起きた私と起きっぱなしの貴方
――――チュン。チュチュン。
小鳥のさえずりが聞こえると、少しずつ目が覚めてくる。ヴィータは顔の当たりに朝日を受けると、薄目であたりを見た。
「あれ、何で朝日が当たるんだ? カーテン閉め忘れたっけ?」
いや、カーテンを閉めていようと閉めてなかろうと部屋の構造上、日光の直撃はなかったはずだ。
だがそれはあくまで自分の部屋だったらの話だ。ヴィータは目の前にある顔を見ると、そうだったと数日前のことを思い出した。
「おはよ、カイズ」
「スゥー、スゥー」
眠っているカイズを起こさないように、呟くように口にする。ここ数日は悪夢にうなされることもないようで、ヴィータも一安心していた。
「さて、今日はあたしの朝食当番だよな。起こさないようにゆっくりと。…………って、あれ?」
静かにベッドから抜けようとするが、どうしてか体が動かない。だがそれも仕方がないことだ。
カイズはまるでヴィータを抱き枕にするかのように、ガッチリとホールドしているのだから。
ヴィータは少し首のあたりを動かしてみるが、カイズの手はほどけそうになかった。
「んー、無理矢理にならほどけるけど。……それもな」
ヴィータがカイズと同棲するようになったのは、そもそも彼が眠れなかったことにある。
一週間ほぼ不眠不休だったカイズ。だがヴィータが近くにいることにより、最近ようやく眠ることができるようになった。
そんな彼を起こしてしまうのが忍びなく、ヴィータは頭を悩ませた。
「んー、どうするかな。腕はふりほどけないし、でも起こすわけにはいかないし。…………あとはすり抜けるしかねえよな」
腕のホールドは堅いが、その円が狭いわけではない。ヴィータはそれしかないかと思うと、ゆっくりとベッドの下へ下へと移動する。
「ん、お、いいぞ。このままゆっくり、ゆっくりと。――――あれ、なんか急に引っかかって。んん」
下へ下へと体を進めていたが、股の間に何かが引っかかると急に移動しづらくなる。
足でも挟まっているのだろうか。いや、太股にしてはそれは細く、随分と固いような。
「って、あっ、うわぁ、これってもしかして……」
しかしそれしか考えられない。ヴィータは視線だけを下に向けると、引っかかっているそれを瞳に映した。
ヴィータの行く手を遮るように、ズボンの中で大きくなったそれを見ると、ヴィータの顔がボッと赤くなる。
「な、な、何で朝っぱらから大きくなってるんだよ。へっ、えっ? だ、だっておちんちんってエッチなことを考えたら大きくなるんだよな??」
だったらカイズは狸寝入りをしているのか。いや、目の前で幸せそうに眠るそれは、とても嘘寝とは思えなかった。
「ん、んん……」
むしろヴィータの動揺の声に、カイズが目覚めそうになる。ヴィータはギュッと口を閉じると、必死に沈黙を守った。
「…………スゥ、スゥ」
(あ、危なかった。――――でもよくわからないな。男のここって)
萎える様子のないカイズの自己主張を見ると、ヴィータは覚悟を決める。
(とにかくゆっくり。カイズを起こさないようにゆっくりだな)
改めて覚悟を決めると、ヴィータは肌をこすらせながら下へ下へと再度移動をする。
するとカイズの膨張がヴィータの股に強く押し当てられた。
(やっ、カイズのが股に引っかかって。へっ、変な感じがする)
互いにパジャマ越しではあるが、集中してしまっているぶん、変に意識してしまう。
ヴィータの秘部をなぞるように、押し当てられるそれを見ると、ヴィータの顔がさらに赤くなった。
「いっ、いつか。これがあたしのここに。……は、入るんだよな」
カイズのそれは何度か見たことがある。あんな大きなものが、自分の小さな割れ目に入る。本当にそんなことが可能なのだろうか。
「ん、ん、あっ、やっ。なんだろ、急に、変な感じに」
カイズのモノがヴィータのそこをノックすると、急に熱を帯びるのがわかる。
だが未だにカイズの欲望は、ヴィータの股の間に引っかかっており、抜ける様子がなかった。
(だ、駄目だ駄目だ。こんな寝ている間にイタズラみたいなことなんて、カイズに失望されちまうよ。こ、こうなったら!)
