ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
立場としては、ハンコックよりクザンを優遇すべきだが、そこは美女とおっさんだ。俺は左手でクザンの腕をつかみ、右手は抱き寄せるようにハンコックの腰に回す。
キャベスは、追いかけてきていない。戦闘の気配も今は無い。いつ爆発するか分からないから早めに戻りたいところだ。美女を殺させはしない。おっさんも、あまり殺してしまったら今後の統治に響く。
「一応礼を言っておく。助かった」
クザンが低い声で話しかけて来た。律儀なことで。
「いえ、お気になさらず。それよりも、突然このような事態に巻き込んでしまったすみませんね。謝っておいてあれですが、新政権には積極的に協力していただけると助かります」
クザンはまだ呆けたような表情で反応は薄い。
「聞いていいか?」
「どうぞ」
「なんで俺が五老星なんだ?」
「バランスを取ったのですよ。どこからも非難が出にくいように」
「なぜセンゴクさんじゃないんだ?」
「あの方にも重大な役目を任せるようです」
「五老星よりか?」
「いや、どうでしょうね。難しいところです」
そんなやり取りをしていると、ハンコックがハッとしたように動き出した。
「お、男が私に触るな!」
ハンコックは体をひねり、俺の頭に殴り掛かる。顔には豊かな胸が押し付けられ、気持ちいい。
攻撃は、キャベスに比べればポカポカという表現で済むもので、かわいらしい。痛くはないが、悪魔の実の力らしき妙な気も感じる。しかし、妙な力は俺の気で弾くことができている。
「痛ッ! なんて硬い頭なのじゃ!」
ハンコックは耳元でプンスカ怒る。これまたかわいらしい。言動は女帝というよりおてんば娘みたいだ。
そして美女の顔があまりにも近くて、キスしたくなる。海賊女帝が美人だとは知っていた。七武海の手配書を見て、いつか手に入れようと思っていた。しかし彼女は29歳で、もはや全盛期では過ぎていると思っていた。ところがどうだ。白くてもちもちの肌は、完全に10代のもの。いや、一桁すら届きそうな潤いだ。それでいて女サイヤ人達に迫る肉付き。腰はワンピース特有の細さだが、爆乳とお尻がすごい。足が長い。身長もキャベスやオンオンよりちょっと高いんじゃないか?
しかしデートの時は終わる。もうマリージョアに着いてしまった。突然、ハンコックの気が激しく乱れる。
「ここは……!? は、離すのじゃ! なぜわらわをこんな下衆の溜まり場へ連れて来た!」
「て、天竜人のことですか? なら安心してください。全員捕まえています」
「何!?」
ハンコックと同時にクザンも驚いた。ハンコックの気は若干落ち着くが、今度はクザンの気が攻撃的になっていく。
「クザンさん、怒るのは分かりますが落ち着いてくださいよ。今は時代の節目、変わり目の敏感な時。対応を少し間違えるだけで、何万もの死人が出てしまいますよ」
「お前達、革命政権だったのか」
「そうです。しかしこの場での戦闘は控えてくれませんか? 先に話を聞くこともできるはずです」
クザンを大人しくさせるのも俺の役目なので、適当なことを言ってなだめてみる。そうする間にも、五老星の部屋の窓が見える。ドラゴンの演説が始まるところだった。
「まず、諸君らに謝りたい。すまなかった」
「ド、ドラゴン!?」
クザンはドラゴンに殺気を向けるが、ドラゴンは気にせず、徐に地べたに膝をつく。そこで、頭を強く地面に打ち付ける。土下座だった。
「な、何を!?」
「革命という手段! 数え切れぬ程の人を傷つけ、死に至らしめた! その中核たる責任は私にある! このようなことで許されるとは思っていないが、私を恨む誰かの胸が少しでもすくようであれば幸いに思う!」
ドラゴンは力強く顔を上げた。額には先ほど地面にぶつけた時にできただろう血痕があった。ドラゴンは深い眉間をさらに寄せ、必死の形相で吠えた。
「私は約束する! この臨時政権は1年! 五老星の任期を終えた直後、私は自首する! 私は自身が法によって裁かれるべきだと考える! 裁判の結果が磔でもなぶり殺しでも受け入れるつもりだ!」
すさまじい勢い、覚悟だった。ドラゴンを敵視しているはずのクザンも言葉を失い、茫然と見つめる。ハンコックもショックを受けたような顔だった。
