※この作品はR-18です。

ドラゴンボール超H   作:ドラゴンボール超記念

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まさかのルフィで頂上戦争

 エニエスロビーに一番乗りしたのは赤髪海賊団だった。シャンクスがマイクを片手に船首に立つ。

 

「ああ、テステス。……ルフィのアホー! 間抜けー! はよ帽子返せー!」

「ホントにバカにすんのかよ!」

 

 一味全員が一斉に突っ込んだ。

 

「よし、帰るぞ!」

「ホントにバカにするだけなのかよ!」

 

 もう一度突っ込んだ。シャンクスは部下をからかうように笑った。

 

「なんだおめえらァ。俺がウソついたときなんかあったかァ?」

「いくらでもあるよ!」

「船長、せっかくこんなところまで来たんだから遊んで行かねえか? ガキをからかうだけなんていくらなんでもつまらねえぜ!」

「ああそうだ! やってらんねえぜ!」

「この日のために3キロも絞ったのに!」

 

 ガヤガヤと部下達が愚痴を述べていく。しかし彼等は怒りながらどこかで笑顔だった。この辺は茶番なのだ。素直になれないシャンクスの背中を押すための。

 

「チッ。しゃあねえなあ。そこまで言うなら暴れてみっか」

「よっしゃあ!」

「行くぞォ! 野郎共ォ!」

 

 赤髪海賊団が一斉に突っ込んでいく。シャンクスも遅れて突っ込んだが、足が速いのであっと言う間に先頭になっていた。

 簡単に門を壊し、中へ入っていく。しかし、予想された相手からの反撃は一切なかった。さらに奥へ進んでも、さらに奥に進んでもなし。どころか人が一人もいなかった。

 

「こりゃあハメられたらしいな」

「せ、船長おおお! 大変だあー!」

 

 その時、部下の1人が彼の下にニュース・クーの号外を持ってきた。記事はルフィについて。赤髪海賊団を迎え撃つため、エニエス・ロビーではなく海軍本部でルフィの裁判を行うことにしたらしかった。記事にはルフィとガープの関係、並びルフィとシャンクスの関係がつらつらと書いてあった。

 この動きをエース達も察知していた。何せウォーターセブンに役人がぞろぞろいて、エニエス・ロビーからの海列車がやってくる度、さらにゾロゾロと数が増えて行くのだから。エニエス・ロビーの裁判官や一部高官は軍艦で海軍本部に向かったが、残りはウォーターセブンに一時避難していた。

 

 当然その膨大な、1万近い役人から隠れ切ることはできず、そこで戦闘となっていた。しかしエースと戦いになる実力者は1人もおらず、圧倒的な力で蹂躙されていく。エースに鍛えられたゾロとサンジもCP9のネロとCP4のワンゼをあっさり撃退する活躍を見せた。しかし彼等の戦闘で街は破壊され、さらにアクア・ラグナと呼ばれる高潮が押し寄せる。住民にとっては泣きっ面に蜂だった。ここでウォーターセブンの市長アイスバーグが、自身が社長を務めるガレーラ・カンパニーを動かし、両陣営に停戦を求める。エース等は承諾し、住民の避難を手伝ったが、役人たちはなおも戦い続けた。エース等も捕まるわけにはいかず反撃したので、再び街は破壊されていき、住民の避難は遅れる。住民たちの両者への、特に政府への怒りはうなぎ昇りだった。

 そんな中、アクア・ラグナが過去に例がないほどの規模を見せ、とうとう政府の役人が戦闘を辞めて高台に逃げ出す。しかしその逃げ方がいけなかった。道を行く住民を押し飛ばし、我先にと頑丈な建物に避難し、まだスペースが残っているにも関わらず、閉鎖する。エース等を中に入れないためだった。先に中にいた住民が「他の住民も中に入れろ!」怒れば、彼等を「エースの仲間だな!」と言って銃で撃つ始末だった。

 やがてアクア・ラグナは沈静化していったが、住民の怒りは治まらなかった。

 

