勢いを増していく。
「ちょ、ちょっと待った! タダってのは嬢ちゃんだけで!」
「素敵ねえおじさんは! なんて太っ腹なのかしら!」
ナミは主人が次の言葉を出せないようもう一度抱きついた。主人は鼻の下を伸ばして「ま、いっか」と言った。
「コラあんた! ふざけんじゃないよ! そこの小娘も!」
とうとう主人の妻が怒り、フライパン片手に主人へ襲い掛かった。
「逃げるわよあんた達!」
ナミがそう言うと男達は口に詰められるだけ食料を詰めて逃げていく。
「逃げるなァ! 誰かあー! あいつら捕まえてえー!」
妻の言葉に近くの海兵が反応する。そして見た。麦わらの一味が逃げていくところを。
「ス、スモーカーさん! 麦わらの一味です! 麦わらの一味が現れました!」
そうしてスモーカー大佐の部隊が麦わらの一味を追っていく。
その頃、エースは宮殿の中にいた。街をうろついていた海兵の1人を気絶させ、その服を奪い、何食わぬ顔で宮殿に侵入したのだった。目指すは地下牢。自分の寝ている間に消えてしまったサボが、そこに捕えられているかもしれないと思ったからだ。
「おい貴様! 何をしている!」
アラバスタ兵の1人に呼び止められた。エースは驚いて体が硬直するが、帽子を深めにかぶり直しつつ、照れたように言う。
「い、いやあ。トイレに行ってまして。地下牢はどっちかなあと」
「そうか。地下牢は反対側の廊下の突き当たりを左に行った階段だ」
「は、はい! ありがとうございます!」
エースは隠し通せたことにホッとしながら急いで地下牢へ走った。
途中で何人かの兵とすれ違ったが、ペコペコ頭を下げて誤魔化した。降りていく中でいくつかの牢が見えたが、サボらしき姿は見当たらなかった。しかしエースはそれほど気にしなかった。サボなら地下の最も深いところか、そこをクロコダイルに譲って次に深い所に幽閉されていると思っていたからだ。
最後の突き当たりにゾロゾロと海兵達がいた。その中の白髪のガタイのいい老人に、見覚えがあった。
「いっ! じじい!」
思わず叫んでしまった。海兵達の視線が一斉にエースを向く。
「き、貴様何をしている! どこの所属だ!」
「はて。どこかで聞いたような声じゃったな」
エースは己の失敗を呪いながら、サボがいるかどうかを確認するためにジャンプし、海兵に連行されている囚人と付近の牢を覗いた。クロコダイルと、知らない男女がいるが、サボはいない。
「チッ」
エースは舌打ちし、海兵等に背を向けて全力で駆けだす。
「あっ! あのバカもんがあ!」
ガープが声の主をエースだと気付き、追いかけはじめた。いよいよまずいと思ったエースは後方に彼の必殺技である火拳を放つ。
地下牢いっぱいに広がった巨大な火の拳が海兵達に向かうが、途中で氷の壁に阻まれた。
「ふうっ。一体なんだって火拳のエースがこんなところに」
「大将青雉!」
大将であるクザンが自身の悪魔の実の能力で氷の壁を作り、部下達を守ったのだった。しかし水蒸気が霧となって視界を防ぎ、エースを追いかけるのは困難。さらに言えば、彼等の本来の目的はクロコダイルの護送であり、それを疎かにするわけにはいかなかった。
結局彼等はそこに留まり、部下に「火拳が出たから気を付けろ」と伝えるに留めた。捕まえろと言わなかったのは、無理だと分かっていたからだ。
「待ちやがれ麦わらの一味! オラァおめえらの船長が勝手に捕まりやがってむしゃくしゃしてんだよ!」
「んな勝手な!」
「捕まりたくて捕まったんじゃないのよ! 逆恨みしないでちょうだい!」
エースは人ごみの中を駆けながら、気になる言葉を耳にした。声のした方には、追いかける白髪の海軍将校と、逃げる海賊達。エースは横から海賊の鼻の長い男に近づいていく。
「なあ、お前等もしかしてルフィの」
「ひええっ! か、海軍!」
