ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
月の反対側、L3に漂うヘリオポリス。ここは、ナチュラル対コーディネーター、地球対宇宙という一大戦争のまっただ中、中立を掲げるオーブという国に属し、不気味にも平和を謳歌していた。
オーブは小国ながら、技術大国日本から受け継いだ技術をコーディネーターを利用しながら発展させ、やはり技術大国として存在感を放っていた。その力があってこそ独立を許されていた。
そのヘリオポリスの学生、キラ・ヤマトは数年前に月で別れた友人について思い出していた。
『プラントと地球で戦争になんてならないよ。父は深刻に考えすぎなんだと思う』
しかし現実に戦争は成り、人類史上未曾有の犠牲者を出しながらなお激しさを増している。
憂鬱な彼を現実に引き戻したのは、密かな思い人、フレイ・アルスターの名。しかしサイ・アーガイルという気のいい先輩が彼女にラブレターを出したという聞きたくない話だった。
ちょうどその頃、ハラべコこと俺は、運命の通信に耳を傾けていた。
「まだ生きてたようだね。カスのクセに。フリーザ様がお呼びだよ。もう星の掃除はいいから帰ってきな」
「は、はい」
10年ちょっとぶりの母の声だった。相変わらず口が悪い。
しかしそれより、とうとう来た。フリーザが動き出してしまったのだ。俺はまだ50倍の重力に慣れてきたところでしかないのに。これでは到底フリーザに敵わない。詳しくは覚えてないけど、100倍を克服した悟空がギニューより多少強い程度だった気がするから。当然超サイヤ人になれる気配もない。
「アズラエル。母星から連絡が来た。帰らなければならなくなった」
俺は宇宙の重力コントロール室から、ポッドのリモコン内の通信機(改良済み)でアズラエルに話しかける。現在ニュートロンジャマーというザフトの兵器の影響で地球の通信機に障害が発生しているが、これなら問題無くつながる。
「ぐっ、なんだって! もう少しで宇宙船が完成するところなのに!」
アズラエルも切羽詰まった様子だ。戦闘力も間に合わないが、宇宙船もギリギリ間に合っていなかった。完成まであと10カ月というところ。船自体はできているが、発射台がまだなのだ。それがないと俺のポッドと同じ速度かちょっと遅いぐらいしか出せない。
俺の丸ポッドで惑星ベジータに帰れば1年かかる。フリーザはそれを計算して召集をかけるだろうから、1年後に惑星ベジータにやってくるはずである。となれば、ポッドより速い宇宙船でそこへ向かえば、フリーザが来るまでの時間差で逃走の準備ができる。それを狙っていたのだが、厳しくなった。
「こうなったら最後の手段だ。コーディが隠し持っているはずの巨大レーザー装置を奪う」
「スピード勝負になるな。負ける気はしないが、自爆には気を付けないと」
プラントで外宇宙探索用加速装置が開発されていたことは確かなのこと。しかしそれは突然消えていた。きっとザフトの連中が隠したのだ。
「首脳陣を捕まえても、たぶん口を割らんだろうな」
「そんな時は殺して見せればいいさ。やつらの大事な国民を」
やりたくないけどそれも考えないといけないか。クソッ、地獄に落ちたくねえよお。
「とりあえず本部に俺とナタルで向かう。強襲、統治、奪取の作戦を考える」
「そうだな」
「彼女は今どこに?」
「L3のヘリオポリスだ。アークエンジェルの乗組員として潜入することになっている」
「そうか。ブリッツか」
ミラージュコロイドという技術によって完全に視界からもレーダーからも消えるモビルスーツ。これは惑星ベジータに持っていくつもりだった。
「俺の丸ポッドは動かせるか?」
「ロックを外させるから少し待ってくれ」
「分かった」
丸ポッドは惑星ベジータに向かう船の内部に固定している。皆が乗る船は惑星ベジータ付近で停止させ、俺だけ丸ポッドに乗り換えて星に突っ込む手はずなのだ。
――しかしこの待ち時間が明暗を別けた。ヘリオポリスでは既に激しい戦闘が始まっていたのだ――
その頃キラは親友と運命的な再開を果たしていた。
「アス、ラン……?」
「キラ、キラなのか? くっ」
そこはモビルスーツの上。アスランはザフトの精鋭でキラはオーブの逃げ遅れた民間人。2人の関係など知らぬマリュー・ラミアス大尉がアスランに銃口を向けたため、アスランは後方に飛んで逃げた。