「政府の役人どもを殺せえー!」

 

 あちこちで暴動が起こった。アイスバーグが静まるよう言っても聞かなかった。しかし、そのアイスバーグは役人に捕えられてしまう。

 

「これだけの暴動を起こした大罪人、アイスバーグを反逆罪で逮捕する!」

 

 アイスバーグを救おうと多くの住民が駆け付けた。しかし彼等は住民のヒーローであるはずのガレーラ・カンパニー職長等によって阻まれてしまった。

 

「なぜだ! カリファ、カク、ルッチ!」

「あんたが悪いんじゃぞ」

「あの時大人しく設計図を渡しておけば、このようなことにはならなかった」

「酒場のブルーノ! お前ら政府側の人間だったのか」

 

 アイスバーグの秘書であるカリファ、職長であるカクとルッチ、さらに酒場の店主であるブルーノは、実は政府がスパイとして送ったエージェントだった。

 

「よよい! よよい! 姿を現すのかあ?」

「チャパパパ。目撃者は皆殺しでいいか? チャパ」

 

 他にも奇抜な格好の連中が集まってきた。皆殺しという言葉に民衆はゾッとした。

 

「火拳!」

 

 しかしそこに現れるエース。続くゾロ、サンジ、クリケット、ミスター・ファイブ、ミス・バレンタイン、オカマ、ミスター・スリー。こそこそ隠れながらナミとウソップ。

 

「なぜじゃ? お前達海賊が政府のやっとることにわざわざ首を突っ込む必要はないじゃろう」

「おめえ等にはむしゃくしゃしてるんでね。遊んでやるのさ」

「カク、小細工は必要ない。こんな上等な獲物、楽しまないともったいないだろう?」

「やれやれじゃ」

「俺もいるぜ。ガルルル」

 

 そんなやり取りがあって戦闘が始まった。CP9の最高戦力として格好をつけたルッチだったが、覇気を使えず、自然系の悪魔の実の能力者であるエースを攻撃することはできなかった。一方的に殴られ、焼かれ、あっという間に戦いが終わった。エースはナミやウソップの戦いをひやひやしながら見守る余裕まであった。

 結局、ミスター・ファイブ、ミス・バレンタインこそ酒場のブルーノに敗れたが、それ以外はエース等が全勝した。手負いのブルーノもガレーラ・カンパニーの職長パウリーに倒された。

 

 エース等は感謝か恨みか微妙な感じの対応をされ、街を去った。目指すはルフィが捕えられている海軍本部。しかしカームベルトの中にあるそこへ行くためには、人魚や魚人の協力が必要という。そのため、エース等は魚人島へ向かった。

 

 

 その頃、ハラベコは新しい大地でビビとナタルを鍛えていた。鍛えると言っても亀仙流。約20キロの重りを担がせて、ちょうど農作業の人手が足りないので、素手で耕し、邪魔な岩を退け、苗を植えさせた。2人共すぐに疲れて音を上げるが、その度カッタツの下で回復させた。仕事時間は朝7時から昼食を挟んで夕方5時まで。その後、ハラベコはサイヤ人同士で組手をし、セックスをしてから船に戻る。その間、ビビ、アズラエル、ドラゴン、サボ等は世界の行く末や革命の方法を話し合う。

 夜はハラベコがビビとナタルに気の使い方を教える。ロビンはカッタツの船で本を読みながら、耳だけそこに咲かせて話を聞いていたりする。日中の疲れもあり、ビビとナタルは気の練習中にハラベコの部屋で寝てしまう。しかし2人は性欲がないのか、使命を優先しているのか、一切男が欲しいような仕草を見せない。ハラベコも遠慮をして、寝ている間に胸やお尻を触ったり、汗がにじんだ下着を嗅ぐ程度だった。