鼻の長い男はエースを一目見て逃げ出した。エースは自身の服装を思い出した。今度は近くの海兵の下へ走っていく。
「おいお前! なぜ今捕まえようとしなかった!」
「それよりも、あいつらってルフィの仲間か?」
「ああ! モンキー・D・ルフィの手下! 麦わらの一味だ!」
エースはにこりと笑った。その直後、少し離れた場所、白髪の海軍将校が金髪の男を捕まえようとしているところへひとっ飛びし、将校を蹴り飛ばす。
「ぐあああっ!」
「何!?」
「あ、あなた何をやっているのですか! 間違ったでは済みませんよ! 早く謝りなさい!」
突然の乱入者の暴挙に、麦わらの一味と海軍の両方が立ち止まる。
「へっ。オラぁ海賊なんで謝んねえぜ」
「えっ」
「おいルフィの仲間共ォ! こいつらは俺が引き受ける! 今のうちに逃げやがれ!」
「だ、誰なのあなた」
「誰でもいいじゃねえか! チャンスだ! この隙に逃げるぞ!」
エースによってスモーカー等は阻まれ、麦わらの一味は逃げ切った。
逃げながらラクダを盗み、そのラクダに乗って移動した。その途中、バラックワークスの2、3、4の名を持つ男とそのペアが麦わらの一味に近づいた。彼等は同盟を結びたいと言った。なんとクロコダイルが連行されるのと同じ船にルフィが乗っていると言うのだ。
「あちし達はクロちゃん。あんたらは麦ちゃん。海軍とドンパチやるなら仲間は多い方がいいでしょう?」
オカマが言った。麦わらの一味は嫌々応じた。
しかし応じてよかったことがあった。オカマの部下達が麦わらの一味の船であるゴーイングメリー号を港から動かしてくれたのだ。そうでなければ海軍に見つかり、最悪破壊されていた。
彼等は無事船に乗り、出港した。しかしアラバスタへ集結した海軍はあまりにも多く、囲まれて砲弾の嵐に晒されてしまう。
「火拳!」
しかし、ここでもエースに助けられた。軍艦が巨大な火によって次々沈められていき、一味にとっての抜け道が出来る。
「ありがとう! でもどうして!」
「なあに、兄弟を助けるついでさ!」
エースはそう言って軍艦の中でも最も大きく、船首が犬面の船へ突っ込んでいった。陣形を考えても明らかに旗艦だった。
砲弾の嵐に晒され、エースの火で動く小型ボートが木端微塵となる。エース自身はボートが壊される直前に目標の船へ大きくジャンプした。砲弾で体中に穴が開くが、悪魔の実の能力によって炎となった体にダメージは無し。
もう少しで船に着地というところで、目の前に3mを超える細長い男が現れる。
「アイスボール!」
「火柱!」
大将青雉ことクザンだった。氷と火のぶつかり合いにより突風が生まれ、エースは船の外へはじき出される。
「しまった! 何かねえか! 何か!」
火で風を起こせば、ある程度は空中を移動できる。エースは着水点付近に浮かぶ物がないか探した。しかし、そこで彼は背中から見知った声を聞く。
「愛ある拳は、防ぐ術なし!」
「ジ、ジジィ!」
ガープだった。ガープは月歩によって空中を跳ねながら大きく拳を振りかぶり、エースの顔面を殴って吹き飛ばした。
「ぶはっ」
エースは脳を揺する衝撃に身動き1つできず、ひたすら飛ばされた。やがて勢いよく海に突っ込む。
能力者である彼は海を泳ぐことができない。
「ドジッたな。誰か……」
エースは海の深淵に沈んでいく。ルフィの仲間が助けに来たりしないかなあと思った。ふと、眼下に栗が見えた。それはまっすぐエースへと迫り、やがてぶつかる。そのまま勢いよく海面へ飛び出る。
「ぶはっ。はあ、はあ、はあ」
「ジッとしてな。俺が船に運んでやる」
栗だと思った物は、栗っぽい髪型をしたおっさんだった。彼の目的も、クロコダイルが連行されている船に捕えられた仲間を救うことだった。
――その頃、新世界のとある島――