「入って!」
「うわわっ」
キラは突然背中を引っ張られ、ストライクと呼ばれるG兵器のコックピットに落ちた。そして巨乳に挟まれながら、巨人が立ちあがる振動に耐えることになる。
「アスラン! ニコルがやられた!」
一方アスランは、脱出経路を駆けながら仲間のイザークと通信していた。
「何ィ!?」
「とんでもないやつが1人がいやがる! ブリッツに乗っている! そっちはどうだ!」
「こっちはラスティがやられた! G兵器の強奪も失敗だ!」
「クソッ!」
ガン、と拳を叩きつける音が聞こえた。イザークは直情的なやつなのだ。今は自分もそうしたい気分だったが。
「うわああああああ!」
また一機。悲鳴と共にザフトのジンが火達磨となって爆発した。
コーディネーターしか扱えぬはずのモビルスーツ。しかし彼女はナチュラルの限界を超えているはずの反射神経と目に見えぬ気配を読む力を持っていた。
「装甲越しに殺気が漏れているぞ! 愚か者!」
遥か遠く、コロニーの外壁沿いで構えるシグーのビームは正確だった。しかしナタルは最小限の動きで難なく避けた。
ところが、ビームの威力で道路が溶け、外壁にも小さく穴が開いた。
「チィッ」
ラウ・ル・クルーゼはシグーのコクピットで舌打ちしながらも、外壁への損傷は確かめていた。
「くっ、正確だが、その程度の威力では!」
ブリッツからもレーザーが飛んでくるが、クルーゼもその射撃を視覚以外で感知し、レーザーは装甲をかする程度に止まる。
「今だ! この角度なら!」
もう一度シグーからビーム。再びブリッツは最小限の動きで避けるが、外壁が大きく破壊され、空気が外へ漏れ出した。
「なっ!」
ブリッツは空気の層にのまれてコロニーの外へ押し出される。
「ははははは! 戦いとは常に2手、3手先を読むものなのだよ!」
しかしその時、別カ所でもジンが爆散した。
「何ィ!?」
見ると、もう一機のG兵器がこちらに銃口を向けていた。
「2対1では分が悪い。引くか」
クルーゼはシグーを反転させ、母艦に戻った。
ナタルはブリッツでアークエンジェルに戻り、無事な乗組員の確認を急ぐ。
その頃キラはマリューの手当てをし、友人が勝手にモビルスーツ内に入って調べているのをなんとはなしに見ていた。
しかし目覚めたマリューにそれがバレ、拳銃で彼女に従うよう脅される。わけも分からず愚痴を言うキラの友人達だったが、結局従った。
やがてキラ達はマリューと共にアークエンジェルに移動した。
そこで出会ったナタル・バジルール中尉という女性にしてはやけに筋肉の発達した人物から、主だった士官は初めの爆発で戦死したと聞く。なし崩し的にマリューが艦長になってしまった。
しかしそこで、頼もしい助っ人が現れる。
「ムウ・ラ・フラガ。階級は大尉だ。着艦願いたいんだが」
エンデュミオンの鷹と名高い地球連邦のエースパイロットだった。
マリューは心底ほっとして、ムウに艦長になってもらえるよう申し出たが断られた。彼はパイロットで船のことは知らない。役割を考えるとやはり彼女が艦長になるしかなかった。
その時、キラがコクピットから顔を出した。「子供?」と声が上がるが、それを遮る素っ頓狂な声が。
「おいおいおいおい! どうなってんだ? 戦闘があったのか?」
ハラべコが人ならざる速度で駆けて来ていた。
「だ、誰っ」
マリューは慌てて銃口を向ける。皆も慌てているので、走るのが速すぎることには気付かない。
「えーっと。あれだ! ハラべコ・ナナクサ大尉であります!」
「大尉?」
ハラべコは大尉というには若すぎたし、敬礼も様になっていなかった。筋肉だけは異様に発達しているが。
「お久しぶりです大尉! しかしどうしてこちらに?」
「バジルール中尉の知り合いですか?」
「はい」
「ですから、銃を向けないでもらいたいのですが」
「ああ、失礼しました。しかし大尉はどうしてこちらに?」
「急ぎバジルール中尉に伝えなくてはならない要件があり、飛んできたのです」
「そりゃあ不運だったなあ。俺達にとっちゃ助かったが。今は猫の手も借りたい状況でね」
ハラべコはナタルだけ連れてポッドでさっさとアズラエルの下に帰りたかった。しかし悲壮さをにじませる彼女等(ムウは楽しそうだが)を放って去るのはあまりにも忍びなかった。
