ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
ピッコロは今もナメック星で修行中。とてもじゃないが今の悟空では勝てない強さになっている。
ピッコロ編は消えてしまった。しかしそれでは悟空が強くならない。そこでハラベコは戦場を用意することにしていた。
「ぎぇえええええ!」
天下一武道会会場に突然響いた悲鳴。声の主はクリリンだった。
「クリリーン!」
「クリリンさ! 大丈夫だべか?」
悟空とチチが慌てて選手控え室に向かった。
クリリンは仰向けで白目を向いて倒れていた。近くでは軽そうな南国風の男がシャドーボクシングをしていた。
「あ、あわわわわ」
もう一人、見知らぬゴツい男が控え室にいて、口元に手を当てて震えていた。
「おい! おめえがクリリンをこんな目に遭わしたんか!」
「オー! あれはほんのジョークでーす! ボーイがこれほど弱いとは思いもしませんでした!」
南国風の男は未だにシャドーをやっている。チチなど怒りで飛びかかりそうだ。
「な、何言ってんだべ! 悪いことしたならとっとと謝れ!」
「す、すまんなあ。わいの連れが無茶苦茶しよって」
と、なぜかごつい男が返答した。
「あんたは誰だべ!」
「わいは西言うもんや。よろしゅう。こいつはカーロス」
「なんでクリリンにひどいことしたんだ!」
「いや、まあ、腕試しのつもりやったんや。カーロスもハラベ、ご、ごほん。エッチマンとお食事レディの試合みて血の気がわいてしまってなあ」
「オー! どうして私は参加していないのか! 後悔ばかりでーす! 私なら皆さんちびっこより楽しい試合ができました!」
「カ、カーロス! ちっとはこらええや!」
「へい! カモンボーイ! ガール! あなた達臆病者ですか? 友達が傷つけられても逃げるだけ? あーはっ! 私おかしいでーす!」
「そ、そんなに言うなら、戦ってやる!」
「悟空さ! やっちまうだ!」
相対する悟空とカーロス。悟空は顔に怒りをにじませる。カーロスは一瞬愉快げな表情になったが、たちまち獲物を狙う猛獣のような鋭い目付きに変わった。
ダンッ。悟空が凄まじい速さで飛び出す。
ぐわしゃああん。ばきいいっ。
「ぐうっ!」
しかし、カーロスの強烈な右ストレートは正確に悟空の顔を捉え、さらに腕を振り抜きながら右肘を顔面に食らわせた。
「ははっ。ダウーン! ワーン! ツー!」
カーロスは控え室の隅によってカウントを始める。しかし悟空の方は見ていなかった。立ち上がれないと思い込んでいたからだ。
「ぎ、ぎぎぎっ」
しかし悟空は立ち上がった。
「スリー、フォー、んっ?」
そしてカーロスが気づく前に、悟空は踏み込んでいた。
「ああうっ」
悟空の飛び蹴りがカーロスに決まり、カーロスは控え室の壁を破って向こう側に吹き飛んでいく。
「やっただ! 悟空さ!」
「まだだ」
チチが悟空に抱きつこうとするが、それを悟空が片手で制する。
その視線の先で、カーロスは立ち上がった。しかもあダメージはあるように見えない。目だけは先程より静になり、余計恐ろしく感じる。
「アカン! アカンでカーロス! もうええやろ! 十分や! この子はわいより強いわ! 十分戦力になる! こっちは頼み込む立場なんやで!」
西がそう言うと、カーロスはハッとして肩の力を抜き、ふにゃりと軽々しい雰囲気になった。
「オー! ソーリーソーリー! 私カーロス・リベラ! 地球のボクサーでーす! 今日は私の友人、ジョー・ヤブキを助けてくれる同士を探すために、遙々この星までやってきました! 皆さん大好きでーす! 強敵を求めるヒーローだと聞いています! さあ! 一緒にジョー・ヤブキを助けましょう!」
「な、なんちゅう無茶苦茶な頼み方をするやっちゃ」
悟空達はカーロスの調子のよさに呆然とするしかなかった。西は目元を掌でおおって大きくため息をついた。