 スカイピアの住人は、ハラベコ等をかなり慕っていた。空を恐怖で支配していたエネルを打ち破り、大地を運んでくれた時点で感謝してもしきれなかった。さらに、農作業までしてくれるのだ。真面目な人柄がひしひしと伝わってきた。そんな彼等が、空いている時間も何かを倒すための修行しているのだから、応援せずにはいられないだろう。

 

「へそ、いつもありがとうございます。これ、スープ作ってみたんです。よろしければどうぞ」

「んちゃ。いただこう」

「ああ君達、ジェットダイアルがあったんだ。もらってくれ」

「ああ。技術者に渡しておく」

 

 という風に、食べ物や貴重品をけっこうくれた。コニスという金髪の美少女の笑顔は特にまぶしかった。

 なお、ハラベコは「へそ」という挨拶は間抜けな感じがしてやりたくなかったので、「んちゃ」と返すことが多かった。

 青海のニュースは見ていた。ルフィ等の裁判に赤髪海賊団が乱入しようとしたので、ルフィ等を一旦インペルダウンに連れて行き、海軍本部に戦力を揃え、改めて海軍本部で裁判を行うという。しかもその様子を各所へ中継で流すという。ルフィとガープ中将の関係、麦わら帽子と海賊王、シャンクス、ルフィの関係も書いてあった。裁判が親族のコネによって変わることのない、公正なものであることを証明しつつ、海賊の脅しには屈しない、強い海軍であることをアピールしたいらしかった。

 ふと、ハラベコはビビやドラゴン等の会議に呼ばれた。

 

「作戦の大枠が決まりましたので説明します」

「ほう」

「赤髪と政府が対峙するちょうどその日、マリージョアを攻め、新政府を樹立させます」

「それはまた。急に来たな」

「お前達が暴れ始める前に終わらせるべきだと思ってな」

 

 ドラゴンが喋ったのでハラベコは驚いた。怒りや悲しみが刻まれた眉間は深く、根暗な感じがしていたからだった。

 突入の概要自体は、ハラベコが主要な敵を潰し、残りを革命軍が制圧するというあっさりしたものだった。しかし問題は新政権の誕生のさせ方。いかにセンセーショナルに、民衆へ希望を持たせ、真面目な海兵や役人に配慮しつつ、その後の反乱を鎮めるか。綿密な計算が必要だった。

 

「最も重要なのが新五老星の人選か。候補は大将クザン、七武海バーソロミュー・クマ、魚人の王ネプチューン、天竜人と同格とされるネフェルタリ家のコブラ、そして革命軍のトップであるドラゴン。バランスの取れたおもしろい発想だな。俺なら女性を入れるが」

「老なんてついたものに女性は選べませんよ」

「じゃあ名前を変えればいい。五聖人とかな」

 

 というような形で話し合いは進んだ。事前に根回しをするためにアラバスタや魚人島へ向かうことになった。バーソロミュー・クマは実は革命軍の幹部なので、当日ドラゴンが姿を見せれば素直に従うという。問題はクザンだが、断られてもマリージョアには無理やりにでも連れてくるという。その連れてくる役は当然のようにハラベコだった。

 

 まずアラバスタへ向かった。ビビが説明し、ハラベコ等を謁見の間に通す。コブラ王はとても難しそうな顔をしたが、新五老星は臨時であり、1年で解散することを告げるとなんとか請け負ってくれた。次に向かったのは魚人島。海底1万mにあり、方舟でも壊れてしまうかもしれないので、革命軍の船をシャボンディ諸島のめちゃくちゃ頑丈なシャボンでコーティングしてから向かうことになった。

 

 ところで、シャボンディ諸島には非合法なはずの奴隷市が公然とあった。この世界の権力のトップである天竜人が気に入っていたため、海軍も手が出せないのだった。天竜人を適切に裁くため、またビビに世界の黒い部分を見せるために(バロックワークスである程度見ているが)、これを確認しておく必要があった。

 ハラベコとビビが2人で奴隷市に向かった。ショーのような軽い雰囲気の建物の中に入ると、天竜人だけではなく、海賊や大社長や貴族や王族がいた。中にはビビに声をかけてくる者もいた。