とある海賊たちが見事に酔っ払い、宴会を続けていた。しかし仲間の一人が慌てて船長の下に走っていく。
「せ、せんちょおー! 大変だあ! ルフィのやつが捕まりやがったあ!」
「な、何い!」
船長以外の古株達も一斉に驚いた。彼等は皆ルフィと親しかったのだ。
「助けに行きますか? 船長」
太った男が赤髪隻腕の船長に声をかける。
「バ、バカヤロー! ヒック。あいつももうガキじゃねえだろ? 自分のケツは自分で拭かせねえとなあ。ヒック」
船長はそう言いながら酒を置き、立ち上がった。そして剣を片手にどこかへと歩き出す。
「せ、船長? どこに行かれるんで?」
「ああん? あのアホをからかいに行くんだよ。ヒック。間抜けー、口だけー、ってな」
幹部達はお互い顔を見合わせ、にやりと笑った。
「素直じゃないんだから」
「野郎共、出航だァ! でけえ戦いになるぞ! 今回の相手は世界政府だ!」
「うおおおおおお!」
そうして赤髪海賊団はエニエス・ロビーを目指して旅立った。
一方、ハラベコ等はウォーターセブンで職人の技に驚いていた。無駄に派手な動きだが、とにかく速くて力強い。一部の優秀な職人は定規とメガネだけでミクロンオーダーの切削も可能。こちらが道具を与えればサブミクロンもナノもやれそうな勢いだった。
ところで、宇宙船というのは軽い方がいい。この世界には空島というものがある。そこには軽くて丈夫な素材があるはずである。それがあれば、より速く、より頑丈で、より燃費のいい宇宙船ができるかもしれない。船の設計図を書くには素材の情報が必要である。よってハラベコ等は空島に向かった。
地上約7000mに、頑丈な雲が本当に宙に浮いていた。方舟をゆっくり接触させると突き抜けず、上に乗ることができた。技術者達は大喜びで雲の特性を調べていった。ハラベコ等も最初は技術者等に付き合ったが、キャベスがしびれを切らせ始めたので、ハラベコ等は空の食量と強者を求めて雲の海を飛び回った。なお、弟子の修行もさせるということで、ハラベコがティーチとビビを運んだ。ティーチは首根っこをつかみ、ビビは背中に抱きついてもらった。役得だった。フレイとの空中デートを思い出す胸の感触があったが、下に臭いおっさんがいたので台無しだった。サボはオンオンが運んだ。
タコみたいなやつや平べったい魚を食し、なおも飛んでいると、婆さんがいた。コスプレなのか背中に天使っぽい小さな羽があった。ここより上への雲に行くなら通行料を払えと言われたが、この道を通らなければいい、という理屈で別の方向から約3000m上にある雲へ突っ込んだ。
そこで、この世界で、人が住んでいるらしい街を見つけた。雲の海と違って人が乗っても沈まない、地面のような雲。こちらの方が宇宙船に使えるだろうと思い、アズラエル等を呼ぶことにした。しかしキャベスが「あいつらを待つ理由がない」と言って再び散策に出かけるよう急かすと、ハラベコはうなずいた。
なおもハラベコ等は強者を求めて飛んだ。戦闘力200くらいの明らかに強い気が1つあった。ハラベコ達は真っ直ぐそこへ向かった。その途中、雲らしくない、土の色をした大地と巨大な森を見つけた。これが空島らしかった。空島の真ん中の辺りに、『ジャックと豆の木』に出てくるような、巨大なつるが真っ直ぐ上へ伸びていた。
「あそこだ!」
そのつるの上部に雲が引っかかっており、その上に神殿らしき建物があった。気配はそこからしてきた。
ふとその気配が殺気を帯びたかと思うと、チカッと光り、雷のようなものが真っ直ぐ飛んできた。
「うわっ」
ハラベコ1人なら問題無いのだが、ビビが感電すると危ないのでハラベコは上方に急加速して避けた。それで掴んでいたティーチの服が破け、ビビは加速に耐えられずハラベコから手を離してしまった。