ここまできたら強硬手段だ。ヴィータはある程度のリスクを覚悟すると、一気に体を下に滑らせる。
そしてカイズの欲望を思い切り、下に反らせるとそのままカイズの羽交い締めから抜け出した。
そのままベッドから抜け出すと、すぐにカイズの顔を見た。
「お、起きてねえよな?」
「ん、んん。――――スゥ」
「ほっ、よかった。――――って、おおおおっ!」
これで安心して朝食の用意ができる。そう思いキッチンに行こうとしたときだ。
――――カイズのズボンが盛大にズリ降りている姿に、ヴィータの目が釘付けになる。
先ほど無理矢理抜け出したのがいけなかったのだろう。ズボンとボクサーパンツを降ろされたカイズは、朝立ちした肉棒を外気にさらしていた。
「んー、あー」
そして抱き枕であるヴィータを失ったからだろう。軽く寝返りをうつと、仰向けになった彼は、天井に向かい高らかに怒頂を突き上げた。
(わああああ、ど、どうしてこんなことになるんだよー)
心の中で悲鳴をあげると、ヴィータは右往左往してしまう。このままでは朝食を作りにいけない。カイズが起きる前に、こぼれ落ちたモノを何とかしなければ。
「い、いま起きたら絶対誤解されるよな。ち、違うからな。あたしはそんなつもりでやったんじゃないんだからな」
聞こえていないカイズに言い訳すると、ヴィータはベッドの前に膝を突く。
改めて目にする反りあがったそれを見ると、ヴィータはごくりと生唾を飲んだ。
「あ、改めて見ると結構すごい形してるんだよな。先っぽが太くなってて、反りあがってて、それにちょっと右曲がりなんだな」
ほかの人のそこがどうなっているかはヴィータにはわからない。だがこんな無防備なカイズの姿を見ると、ヴィータは少し得意そうな顔をしだした。
「ふふん。あたしはカイズといっぱいエッチなことしてるし、今は一緒に暮らしてもいるんだぞ。……あたしは昔のあたしが知らないことをいっぱい知ってるんだ。……だからたかが一回キスしただけで、調子に乗ってるんじゃないっていうんだ」
ヴィータは心の中に残っているありえないはずだった記憶。過去のことを思い出すとさらに言葉を続ける。
「カイズが好きになったのは、あくまで今のあたしで、過去のあたしじゃねえんだよーだ。……あ、あたしは昔のあたしと違って、こ、こんなことだってできるんだからな」
過去のヴィータとカイズがキスをしたのが、ヴィータの中ではかなり悔しかったのだろう。
自分自身に張り合うと、ヴィータはカイズの反りあがった肉棒に顔を近づける。
あたしは何をしているのだろうか。そうは思いながらも、ヴィータは息を荒くすると。――――カイズの亀頭を唇で包み込んでいった。
「ん、あむ、じゅる、んっちゅ」
「うっ、あっ……」
「ちゅ、んんー、あふ」
これでフェラチオも三度目だ。ヴィータは意識がないながらも、気持ちよさそうな顔をするカイズを見て、満足そうな顔をする。
「ふふーんだ。……って、そうじゃないだろ。は、早くズボンあげねえと!」
ふと我に返ると、ヴィータは急いでボクサーパンツをはかせようとする。だが先ほどのフェラチオのせいで、さらにいきり立ってしまったそれは、もうパンツに収まらないほど大きくなってしまった。
「あ、あたしは何してるんだよ」
このまま無理矢理ズボンをかぶせるか。そう思いカイズの肉棒を見る。
ピクリ、ピクリ。
その瞬間、カイズの肉棒がビクビクと動き出す。まるで中途半端にお預けされた快楽を求めるように、小刻みに震えていた。
ヴィータはそんな彼氏の反応を見て、困ったように目を伏せる。
「しょ、しょうがねえよな。だ、だってあたしが悪いわけだし。……仕方ねえんだよ、これは」
そう、仕方がない。仕方がない。そう何度も口にすると、ヴィータは再び彼の肉棒に顔を近づける。
そして小さな舌をだすと、カイズの肉棒にツゥーっと舌を這わせていった。
「一回イカせればちっちゃくなるよな。い、いそご。ちゅ、ちゅるる、んん、ずずずっ!」
「あぅ、んー」
「れろ、あんむ、あっ、こら、暴れるなよ」
本人よりも早く目覚めた肉棒は、ヴィータの口の中で上へ上へと動き回る。
このままでは口の中から、飛び出してしまう。そうはさせないと、ヴィータが口に力を入れたその時だ。
――――カリッ!
