ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
第21回天下一武道会が始まる。
悟空、チチ、クリリンは亀仙流の道着を着てエントリー。予選会場に移動する。悟空とチチは強そうな選手がいることに喜ぶが、クリリンは多林寺で自分を苛めてきた先輩がいたことに不安になる。
しかしそこで、一際大きなどよめきが起こる。
「で、出たー!」
「キューティお食事レディ! サインもらおうサイン! 俺はそのためだけに予選に参加したんだ!」
仮面を付けてニコニコ笑っているナイスバディな少女に、男達が群がって行く。
一番乗りは紳士服を来た白髪の老人だった。握手を要求し、去り際にさりげなくお尻を触ろうとしたが、ランチは最少の動きで躱した。
「へ? や、やるなお嬢ちゃん。さすが天下一武道会で優勝しただけのことはある」
「は、はあ。ありがとうございます」
老人は少しだけ真剣な目つきになっていった。
そんな調子で、少女は多少戸惑いつつも、笑顔でサインや握手に応じていった。
「なんだありゃ?」
「さあ」
悟空がクリリンに尋ねるが、クリリンは首を横に振る。
「でも、前回大会で優勝したみたいだな」
「ああ。強そうだ」
「えっ? そうなのか?」
「たぶんな」
悟空が目元に笑みを浮かべてお食事レディを見上げる。
その視線に気付いたランチが、笑顔で手を振る。
「おっす!」
悟空もそう言って笑顔で手を振った。
しかし、その様子を見ていたチチはキッとランチを睨む。さらには後ろから悟空に近づき、両目を両手で覆い隠す。
「な、何だチチぃ。前が見えねえじゃねえか」
「見なくていいだ! 悟空さにあんな女は似合わねえ!」
なんてことがありながら、予選が始まる。
悟空、チチは初戦を簡単に勝利。クリリンも恐れていた先輩を一撃で倒した。
「うおおーっ! やはり強い!」
「かわいい! お食事レディちゃん!」
そして、ランチも当然楽勝。
「やっぱ強えな」
「みたいだ。それに……」
クリリンはランチの胸や尻を見てゴクリと唾をのみ込んだ。
「つっても優勝は悟空さに決まってるべ!」
「あ、うん。分かったけどあんまり引っ付かないでくれねえかなあ。歩きにくくってさあ」
チチは悟空の関心を集めるランチに危機感を覚え、この大会中はべったりすることに決めていたのだった。
「あ! あいつは!」
「ストロングHマン! 性懲りも無く!」
「死んだと思っていたのに!」
そして、ハラベコも今大会に出場していた。
初めからランチの隣にいたのだが、男の目がランチに釘付けになっていたので注目されなかったのだった。
予選通過者は8名。
ジャッキー・チュン、チチ、キューティお食事レディ、クリリン、ハラベコ、ランファン、悟空、ギラン。
「よかっただな。オラ達みんな一回戦で当たらなかったべ」
「で、でも俺、一回戦で前回優勝した姉ちゃんとだ」
「羨ましいのお。お主」
「え?」
ジャッキー・チュンがいつの間にかクリリンの後ろにいた。
「だ、誰だおめえ!」
チチが戦闘態勢で叫ぶ。
「次の対戦相手も知らんのか。わざわざ挨拶しに来てやったというのに」
「えっ」
チチは驚いて呆けた後、キリとジャッキーを睨みつける。
「そうか。おめえか。残念だが今日のオラはいつもの10倍は強いだよ。お食事なんとかの毒牙を折るまで負けるわけにはいかねえだ」
「ふん。そうはいかん。お食事レディちゃんと食事をご一緒させていただくのはわしだ」
睨み合う2人。しかしそこでアナウンサーに名前を呼ばれる。
2人はニッと好戦的な笑みを浮かべて武舞台に移動していく。
「油断するなよチチ。あのじっちゃんもつええぞ」
「えっ、そうなのか?」
「分かってるだよ。んだが悟空さの応援があれば100人力だ。オラが負けるはずねえ」
そうして相対する2人。観客の一部が、かわいらしいチチを見て大興奮したりする。
「ロリだ! 正義だ!」
「天下一武道会はこうでなくっちゃ!」
しかし、当のジャッキーとチチは、対照的に嫌に静かだった。
その空気を感じ取り、観客も静まっていく。ゴクリと唾をのみ込む音が聞こえるくらいだった。
2人共、恐ろしく集中している。激戦の予感がした。
「一回戦第一試合、始めてください!」
