ドラゴンボール超H 作:ドラゴンボール超記念
月に接近すると通信が使えるようになり、モニターにハルバートンが映った。挨拶もそこそこに、マリューが今までの経緯を報告する。マリューの話が終わると、次にハルバートンから今後の説明が入る。
アークエンジェルとGATシリーズは月に到着次第修理。乗組員は整備員とハラべコとナタルを除いて総入れ替え。ただしGATシリーズで最も損傷の激しい一機は修理せず、地球のアラスカ基地に送ることになっている。
「損傷が最も激しいのはどれだ?」
「イージスです」
マリューが応える。イージスを地球へ送ることに決まる。
そうして月に到着する。怒りのアズラエルに呼ばれているので、一服する間もなく向かうことにする。
「世話になったな。頑張って生き残れよ」
「おいおい、そりゃあ俺のセリフだぜ」
「お兄さん、勝てますよね?」
「ふふっ、楽勝さ」
ムウとフレイにだけ挨拶。他の連中には嫌われている感じがするからやらない。
俺とナタルを先頭で降ろしてもらい、作戦本部へ直行する。アズラエルとブルーコスモス系の士官が集まっていた。
「やあ、待っていましたよ」
「遅れてすまないな」
アズラエルはきっと怒っているが、口調は仕事モードでまろやかだった。
「作戦は既にこちらで考えましたよ。作戦と呼ぶのもおかしな力技ですけどね」
「そうか」
「プラントに”ボアズ”と”ヤキン・ドゥーエ”という2つの大きな基地があるのは御存じですか?」
「うーん、名前だけは聞いたような」
「……まあいいですけね。私達は先にボアズに向かいます。そして、あなたの射程圏に入った辺りで、テロリスト共に降伏を迫ります。当然受け入れないでしょう。そのタイミングで、ボアズを木端微塵にしてください」
「うっ。……いきなりだな。まあ、時間がないから仕方ないが」
やばいなあ。そんなに殺しちゃって本当に天国行けるのかなあ。覚悟していたこととは言え。
「やつらが恐怖に煽られているうちに、議会に降伏を迫ります。断ればヤキンも同じことになると言って。この段階で私は密かに人質の親と交渉をはじめます。外宇宙探索用推進加速装置、仮称”システム”の情報を得るためです。ここでまともな情報が得られず、議会も降服を受け入れなかったならば、ヤキンを宇宙の塵にしてください。そしてもう一度議会に降伏を求めます。しかしこの段階では、私が用意した傀儡のコーディネーターが政府にクーデターを仕掛けることになっています。彼等は戦力的に乏しいので、私達に応援を要求するでしょう。そこで私達が総攻撃をしかけます。結果クーデターは成り、彼等は降伏を受け入れます。あなたはこれに参加しなくていいです。ナチュラルがコーディネーターに勝つ、というところを見せたいので」
なるほど。作戦は分かった。一応脅して降伏を迫るわけだな。あとはやつらが受け入れるかどうか。戦いを選ぶなら、殺すしかない。
「あなたは地球の方舟に戻ってください。私達はシステムを探します。私達がシステムを見つけ次第、あなたは箱舟に資材と技術者を乗せてシステムへ移動してください。そこからは箱舟とシステムの護衛をお願いします。しかし、最悪の場合、つまりシステムの改修が間に合いそうにない、もしくは既に破壊されていた場合、その時点で惑星ベジータに出発することになります。箱舟も動かしますが、あなたは丸ポッドで1人惑星ベジータに向かってください。そちらの方が速いですからね。到着後すぐ、あなたが言う”正義の心を持った戦士がいる星”の座標を調べてください。検索の痕跡でどこを狙っているかバレないように、数百くらいの候補を出してくださいね。そして見つけたら、丸ポッドで箱舟へ飛んできてもらいます。箱舟はあなたを迎え、あなたが選んだ星に向かいます。この辺りはシステムがあった場合も同じですね」
うむ。この辺はだいたい想定通りだな。
フリーザが来る前に、急いで目標の座標を調べる。第一目標がドラゴンボールの地球。第二がナメック星。ドラゴンボールを使えば箱舟がなくとも全人類を動かせるからな。ただ、ナメック星のドラゴンボールは長老が使わせてくれないかもしれないから、地球の方が勝手がいい。問題はドラゴンボールの地球の名前が分からないことだ。宇宙共通語でどういう発音をするんだろう。そして俺は向こうのコンピュータを上手く扱えるのだろうか。まあ無理なら他人にやってもらえばいいが。