 

「まあ! ネフェルタリ家の! いけすかない真面目ちゃんだと思ってましたが、ブホホホ。あなたもおもちゃに興味があるようですわね。そちらのダッサイ服の少年は奴隷かしら? ブホホホ。そういうのが趣味でしたのね」

 

 くるっくるカール、デブでにきびまみれの不細工な女だった。どこかの国の王女らしかった。ハラベコは殴りたくなったが、天竜人の前で目立たないために自重した。

 奴隷市はそれなりのにぎわいを見せた。ハラベコは若い女を買いたくなったが、ビビがいるので我慢した。5人くらい売られる人間を見たところで「もうけっこうよ!」とビビが怒って出て行ったので見学も終わった。

 

 コーティングが終わるまで島をぶらついた。シャボンディ諸島はグランドラインに入ってからログポースに従う海賊の全てが行きつく場所。だから数がやけに多く、民間人に危害に加えている連中を見つけては狩って行った。奴隷として売り出そろうとする人攫いも、見つけたら気絶させた。

 野次馬たちは期待のルーキーがまた現れたと言って盛り上がっていた。ハラベコも注目を浴びることがあった。ハラベコ等は暇だったので近くのおっさんに話を聞くことにした。

 

「今、この島には億超えのルーキー達が10人も集まっている。一番やべえのは白ひげのところの2番隊隊長、懸賞金5億5000万の火拳のエースだがな。しかしあんたのその服、”神速の荒鷲”で有名なキャベス一味の男Hじゃねえか?」

「おそらく男Hだが、何か?」

 

 隣のビビが口元を覆いながら噴き出す。

 

「へっへっへ、こりゃあすげえ。世間じゃお前達がルーキーのトップだっつってるぜ。賞金稼ぎとしては異例だがな」

 

 おっさんは「このぉ、羨ましいぜ」と言いながらハラベコの胸を肘で小突いた。見た目が少年であることに加え、海賊では無く賞金稼ぎだからあまり警戒していないらしかった。この世界の新聞が『女3人はすさまじいが男だけは大したがことない。通訳専用機ようなもの』というような書き方をしていたのもその原因だった。

 

「エニエス・ロビーの1万の役人とCP9をぶっ潰したエースの一味。彗星のごとく現れ、伝説の巨人ドリーとブロギーを捕え、クロコダイルの野望を阻止したキャベス一味。こりゃあとんでもねえことになるかもしれないな」

 

 ハラベコは特にエースとルフィのバタフライ効果が気になった。麦わらの一味がエースやバロックワークスの一部と手を組んだことは確認し、これならナっちゃんも安心とは思っていたが、忙しかったのでそれ以降はよく知らなかった。

 

「ルーキーじゃあキャプテン・キッドが3億1500万で最も高い賞金首だ。こいつは残忍さで有名で、気にくわないやつは片っ端から殺していくイカれた野郎さ。次に高いバジル・ホーキンス、X・ドレークは大人しいらしいが、怒らせたらヤバいな。お前さんが狙うなら、1億800万のウルージ辺りがいいんじゃねえか? 海賊狩りのゾロも1億2000万だが、あいつはエースと手を組んでいるから厄介だ。1億4000万のジュエリー・ボニーもいいかもしれねえな」

「おおっと?」

「ん、どうした?」

「いや、ジュエリー・ボニーがいるのか。ふむ」

 

 ハラベコはその女を探していた。近くにいるのだったら拾いに行くべきかと思うが、時間や立場は厳しい。

 

「ハラベコさん、勧誘している時間はありませんよ」

 

 実際には時間があったかもしれない。しかしビビの本音としては、空島で英雄と称えられるハラベコが女海賊を勧誘している場面を見たくないのだった。

 