アナウンサーの声と共に鐘が鳴り、2人が飛び出す。
「えっ、あっ」
あまりの速さに観客は影しか見えない。
しかし拳が空を切るシュッという音や、ダンと足で地面を叩く音、バンと肉同士がぶつかる音は聞こえてくる。
しかし、バチィッ、と音がして、2人共弾かれて尻餅を着いた。
お互い、右頬をさすりながら立ち上がる。そこに殴られたような跡がついている。
「末恐ろしい娘じゃな。わしに拳を使わせるとは」
「くっ、あ、当たり前だ。オラは一生懸命修行してきただ。はあ、はあ」
ジャッキーは涼しい顔だったが、チチは苦しそうに眉を寄せている。素肌の見える手足にもいくらかアザがあった。
「素晴らしい戦いです! 前回大会の決勝戦、アックマン選手対ランチ選手を思い出すような熱戦!」
アナウンサーがそう言う間にも、気の早いチチは再びジャッキーに飛び込んでいく。
「つええええい!」
もっと速く。もっと鋭く。
チチの最高の前蹴りがジャッキーを捉えた。かに見えたが、ジャッキーの姿は幻影のように掻き消えた。
「後ろだ!」
悟空が叫ぶ。
「えっ」
「もう遅いわい」
しかしチチが反応する前に、後ろに回り込んでいたジャッキーがチチの延髄の辺りをチョップで打つ。
「あっ」
チチは一瞬で気を失い、前のめりに倒れた。
「チ、チチ! 起きろチチ!」
「無理じゃよ。1時間は目覚めやせんわい」
そしてジャッキーの勝利となった。
続いて第二試合。優勝候補のランチ対クリリンの試合。
観客のほぼ全てはランチの応援に回っていた。クリリンは観客の多さとランチのナイスバディにタジタジ。顔を赤くしてうつむいてしまう。
「ふふっ。緊張していると力を出せませんよ? せっかくいいものを持っているのに」
「えっ? は、はあ。ありがとうございます」
「第二試合始めてください!」
アナウンサーの声で2人は構える。
クリリンは緊張のあまりガチガチで、額からは大粒の汗が流れる。対照的にランチはにこにこと笑っている。
「何やってんだクリリン! 後ろだ!」
「え?」
クリリンが悟空の声を聞いた時、目の前のランチの姿は幻影のように消えた。そして後ろ首に衝撃。
「あ、ああっ」
ランチはジャッキーの残像拳をあの一瞬で真似たのだった。
「10カウントノックアウト! 勝者お食事レディ選手です! さすが強さのお食事レディ選手! 今大会は子どもから大人の体格になり、ますます力を伸ばしてきたように見えます! これは今大会もお食事レディ選手の優勝でしょうか! しかし、それに待ったをかける本命が、次のストロングHマン選手かもしれません! なんせお食事レディ選手の師匠であります! 数年間全く音沙汰なかった彼ですが、出場した武道大会は全て優勝! ここ天下一武道会でも前々大会でお食事レディ選手を破って優勝した経験があります! 対するはランファン選手! お食事レディ選手とはまた違う、大人の魅力を持った女性選手です!」
長々と説明を聞きながら、ハラベコとランファンが武舞台に上がる。
「うふっ。よろしく」
ランファンは胸股を強調するように腕を組み、ハラベコにウィンクする。ハラベコはにやりと嫌らしい笑みを浮かべた。
「試合開始してください!」
開始の合図と共にハラベコが飛び出す。ランファンにも見える速さで。
「キャイーーン!」
ランファンはぶりっ子ぶって口元に両手を当て、悲鳴を上げた。
しかしそれはハラベコの嗜虐性を刺激してしまった。
「はあ!」
叫び、ランファンに掴みかかるハラベコ。その時、ランチを除くすべての人間が目を疑った。
「うえええ! あっ、あああっ、うわわわわわっ」
ハラベコの腕が、数え切れないほど増殖していた。
その全てがランファンに迫り、胸を、お尻を、腋、首筋を、撫でたり揉んだりしている。
「わしの腕は108あるぞ!」
「ひゃっ、108!? 108手拳でしょうか!」
ハラベコは別に数えていないが、適当に煩悩の数を言った。しかしノリのいいアナウンサーが拾ってくれたのだった。
「いやっ、いやっ、きゃあああああ!」
ランファンは動けない。体中を揉まれ、悶え、喘ぎ、顔を赤くするだけだ。
注意深く見れば、ハラベコの腕は全て薄いことが分かる。これは腕に関しての残像拳なのだ。