「お、おおーい!」
叫ぶティーチを無視して、ハラベコは先にビビの下へ向かった。
「か、かはっ。胸が……」
ビビは胸を苦しそうに抑えていた。ハラベコは後ろからそっと近づき、ビビを抱きしめるようにキャッチした。
「あ、ありがとう。くうっ」
ビビは礼を言ったが、やはり苦しそうに胸の辺りを気にした。ハラベコはすぐにカッタツに診せに行くことにした。
「お、おおーい!」
ティーチは落ちても平気そうなので無視した。キャベスも厳しい師なので助けに行かなかった。
一方、オンオンはサボを神殿に投げ飛ばし、自身も神殿に突っ込んでいく。途中で再び雷のようなものがオンオン目がけて飛んでくるが、オンオンはかまわず突っ込んだ。ダメージは一切ないようだった。
「いきなり攻撃するとは、覚悟はできてらっしゃるのでしょうね!」
「あっ、あのアマ抜け駆けは!」
キャベスもオンオンに遅れて突っ込んでいった。2人がやる気満々なので、ハラベコはひょっとしたら死人が出るかもしれないと思ったが、自身もビビをこんな目に遭わせた輩に怒っていたので、放っておくことにした。そんなやつを心配するよりは、先にビビを治療したかった。
方舟のカッタツと接触し、すぐにビビは回復した。しかしカッタツの顔は晴れなかった。
「実は困ったことになったのです」
カッタツ曰く、ハラベコが上に来るよう連絡を入れてから程なく、仮面をつけた謎の襲撃者がバズーカで箱舟を攻撃して来たそうだ。その攻撃はカッタツにより防がれ、襲撃者はキャッシュマンにより捕えられたが、そいつの発言が問題だった。
「神の島(アッパーヤード)は我々の物だ。青海人にくれてやる物などない」
私有地への立ち寄りは厳禁。人の物を勝手に盗むことも許されない。それがカッタツや銀河パトロールの常識であり、彼等の手前アズラエルもあまり攻撃的な手段は取れなかった。
しかし、神の島は土や岩石の塊であり、地上の島と大差ない。技術者にとって重要なのはむしろ雲だった。そういう理由もあって、今回は襲撃者の言葉を受け入れることにしたそうだ。なお、襲撃者はカッタツが手当てをして返した。
ハラベコが1人で女サイヤ人達の下へ戻ってみると、レタツが黄金の船を抱え、大喜びで飛び回っていた。近くの原住民に話しかけてみた。
「なあ、あれってくれたのか?」
「あ、悪魔のお仲間さんですか?」
「悪魔?」
「ち、違うのですか? 宙を舞い、謎の破壊的な光を発し、凶悪な笑みを浮かべ、ゴッド・エネルを一方的に痛めつけていたのですが。ついには飽きたのか、ゴッド・エネルを悪魔の契約者と思われる方に放り投げ、その方が黒魔術と思われる力でゴッドを殺してしまったのですが」
「ゴッド・エネル? 黒魔術?」
「ゴッド・エネルというのは我々の神でして。と言っても力で勝手に奪い取っただけの地位ですので、人望があるわけではなく。黒魔術というのは、よく分からない黒い渦のことでして、あちらの黒いヒゲの大男がゴッド・エネルに攻撃する時に使っておりました。あっ、今も使いました! あれです!」
ハラベコが見てみると、ティーチとキャベスが組手をしていた。ティーチはいつも以上になぶられ、時折黒い何かを出して反撃しようとしていた。悪魔の実の力だろう。やつはハラベコ等に力を隠していたのだ。
「金ぴかの船はくれるのか?」
「くれるも何も、悪魔様の為すことに反対することはできませんから」
「そうか。……本当はあげたく無かったりするか?」
「い、いえいえ! あれはエネルが製作を命じた忌まわしき船! 云わば我々の苦しみの象徴です! 破壊したいくらいです!」
「そうか。ではもらっておこう」
そうしてハラベコは黄金の船を持って帰った。地球人皆が唖然とした。キャッシュマンはその輝きに目を奪われ、よだれを垂らしながら「貴様等! 盗んできたな!」と怒鳴ったが、現地人に返せとは言わなかった。