不意に、ドラゴンがにこりと笑った。下手くそな、不気味な笑顔だった。しかしそれゆえに、彼の感情が込められているような感じがした。
「次に、長く政府のありように苦しんでいた者達に伝えたい。革命は成った。おめでとう。そしてありがとう。皆の自由を求める意志のおかげで、ここまで来ることができた。じき、世界に変革が訪れるだろう。しかし、私個人にできることはたかが知れている。現状では行政のトップが変わっただけに過ぎない。新しい政府は、いや世界は、皆の手で作り上げていくことになるだろう。よければ”声”を聞かせてもらいたい。1年という任期だが、できるだけ多くの意志を汲めるように努めたいと思う」
ドラゴンの顔がフッと普段の無愛想に戻る。コブラが問いかける。
「以上かな?」
「ああ」
サボの持つカメラがドラゴンからしらほしへ移動する。しらほしは全体が入りきるよう大分座席を後方に下げている。
「では次、しらほし王女に挨拶してもらおう」
「は、はひいいい! わ、私、リュウグウ王国の王女、しらほしですぅ! 未熟者ですが、父や兄達の協力を得ながら頑張りたいと思います! ま、まず、私が選ばれた理由をお話させていただきます!」
かわいそうなくらい緊張している。大丈夫なんだろうか。俺みたいな男は癒されるが、女や無愛想なおっさんは腹を立ててしまうかもしれない。
「魚人、人魚である私達と、皆様方人間達の間では、長く不幸な関係が続いて来ました。しかしそれは、互いが互いを知らない、無知から来るものでは無かったでしょうか? 知らないから恐れるという感覚は、私達魚人や人魚も、皆様方人間にも共通であると、私の知る人間様からうかがっております。ですから、無知で無駄に図体の大きい私があえて表に出て、広報担当のようになることで、互いを知っていければよりよい関係が築けるのではないかと、皆様考えられたようです。ああすみません! 私、魚人や人魚のためだけに働くようなことは決してしません! 皆様の代表になったからには皆様のために、精いっぱい……」
ふと、後方からなかなかの速度で戦闘力300くらいの気が近づいてきていることに気付いた。首だけ後ろに向ける。バーソロミュークマが空気を蹴りながら飛んできていた。
ドラゴンが立ち上がり、俺達へ近づいてくる。
「バーソロミュー・クマと大将青キジには新政府の概要を伝える。その後就任の挨拶をしてもらうことになる」
「俺がそれに従うと思うか?」
「断ることも出来る。五老星には拒否権があるからな」
俺は窓から中に入り、2人を中に降ろす。クザンは険しい表情でドラゴンを睨んでいる。ハンコックは戸惑っている感じだ。
「ハラベコ殿は至急マリンフォードに戻っていただきたい。キャベス殿がそろそろ限界だ」
「あ! そうだった!」
俺は慌ててドアへ飛び込む。
「あ、おい! わらわはどうしたらよいのじゃ!」
「こちらの方が安全だ。あそこは地獄になるかもしれん」
ハンコックのケアをしたかったが、ドラゴンに任せることにする。この間にも美女があの女に殺されているかもしれないのだ。全力で飛ぶ。
あっという間にマリンフォードの海軍本部が視界に入る。派手な戦闘はまだ始まっていない。しかし赤髪海賊団らしき連中とゴーイングメリー号は既に港を囲っている。
「ルフィのアホー! 間抜けー! はよ帽子返せー!」
「ア、アホはシャンクスだー! こんなとこまで悪口言いに来てんじゃねえよ! バカ!」
ルフィとシャンクスが船と裁判所の間で何やら言い合っている。海賊たちは苦笑い。海兵は焦りや怒り。
「なぜ動かんのじゃセンゴクさん! あんなもん政府を名乗るテロリストでしょうがい!」
「まだ動く時ではない! 見極めるのだ! 革命軍と新政権では全く話が異なる!」
「んなことやっとる間に悪が栄えたらどないすんじゃあ! あんた責任取れるんか!」
「今動けば、我々こそがそのテロリストだ!」
「なんじゃとお!?」
サカズキとセンゴクも言い合っている。こちらは今にも戦闘になりそうだ。
「元帥がテロリストを擁護するなんぞ、海軍の恥じゃ! わし自らこの世から消し去っちゃる!」
「相変わらず頭の固い男だ!」
先に動いたのはサカズキ。センゴク目がけてマグマの拳を突き出した。センゴクは急に巨大化し、大仏のような姿となってそれを受け止める。熱はどうするのかと思ったが、厳密には黄金の光によってマグマはセンゴクの体まで達していなかった。
