※この作品はR-18です。

ドラゴンボール超H   作:ドラゴンボール超記念

7 / 63
キラ・ヤマトを捕えよ

 カタパルトで静止したブリッツのコクピットで、ナタルは戦場の気の流れを追っていた。圧倒的強者による蹂躙。それ以外の言葉は必要ない。小さな気が無知無謀に挑んでいき、呆気なく散って行く。命が軽い。これが戦場なのだろうか。流れ作業のようだ。

 

 レーダーが敵艦を見つけた時、キラ・ヤマトはラクス・クラインを軟禁している部屋にいた。主に、アスランについて語り合っていた。

 戦闘配置の館内放送は聞こえていた。しかしキラはなかなか動こうとしない。

 

「キラ、行かれないのですか?」

「僕は……」

 

 キラは苦しそうな顔で動かない。キラに戦ってほしくないラクスは、それが口から出ようとするのをなんとか抑える。ジッと返答を待つ。

 キラは、不意に決意を秘めたような目でラクスを見た。

 

「僕は、ラクス。君を逃がしたい!」

「えっ」

「このままじゃ、君はあの人たちの人質にされてしまう。そんなのは嫌だから」

「キラ……」

 

 キラはラクスに手を伸ばす。その手を、ラクスもつかんだ。

 

 キラは部屋に入る前からラクスを逃がそうと考えていて、自分の部屋に余分な宇宙服を持ってきていた。それを取ってから再びラクスの部屋に戻り、ラクスへ着せる。それから急いで格納庫へ向かう。

 

「遅いぞキラ、何をやっている!」

「すみません」

「もう一人は誰だ?」

 

 すれ違う技術者たちは、当然キラのすぐ後ろを走る誰かについて尋ねた。が、追いかけて止めようとまではしなかった。ラクスは顔を見られぬよう少しうつむき気味で走り(無重力だから泳ぐと言った方が正確かもしれない)、終始無言だった。

 

「あそこだよ。『せえの』で飛ぼう」

「はい」

「せえのっ」

 

 2人はモビルスーツの胴体部、コクピットへ飛ぶ。後は無重力で進んでいくだけ。キラは内心ほっと一息着く。

 もう脱出は成功したような物だ。ハッチを開いてくれない可能性はあるが、最悪モビルスーツで壁を破壊すれば出られる。

 しかし、2人がコクピットに着く直前で、横から何かが飛んできた。

 

「ぐっ、がっ?」

「きゃっ」

 

 キラはそれが何か分からなかったが、衝撃で移動方向を変えられた。無重力で何もない壁へ直進する。ラクスの声がした方を見てみると、彼女は別の宇宙服を着た誰かに抱えられながら、自分とは80度くらい角度の違う方向へ飛んでいた。

 あれは誰? パイロットスーツは、……確かバジルール少尉のものだ。背格好も合っている。

 

「どうして!? 戦っているはずなのに!」

 

 キラは格納庫へ遅れて来ていた。バジルール少尉はどちらかと言うとせっかちで、行動は早いのに、なぜ残っているのか。そしてなぜ自分の行動に気付いたのか。

 

 その理由を知る人物は、艦橋にいた。

 

「キラ・ヤマトが裏切りました!」

 

 少しうれしそうな声で叫んだのは、フレイ・アルスターだった。

 実は彼女、ナタルに「キラ・ヤマトに謝ろうかどうか悩んでいるフリをして、やつを監視していてくれ」と頼まれていた。キラがラクスと共に部屋を飛び出る瞬間も、ばっちり見ていたのだ。しかし生身でコーディネーターとは戦えないので、そこでは名乗り出ず、ナタルにもらった通信機で彼女に伝えていた。

 

 ナタルはラクスを抱えたまま艦橋へ向かった。キラも慌ててその後を追う。自分の失敗と少女の危機に集中力が高まり、種割れを発動していた。しかしナタルには追いつけなかった。

 

「フレイ、何を……」

「キラ・ヤマトがラクス・クラインを連れて脱走しようとしました! 私はこの目で見たんです!」

 

 マリュー達は突然の事態にうろたえるしかできない。ハラベコの強烈過ぎる攻撃を見て、度肝を抜かされていたせいでもあった。

 その時、艦橋に新たな人物が飛び込む。

 

「ラミアス大尉! キラ・ヤマトがラクス・クラインを逃がそうとしていました!」

 

 ナタル・バジルールだった。脇には宇宙服を着た誰かを抱えている。

 

「捕獲しているのはラクス・クラインです! ここにキラ・ヤマトも向かってきています! 私はやつを止めに戻ります! 彼女をお願いします!」

 

 ナタルはそう言うと抱えていたラクスを近場の兵士に放った。

 そして自分が入ってきた入り口に向かって飛んだ。

 

 艦橋と通路をつなぐ扉は閉じられる。通路で2人が正対する。

 

「ナタルさん! どうして!」

「どうしてだと? シーゲル・クラインは史上最悪のテロリストだ。その娘に普通の生活など望めると思うか?」

「父親なんて関係ないでしょ! ラクスは泣いてたんだ!」

「だからどうした! クラインのために何人のナチュラルが泣いたと思ってるんだ!」

「あなた達はそう言って!」

「いいから自首しろ、キラ・ヤマト。今なら月までの独房入りで許してやる」

「退いてください! 僕はラクスを助けなくちゃいけないんだ!」

 

 ナタルは小さくため息をつき、構える。

 

「どうやら善悪の分からない子供だったらしいな」

「退いてください! 女性を傷つけたくありません!」

「舐めるな! 私が貴様のような軟弱な子供に負けるものか!」

「やめてよね! ナチュラルで女性のあなたじゃ、僕に敵うわけないでしょ!」

「侮辱だけは上手だな!」

 

 結局ナタルから突っ込んだ。その勢いはキラの予想を遥かに超えてすさまじかった。

 

「くっ」

 

 種割れだったからかろうじて見ることはできた。しかし体は追いつかない。

 ナタルの初撃は接近からのショートフック。

 

「ガハッ」

 

 脇腹に突き刺さり、あばらにヒビを入れながら、内臓に深刻なダメージを与える。

 さらには顎へのショートアッパー。

 

「ぐっ……」

 

 死角から正確に顎を打つ。骨を砕きながら、頭を激しく揺さぶり、軽々と意識を奪った。

 

「ふんっ。口ほどにもない」

 

 ナタルは二撃でキラを完全に無力化した。その彼を抱え、艦橋へ向かった。

 

 その頃、ハラベコは最後の敵モビルスーツを爆散し終えたところだった。初めの内は全員殺していたが、味方に被害が出ない程度数を減らしてからは、武器破壊を優先していた。それで投降してきた敵機は放っておいた。反発しながらもラクスの影響はあり、無駄に殺す必要はないと考えていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。