1日後、アークエンジェルとGATシリーズの最終チェックが終了した。ナタルがブリッツに、オルガ、クロト、シャニの通称”三馬鹿”がバスター、ストライク、デュエルに乗ることになった。
とうとう、アズラエルと関係の深い大西洋連邦を中心とした地球軍が、総攻撃を始める。
旗艦であるはずのアークエンジェルを最前に据えるという、斬新過ぎる行軍。だが機能的だ。
ボアズはもう目に見えている。しかしまだ確実に当てられる距離じゃない。人の気配を感じられるくらいは近づかないと。
約30分後、複数の気配を感じるようになった。これならたぶん当たる。的も大きいしな。
「アズラエル、いいぞ」
「では無意味に無条件降伏でも求めますかね」
オープンチャンネルで通信開始。
「何か用か?」
コーディの司令官は当然のようになめきった態度だった。
アズラエルが無条件降伏を求めると、「は?」と言って固まる。程なく大爆笑。少しし間を置き、怒りの罵倒、通信拒絶へとつながった。
「ではやっちゃってください」
「ふう。やるしかないのか」
宇宙服を着て、アークエンジェルから飛び出す。
気功波の反動を考えて前方に移動しておく。それから、呼吸を整えて、集中。
全身に気を溜める。それを、手のひらに持って行く。宇宙服の手の部分を壊さないように注意する。
「か、め、は、め、波ああああー!」
手のひらから特大の気功波が飛び出す。奔流は程なく基地に到達し、のみ込んでいく。そして大爆発。小惑星は大小の岩となって方々に飛び散る。
「オラオラオラオラオラ!」
こちらに飛んできた岩を気弾で粉砕する。かなりスピードが速く、気も感じないので難しい。地球軍の船も岩の粉砕のためにレーザーやミサイルを発射する。その甲斐あって、岩による被害は無かった。
落ち着いたところで、アークエンジェルへ移動する。アズラエルは通信中だった。相手はシーゲル・クライン。
「満足していただけましたか?」
「愚かなことをした……っ! あれは、核と同じく、抑止力でなければならなかったのだ! 撃ってはならん! そんなことも分からなかったのか!」
「そうですか。ではヤキン・ドゥーエも宇宙の塵にしてさしあげます」
「なんだと!?」
「30分さしあげます。よく考えることですね」
「くっ」
アズラエルは通信を切った。そして次に俺のポッドと同タイプの通信機器を用い、プラントに送り込んでいるという使者に連絡を取る。
「オーブの皆さん、よろしくお願いします」
ん? オーブと言えば日本を逃げた権力者たちが作った国。ヘリオポリスもオーブだった。つくづく縁があるな。
その頃、プラント評議会では怒声が飛び交っていた。
「見ろ! やはりナチュラルは滅ぼさねばならなかったのだ!」
「生ぬるい手段を取ってきたお前の責任だぞシーゲル! Nジャマ―を使う前に核で止めを刺しておくべきだったのだ!」
「今からでもジェネシスを撃て! もう躊躇している暇は無いぞ!」
パトリック・ザラを中心とした主戦派は、議長であるシーゲル・クラインの失態を罵る。そして、徹底抗戦を主張。
「そうしてお互い滅びろというのか!? 愚か者達め!」
「敵ジェネシスの場所を特定する前に撃ってどうする!?」
「勝っているうちに和平を結んでおくべきだったんだ! 我々コーディネーターが優秀と言っても、地球にもコーディネーターはいるんだぞ! 我々と同じ兵器を開発することはありえたのだ!」
シーゲル・クラインを中心とした和平派も主戦派を罵る。彼等の主張は『今すぐ和平を結ぶべき』というものと『ナチュラルの巨大兵器の位置を特定するまで時間を稼ぐ』というものに別れていた。
その議場へ、シーゲル・クラインの秘書が慌てて入ってくる。
「オーブから和平交渉が可能という使者が来ています!」
「何!?」
議長であるシーゲルは彼等を受け入れた。議論の場は応接室に移る。
オーブの五大士族のうち、アスハ家の令嬢とサハク家の当主が来ていた。また五大士族ではないが、財政に強い力を持つセイラン家の当主もいた。話はサハク家の当主が中心に行うようだ。