「おいてめえ等ァ! 新政府に文句があんなら私にかかって来やがれぇ!」
キャベスが叫ぶが、海兵達は言葉が理解できないので怯えるだけだ。しかし、意外なことに七武海の剣豪が動いた。確かミホークとかなんとか。
そいつは身の丈程もある黒刀をその場で一閃する。すると巨大な斬撃が生まれ、二次元的に広がりつつキャベスを襲う。
「へっ、こんなもの」
キャベスは笑いながら腕を軽く振るう。すると斬撃を覆い尽くすように気功波が飛び出す。それは斬撃をのみ込み、そのままミホークや海兵等に襲い掛かる。
「くっ」
「うわああああ!」
ミホークは避けるが、直線状の海兵は動きが鈍く、間に合わない。気功波が地面にぶつかった時の衝撃を考えると周囲の人間もけっこう死ぬ。美女も含まれる。なんてことにはさせん。
「だりゃあ!」
衝撃波に割り込み、殴って上方にかち上げる。
「だからあんまり殺すような攻撃はしないでくれと!」
「だアホがあ! 戦闘中に余計なこと言ってんじゃねえ!」
ダメだ。全く聞く気が無い。しょうがないから俺が海兵を守ろう。
手がたくさんある海兵が後ろから殴り掛かってきた。月歩で空を跳んでいるようだからおそらく中将。前を向いたまま、ギュン、と一瞬でその海兵の上方に移動する。
「邪魔すんなあああ!」
ゴツンと拳骨一発。海兵は勢いよく地面に叩き付けられる。
「オニグモ中将! き、貴様あああ!」
正当防衛だと思うが聞き入れてくれるはずが無かった。周囲の海兵の3分の1くらいがそれを契機に突っ込んでくる。俺は作業するように男共を潰していき、女だけはボディタッチで許す。お尻をさすったり胸を突いたりだ。
「く、クソッ! 触るな」
「ひいっ! そ、そこはお尻!」
「ふっふっふっふ」
徐々に俺の周りは女海兵だけになっていく。気絶した男で足場が悪く、女海兵がコテンと転んだりするのもおもしろい。なんてやってると、再びキャベスが気弾を使いやがったから弾きにいかなければならない。しかも今回は連続気弾。
海兵には見えない速度で動き回り、全て弾いていく。
「えっ、あっ」
「な、なぜ助けた!」
「女は助ける! 男は自分で助かれ!」
ワンピースなら、ドン、と表現してくれただろうか。キャベスの方を見てみると、いつの間にかシャンクスとミホークが共闘してキャベスと戦っている。
「はははははは! もっと踊りやがれええええ!」
「久しく忘れていた感覚だな」
「後ろだ! 鷹の目!」
「ぐっ」
「いいぞ! よく今のを避けたな! もう一段階スピードを上げてやる!」
「くっ、舐めやがって!」
キャベスがごちゃごちゃ言っているのが、シャンクスには聞こえているようだ。見聞色の覇気というやつか。ニュータイプにも似ているし、頑張ればクルーゼのアレや元気玉も使えるかもしれないな。
「せ、船長! ルフィを助けるんじゃないんですか!?」
「アホンだらァ! 祭りに来たんだろうが! せいぜい楽しみやがれ!」
「ええっ! 遊ぶってやつも本当だったのか!?」
船員がツッコミを入れたりする。しかし船員に声を返した隙をキャベスは見逃さなかった。
後ろから背中を蹴りかかり、水平方向に凄まじい勢いで飛ばす。
「赤髪!」
「シャアッ!」
さらにシャンクスを心配してキャベスから視線を外したミホークの眼前に迫り、腹へ強烈なアッパーを浴びせる。
「くっ。む、無念」
ドサリと落ちるミホーク。
「オラオラ! もっと張り合いのあるやつはいねえのか! 全然遊び足んねえぞ!」
キャベスはそう言うが、おそらくこの場で考え得る限り最強のタッグがあっさり敗れたことで、もはやキャベスと戦おうとする者などいなかった。
「シャングスをよぐもおおおおお!」
「ルフィ! よせ!」
いつの間にか助かっていたルフィを除き。
「ゴムゴムのおおおお! ピストル!」
「ほう。伸びるのか」
キャベスはルフィの伸びた右腕を掴むと、それを鞭のように振るい始める。
「うわあああ!」
「ルフィ! ぐっ」
ルフィを助けようと突っ込むエースだが、ルフィの鞭で吹き飛ばされる。
「あじいいいい!」
その時エースの体が火になったことでルフィがダメージを負う。エースは自然系なのでダメージ無し。
「麦わらを捕まえるのは俺だ!」
