『カイズ君。君がこの手紙を読んどるということは、うちらが無事仕事に迎えたということやろう。
まずこの時点でおおきにな。さていまうちはヴィータに隠れてこの手紙を書いてるんやけど、その理由はヴィータが幼児退行して暴れ回ってるからや。
どうしてこんなことになったかは、ヴィータのプライバシーのために言わないけど、とりあえずヴィータの体に害はあらへん。
――――本当はうちらがヴィータのことを見てあげたいんやけど、今日の公開演習はかなり大がかりなイベントでどうしても外すことができないんや。
だからカイズ君には急だけど今回来てもらったんや。さすがに五歳児のヴィータを一人で留守番させるには~~~~~』
その行を最後に文字が読めなくなる。きっと今のヴィータに捕まったのだろう。
だがだいたいの成り行きは理解することが出来た。
「そうか。それでこの荒れようなのか」
カイズはあたりに散らばった洗濯物を集めながら、ソファーの上でごろごろ暴れ回っているヴィータを見る。
彼はテーブルに手紙をおくと、ヴィータの視線の高さにしゃがみこむ。
そして理解はしても、納得しきれない頭を質問でだめ押しすることにした。
「えっと、ヴィータちゃんは何歳かな?」
「ん、えーとね」
ヴィータは呪いウサギを抱きしめると、一本一本指を立てる。そしてパーの形を目の前に出した。
「ヴィータはいま五歳だよ」
「そうかー。ヴィータちゃんは自分の歳が言えてえらいねー」
「えへへへー」
ヴィータは誉められたのが嬉しいのか、コロコロとした笑みを見せる。
そんな彼女を見てカイズは思った。
うん。これは大変なことになったぞ。
と。
カイズは悟りを開いたような顔をする。一方ヴィータは呪いウサギをソファーに置くと、彼の手をギュッと握りしめた。
「ねえ。おにーちゃんも一緒にあそぼうよー」
「あ、うん。えっと、なにをして遊ぼうか」
まだ状況を全て受け入れられていない。だがこれは八神家に恩を返すチャンスだと、自らを無理矢理落ち着かせた。
「それに何と言ってもヴィータさんのことだしな。俺が頑張らないと」
「ねえおにーちゃん、はやくー」
「うん。それじゃあなにしようか」
「ヴィータね、おままごとがいいー」
そういうといったいいつの間に用意したのだろうか。ヴィータの後ろには小さな机と、玩具の野菜や肉などが置かれていた。
「ねえ、あなた」
「あっ!もう始まってるのか!!えっと、どうしたんだいヴィータちゃん」
「ブブー!!」
ヴィータは両手で×印を作る。
「今のヴィータとおにーちゃんは夫婦同士だから、その呼び方は駄目です。ヴィータはあなた。おにーちゃんはおまえって呼んでください」
「わ、わかったよヴィータちゃ、じゃなくて、お、おまえ……」
「それでいいのです。――――お帰りなさいあなた。今日も疲れたでしょう。先にご飯にする?お風呂にする?それとも、あ・た・し」
「そ、それじゃごは」
「――――むぅ」
「じゃ、じゃなくておふ」
「――――むむぅ」
前者二つを口にしようとすると、ヴィータにじろりと睨まれる。
ヴィータは頬をぷくっと膨らませると、カイズの首筋に鼻頭を近づけた。
「ヴィ、ヴィータちゃんなにを!」
「クンクン。やっぱり、他の女のにおいがする。酷いわ。ヴィータというものがありながら浮気なんて!!」
「え、ええ!!」
「やっぱりあなたはもっと大人で、おっぱいが大きな人が好きなのね」
「ええぇぇぇぇ!!」
およよよと鳴き声をあげると、ヴィータはその場で大げさに倒れてしまう。
ってかそのネタ結構引っ張るな!!
だが今のヴィータは五歳児なのだ。そんな彼女を問いつめることなどもちろんできない。カイズはヴィータの肩を掴むと、そっと抱き起こしていった。
「そ、そんなことないです。俺はヴィータさんの体が一番好きです!!」
「ブブー。呼び方はおまえです。そして夫婦同士なんですから、敬語は必要ないです。それじゃあもう一度。――――やっぱりあなたはおっぱいが大きくて、桃尻な大人の女性が好きなんですね」
「一個増えてる!え、えっと。そんなことはない。お、俺はおまえの胸とお尻が一番好きだ!!」
なに言ってるんだ俺!!