「――――ッ! ……痛い」
「んんん!!」
逃がさないと口を動かした瞬間に、歯をたててしまったようだ。カイズは下半身に走る痛みに、ゆっくりと目を開け始める。
(や、やばい。早く出させないと、じゃなくて、まずは、えっと、えっと。とにかくズボン、ズボンだよな!?)
もう何をどうしていいか、頭が大混乱する。ヴィータはとにかく、何かをどうにかしないといけないと、漠然な思いのまま下半身に手を伸ばす。
「うーん。…………あれ、何だろ。変な感じが?」
「すぅー、すぅー、すぅー」
「あれ、ヴィータさん今日は朝食当番だったはずじゃ。っていっても、まだ目覚ましが鳴る前の時間か」
「すぅー、すぅー」
ヴィータはとっさに目を閉じると、ベッドの中で狸寝入りをする。そんなことだといざ知らず、カイズは寝ているヴィータの顔をのぞき込むと、嬉しそうな顔をする。
「ヴィータさんは寝顔も可愛い――――」
だが次の瞬間、その表情は一気に破顔した。
「って、えっ、な、なんで、下半身丸だしなんだ。というか、ヴィータさんの右手が俺のを」
(や、やっちまったああぁぁぁぁ)
急いでズボンをあげようとしていたはずだ。だがなぜかヴィータはカイズの肉棒を握りしめてしまっていた。
しかしこんな状況で起きられるはずがない。ヴィータは渾身の狸寝入りを続行すると、カイズはおろおろと辺りを見だしてしまう。
「や、やばい、やばいぞ。これじゃヴィータさんが寝てるのをいいことに、イタズラしてるみたいじゃないか。で、でもこんな状況じゃ絶対に言い訳できないし」
(…………ごめんカイズ)
「と、とにかくヴィータさんの手を離させないと」
カイズは自分のモノを握っているヴィータの右手に手を当てる。
「だ、駄目だ。めちゃめちゃしっかり握り込んでるぞ」
(そ、そうか力を緩めないと)
それでヴィータの手から放れて、カイズが自分でズボンを直せばそれで万事OKだ。
だがそう思った瞬間、それでいいのかという思いがヴィータの中で走る。
(ま、待てよ。ここでいきなり手の力を弱めたら、狸寝入りだってバレるんじゃねえのか!)
それは非常にまずい。ヴィータは考えにストップをかけると、手の力をそのまま維持した。
「よっ、ほっ、って。だ、駄目だこれ以上強くしたらさすがに起きちゃうよな」
ガッチリ握り込んでいるヴィータの手を見て、カイズの背中に冷や汗が流れる。
このままではいずれ目覚ましが鳴ってしまう。カイズは覚悟を決めると、ヴィータの手を自身の両手で握り込んだ。
(へっ?)
「とにかく一気に引き抜こう。それでヴィータさんが起きそうになったら、すぐにトイレにでも駆け込めばいいんだ。――――んっ、よし!」
カイズはヴィータの右手に両手を添えると、自身の欲望を手のひらで滑らせる。
すると、本人よりも先に起きていたそれは、再度感じる快楽に敏感に反応した。
「へっ、なんで、いきなりこんな。や、やば!」
本人からすればたったひとコキだ。だが肉棒からすれば、何度も舐められ吸われた故の手コキなのだ。
カイズは自分でも理解しがたいほど、快楽が上ってくるのを感じると、ヴィータの手の中で動きを止めてしまう。
―――――ビュ、ビュビュビュ!!
カイズの思いもよらないところで吐き出される欲望は、ヴィータの右手のなかを汚していく。
(う、うわ。右手の中が熱い)
ヴィータは液状のそれがドロリと右手の中に広がるのを感じると、恥ずかしさのあまり下唇を噛んだ。
「あ、あわわわ、ご、ごめんなさいヴィータさん。お、俺そんなつもりで。うわあぁぁぁぁっ!!」
カイズは欲望を吐き出し終わったそれを、ヴィータの手の中からすぐに引き出す。
そして動転したままティッシュを何枚も抜き取ると、ヴィータの手のひらを一心不乱にふき始めた。
「ごめんなさい。ごめんなさいヴィータさん!」
ゴシゴシと手を拭き、大声をあげるカイズ。その頭にはその音でヴィータが目覚めるとはもう考えられなかったのだろう。
(…………カイズ、本当にごめん)
今回のことはどちらが悪いとはもちろんいえない。
だがもう今更起きることなどできるはずもなく。ヴィータは不自然なほど何をされても眠り続けながら、心の中で何度も何度もカイズに頭を下げていくのだった。