「我々との会談に応じた段階で、第二射までの時間が30分から1時間に伸びたことを伝えておく」
「なっ……。いや、続けてくれ」
「あちらの条件はザフトの解散と賠償金の支払い、並びに主要人物の受け渡し。しかし、場合によってはその限りでない。まずは写真をご覧いただく」
サハクの秘書らしき人物がそっと出てきて、シーゲル・クライン、エザリア・ジュール、タッド・エルスマンに写真を手渡す。
「なっ」
「イザーク!」
それは捕虜となった彼等の子どもの写真だった。子どもを溺愛しているシーゲルとエザリアは目に見えてうろたえてしまう。
「なあ、私も見ちゃダメなのか?」
「静かにしていてください。そういう約束だったはずです」
「だが、私には知る権利がっ」
アスハ家の令嬢が喋ろうとするのを、サハク家の当主が睨んで黙らせた。
「20歳未満のザフト所属者、並びに関係者は無罪にしていいと言っていた。条件は、議会が降伏を受け入れた上で、今写真を手渡した3名が、我々と共に地球軍の旗艦へ向かうことだ」
「なんだと!?」
そうして議員達は選択を迫られることになった。しかし相変わらず主戦派と和平派は仲が悪い。
「子どもが助かるのなら」
「ナチュラルが約束など守るものか!」
「やつらに降伏するくらいなら死んだ方がマシだ! 若者もそれくらい知っている!」「大人の都合を子どもに押し付けるな!」
しかし彼等には十分な議論をする時間が残されていない。パトリック・ザラなど、会談中も休みなしに軍部と連絡を取り合っている。敵の大量破壊兵器の情報を得るためだ。また、第二射対策としてヤキンから全兵出撃させ、できるだけ広範囲にわたって展開させることもさせていた。
パトリックはもう1つ命じていることがあった。ザフト最大の大量破壊兵器”ジェネシス”を稼働させておくことだ。それはアズラエルが求める外宇宙探索用推進装置をもとに、より攻撃に特化させた巨大ガンマ線レーザー兵器だった。しかし如何せん巨大で、且つ未だ実験段階なので、一射撃てるようになるまで時間がかかる。さらに言えば、一発撃って壊れる可能性が高く、命中精度も不明だった。
賭けだった。これで敵側のジェネシス(と彼は思っている)を破壊できなければコーディネーターは全滅する。しかし彼はナチュラルに屈するよりは死を選んだ方がマシだと思っていた。だから撃たないという手はないのだ。
そこで、シーゲルが難しい顔をして立ち上がる。パトリックに近づいていく。
耳元でぼそりとつぶやく。
「聞け、パトリック。私は時間を稼ぐ」
「どういう意味だ?」
「アレを使ったやつらを認めるつもりはない。しかし現状、時間内にアレを破壊する手段がない」
「あるではないか! 3つも!」
実はプラントにジェネシスは3つあった。
「当たらなければ意味はない。きっとやつらのジェネシスは地球圏外にあるぞ。だというのにボアズに命中させる精度を持っていたのだ」
彼等の常識ではナチュラルでは地球圏にジェネシスを作れない。ニュートロンジャマーの影響で巨大装置にエネルギーを送るはずの核分裂反応が使えないからだ。プラントのジェネシスにはニュートロンジャマーの効果を打ち消す技術が使われていた。それは一朝一夕で作れるものではない。ニュートロンジャマーが地球にばら撒かれてから開発していては間に合わない。
「いいや、こちらのジェネシスでやつらの艦隊を消し飛ばして見せて、次は地球の番だと脅せばよいのだ。3つあるのだから撃ち合いは可能だ」
「そうなればお互い滅びるだけだ」
「相変わらず弱気なやつめ!」
「パトリック、私は自分の命が惜しいわけではない。時間を稼ぐと言ったろう。私はこの身をやつらに差し出す。お前は主力を率いて逃げろ。そしていつの日か、あの忌々しい兵器を破壊してくれ」
「なっ、お前……」
パトリック・ザラは驚愕に目を見開く。しかしシーゲルの鬼気迫る表情に、親友であり好敵手である者の覚悟を理解した。ゆっくりうなずく。
「いいだろう。お前の仇は必ず取ってやる」
その直後、シーゲル・クラインは降伏を宣言した。さらにイザリア・ジュール、タッド・エルスマンと共にオーブのイズモ級に乗り込み、アークエンジェルへ向かった。