空気を切り裂く音が聞こえる。あまりの手の動きに、突風や衝撃波が生まれている。徐々にランファンの服が、上も下も削れていく。ムチムチの健康的な肌が露わになっていく。
ついには服が吹き飛び、下着が見えた。その下着も削られていく。
そしてついには、素っ裸。
「はああ!」
「きゃあああ! ん、あぐっ、んぐっ!」
しかし、そこでハラベコはランファンに寝技を仕掛ける。股と首横を手で抱え、顔は胸。
「むふふっ。ぺろぺろ」
「んはっ。やめっ。いやああああああ!」
ハラベコが胸を舐めたところで、ランファンが本気で泣き叫び始める。
しかしハラベコは止まらない。ランファンを寝かせ、上に乗り、股を胸へ、顔は恥部へ。そしてここでも舐めたりする。観客や審判には見えないが、ランファンの動きから何が起きているかは想像できるのだった。
「降参降参! 降参するからもういや! やめて!」
「ストロングHマン選手の勝利です! Hマンさん攻撃を中止してください!」
その言葉があった瞬間、ハラベコとランファンの姿が消え、程なくハラベコだけ武舞台に戻ってきた。
「へ?」
観客達が皆唖然とする。武舞台を降りる間にランファンの恥部を見れると期待していたのに、それもなくなった。
「心配しなくていい。超スピードで彼女を選手控え室にやり、ここに戻ってきただけだ」
観客からブーイングが起こったのは、少し経ってからだった。一番激しく抗議していたのはジャッキーだったが、彼は途中でハッとして、選手控え室に走って行った。
ジャッキーが控え室に着いた時、ランファンは替えの服を着終えたところだった。
悟空対ギランは、いろいろあったが悟空の勝ち。しかし途中で尻尾が出てきたので、ランチが気付いた。
「あれ? もしかしてあの子サイヤ人ですか?」
「かもしれないな」
なんて話がありながら、試合はジャッキー対ランチへ。
しかし、ハラベコや亀仙流の影響で試合がすぐに終わってしまったので、時間に余裕がある。アナウンサーは余興でインタビューすることにした。
「お食事レディ選手。どうですか今大会は? 前大会以上に実力者揃いだと感じますが」
「そうですね。特にオレンジ色の道着を着た選手達が皆すばらしいと思います。今でも十分すごいんですけど、伸びしろがありそうです」
「なるほど。そう言えば前々大会で順優勝されたお食事レディ選手もあれくらいの年齢でしたね。10年後にはしのぎを削るライバルになるのでしょうか」
グラサンのアナウンサーは悟空やクリリンが12歳や13歳には見えず、8歳のランチと同じくらいだと思ったのだった。
「そうですね。そうなると楽しいですね」
「ところでストロングHマン選手についてはどうですか? 調子よさそうですか?」
「はい。今日はいつもより元気ですね。たぶんランファン選手が魅力的だったからだと思います」
「ずばり、勝てると思いますか?」
「うーん。実は秘策があるんです。今のままでは勝てないと思いますが、それをやればいけるかもしれません」
「おお! これは心強い! 皆様お聞きしましたでしょうか! とうとうストロングHマン選手の不販神話が崩れる時かもしれません! では、試合開始しましょう!」
アナウンサーは武舞台を降りようとしたが、ジャッキーから待ったがかかった。
「なんじゃい。わしにはインタビューせんのかい?」
ジャッキーは低い声で脅すように言った。アナウンサーが慌ててマイクを渡す。
するとジャッキーは突然表情をにんまりとゆるまい。
「はあい! チュンちゃんでえす!」
観客達はずっこけたのだった。
その後ジャッキーは歌い始めた。踊りも交え、そこにランチと悟空、さらには復活したチチが加わる。
4人が笑顔で楽しそうに踊り、最期にはピース。
「イエイイエーイ!」
そして感動のハイタッチ。
「イエイ!」
「オラ、おめえのこと誤解してただよ。いいやつだっただな」
「え? 何の話ですか?」
チチは1人で勝手にランチへの評価を高めていた。
「し、試合開始してください!」
とかく、次の試合が始まる。
「ジャッキーさん。本気を出してくれていいですよ」
「むっ。そのつもりじゃが?」
「いえ、こういうことできるんじゃないですか? えいっ」
ランチがそう言うと、ランチの気が急激に高まり、突風が吹いた。