「まあ、そうかもな」

「ハハッ。お前女好きっぽいもんな。さすが”エロガキ”の男Hだぜ。今日もこんな美少女をはべらせてよお。街で拾ったのかい? お前等儲けてるもんなあ」

「バ、バカにしないでください!」

 

 ビビがおっさんを殴ってどこかへ歩き出したので、話は終わりになった。ハラベコ等は知らなかったが、ハラベコ等についての情報は、海軍がアラバスタの兵士に聞き取り調査をしたものが元になっていた。兵士の誰かが「あいつは女の尻に敷かれてるだけのエロガキだ。名前なんざ男根Hでいい。ただ、通訳が出来る」のようなことを言っていたのだった(男根Hとは新聞に載せられなかったが)。ビビがハラベコの弟子になったことへの妬み恨みも含まれていた。

 

 ふと、大きな爆発音が聞こえ、街が騒がしくなった。ハラベコはビビを背中に乗せて、騒動のする方へ向かった。

 

「大将が来るぞおおお!」

「火拳の野郎、天竜人を殴りやがった! 白ひげと海軍で戦争でもするつもりか!」

「赤髪との一大決戦の時だってのに! ここに白ひげまで入っちゃやべえんじゃねえか!」

 

 逃げていく野次馬がいろいろと教えてくれた。

 

「天竜人を殴るなんて、勇気のある人ですね。さすが白ひげの隊長と言ったところでしょうか」

「俺達はそれ以上のことをするんだぞ」

「あっ、そうですね。そうでした。これからどうします?」

「海軍大将の力を見たい。戦闘はしないさ」

「分かりました。ではお願いします」

 

 ハラベコは島で一番大きな気を探った。上空100mくらいから探していると、それらしき気がチカチカ光りながら凄まじい速さで動いていた。

 

「速いな。見えるか?」

「いえ、全く。チカッと光るのは分かるのですが」

「見るのでは無く気を感じるんだ。と言っても、あの速さじゃあオンオンですら捉え切れないかもしれないな。出だしの加速度は俺と比べても遥かに大きい。一瞬で最高速度に到達している」

「だ、大丈夫なんですか? 海軍ひっくるめて相手をしても楽勝、みたいなことをおっしゃってましたけど」

「ああ、俺なら対応できる。やつはおそらく光の能力者だが、かめはめ波なら光速以上のスピードが出せる。それに、やつは光になるまでに少し間がある。動きだってそれ自体は直線的だから分かりやすい。たぶんオンオンでも慣れればすぐに勝てるはずだ」

「そ、そうですか。この世界の最高戦力なんですけどね」

 

 ビビは信じているのか微妙な反応だった。しかし今さら計画を変更するわけにもいかないので覚悟を決めるのだった。

 

「ほらな」

 

 ハラベコは不意に手を後方に向けた。気弾を放つようなポーズだった。一瞬遅れて、手のひらの向こうが眩く光り、人が現れる。

 

「おやあ。これはこれは。アラバスタのビビ王女ではありませんか。初めまして」

 

 大将黄猿ことボルサリーノだった。上空でチラチラ彼を見ているハラベコが気になって飛んできたのだった。黄猿は空中を月歩で跳ねながらうやうやしく挨拶する。

 

「た、大将黄猿! こ、こちらこそ初めまして。このような格好で申し訳ありません」

 

 ビビはハラベコの背中に股を広げて乗っていた。慌てて背中の上に立ち、改めて挨拶しようとするが、緊張のあまり落っこちそうになる。しかしそこをハラベコがキャッチする。

 

「お姫様だからお姫様抱っこ。当然ですよね」

「キミも飛べるようだねえ。月歩だと思ってたんだがそうでもない。どうやって浮いてるんだいそれえ?」

「まあ細かいことはいいではないですか。それよりも、海賊を捕えなくていいのですか?」

「おっとぉ、これはまいったねえ。だけど君も捕まえようと思わないのかい? 金のなる木が逃げちゃうよぉ?」

「戦闘は女性が中心でして」

「ふうん」

 