「クルーゼのやつまた来るぜえ。あいつはしつこい男だ」
「しかし、こちらで使える機体はたった3機。ナナクサ大尉、モビルスーツの操縦経験は?」
「シミュレーションで遊んだ程度しかありません。バジルール中尉の方が数段上です」
「そうですか」
マリューはがっくり肩を落とした。
ふと、ムウが人だかりに向かって歩き出す。
彼が見ているのは1人の少年だった。ストライクから出てきた少年。キラだ。
「きみ、コーディネーターだろ?」
「……はい」
その瞬間、近くの兵士がザッと銃口をキラに向けた。
「な、なんのつもりだあんたら!」
「コーディネーターだからなんだって言うの! キラはキラよ! 私達を守ってくれたところ見たでしょ!」
友人がキラをかばった。軍人の銃を下げるには至らなかったが、キラの心は打った。また、ハラべコの心も。
「すごいなあいつら。俺はあんなことできん」
ちなみに、そのやり取りの最中、話題のクルーゼは攻めようとなどしていなかった。
大きく息を切らし、立っているだけで精いっぱいだった。
「あ、あ、ありえん! なんだ今感じた力は! 底が知れん!」
「クルーゼ隊長、体調がすぐれないようですが」
「ええい! こうなったら主砲だ! 撃ち抜け! コロニーごとやつらを破壊するのだ!」
艦長などは訝しがったが、隊長のクルーゼには逆らえない。ヴェサリウス、ガモフ共に主砲とミサイルを次々とヘリオポリスに打ち込んだ。
アークエンジェルでマリュー等が慌ててモビルスーツを出撃させた時にはもう遅い。ヘリオポリスは崩壊した。
その爆発に巻き込まれて、ストライクの中でしばらく意識を失ったキラ。ナタルの声で目覚め、しばらく後に救難信号を見つける。脱出艇のエンジンが停止してデブリの中に漂っていた。
キラはそれをアークエンジェルに持って帰った。
「あ、あなたは!」
脱出艇にはキラの思い人フレイが乗っていて、恐怖に駆られていた彼女はありがたいことにキラに抱きついたのだった。
「いいなあ」
「うむ」
ハラべコとムウの感想である。
敵は近くにいるが、コロニーのデブリで熱源探索は不可能。アークエンジェルはしばしの休息を得た。
士官で集まって作戦会議となった。ハラべコは知識がないことに加え、フリーザのことが気になってまともな考えが浮かばない。
「直進コースにダミーの熱源を発射してこちらはアルテミスに向かいましょう」
「いいえ、素直に直進コースを取った方がいいかと。あそこはユーラシア連邦ですから捕まりますよ」
「でも、そうなったら戦闘になるわ! この船は無事に地球まで届けなくてはならないの!」
「難しいところだな。クルーゼなら裏の裏を読んで来そうだ。どっちを選ぶべきか分からん」
「どうせ二分の一なら敵の少ない直進コースが得です!」
その後、ナタルのごり押しで直進コースに決まった。
そうして会議が終わり、ハラべコはようやくナタルと2人っきりになれた。あてがわれた士官室に入る。
「ごたごたして遅れてしまったが、こっちの方がやばいぜ。母星から連絡があったんだ。帰ってくるようにって」
「な! なぜそれを早く言わなかったのですか!」
「すまん。だがケンカする時間も惜しい。今すぐ作戦を考えてくれ。宇宙船は完成しているが、発射台がまだなのは知っているだろう? だがそれをザフトが持っているらしく、奪おうということになったんだが」
「難しい問題ですね。まず場所が分からない。装置を手に入れたとしても、推進装置と宇宙船を調整して規格を合わせなければならない。間に合うかどうか」
「アズラエル財団だけでは無理でも、プラントの協力を得られれば早く済む。いや、無理だろうがな」
アズラエルはブルーコスモスの盟主だからな。
「ですね。オーブなら可能かもしれませんが」
「いずれにせよさっさと制圧しないと間に合わなくなる。俺一人でも議会を制圧することはできるだろうが、恐いのは自爆だ」
「とにかく時間が惜しいですから、財団の関係者を集められるだけ集めて、総攻撃を仕掛けましょう。自爆は目的から目を逸らさせることで回避します」
「目を逸らさせる?」
「例えば議員を人質にとって、ザフトの解散や賠償金の支払いを叫ぶのです。そして目がそちらに向いている隙に」
「なるほど。やれそうだな」