若干筋肉が増え、胸と尻も大きくなっている。
「ほう。潜在的な気をそこまで自在に操れるのか。恐ろしい娘さんじゃな」
「ジャッキーさんもどうぞ」
ランチはにこにこ笑って言う。
「むっ? 娘さんにそんな笑顔で言われたら、紳士としては断り辛いのう」
ジャッキーはそう言うと、逆に気を静め、全身の力を抜いていく。
しかし、不意にカッと力を入れる。
ランチ以上の倍率で気が爆発的に高まり、筋肉が盛り上がる。
背も高くなり、ジャッキーは筋肉ダルマの大男となった。
「な、なんということでしょう! ジャッキー選手巨大化しました!」
アナウンサーが叫ぶ。
「すごいですね。お1人でそこまでできるようになったのですか?」
「まさか。わしにも師はおったよ。2人ほどな」
「そうですか。私の師はたくさんいるんです。師というより家族ですけど」
そして2人の会話は終わる。
静寂が辺りを包む。ランチは笑みを絶やさない。対照的にジャッキーは真剣な眼差しだ。
ふと、ランチの姿がぶれた。
「はあ!」
ジャッキーが明後日の方向に蹴り込む。
「よっと」
しかしそこにはランチがいて、背中を反らして蹴りを躱した。
ジャッキーは残像拳を見切ったのだった。しかし飛び蹴りが隙となる。
「えいっ」
ランチが強烈な気弾をジャッキーの背中に放つ。
「波あー!」
しかしジャッキーはかめはめ波を撃って空中を移動。気弾を躱し、地面に降りる。
「んげっ!」
しかし気弾は追尾型だったので、後頭部に当たってジャッキーは前のめりに倒れた。
「ダウン! ワン、ツー」
「ダウンじゃないわい! 勢いで倒れただけじゃ!」
ジャッキーは後頭部を痛そうに掻きながら立ち上がった。
「ふふっ。やはりお強いですね。ジャッキーさんならうちの第一演習場に来れますよ」
「ふんっ。舐めおって。言っておくが、今までのわしは嬢ちゃんだと思って手加減しておったのじゃ! もはや油断はないぞ!」
「そうですか。ありがとうございます」
脅すつもりでいったのに感謝されて、ジャッキーはガクッと来てしまったのだった。
もう1つ言えば、本気になる自分で言っておきながら、ジャッキーは女相手に本気で攻撃することはできないのだった。紳士だから、ではないが、そういう性格なのだ。
「行きますよ!」
ランチは正面から突っ込んでいく。
「えいっ」
「ぬっ」
ランチの右ストレートをジャッキーが左手でキャッチ。
「よっ」
「おっと」
さらには左蹴りを右手でキャッチ。
ここでジャッキーはランチをこのまま運び、武舞台の外に落とすことを思いつく。
「勝たせてもらうぞ! 勝負は非情なのじゃ!」
「ほい」
「へ?」
しかし大口を開けて叫んだところで、ランチが残った左手で気弾を放つ。
それは真っ直ぐジャッキーの顔に命中し、爆発する。
「くうっ」
爆発で吹き飛ぶジャッキー。解放されたランチは着地すると同時にジャッキーの下へ飛ぶ。
「波あああー!」
しかしそこを狙ってジャッキーのかめはめ波。
「え? んぎゃあああああ!」
ランチは命中し、全体的に焦げてその場に落ちる。
ジャッキーはそのかめはめ波で場外に出てしまったので、もう一度かめはめ波で武舞台に戻る。
「はあ、はあ、はあ」
しかし体力はずいぶん消耗してしまったのだった。
「はあー。驚きました。攻撃する時の一瞬の隙を突かれてしまいました。油断大敵ですね」
対して、ランチはケロッとして立ち上がった。服は若干ボロくなったが、仮面の下の口元や目元は相変らずいい笑顔である。
「ぬっ、くっ。まいった。わしの負けじゃ」
と、ここでなんと、ジャッキーは自ら武舞台を降りてしまった。
ダメージの差で負けを悟ったのもあったが、この無邪気な娘を攻撃したくないと思ってしまったので、降参したのだった。
「な、なんということでしょう! 素晴らしい技を見せたジャッキー選手でしたが、勝負が着く前に降参してしまいました! しかし、それ以上に驚異的なのがお食事レディ選手の強さです! あのビームのような攻撃を受けていながら、無傷! 一体どのような体をしているのでしょうか!」
観客達がお食事レディの活躍に興奮する。負けたジャッキーにも労いの拍手が送られた。
続いて、悟空対ハラベコの試合。
「ほれほれ、もっと体の芯から力を出すんだ。一回脱力して、一気に力を入れる」