「俺が呼んだんだ。お前達の修行にちょうどいいと思ってな」
そこでハラベコが出る。
「オー! ハラッ、びひっ」
カーロスが本名を口走りそうになったので、手で口をふさいだ。
「お前達はもっと強くなれる。強敵との戦いによって殻を破ることができる。だが、この星にちょうどいい敵はいない。だったら別の星で戦ってみてもいいんじゃないか?」
「ちょ、ちょっと待つだ! 別の星って!?」
「あるんだよ。まあそれはおいおい分かる。それよりもこれを見てくれ」
ハラベコはそう言うとポイポイカプセルを投げる。中からパソコンが現れた。
画面をつけ、映像を再生する。いきなり丸椅子に座る長髪の青年が現れた。鋭い眼光でカメラを見つめ、獣が獲物に飛び付く前のように背筋を曲げている。
「よお。平和を愛する諸君。矢吹丈だ。お前達も知っている通り、今はベトナムで戦争中だ。だがオラあ代理戦争っつうのが嫌いでな。他人の命で金儲けや権力争いしてんじゃねえよってこった。アメリカ、中国、ロシアの指導者が相次いで失踪しただろう? あれをやったのは俺だ。リングで殺し合わせようと思ってな」
パソコンの画面がリングに移る。目と手足を縛られている各国首脳が、リングにところ狭しと寝かされている。
「そら、殺し合え馬鹿共。生き残ったら帰してやる」
丈の声に合わせ、柄の悪い男達がリングに入っていく。彼等は首脳達の拘束を外すと、リングの外に立って声援を送る。
「行け! 殺せ!」
「オラあ中国に10万賭けてんだ! 3000年の拳法を見せてやれ!」
「アメリカのボクシングだろ! 牛肉パワーでやっちまえ!」
「いいやソ連だ! 冬国で鍛えられた精神力を見せつけろ!」
各国首脳はわけが分からないという風だったが、誰かが攻撃を仕掛けると、慌てて反抗をし、やがて乱戦となった。
「いけー! そらそら!」
観客達はどんちゃん騒ぎ。丈の薄い笑い声も聞こえた。
「くくくっ。国連っつーのは当てにならないからな。俺が新たに世界の調整者になってやることにした。つってもやるのは戦争屋を捕まえてやつらの殴り合いを中継するだけだ。それと、遊園地の子供の入場料を無料にすることだな。これだけでずいぶん平和になるだろうと確信している。ではな、平和を愛する諸君。バカな政治家を捕まえたらまた会おう」
そして映像は途切れた。
「どうだ? このジョーと一緒に平和ごっこやらないか? 向こうの兵器はけっこう強いぞ。毒ガスとか都市ごと吹き飛ばす爆弾とかあるからな。だが安心してくれ。毒ガスを防ぐ変身スーツは支給する」
悟空、チチ、クリリン共にポカーンとしていたのだった。
しかしここでハラベコがもう1つのカードを切る。
「バカめカカロット! なぜ参加しない! 大海を知るチャンスだぞ! 戦闘民族の血が騒がんのか!」
「だ、誰だおめえ!」
「ん? 分からんか? まあ無理もない。あれから10年以上経ったし、俺もかなり大きくなってしまったからな。いいだろう教えてやる。俺は、お前の兄のラディッツだ!」
「に、兄ちゃん!? オラに兄ちゃんなんていねえぞ!」
「な、なんだと!」
「人違いだべ! だいたい悟空さはカカなんとかっつー名前じゃねえ!」
「バカな。見間違えるはずがない。その顔、髪、親父そっくりだ。何より尻尾がそれを証明している」
その後ごたついたが、ラディッツが悟空を倒し、「兄に従え! 愚か者!」と言って宇宙船に運んでいった。
「筋斗雲よーい!」
チチは筋斗雲で、天津飯とチャオズは武空術で後を追う。
「ねえターボくん。私たちも遊びにいこうかなあ?」
「やめた方がいいと思いますよ。遊びじゃなくて仕事で戦争に介入するみたいです」
「ほよよ。戦争ってつおい?」
「お、お姉ちゃん。戦争はダメですよ。いろいろと思想が入り乱れていて、どっちが勝っても悲劇が生まれるんです」
「ふーん」
アラレはターボくんの話を聞き流していた。
「んちゃ! あたしも連れてってちょ!」