 黄猿は疑うような目でハラベコを見ると、戦闘に戻って行った。ビビの手前あまり失礼なことはできないし、逃げていく海賊を放っておくこともできなかった。

 黄猿は光の速さでルーキー達を一方的に痛めつけていった。しかし不意に立ち止まり、どこかへ一気に移動した。ハラベコは空から黄猿の後ろをついていった。

 

「火拳!」

「くっ、くそ!」

 

 エースが金太郎みたいな格好の海兵に必殺技を放つ。それで終わるはずだった。しかし、突然火の前に光が現れた。その光は眩く輝きながら火を遮り、やがて火の勢いが弱まると人型となっていく。

 

「危なかったねえ。戦桃丸くん」

「おじき!」

 

 戦闘丸は覇気使えるかなりの実力者。黄猿はエースより若干強い。エースの一味は全員健在だったが、状況は逆転したと言えた。

 

「わっしが火拳を押さえるよお。戦闘丸くんは残りを片付けておくんなさい」

「ああ。それがいいようだな」

 

 エースと黄猿は互いに覇気を纏い、戦闘を始める。余波で近くの森林や台地が削られていく。

 戦闘丸は多対一。しかしエースの一味2番手のゾロと3番手のサンジが同時に放った必殺技はそれぞれ片手で受け止められた。さらには反撃を食らわせる。しかしそこで戦闘丸に雷が落ちる。

 

「ぐくっ」

 

 ナミのサンダーボルト・テンポだった。戦闘丸も痺れと熱でダメージを負う。そこへウソップが攻撃。

 

「食らえ! 卵星!」

「なんだこりゃ! く、くせえっ」

 

 腐った卵を顔にかけられたのだった。肉体のダメージはないが、集中力が乱れ、覇気の精度が若干鈍る。

 黄猿はエースに負けるわけではないが、攻撃しても火になって受け流されるので、なかなかダメージを与えられないでいた。そこでエースを押さえながら麦わら一味等に攻撃することにした。

 

「や、やめろ!」

 

 エースが気付いて攻撃しようとするが、その前にビームが放たれる。狙ったのはゾロだった。

 しかし、そのビームの前に乱入者が現れる。ビームは乱入者の長剣によって防がれる。

 

「あんたの出る幕じゃないでしょうよ」

「戸惑いこそが人生だよ、黄猿くん」

「レイリーのおっさん!」

 

 かつての海賊王の右腕、シルバーズ・レイリーだった。これで再び形勢が逆転。黄猿も少し戸惑った。しかしそこに再び乱入者が現れる。

 

「ま、またこいつか!」

「クマァ! そいつらエースの一味だァ! 捕まえろォ!」

 

 バーソロミュー・クマだった。ただしエースが一瞬で破壊してしまったロボでは無く、本物。聖書を持っていることから判別できる。

 クマは一味に攻撃をせず、黄猿の真横に移動した。

 

「クマァ? 何をやっているぅ?」

「政府は赤髪と白ひげの共闘を望んでいない。今は引け」

「そりゃあそうだけどねえ」

 

 黄猿は立ちどまり、しばらく考え込んだ。しかし結局背中を見せた。

 

「運がよかったねえ、ひよっこ共。今は赤髪への対応で忙しくてねえ。そういやあんたも赤髪の知り合いだったか。まさか来たりしないよねえ」

「どうだろうな。行かないとは思うが、気分次第だ」

 

 レイリーはあっけらかんとした表情で笑った。黄猿は面倒そうに深いため息をついた。

 そんな様子を見ていると、アズラエルから船のコーティングが終わったと連絡が入った。ハラベコは急いで船に戻った。

 

 深海では100mを超えるような大きすぎる生き物がうじゃうじゃしていた。ビビやアズラエルは生きた心地がせず顔を真っ青にしていたが、自力で戻れるハラベコにはあまり恐怖が無かった。