自らにつっこみを入れるが、さらに小芝居は続く。
「嘘よ。だったらあたしの体のどこが好きだっていうんですか」
「そ、それは。……ま、前に言いましたよね」
「私はいま聞きたいの。あと、敬語になってるよ!」
「え、えっと、あの。……ヴィータさんの手のひらに収まる胸と」
「うんうん」
「あ、あと、小ぶりでも張りのあるおしりは、と、と、とび、飛び込みたくなるくらいで、その…………」
やばい。俺いまめちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってるぞ。
前回とは違い、羞恥のあまり顔を真っ赤にする。
以前はヴィータが叫んで途中で止めてくれたが、今回は言い終わらないことには誰も止めてはくれない。
てか、まじまじと聞かないでくれ~~。
もう限界だとしどろもどろするカイズをヴィータはじっと眺める。そしておもむろに立ち上がると、ワンピースの裾を両手で掴んだ。
「おにーちゃんが好きならヴィータのおっぱい触らせてあげるね」
「…………へっ?」
「えいっ」
ヴィータがワンピースをめくりあげると、まず始めに目に映ったのは白く細い脚。さらにめくりあげると、その脚の付け根には赤とピンクのストライプの下着がある。そしてその上には。
「って、ヴィータさんノーブラじゃないですか!」
ほんの少しの起伏しかない胸にブラが必要かどうかはわからない。だがそれならそれでショーツを着るなりなんなりあるだろうに。
カイズは目の前にピンク色のぷっくりとした乳首が露わになると、思わずゴクリと唾を飲み込む。
「ほら、ヴィータのおっぱい触ってもいいんですよ。あっ、それとも先にお尻に飛び込みたいかな?ちょっと待っててね」
ヴィータはカイズに小さなお尻を向けると、一気に下着をずり降ろした。
「ストップ!ストップ!!」
だがその直前にカイズはヴィータのワンピースを掴み、体が露わになる前に体全体を覆い隠した。
「むぅ。どうしたのお兄ちゃん?」
「ど、どうしたじゃありません。駄目でしょ、女の子が男の前で気軽に裸になるのは!!」
カイズはお母さん口調になると、ヴィータを叱りつける。だがヴィータは不思議そうにするだけで、反省の色がなかった。
だがそれはある意味当然なのかもしれない。
「だってヴィータとおにーちゃんは恋人同士なんだよね。ヴィータだって知らない男の人の前で裸になったりしないよー」
「えっ。…………へっ??」
それはつまり自分だからOKということなのだろうか。
だが言われてみればその通りだ。自分とヴィータは恋人同士であり、数こそ少ないがエッチなことも何度かしている。
さらに八神家は夜まで帰ってこない。つまりそれは。
『はっはっは、いいじゃねえか。ヴィータさんがOKって言ってるんだから。据え膳食わぬはなんとかっていうだろ』
「や、やめろ悪魔の俺。そんな甘言で俺を誘惑するな」
『そうですよ悪魔カイズ』
「その声は天使カイズ。そうだ。ガツンと言ってやれ!」
『なにが据え膳ですか。女の人にこれだけさせてなにもしないほうが失礼だとしりなさい!』
「そうだそうだ。…………そうなのか?」
あれ、どちらにしても答えが変わらないような。
「で、でもまあ俺たちは恋人同士だし、今は夫婦同士なわけだし。そ、それくらい……」
このままいけば夢の一つが達成できる。そう思うとカイズの欲求が急激に膨れ上がった。
「そ、それじゃあヴィータさん。…………あれ、ヴィータさん?」
「んくんく。パリパリ」
カイズが振り返った先にヴィータはおらず。テーブルの先に目を向けると、彼女はおやつタイムに入っていた。
「おにーちゃんもいっしょにおやつたべよー」
その無邪気な姿を見ると、一気に邪な気持ちが霧散する。カイズは大きく息を吸い込むと、ハアァァとため息をついた。
「ああ、あのくらいの年頃ってあんな感じだよな。好奇心旺盛で、何かを始めてはすぐに飽きたりして。ああー、落ち着け俺。五歳児が本気で誘惑してくるわけないじゃないか」
パンパンと両頬を叩くと、カイズは心を落ち着かせた。
「おにーちゃんはやくー。おにーちゃんのぶんも食べちゃうからねー」
「それはまずいな。いまいくから待っててねー」
「――――うん!」
ヴィータのその笑顔をみると、カイズの心はほっこりとしていった。