そしてハラベコに頼んだ。ハラベコは驚きつつも受け入れた。
Z戦士達の介入でジョー達は一気に勢いを増した。
「かめはめ、波あー!」
悟空のかめはめ波が鋼鉄のシェルターを吹き飛ばす。
「く、来るな! 人質がどうなっ、かはっ」
「へんっ。残像拳だ!」
クリリン、チチ等がすばやく人質を解放する。チャオズが超能力で動きを止めることもあった。
「逃げたぞ! 地下だ!」
「退いてろ。はあっ!」
「ほい!」
ラディッツが気功波で穴を空けたが、それより大きな穴をアラレがパンチ一発で空けたりもした。
天津飯は殺し屋を辞めるはずが、似たようなことやっているので微妙な気持ちになった。
次々と政治家や資本家を捕まえては殺し合わせていった。とんでもない下衆は、ジョー自らリングに入って殺すこともあった。
中国、ロシア、アメリカではやがて穏健派が実権を握った。するとイギリスやフランスが暴力的になり始めたので、そこの政治家も粛清した。
ジョー達の本拠地は宇宙のコロニーにあり、権力者達でさえ手が出せなかった。移動に使っている丸ポッドも速すぎて手が出せない。そこでスパイを潜り込ませる作戦に切り替えた。柄の悪い男達はハニートラップに簡単に引っ掛かり、裏切った。ラディッツもその一人だったが、彼に関してはハラベコが監視していたので大事になる前に国に連れ戻した。丸ポッドが調査されそうになった時はハラベコ自ら乗り込み、施設を破壊したこともあった。
ジョーは仲間の粛清をするようになった。裏切った仲間がジョー達の醜態をウソも含めて並べ立て、メディアがこぞって伝えたこともあった。
ジョーは怒り、メディアも血祭りに上げていった。ここで悟空達は嫌気がさし、星に戻った。
「ジョーよ。お前何をやっている?」
ある時、テレビ局を襲ったジョーの前に力石が現れた。
「おお力石! ちょうどいい! テレビ屋をぶっ殺しに行くぞ! あいつらも口で他人をいいように動かす卑怯もんだ!」
「ふんっ。ガキだな」
「なんだなと!?」
「言わせておけばいいだろう。それとも何かい? 全人類がお前に跪かないと満足できないってかい?」
「んなこと言ってねえだろうが! やつらは政治家の道具! 思想も何もなく、俺を陥れるためだけにニュースを作ってんだ! 売られたケンカは買うまでだ!」
「ならば言葉を使って返せばいいだろう」
「んなまどろっこしいことやってられっか!」
「それが本音だろ。本気で人の上に立つ気がないならヒーローごっこはもう辞めにするんだな。以前のお前は世界に必要だったかもしれないが、今のお前は余計な被害を出すだけだぜ」
「なんだとお!?」
その後、ジョーと力石の激しい戦闘になった。
全体的に力石が押していたが、ジョーは何度倒れても執念で立ち上がり、力石に拳を浴びせた。その野性的な狂暴さに力石は精神的に追い詰められ、冷や汗をかくほどだった。
しかし、勝敗はお預けとなる。テレビ局をカーロスが落としてしまったからだった。
「ジョー・ヤブキ! 早く逃げましょう! アトミックボムが飛んできますよ!」
「ちっ、しゃあねえな」
力石も原爆を恐れてその場を離れた。彼等はハラベコの下で鍛えており、全員武空術が使えるのだった。
力石が向かうは白木邸。一人娘の白木葉子が迎える。
「すみません。ジョーを逃がしてしまいました」
「いえ、あれでいいのよ。今は逆に、世界が矢吹くんに依存してしまっている。彼をいきなり失えば大混乱が起こるわよ。だけど彼には鎖が必要なの。獰猛な獣が調子に乗り過ぎにようにね」
以後、力石がジョーの妨害をするようになり、変革のスピードは遅まり、ジョー側の過激な方法も減っていった。
なお、テレビ局、新聞社は腐りきっていたので、ほぼ全てジョー、カーロス、段平、西、等の手によってなんらかの制裁を受けた。力石はジョーが暴れすぎないことに主眼を置いており、彼等を本気で助ける気はなかったのだった。