 ドラゴンの強烈な覇気による威圧もあって、巨大生物に襲われることはなかった。逆に、革命軍所属の魚人であるハックが巨大生物を捕え、そいつに船を引かせることでスピードを増した。やがて魚人島に到達した。入口の付近にデカデカと白ひげの旗が立っていた。

 

「本当に空気があるのか」

 

 アズラエルやナタルは魚人島の周りにはっきりと分かる巨大な空気の層があることに驚いていた。半信半疑だったのだろう。シャボンディ諸島にチラホラ飛んでいる妙に頑丈なシャボンが魚人島全体を覆い、水の浸入を防いでいるのだった。さらに、ヤルキマンマングローブと呼ばれるとても巨大なマングローブの根元が島の上方にあり、なぜか光り輝いているので、島全体も太陽を得たように明るいのだった。幻想的な光景だった。

 

 それに多少見惚れてから、島の中へ入った。すぐに兵士が集まってきたが、ハックが事情を説明すると、「ハックさんが言うなら」と兵士は引いていった。またネプチューン王も「ハックが言うなら」と直に会ってくれることになった。ハラベコ等は、ハックが魚人空手の師範だとか微妙な男と思っていたが、意外と重要人物だったのである。

 ネプチューン王は、ドラゴンがマリージョアを攻めると行った時、驚いて腰を抜かした。ネプチューン王を五老星にすると言ったらさらに驚いてギックリ腰になってしまった。

 

「わ、わしはもう老いた。王子の誰かにやらせるんじゃもん」

 

 カッタツは雲上で船を造っているので、今すぐ王を回復させることはできない。それに、当人が弱気なので、皇子たちに頼むことにした。

 

「いえ、私はふさわしくありません」

 

 しかし、第一王子に断られた。第二王子、第三王子も同じだった。理由も同じだった。

 

「私は、お恥ずかしながら、人間というものを憎んでいるからです」

 

 彼等の決意は固いらしかった。ドラゴンは「五老星もハックにやってもらうか?」と言い出したが、当のハックが「いやいや、私など一介の武人でして。まだ第一王女がおられます。年齢こそ14歳とお若いが立派な方です」と言うので王女に会いに行くことにした。しかし拒否された。王女はバンダーデッケンのマトマトの実で常に命を狙われており、頑丈な倉庫から外に出ることは滅多にないのだった。

 

「だったら俺がバンダーデッケンを殺したら結婚してくれるかもしれないな」

 

 ハラベコは人魚姫という響きだけで盛り上がっていた。手配書でバンダーデッケンの顔を確認すると、やつの攻撃が飛んでくるまでジッと待った。やがて謎の力で直進し続ける斧を確認した。それを殴って破壊すると、それが飛んできた方へ真っ直ぐ突っ込んだ。

 シャボンで身体を覆わなかったが、気で周囲の空気を覆えば、シャボンがなくとも空気を維持できた。それが維持できる最大スピードで真っ直ぐ飛びつつ、バンダーデッケンらしき気を探った。やがて山のように巨大な丸っこい生物が見えた。そいつがバンダーデッケンの仲間だとは聞いていた。

 ハラベコはそいつ周囲の強い気を探った。見つけた。そこへ一直線に飛ぶ。手配書通りの顔を発見。

 

「死ねえええ!」

「は? ウバホホホオオオオッ!?」

 

 バンダーデッケンは腹を拳で貫かれ、気絶した。一応即死させないように心臓からは外したのだった。

 ハラベコがバンダーデッケンを連れて帰ると、王達にとても感謝された。人魚姫であるしらほし姫にも合わせてくれることになった。感謝として一緒に食事までしてくれるらしい。ハラベコはとても気分が乗っていた。人魚姫が恥ずかしがって出てこないという話を聞いてさらに興奮した。

 

「ちょ、ちょっとだけですよ。ちょっとだけですからね」

 

 兄に腕を引っ張られ、人魚姫は入口からちょこんと顔だけ見せた。兄の身体を覆い尽くすほどもある顔だった。

 

「デ、デカくね?」

 