空島の2大勢力であるシャンディアとスカイピアの民は、遠い昔から血なまぐさい争いつづけていた。エネルが倒れたことで、その争いに終止符を打ちたいという空気ができてきたようだった。ビビ、カッタツ、キャッシュマンはそれに大賛成だった。自らが第三者の和平の使者として積極的に動くことを提案し、ハラベコとアズラエルはそれを受け入れた。
やがてエネルの前神を名乗るガン・フォールとシャンディアの酋長による和平会談が実現した。始まりはガン・フォールの土下座だった。
「すまんかった。お主等の土地に勝手に上がり込み、追い出し、計り知れぬ苦痛を与えたのは我々じゃった」
ガン・フォールの真摯な態度に両勢力の有力者全員が衝撃を受けていた。非常に好戦的で知られるワイパーさえも固まってしまった。
「アッパーヤードは我々の手で取り戻したかったが、流れた血を想えば喜ぶのが先か。しかしお前達は、もはやあの土地を捨てられないだろう。大地の恵みが無ければ生きていくことすらできぬ。どうやって解決するつもりだ?」
「その通りじゃ。このように頭を下げておきながら、再び図々しくも、土地を分け与えてもらいたいと言わねばならん」
ガン・フォールは強い意志を持った目で酋長を睨んだ。ここで断られたら再び戦争になる。そのようなことは言わせないという一種の脅しのようなものが含まれていた。
ここでアズラエルが発言する。
「我々の力なら、神の島と同じような土地をこちらまで運ぶことができます。それで神の民の食糧事情は解決できるでしょう」
「何!? 本当か!」
「はい」
アズラエルの言葉に両代表がポカンと口を開ける。しかしガン・フォールは程なく難しい顔になった。神の島をシャンディアとスカイピアの民で分け合ってこそ、両民族が真の和解へ向かうはずだった。アズラエルの解決方法では、結局両者は分かり合えず、住み分けたということになる。
「その代わり、タダでというわけにもいきませんよ。我々も働いた分の要求はさせていただきます」
「要求を言ってくれ」
「我々は雲を使って軌道エレベーターと船を作ります。その資源を提供していただきたい。お金は支払いますよ。しかし、雲の海となっている部分は無償でいただきたい。もちろん、あなた方の生活を脅かす程いただくつもりはありません」
「軌道エレベーターとはなんだ?」
「分かりやすく言えば、あなた方の雲の道のようなものを、地上から真っ直ぐ上へ、星の外まで伸ばしたものです」
「それでは青海人が入ってくることになるのでは?」
「だからいいのではありませんか」
ガン・フォールは難しい顔をした。直感的に、この要求をのんだ方が厄介なことになるかもしれないと思った。しかし、シャンディアとの長い争いの歴史を止めたいという想いが勝った。
「いいじゃろう。民にはそのように伝える」
「ありがとうございます。人手が足りなくなったら求人を出すので請け負って下さったら助かります」
「そうか。まあ勝手にすればよい」
「そちらもかまいませんか?」
「我々はお前達がアッパーヤードにさえ立ち寄らなければそれでよい」
そして和平はなった。スカイピアの民のための新しい台地は、青海の肥沃な無人島を削り、ハラベコと大猿オンオンを中心に何往復もして空まで運んだ。それで1週間近くかかった。この間にロビンがポーネグリフを見つけたり、サボがドラゴンを呼んでハラベコ達に紹介したりした。そのさらに1週間後、船の設計図が完成し、些末な部品をウォーターセブンの職人や空の民に発注した。方舟の技術者達は新しい船を作りながら、いつの間にか作ることになっていた軌道エレベーターの設計に頭を悩ませるのだった。と言っても、そういうことを考えること自体が趣味のような連中なのだが。