「逃がしませんよ! ロロノア!」
スモーカーもキャベスに突っ込み、同じように弾かれる。スモーカーの近くにいたかわいいメガネっ子はゾロに襲い掛かるが、簡単に刀を弾かれた。
「クソッ! また私が女だからってバカにして!」
「ちげえよ! おめえのその顔が……、ム、ムカつくんだ!」
「なんですって! 顔で人をバカにするなんて! 人間として最低です!」
「うるせえ!」
ゾロはメガネっ子を攻撃する気はないらしい。かと言って攻略する気もないらしい。しかしメガネっ子の執着を考えると、ゾロに勝てるくらい鍛えてやれば、感謝されるだろうな。いい関係にもなれるかもしれない。
一瞬でメガネっ子の真横に移動する。
「もし、そこのお嬢さん」
「あなたは……っ! な、何がお嬢さんですか!」
怒られた。かわいい。
「この戦いが終わったら、海軍は旧政府側と新政府側に別れるだろう。お前はどっちに就く?」
「え?」
メガネっ子の動きがぴたりと止まった。その間にキャベスの気弾が飛んできたので弾く。再びメガネっ子の傍に戻る。
「もし政府側に就けば、あそこで暴れている女のように強くしてやることができる。時間はかかるがな」
「えっ。……バ、バカにしないでください! 悪魔に魂を売ってまで強くなる気はありませんよ!」
「だが、悪魔を止めるために悪魔の力が必要だとしたら?」
「それは……」
なんてやっていると、キャベスがルフィをぶん投げた。そして大きくため息をつく。
「はあ、飽きた」
ひどい言いようである。
「おいハラベコ! 帰るぞ! こんなやつらとやるくらいならレタツとやった方がマシだ!」
俺が思うに、大将黄猿なら彼女を満足させられたと思う。だが彼はセンゴクの言葉に従ってかかってこなかった。
そうして俺とレタツとキャベスはマリージョアに戻った。
どれだけの海兵が政府側に付くか。どれだけ美人がいるか。楽しみである。
マリージョアではまだ会議をやっていた。
「新しい裁判長は最も平和に貢献してきた者になってもらいたいと考える。どうか?」
「うむ、そうだな」
「す、すばらしいと思います」
この辺は計画通りだ。ドラゴンが提案し、コブラとしらほしがうなずく。
「待てよ。平和への貢献なんて抽象的なものをどうやって比べる? ナンセンスだ」
クザンの返答も予想通り。
「クザン殿の言う通り、はっきり比べることはできんから、我々の思想が反映されたものになるだろう。しかし、世界へ新政府の方向性を示すきっかけにはなる」
「何がいいたいんです?」
「私は海軍元帥、センゴク殿こそが裁判長にふさわしいと考える」
「何!?」
「私も同じだ」
「わ、私もです!」
「いいんじゃないか」
コブラが提案すると、ドラゴン、しらほし、クマ等が一斉に同意する。全員の視線がクザンに注がれる。
「ま、待て! こんな一瞬で決められるはずないだろう! だいたい元帥はどうする! センゴクさんを解任するのか!?」
「元帥は空位にすることを考えている。また、今までの海軍一偏重なやり方は腐敗の温床となると考える。新しく空軍を創設することを提案する」
「空軍? 海軍を2つに分けるのか?」
「いきなりそうしては反発があろう。ドラゴン殿の革命軍を空軍に当てるのが適当と考える」
「何!?」
「わ、私もそう思います!」
「いいんじゃないか」
「お、お前等なあ」
話し合いは完全に1対4で進んでいた。これはきつい。全員に拒否権があるとは言え、クザンは全世界の命運が自分がかかっている、くらいのプレッシャーを感じているだろう。
なお、俺達が引いたことで、旧政府側海軍、新政府側海軍(+七武海)、赤髪海賊団(+エース一味)の三つ巴となった。が、海軍はかつての仲間と戦うことを恐れ、そうしながら身近な仲間を信じられないことで、連携は全く取れず精彩をかいた。やがて赤髪海賊団がルフィを奪還し、逃げていったが、海軍に海賊たちを追いかける余裕はなかった。旧政府側海軍は赤犬を旗印としていたが、彼が過激すぎたので、それ以外の有名どころであるセンゴク、ガープ、黄猿等が新政府側に就いてしまった。そこで彼等を信奉する海兵達も新政府側に流れ込み、戦況は完全に新政府側に傾いた。赤犬はガープの強烈な一撃を受けて海に落ち、そこを部下の海兵が拾いに行く形で、そのまま旧政府側の海兵は逃げて行った。