 見てくれはかわいいが、なんか違うと思ったのだった。

 適当に挨拶してから、本題に入った。

 

「む、無理です無理ですぅー!」

「そんなことはございませんよ」

 

 当然の反応だった。兄達も「何を言ってるんだこのおっさん」という風にハックを見ていた。

 

「私、人間界に行ったことすらないんですよ! それがどうしていきなり政治家のトップになれるんですか!」

「残念ですけど、そういうことですからお引き取りを」

「待つんじゃもん」

 

 断られる雰囲気だったが、ネプチューン王が割って入った。

 

「臨時政権は1年じゃったな?」

「そうだ」

 

 ドラゴンが答える。

 

「後見人や護衛を付けることは可能か?」

「もちろんだ」

「よし。お主ら全員、4人そろってマリージョアに行くんじゃもん。誰かが五老星になったらいい」

 

 王以外の全員が驚いた。

 

「ち、父上! 本気ですか!」

「うむ。ちょうどいい機会じゃもん。世界は大きく変わる。おそらく大海賊時代が始まった時以上にな。その荒波を乗り越えていくことを想えば、この辺りで経験を積んでおいた方がいいんじゃもん。もっとも、その男の近くにおる限りは何も怖いものはないじゃろうがな」

 

 王は探るような目でハラベコを見下ろした。

 

「確かにバンダーデッケンを倒した速さは見事でしたが」

「あんなものは力の一端でしかない。そうじゃろう?」

 

 王には隠している力が見えるのかもしれない、とハラベコは思った。単純にバンダーデッケンを追う時の凄まじい気を感じただけかもしれないが。

 

「ふっふっふっふっふ。まあな」

 

 こうして王子王女の4人を引きつれて、革命軍の船へ戻ることになった。しかしここで予想外の人物と出会う。

 

「あっ、てめえは!」

「ハック!」

「ジンベエ!」

「ナっちゃん!」

「ナミよ!」

 

 エースの一味が大柄な魚人と歩いていた。大柄な魚人は七武海の1人であるジンベエで、ハックの友人らしい。ガッチリ握手を交えていた。

 エースはジロジロとハラベコを睨んでいた。今にも飛び掛かりそうだが、ジンベエとハックのやり取りに遠慮して我慢している感じだった。

 

「おいテメェ、サボのやつをどこへやった」

「え? タロさの声? ピッコロ?」

 

 ハラベコは周囲を見回した。

 

「どこ見てやがんだ! 俺が話しかけてんだよ!」

 

 話しかけて来たのはエースだった。

 

「ああ、君ね。そう言えばそうだったね」

「何言ってやがる。サボの居場所をさっさと言いやがれ。さもねえと」

「何故俺が知っていると思ったのか不思議だが、まあ知ってはいる。だが今は、あまり言いたくないな。拠点がバレる」

「なんだと!? だったら力づくで!」

「ま、待ってください! ハラベコ様は私を救ってくださったっ」

 

 エースがハラベコの下へ歩もうとすると、しらほしが両手を広げて割って入った。恐怖のあまり目からは涙が出ていた。

 

「姫! なぜ外に!」

「バンダーデッケンは捕まったのだ。両手は切り落としてある」

「何!?」

 

 エースは女の涙に弱い。ハックの話を聞いたジンベエがハラベコに感謝し始めたこともあり、今回は見逃すことにした。

 

「チッ。命拾いしたなてめぇ」

 

 もう1つ言えば、エースはサボをやったのはハラベコでは無く女達の誰かだと思っていた。覇気を考えればハラベコは彼女等の部下であり、下っ端を痛めつけて場所を吐かせるのは趣味では無かった。

 エースの一味は海軍本部の赤髪と海軍の戦争に乱入するために、カームベルトの海王類から船をジンベエに守ってもらうつもりだった。ジンベエは「中へは入らん。近くまでじゃ」と条件付きで請け負ったが、それをネプチューン王に報告するため王宮へ向かっていたのだった。

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