「えっ? こんな感じか?」
「そうそう。まあもうちょっと気をコントロールしてほしいが」
ハラベコは軽く悟空に組手をしてやって、最後には武舞台の外に投げ飛ばして勝った。
観客達はちっとも緊張感のない試合にブーイング。しかし、格闘家の中には目から鱗という感じでハラベコの話を聞き、忙しくメモを取る者もいた。
「さあ! 第21回天下一武道会もいよいよ大詰め! 決勝戦です! 前々回準優勝、前回優勝と来て、今大会で師匠超えを目指すお食事レディ選手! 対しては、出場試合の全てで勝利! 今大会も全試合危なげなく勝利してきたストロングHマン選手です!」
ハラベコとランチが武舞台に上がる。観客は完全にランチの応援ムード。
しかし一部には、ストロングHマンの無茶苦茶な試合が大好きというコアなファンもいたのだった。
「えー、ここでストロングHマン選手に警告です」
しかし、アナウンサーが突然申し訳なさそうな声で言う。
「ランファン選手に使用した卑猥な技。あれをお食事レディ選手に使った場合、失格となります。お食事レディ選手は10代の少女であり、女性と子どものことを考えると、あまりよろしくないかなあと。具体的には某人権団体から抗議がありまして。私どもとしても、寺を経営している以上、ハレンチな行為は慎むべきかと。試合に集中していただく意味でも」
アナウンサーは冷や汗をかきながら手に持つメモを読んだ。
ランチの裸体を期待する観客から一斉にブーイングが上がっていた。
「し、試合開始してください!」
とかく、決勝が始まる。
しかし、ランチはハラベコに片手を上げて待ったをかけた。
「ちょっと待ってくださいね。準備しますから」
「ああいいぞ」
ランチはそう言うと、両手を広げて、大きく深呼吸する。
「はあー、ふう。はあー、ふう」
ハラベコは腕を組んで見ているだけだ。
不意に、ランチが鼻をむずむず動かした。大きく息を吸う。
「ぶあっくしょい!」
おっさんのような豪快なクシャミだった。
これでランチは変身する。しかし、そこでハラベコは大いに驚いた。
「あ、青い髪、だと……!? ス、スーパーサイヤ人ゴッドスーパーサイヤ人!?」
「へっ。この姿はキャベスだってオンオンだってなれない。やはり変身は私に一日の長があるようだな」
「や、やるな。だが俺だってゴッドの力は吸収しているんだ。そう簡単に抜かれはせんよ」
そして2人が動き出す。
まず正面でぶつかりあった。互いに両手を合わせ、頭をぶつける。
「ぐっ」
ランチの額が裂ける。
スピードはほぼ互角。しかしパワーは完全にハラベコが上だった。
にやり、と笑いながらハラベコはランチを押し倒していく。
逆にランチはフッと力を抜く。
「おっ」
ハラベコは支えを失って前方に飛びだす。ランチは空中で後転しながら、ハラベコの顎に両足を伸ばして蹴りかかる。
「ぐっ」
見事命中。ハラベコは前方斜め上に吹き飛ぶ。武舞台を超えて遥か彼方へ行くが、武空術で静止する。
口元が切れていた。その血を拭い、武舞台のランチを見てにやりと笑む。
「やるな」
ランチの方も、額に汗をにじませながら笑んだ。
ハラベコはゆっくり武舞台に戻って行く。かと思ったら突然消えた。
「え?」
「後ろだよ」
「うっ、なっ」
ハラベコは習得中の瞬間移動でランチの後ろに回ったのだった。集中するのに十分な時間があって、短い距離なら既に使えるのだ。
ランチを後ろから抱きかかえ、腋や太ももに手足をからませ、ガッチリ固定する。
「んっ、あっ。んぐぐっ」
もともとパワーに明確な差があった。加えて、このような密着はランチに夜の行為をいろいろと思い出させてしまう。
顔を真っ赤にするランチ。緊張で体が硬直し、ますます抜け出せない。
ハラベコはランチを抱えたまま武空術で武舞台の端へ移動し、そのまま彼女を外へ降ろした。
「俺の勝ちだ」
観客達は一斉に「へ?」となった。
しばらくして、グラサンがハッとして動き出した。
「し、試合終了! 優勝はストロングHマン選手です!」
当然のように観客は盛大にブーイングを飛ばした。
ハラベコは恥ずかしがっているランチを抱きかかえ、観客達に見せつけるようにおでこにキスをした。
ブーイングがさらに盛り上がったのは言うまでもない。